この日は曇りがちだったのものの、前日の嵐が収まり、ようやく落ち着いて過ごせるかのように思えました。しかし、午前中の早い時間からホテルは停電、wifi が切れたのはまだしも、パソコンの充電が切れては完全にお手上げで、試合の準備ができません。ブログだけ前夜に記事をほぼ書き終えていたのだけが幸運でした。
今大会、スタートダッシュを決めたのはセルビアのGM Pikula です。3連勝の後、4R は短手数ドローで休憩日にしていました。トップを走るPikula に好調の白を引けましたので、ここは大事な勝負のラウンドだと思い、試合に臨みます。
先月のSindarov とのゲームでは、5... Nxc3 6. bxc3 g6 と進み、Grunfeld 型になりましたが、5... e6 であれば、IQP 型になることが予想されます。しかし、Pikula はベテランのCaro-Kann プレーヤーですので、純粋なPanov Botvinnik になることを避け、d2-d4 は少し遅らせることにします。6. Nxd5 Qxd5 7. b3 Be7 8. Bb2 O-O 9. Bc4 はIQP を避けるEnglish の面影が残る指し方で、こちらも面白そうです。
せっかくセンターに跳べたナイトを戻すのは不自然にも見えますが、白のキングサイドアタックに対処するためにIQP ポジションではよく指される手です。ただし、私にとってはよく知った形になるため、ここで退いてくれたのはラッキーでした。
この局面はQueen's Gambit Accepted から派生することが最も多いようです。1. d4 d5 2. c4 dxc4 3. Nf3 Nf6 4. e3 e6 5. Bxc4 c5 6. 0-0 Nc6 7. Qe2 cxd4 8. Rd1 Be7 9. exd4 0-0 10. Nc3 くらいの手順ですかね。これは私がかつて黒番で得意としていたSlav の変化に似ていますが、そのラインでは白が余計なa2-a4 を挟んでいます。このaポーン伸ばしはb4 のマスを弱め、黒にNc6-Nb4-Nbd5 のチャンスを与えてしまうために、白にとってマイナスが大きいと考えています。一昨年、ラスベガスでGM Friedel に敗れたゲームを思い出しながら手を進めます。
この手はa2-a4 が無くともやってくるかなと思っていました。しかし、試合後にデータベースを調べると11... Na5 12. Bd3 b6 という展開のほうが多いことが分かりました。a5 の位置のナイトは不自然にも思えますが、白マスビショップを素早く展開しつつ、d5 のアウトポストを抑えるようが良いということでしょう。
ナイトをd5 に組み替えると、白のd4-d5 をストップできるのでその点では安全ですが、代わりにe5 のコントロールを失うため、白にNf3-Ne5 を許してしまいます。これでNe5-Nc6 の狙いができると、黒はb7-b6, Bc8-Bb7 ができなくなりますが、本譜の手は軽率すぎて白があっという間に駒得します。13... Nxc3 14. bxc3 Nd5 15. Bd2 が正しい手ですが、これでも白はd4 が弱くなくなり、センターポーンに厚みができたので、タイミングを見てc3-c4 と伸ばせば優勢でしょう。
13... Bd7 はおかしいと確信があったので、ここで時間を使ってベストの手を探します。14. Bxf6?! Nxc3! (14... Bxf6? 15. Bxd5 exd5 16. Nxd5) (14... Nxf6? 15. d5! exd5 16. Nxd5+-) 15. bxc3 Bxf6 16. d5 Bxe5 17. dxe6 (17. Qxe5 Qa5=) 17... Bxh2+! この返し技があるため、さきにビショップナイト交換をしてのd4-d5 はそこまでパワーがありません。納得するまで考え、単純にポーンを取りにいくことにしました。
14... exd5 15. Bxf6 dxc4 16. Nxd7! Bxf6 17. Nxf8+/- は白がエクスチェンジアップになるため、黒は被害を最小限に抑えるために本譜を選ぶしかありません。
ここも15... exd5? 16. Nxd7! で白は大きく駒得です。
b7 のポーンをかすめ取った白はひとまず満足ですが、ここからどう優位を広げるか考えます。17. Bc6 から白マスビショップを交換することも考えましたが、h7 への攻撃チャンスも捨てがたいので、一度e4 へ退くことにします。
h7 への攻撃チャンスが消え、f6 のビショップが浮いたところで白マスビショップ交換のアイディアに戻ります。ダブルビショップは基本的に強力ですが、2つのビショップが協力して同じ色のマスを抑えられないという弱点があります。それに対して白のビショップとナイト、さらにはc1 に回ったルークは、c6 の重要なマスを協力してコントロールしています。
