8R はアメリカから武者修行に来ているDer Manuelian と先月に引き続きの対戦です。このトーナメントの前はアルメニアでプレーしていたそうで、精力的にあちこちを移動して試合を続けているようです。
Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Der Manuelian, H (USA, 2271)
Third Saturday GM November 2018 (8)
1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 Be7 5. Bf4 O-O 6. e3 Nbd7 7. a3!?
Third Saturday GM November 2018 (8)
6... Nbd7 に対して何を指すか、色々と試していますが、この日は手堅い7. a3 を選びました。クイーン交換も視野に入れ、わずかに良いエンドゲームを白は目指します。
7... c5 8. cxd5 Nxd5 9. Nxd5 exd5 10. dxc5 Nxc5 11. Be5 Bg4
この手は前夜に調べた中では見つけられず、この局面から考え始めます。11... Bf6 12. Bxf6 Qxf6 13. Qd4 Qxd4 14. Nxd4 Bg4!? に対して、15. f3 が用意でしたが、15. Be2 もオッケーとのコンピュータの判断だったため、これに手順前後させることにします。
12. Be2 Bf6 13. Bxf6 Qxf6 14. Qd4 Qxd4 15. Nxd4 Bxe2 16. Kxe2 Rfc8 17. Rhd1 Ne6 18. Rac1
ここはどのようにゲームが進むかの分かれ目です。18. Rd2 Nxd4+ 19. Rxd4 Rc2+ 20. Rd2 Rac8 21. Rad1 Kf8 22. Rxc2 Rxc2+ 23. Rd2 Rxd2+ 24. Kxd2 h5!= ならば、ポーンエンディングはドローになりそうです。そのため、d5 の孤立ポーンをアタックしづらくしても、ルークを残して戦うことにします。
18... Nxd4+ 19. exd4 b6
次にRc1-Rc5 と入る狙いを止めるのは当然です。これで将来的に弱まったc6 のマスを白が利用するチャンスがあるかどうかは、この先の大きなポイントです。
20. Kd3 f6 21. a4 Kf7 22. Re1 a5?
白のa4-a5 を警戒し、このポーンを進めてくれたのはラッキーでした。これでb6 のポーンが弱くなり、b6, c6 と弱点が並ぶことになります。代わりに22... g5! と指して本譜の流れを止めておけば、黒は満足に戦えたでしょう。
23. f4!
f4-f5 からe6 に拠点を作ると、いよいよ黒は6段目に並んだ弱点をカバーしきれなくなります。e5 のマスを弱めるf6-f5 は突けませんし、黒はいきなりトラブルを抱えることになります。
23... Rab8 24. f5 Rxc1 25. Rxc1 Rb7 26. Rc6 Ke7 27. b4!?
このクイーンサイドからのブレイクが勝つために必要だと決断しましたが、少し気が早かったかもしれません。黒は正確に指せばディフェンスできますが、実戦ではかなり悩むところだと思います。
27... axb4 28. Kc2 Kd7 29. Re6 b5?
このミスで白は強力なパスポーンを作り、しかも1手早めに進めることができました。29... Rc7+! 30. Kb3 Rc3+! 31. Kxb4 Rc4+ 32. Kb5 Rxd4 33. Rxb6 Rd2 34. Kc5! (34. Rb7+? Kd6 35. Rxg7 Rb2+ 36. Ka6 d4-/+ 急いでg7 を取ると、キングを端に追いやられ、反撃を食らいます。) 34... Kc7 35. Rb3 Rxg2 36. Rg3 Rc2+ 37. Kxd5 g6 38. Rh3 Kb6 39. Rxh7 Rc5+ 40. Ke6 Rxf5= これはドローです。キングが上がれればチャンスが作れると思いましたが、黒もg2 を狙いスピードが十分だとは読めませんでした。
30. a5 Rc7+ 31. Kb3 Rc4 32. Rb6
ここは、32. a6! Kc7 33. Re7+ Kb8 34. Rxg7 Rxd4 35. Rxh7 Rf4 36. h4+- で勝勢でした。本譜よりも黒キングを8段目に押し込み、黒のできるプレーを制限しています。
32... Kc7 33. Rxb5 Rxd4 34. a6 Rd1 35. Kxb4 d4 36. Rb7+ Kd6 37. Rxg7
こうして早めにg7 を取れたので、これは問題なく勝っただろうと思いました。しかし、ここから事件が起こります。
37... d3 38. Kc3 Ra1 39. Kxd3?
