2018/11/23

Third Saturday GM November 2018 R6


デノビッチは3日ぶりに晴天となりました。一昨日の嵐の影響で、道路に流れてきた土砂を片付けたり、水没した船から水を出したりと、デノビッチの住人たちはまだ忙しなさそうですが、試合に訪れている私としては、こうして天気が回復して一安心です。一昨日は3階の部屋から2階の試合会場に降りるため、外の階段を1階分降りるだけでびしょ濡れになりました(笑)

6試合目の相手は、モンテネグロのGM Nikcevic です。先月は、最終戦で勝てば初のGM ノーム獲得という場面で彼と試合をし、本当に悔しい負けを喫したのでした。今回はまだまだノームに関係のないラウンドではありますが、連続白で負けるわけにはいきません。

Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2429)
Third Saturday GM November 2018 (6)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. Qc2 c5



このAnti-Nimzo-Indian の4... c5 ラインは、何度か指してその都度復習しているのですが、いまだにしっかりと作戦を理解できていません。この試合も手探りで進めていくことにします。

5. a3 Ba5 6. g3 Nc6 7. Bg2 O-O 8. O-O d6 9. e3 e5


以前見たAtalik の試合で、白がd2-d4 と仕掛ける展開があったため、d2-d3 を遅らせてそれを狙います。しかし、Nikcevic の指した手順ではそれが成立しません。

10. b3 h6 11. Bb2 Re8 12. Ne1!?



ここは12. d3 Bf5 13. Nd2 と続けるのが普通だと理解していました。しかし、それにはQd8-Qd7, Bf5-Bh3 からの交換で白が少しつまらないのではないかとゲーム中に考えました。そこでdポーンをまだ突いていないことを利用し、f2-f4 と仕掛けにいくのはありえると考え、ナイトを退きます。

12... Bxc3 13. Qxc3


ここはa1-h8 のダイアゴナルにこだわってクイーンで取りかえしましたが、本譜のビショップの展開を防ぐために、13. Bxc3 と取り、クイーンをc2 にキープしておく選択肢もあったでしょう。

13... Bf5 14. d3 Qd7 15. b4 Bh3 16. b5 Ne7 17. e4



f2-f4 を完全に諦めたわけではないですが、少し作戦変更です。まずはe5 のポーンを固定して、黒からのe5-e4 押し込みのチャンスを消し、Ne1-Ng2 (or Nc2) - Ne3 からd5, f5 の2マスをナイトで睨むアイディアがメインです。その中でチャンスがあれば、fポーンも突こうと思っていました。

17... Ng6 18. Qd2 a6 19. a4 axb5 20. axb5 Rxa1 21. Bxa1 Ra8 22. Bc3 Bxg2 23. Nxg2 Nh7 24. h4


ここは悩む局面で、f2-f4 にこだわる考えもありそうですが、aファイルと取られたままであるのは間違いなくリスクがあるため、安全策でいくならば、Rf1-Ra1 からのルーク交換は必要になります。私は危険を冒さず、確実にg5 のマスを抑えてキング周りを守ります。

24... Qh3 25. Ra1 Rxa1+ 26. Bxa1 Nf6 27. Ne3 Ng4?!



この普通に見えるナイト跳び込み、そしてナイト交換の催促がイマイチでした。27... Nh5!? 28. Qe1 Nxh4 29. gxh4 Nf4 30. Qd1 Qxh4 は黒がピースを捨て、形勢不明です。

28. Nf1!


私もこの局面になる前までは、ずっとナイト交換しかありえないと思っていました。しかし、f1 にナイトを下げる手がぴったりとh2 の受けになっており、こうなるとh3 の身動きできないクイーンは、奇妙な位置です。

28... Nf8


本譜の展開を避けるためには、1手前が無駄だったことを認め、28... Nf6 と下がるべきでした。

29. Qa5!



しばらくキングの守りに手いっぱいで、反撃を作るには時間がかかると思っていましたが、f1 のナイトが全てキングの守りの役目を果たしてくれるため、予想よりずっと早くこの手が成立しました。b7, d6 のどちらを取れても、白には大きなチャンスが生まれます。

29... Nf6 30. Qa8?


しかし、残り時間の少ない中、クイーンの侵入するマスを間違えました。30. Qd8! Qd7 31. Qb8+/- この局面はイメージできていましたが、クイーンをぶつけられて避けるのに1手早めに使わないといけないことを、もったいないと思ってしまいました。実際にはd6 を狙うことで、確実に黒クイーンを退かせておくのが正解です。

30... Qd7?



ここはラッキーでした。全く試合中は気付いていませんでしたが、30... Qg4! 31. Qxb7? Qe2 と進んだ場合、次のNf6-Ng4 でf2 を狙われて困っています。b7 を捨てる選択肢はないと思い込んだのがミスでした。

31. Ne3!+/-


黒クイーンさえ退いてくれれば、白のナイトがプレーに戻る番です。d5, f5 への侵入を狙うナイトは強力です。

31... g6 32. Bc3!