白マスビショップを退かせてルークの連携を切ったことで満足し、こちらも再びc6 のマスを空けて、ナイトやルークの侵入を見せておきます。
Pikula はこの試合、ベテランGM らしからぬミスを繰り返しました。これは簡単なタクティクスで白がさらに駒得を広げられます。
単純なダブルアタックでエクスチェンジを取ることに成功し、アドバンテージを拡大しました。
キング前のポーンは取られてしまいましたが、こうしてルークを交換すれば黒の反撃のチャンスは相当限定されます。クイーンがh4, h5 にくることさえ警戒すれば、問題ないでしょう。
5段目を防ぐ分かりやすいアイディアで、弱点だったポーンを消し、ルークをアクティブにします。この先もフィニッシュまでよく読めていました。
a2 を取らせてもこの手で黒は厳しくなります。34... Kg8 35. Re1!+- はe8 へのルークの侵入を防ぐことができません。
ここも突きたくないポーンを突かせて黒キングの守りを弱めさせます。35... Kg7 36. Qc3++- ならば、ビショップを次に取って勝ちです。
6段目が空いたため、ビショップへの攻撃とf6 への侵入を同時に見せればあと一息です。
36... Qxf2 37. Qxc7 Qh4+ 38. Qh2+- はディフェンスが間に合って白の勝ちです。
Rc1-Rc6 とビショップ取りの狙いが同時に生まれ、黒はリザインするしかありません。最後まで手を緩めずに、よく指せたと思います。先月のKotronias戦に続き、2500近いGM からの勝利はとても嬉しいです!
11/17 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Akshat, K (IM, IND, 2399) 1-0
11/18 14:30 Srinath, R (FM, IND, 2357) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/19 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Audi, A (FM, IND, 2347) 1-0
11/20 14:30 Nikolic, N (MNE, 2326) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/21 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Pikula, D (GM, SRB, 2485) 1-0
11/22 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2429)
11/23 14:30 Drasko, M (GM, MNE, 2434) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
11/24 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Der Manuelian, H (USA, 2271)
11/25 09:30 Plenkovic, Z (IM, SRB, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
Third Saturday GM November 2018
+3 Nikcevic
+2 Pikula, Drasko, Srinath
+1 Kojima
+-0 Akshat
-1 Plenkovic
-2 Nikolic
-3 Audi
-4 Der Manuelian
トップにいたPikula を1つ下に落とし、今日は先月敗れたNikcevic とのリベンジマッチです。好調の白が続きますので、ここでまた星を伸ばしたいですね。
昨晩の夕飯のメインは、野菜と牛肉をソースに絡め、チーズを乗せて焼いた一品でした。
夜の海は吸い込まれそう。海沿いのレストランの多くは、おそらく観光シーズンである夏のみの営業なのでしょう。食事をとるレストラン以外はひっそりと静まり返っています。対岸の明かりの付近は、もう少し色々なお店がありそうですね。
今大会、スタートダッシュを決めたのはセルビアのGM Pikula です。3連勝の後、4R は短手数ドローで休憩日にしていました。トップを走るPikula に好調の白を引けましたので、ここは大事な勝負のラウンドだと思い、試合に臨みます。
Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Pikula, D (GM, SRB, 2485)
Third Saturday GM November 2018 (5)
