2013/03/02

Cappelle la Grande 2013 8th round - French Against French -


カペルは珍しい日本式。張り紙で選手のポイント状況が分かるようになっています。

この日、長期にわたる遠征での、最後のIM ノームのチャンスをかけた大切な試合を迎えます。相手は2度目の対戦となるフランスのGM で、序盤、満足なポジションを築きましたが、結果を残すことはできませんでした。

Cornette, M (GM, FRA, 2567) - Kojima,S (FM, JPN, 2368)
Cappelle la Grande 2013 (8)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 c5 4. c3 Nc6 5. Ne2 e6!?



通常、このようなポジションでは白マスビショップをポーンストラクチャーの外に出しますが、そうするとc5 を取られて複雑な形となります。そこでこの試合はFrench Structure にし、手堅く進めてみることを決めます。

6. Nd2 Qb6 7. Nf3 Bd7 8. g3 Rc8 9. Bg2 cxd4 10. Nexd4


イメージとしては、French Advanced のセットアップですが、白はナイトの組み方に手数をかけ、黒はc7-c6、c6-c5 に2手掛けています。私はこのタイミングでcファイルを開き、ピースを捌いてスペースの狭さの問題を解消することにしました。

10... Nxd4 11. Nxd4 Ne7 12. O-O Nc6 13. Nf3 Be7 14. b3 O-O 15. Be3 Qc7 16. Bf4 Rfd8=



黒はキャスリングした側のルークもセンターに配置し、ほぼイコアライズに成功しています。問題はここからどう手を作っていくかという、ミドルゲームのプランです。

17. Qd2 Be8 18. h4 Nb8!


白はNc6-Na5-Nc4 を防ぐためにbポーンを進めましたが、それがc3 のポーンを弱める結果となっています。私はそこに目を付け、白がキングサイドでアクションを起こす前に、クイーンサイドから手を作ることに決めました。

19. Rac1 Bb5 20. Rfd1 Ba3 21. Rc2 Nc6!



白マスビショップをアクティブな位置に置いた後は、再びナイトを前へ出します。このようなBc8-Bd7-Be8-Bb5、Nb8-Nc6-Nb8-Nc6 というピースのマヌーバリングは、このゲームでうまく指せたポイントでした。

22. Qe1!?


黒はすぐにNc6-Nc2 がエクスチェンジ取りのスレットになっているように見えますが、ルークを一時的に取らせてからの、Nf3-Nd4! によってb5 のビショップが落ちるので、これはうまくいきません。私が考えていた22. Nd4 Nxd4 23. Qxd4 Bc5 でも黒は満足なので、白はもう少し駒を捌かずに、虎視眈々と将来的なチャンスを窺死ます。

22... a5 23. Bc1 Bf8 24. Bg5 Re8 25. Rcd2 h6 26. Bf4 Ne7!?



再びcファイルを開いてc3 をアタックすると同時に、白の次の手を誘います。

27. Nd4 Ba6 28. Rc2 Nc6!?


ここは難しい判断ですが、28... Ng6 29. Qe3 と進めて黒マスビショップを貰っても、d4 のアウトポストに強力なナイトが残るのは嫌だと感じました。そこでナイト同士を交換することで、黒としてリスクなく、イコールのポジションを目指します。

29. Nxc6 Qxc6 30. c4!?



この手は意外でした。お互いc4とd5 はピンになっており、今はどちらからも取ることができません。そうなると、先にクイーンを避けるチャンスのある黒に、c4 を捌く権利が与えられ、c4 が弱点として残ると考えました。しかし、Cornette はそれでも、dファイルを開くことで白がなにかしらのチャンスを掴むことを期待したのでしょう。

30... Bb4 31. Qe3 Qc5 32. Qf3 dxc4


ルークが7段目にはいってくるのは問題ないと読み、ポーンをいただきます。しかし、ここからキングにプレッシャーをかけられる手筋は、完全に予想外でした。

33. Qg4 Kh8 34. Qh5 Kg8 35. Rd7 Re7 36. Be3 Qb5



ここでクイーンを捨てることも考えましたが、残り時間と勇敢さが足りず、実行には移せませんでした。36... Rxd7!? 37. Bxc5 cxb3!(黒がマテリアル十分にするための重要な一手。これを読み落として、クイーンサイクリファイスを諦めました。) 38. axb3 Rxc5 39. Rxc5 Bxc5=/+ 少なくとも、黒の負けはないでしょう。

37. Rd4!


持ち時間が増える40手直前、この手をc4 に利かせる目的だけだと勘違いしたことが、ここからのポジション崩壊の要因でした。

37... Rec7?!


c4 のポーンを守ることばかりに目が行き、さらに大切なことを忘れていました。それは、キングのディフェンスです!37... f5! (さらに先の変化にも出ますが、g4 のマスを抑える重要なディフランスのアイディアです。)38. Rdxc4 Rxc4 39. Rxc4 Qxe5 40. Rc8+ Kh7=/+

38. Bxh6!



落ち着いて振り返れば簡単に見つかるアイディアですが、試合中はとにかく時間が足りなかったことと、優勢になったという焦りから、冷静にポジションを見つめることができませんでした。さらには次の一手で、ここまで要所要所をうまく指してきたこのゲームを、完全に壊してしまいます。

38... g6?


38... f5! 39. Rd1 Rd7= 先程の変化と同じように、g4 にルークが来るのを抑えれば、白のアタックは決定的にならず、ディフェンスは十分でした。このポーンがアンパッサンできないことを見落としていたのも、大きな反省点です。

39. Rg4 cxb3 40. Rxg6+!


時間の増える40手目までは到達しましたが、ここからはメイト一直線です。

40... fxg6 41. Qxg6+ Kh8 42. Bg7+ Kg8 43. Bf6+ Kf8 44. Qh6+ Ke8 45. Qh8+ Kf7 46. Qg7+ Ke8 47. Qg8+ Bf8 48. Qg6+ 1-0



あまり研究していない序盤でも、これまでの経験から満足なポジションを築くことができるようになったことは、私のハンガリーでの成長の一つかもしれません。しかし、このレベルのGM 相手となると、中盤で相手のプランが分からなくなったり、時間切迫で自らポジションを崩してしまいます。これはまだ私が、IM には何か一歩足りないという証拠なのかもしれません。わずかにあったIM ノームのチャンスは消えことは残念ですが、最終戦を勝って日本にレイティングを持って帰る仕事は忘れていないので、気を緩めずに最終戦に臨もうと思います。

そしてこの日はついに恐れていたことが起こりました。全員が格上と対戦した8R は、日本勢は全敗。1ドローもとれませんでした。私が最もチャンスがあっただけ悔しいです。それでも、私以外はまだカテゴリープライズのチャンスが残っているでしょう。

Kojima, S (FM, 2368) 4.5/8 RP 2360
Kobayashi, A (1997) 4/8 Rp 2098
Ishizuka, M (1790) 4/8 Rp 1840
Hashimoto, A (UR) 4/8 Rp 1761
Mimura, K (1770) 3.5/8 RP 1928


さらに最終戦で、小林-橋本というペアリングが...(笑)私は2063のおじさんが相手なので、きっちり勝たせてもらうつもりです。


試合に負けた腹いせに、トマトとモッツァレラチーズのサンドウィッチ食べ比べを敢行。ふ、ふとる...

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