最終戦の相手のPlenkovic にも、aポーンを突けば勝ちだよね、と言われました。確かにaファイルのパスポーンは強力なのですが、後ろからルークで狙われて8段目到達は簡単ではありません。ならば、このパスポーンを消しても2ポーンアップになったほうが良いのではないか。これが私の試合中の考えでした。これが大きな間違いだったことは、この試合での一番の反省点です。39. a7! Ra3+ 40 Kd2 h5 (40... h6 41. g4 Ke5 42. Ke3! Kd6 43. Rf7 Ke5 44. Rd7+- これで黒は手が無くなり、ツークツワンクです。) 41. h4 Ke5 42. Ke3 Kxf5 43. g4+ hxg4 44. h5+- ポーンを取るのではなく、逆に取らせてしまえばhファイルに新しいパスポーンができ、これが勝利の決め手となります。黒のdポーンを残しておくと、白キングの動きが制限されることも、本譜のようにポーン交換した理由なのですが、e3 に上がれれば十分だというのは盲点でした。
39... Rxa6 40. Rxh7 Ke5 41. g4 Ra3+ 42. Kc2 Kf4 43. h3 Rg3
このようにh3-g4-f5 のポーンストラクチャーにするのは、ポーン交換前からの構想でした。問題は白がここから多い2ポーンを活かしたプレーがしづらいということです。
44. Rh6 Ke5 45. Kd2 Ra3 46. Ke2 Rg7
白がなにかするならば、hポーンを伸ばすか、ルークの位置を切り替えるしかありません。私は後者を試しましたが、前者でも黒はディフェンスできます。50. h4 Kf4 51. h5 Ra2+ 52. Kf1 Rh2 53. Rg7 Kf3 54. Ke1 Kf4 これで白は意外と局面の改善方法がありません。
50... Kf4 51. Rf7 Rg3+ 52. Kh2 Ra3 53. Re7 Ra2+ 54. Kh1 Kg3 55. Re3+ Kh4
h4 は黒キングにとって好位置で、h3 をアタックしながらg4-g5 も止めています。
56. Kg1 Rb2 57. Kf1 Ra2 58. Ke1 Rb2 59. Kd1 Ra2 60. Kc1 Rh2 61. Rd3 Rf2 62. Kd1 Ra2 63. Ke1 Rb2 64. Rf3 Ra2 65. Kf1 Rb 66. Kg1 Ra2 67. Rf2 Ra3
結局ルークの位置を切り替えても、その間に黒キングにポジションを改善され、h3 を落とされるだけでした。結論としては、パスポーンを取りあい、2ポーンアップにする判断が大きな間違いで、このルークエンディングは勝てません。
68. Kg2 Rg3+ 69. Kh1 Rxh3+ 70. Rh2 Kxg4 71. Rxh3 Kxh3 72. Kg1 Kg3 73. Kf1 Kf3 74. Kg1 Ke4 75. Kg2 Kxf5 76. Kf3 Kg5 77. Kg3 Kf5 78. Kf3 Ke5 79. Ke3 f5 80. Kf3 f4 81. Kf2 Kf6 82. Kf3 Kf5 83. Kf2 Kg4 84. Kg2 f3+ 85. Kf2 Kf4 86. Kf1 Ke5 87. Kf2 Ke4 88. Kf1 Ke3 89. Ke1 f2+ 90. Kf1 Kd4 91. Kxf2 1/2-1/2
40手目前とは言え、残り時間に十分余裕はあったので、2ポーンアップのエンドゲームが本当に勝てるのか、d3 を残すのは本当に厄介なのか、もう少し読むべきでした。エンドゲームは多少なり上手くなりましたが、肝心なところでこうして勝ちを逃すゲームはいくつかあるので、これは直さないといけませんね。
11/17 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Akshat, K (IM, IND, 2399) 1-0
11/18 14:30 Srinath, R (FM, IND, 2357) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/19 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Audi, A (FM, IND, 2347) 1-0
11/20 14:30 Nikolic, N (MNE, 2326) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/21 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Pikula, D (GM, SRB, 2485) 1-0
11/22 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2429) 1-0
11/23 14:30 Drasko, M (GM, MNE, 2434) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1/2-1/2
11/24 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Der Manuelian, H (USA, 2271) 1/2-1/2
11/25 09:30 Plenkovic, Z (IM, SRB, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
Third Saturday GM November 2018
+3 Pikula, Srinath
+2 Drasko, Kojima, Nikcevic
+-0 Akshat
-1 Nikolic
-3 Plenkovic
-4 Audi, Der Manuelian
最終戦は先ほど終わりましたが、そちらの結果報告と棋譜解説は明日の記事に回そうと思います。これからブダペストに戻ります!
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