1. Nf3 Nf6 2. c4 c5 3. Nc3 d5 4. cxd5 Nxd5 5. e3 e6 6. Bc4!?
Third Saturday GM November 2018 (5)
先月のSindarov とのゲームでは、5... Nxc3 6. bxc3 g6 と進み、Grunfeld 型になりましたが、5... e6 であれば、IQP 型になることが予想されます。しかし、Pikula はベテランのCaro-Kann プレーヤーですので、純粋なPanov Botvinnik になることを避け、d2-d4 は少し遅らせることにします。6. Nxd5 Qxd5 7. b3 Be7 8. Bb2 O-O 9. Bc4 はIQP を避けるEnglish の面影が残る指し方で、こちらも面白そうです。
6... Nc6 7. O-O Be7 8. d4 Nf6
せっかくセンターに跳べたナイトを戻すのは不自然にも見えますが、白のキングサイドアタックに対処するためにIQP ポジションではよく指される手です。ただし、私にとってはよく知った形になるため、ここで退いてくれたのはラッキーでした。
9. Qe2 cxd4 10. exd4 O-O 11. Rd1
この局面はQueen's Gambit Accepted から派生することが最も多いようです。1. d4 d5 2. c4 dxc4 3. Nf3 Nf6 4. e3 e6 5. Bxc4 c5 6. 0-0 Nc6 7. Qe2 cxd4 8. Rd1 Be7 9. exd4 0-0 10. Nc3 くらいの手順ですかね。これは私がかつて黒番で得意としていたSlav の変化に似ていますが、そのラインでは白が余計なa2-a4 を挟んでいます。このaポーン伸ばしはb4 のマスを弱め、黒にNc6-Nb4-Nbd5 のチャンスを与えてしまうために、白にとってマイナスが大きいと考えています。一昨年、ラスベガスでGM Friedel に敗れたゲームを思い出しながら手を進めます。
11... Nb4
この手はa2-a4 が無くともやってくるかなと思っていました。しかし、試合後にデータベースを調べると11... Na5 12. Bd3 b6 という展開のほうが多いことが分かりました。a5 の位置のナイトは不自然にも思えますが、白マスビショップを素早く展開しつつ、d5 のアウトポストを抑えるようが良いということでしょう。
12. Bg5 Nbd5 13. Ne5 Bd7?
ナイトをd5 に組み替えると、白のd4-d5 をストップできるのでその点では安全ですが、代わりにe5 のコントロールを失うため、白にNf3-Ne5 を許してしまいます。これでNe5-Nc6 の狙いができると、黒はb7-b6, Bc8-Bb7 ができなくなりますが、本譜の手は軽率すぎて白があっという間に駒得します。13... Nxc3 14. bxc3 Nd5 15. Bd2 が正しい手ですが、これでも白はd4 が弱くなくなり、センターポーンに厚みができたので、タイミングを見てc3-c4 と伸ばせば優勢でしょう。
14. Nxd5!
13... Bd7 はおかしいと確信があったので、ここで時間を使ってベストの手を探します。14. Bxf6?! Nxc3! (14... Bxf6? 15. Bxd5 exd5 16. Nxd5) (14... Nxf6? 15. d5! exd5 16. Nxd5+-) 15. bxc3 Bxf6 16. d5 Bxe5 17. dxe6 (17. Qxe5 Qa5=) 17... Bxh2+! この返し技があるため、さきにビショップナイト交換をしてのd4-d5 はそこまでパワーがありません。納得するまで考え、単純にポーンを取りにいくことにしました。
14... Nxd5
14... exd5 15. Bxf6 dxc4 16. Nxd7! Bxf6 17. Nxf8+/- は白がエクスチェンジアップになるため、黒は被害を最小限に抑えるために本譜を選ぶしかありません。
15. Bxd5 Bxg5
ここも15... exd5? 16. Nxd7! で白は大きく駒得です。
16. Bxb7 Rb8 17. Be4
b7 のポーンをかすめ取った白はひとまず満足ですが、ここからどう優位を広げるか考えます。17. Bc6 から白マスビショップを交換することも考えましたが、h7 への攻撃チャンスも捨てがたいので、一度e4 へ退くことにします。
17... Bf6 18. Rac1 g6 19. Bc6!