私がこの試合、最も誇るべきポイントがこの場面での構想です。残り時間3分を切るまで考えて、満足のいく作戦をひねり出しました。

32... Kg7 33. Bd2! Ne6


33... N8h7 とする手であれば、本譜の手順は避けられますが、次に行き場のないh7 のマスにナイトを動かすのは躊躇われるでしょう。

34. Nd5! Nxd5?


ここも34... Ne8 が正解ですが、それであれば白は35. Be3 からd4 のマスを受け、じっくりと押していく展開に持っていくことができます。

35. Bxh6+!+-



g7-g6 を突いた瞬間から、この手をイメージしてきました。Qa8-Qh8 がぴったりメイトになるため、当然このビショップを取ることはできません。

35... Kh7 36. exd5


ここはf5 のマスを明け渡さないよう、36. cxd5 と指すのもありでしたが、b5 のポーンが浮くデメリットもあるため、どちらを選ぶか悩むところです。実際にはどちらも白勝勢なのですが、時間がない状況ではどちらかはダメなのではないかと、決断するのにかなり焦ります。

36... Nd4 37. Qf8! f6 38. Be3!



これでh6 のマスを空け、黒の反撃に備えれば、白はさらなる駒得のチャンスです。

38... Nf3+ 39. Kf1 Qh3+ 40. Ke2 Ng1+ 41. Kd2 Qg4


最も大切な40手目がオンリームーブで、安心して持ち時間を30分増やすことができました。黒のパペチュアルチェックを警戒しつつ、確実な勝ちを探します。

42. Qf7+ Kh8 43. Qxf6+



コンピュータの指摘にまさかと思いましたが、ここは黒にパペチュアルチェックがありません。43. Bh6! Qe2+ 44. Kc3 Qe1+ 45. Kc2! (45. Kb3? Qb4+ 46. Kc2 Qa4+=) 45... Qe2+ 46. Kb3 Qxd3+ 47. Ka4 Qxc4+ 48. Ka5+- d3 とc4 の2つのポーンを捨てても、キングの逃げ方さえ間違えなければパペチュアルチェックにはならず、黒キングはメイトになります。

43... Kh7 44. Qe7+ Kh8 45. Qd8+ Kh7 46. Qc7+ Kg8 47. Qb8+ Kf7 48. Qxb7+


少し手間はかかりますが、黒キングが7段目と8段目を往復するしかないことを利用し、b7 を取りにいきます。これで強力なパスポーンができた白は、クイーンをパペチュアルチェックのディフェンスに使えばゴールが見えてきます。

48... Ke8 49. Qc6+ Kf7 50. Qc7+ Kg8 51. Qb8+ Kf7 52. Qa7+ Ke8 53. Qa1



確実だと思ったのは、こうしてクイーンをaファイルに回してから1段目まで退く手です。黒は相性の良いナイトとクイーンでも、d4 をばっちり抑えられている以上、反撃は続きません。

53... Qe2+ 54. Kc3 Nf3 55. b6 Kd7 56. Qa4+!


56. b7 Kc7 57. b8=Q+ Kxb8 58. Qb2+ からクイーンを強制交換しようかとも思いましたが、シンプルな本譜が見つかって良かったです。

56... Ke7 57. b7 1-0



a4 のクイーンがディフェンスに下がれるため、パペチュアルチェックはありません。これで黒にはプロモーションを止めるすべもないため、ここでNikcevic はリザインしました。どうして先月の最終戦、このような勝ち試合にならなかったのかとも思いますが、前回の負けがあるからこそ、今回の勝ちがあるとも言えます。久々のGM戦連勝ですので、ここは素直に喜んで、また次の試合に繋げていこうと思います。

11/17 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Akshat, K (IM, IND, 2399) 1-0
11/18 14:30 Srinath, R (FM, IND, 2357) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/19 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Audi, A (FM, IND, 2347) 1-0
11/20 14:30 Nikolic, N (MNE, 2326) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/21 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Pikula, D (GM, SRB, 2485) 1-0
11/22 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2429) 1-0
11/23 14:30 Drasko, M (GM, MNE, 2434) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
11/24 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Der Manuelian, H (USA, 2271)
11/25 09:30 Plenkovic, Z (IM, SRB, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)

Third Saturday GM November 2018

+3 Pikula, Srinath
+2 Drasko, Kojima, Nikcevic
-1 Akshat
-2 Plenkovic, Nikolic
-3 Der Manuelian
-4 Audi

前日に私に敗れたPikula と、ここまで負けなしのSrinath がともに勝って3つ勝ち越しに。Srinath はライブレイティング2400超えを決め、後はノームをそろえるだけでIM タイトルを獲得します。その実力はすでに十分備わっているでしょう。私は2人のGM とともに、彼らを追いかけます。今日はGM 3連戦の最後で、モンテネグロ代表のDrasko Milan との対戦です!


昨晩の夕飯はリゾットでした。先月は全くなかった海産物が、今月は解禁されています。

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