h7 への攻撃チャンスが消え、f6 のビショップが浮いたところで白マスビショップ交換のアイディアに戻ります。ダブルビショップは基本的に強力ですが、2つのビショップが協力して同じ色のマスを抑えられないという弱点があります。それに対して白のビショップとナイト、さらにはc1 に回ったルークは、c6 の重要なマスを協力してコントロールしています。
19... Bc8 20. b3 Qd6 21. Bf3
白マスビショップを退かせてルークの連携を切ったことで満足し、こちらも再びc6 のマスを空けて、ナイトやルークの侵入を見せておきます。
21... Ba6 22. Qe3 Bb7?
Pikula はこの試合、ベテランGM らしからぬミスを繰り返しました。これは簡単なタクティクスで白がさらに駒得を広げられます。
23. Bxb7 Rxb7 24. Qf3!+-
単純なダブルアタックでエクスチェンジを取ることに成功し、アドバンテージを拡大しました。
24... Bxe5 25. Qxb7 Bxh2+ 26. Kh1 Bf4 27. Rc8
キング前のポーンは取られてしまいましたが、こうしてルークを交換すれば黒の反撃のチャンスは相当限定されます。クイーンがh4, h5 にくることさえ警戒すれば、問題ないでしょう。
27... Rxc8 28. Qxc8+ Kg7 29. Qc5 Qa6 30. Qc2 Qa5 31. d5!
5段目を防ぐ分かりやすいアイディアで、弱点だったポーンを消し、ルークをアクティブにします。この先もフィニッシュまでよく読めていました。
31... exd5 32. Qd3 Bc7 33. Qxd5! Qxa2 34. Qd4+!
a2 を取らせてもこの手で黒は厳しくなります。34... Kg8 35. Re1!+- はe8 へのルークの侵入を防ぐことができません。
34... Kh6 35. Qe3+! g5
ここも突きたくないポーンを突かせて黒キングの守りを弱めさせます。35... Kg7 36. Qc3++- ならば、ビショップを次に取って勝ちです。
36. Qc3!
6段目が空いたため、ビショップへの攻撃とf6 への侵入を同時に見せればあと一息です。
36... Qe2
36... Qxf2 37. Qxc7 Qh4+ 38. Qh2+- はディフェンスが間に合って白の勝ちです。
37. Qf6+ Kh5 38. Qxf7+ Kh6 39. Rc1! 1-0
Rc1-Rc6 とビショップ取りの狙いが同時に生まれ、黒はリザインするしかありません。最後まで手を緩めずに、よく指せたと思います。先月のKotronias戦に続き、2500近いGM からの勝利はとても嬉しいです!
11/17 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Akshat, K (IM, IND, 2399) 1-0
11/18 14:30 Srinath, R (FM, IND, 2357) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/19 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Audi, A (FM, IND, 2347) 1-0
11/20 14:30 Nikolic, N (MNE, 2326) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/21 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Pikula, D (GM, SRB, 2485) 1-0
11/22 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2429)
11/23 14:30 Drasko, M (GM, MNE, 2434) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
11/24 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Der Manuelian, H (USA, 2271)
11/25 09:30 Plenkovic, Z (IM, SRB, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
Third Saturday GM November 2018
+3 Nikcevic
+2 Pikula, Drasko, Srinath
+1 Kojima
+-0 Akshat
-1 Plenkovic
-2 Nikolic
-3 Audi
-4 Der Manuelian
トップにいたPikula を1つ下に落とし、今日は先月敗れたNikcevic とのリベンジマッチです。好調の白が続きますので、ここでまた星を伸ばしたいですね。
昨晩の夕飯のメインは、野菜と牛肉をソースに絡め、チーズを乗せて焼いた一品でした。
夜の海は吸い込まれそう。海沿いのレストランの多くは、おそらく観光シーズンである夏のみの営業なのでしょう。食事をとるレストラン以外はひっそりと静まり返っています。対岸の明かりの付近は、もう少し色々なお店がありそうですね。
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