5,6R の試合はまとめての更新です。5R開始直前、アービターから最終戦を8日の10時からにしてほしいと言われました。もともと最終戦の相手のAczel からは、試合を14時ではなく2時間半遅れの16時半スタートにしてほしいと頼まれていたのですが、5日目になってアービターがそれは遅すぎると判断したのです。8日は本来であれば1回目の休憩日で、私としてはゆっくり後半戦に備えたかったのですが、最終日の遅い時間はダメ、Aczel の予定で他の日は全てダメとなれば、合意するしかありません。ただし、もっと早く提案してほしかったです。
Audi, A (FM, IND, 2347) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
First Saturday GM November 2018 (5)
1. e4 c6 2. Nf3 d5 3. Nc3
First Saturday GM November 2018 (5)
彼のこれまでのCaro-Kann 対策は、3. exd5 cxd5 4. Ne5 だったため、これは意表を突かれました。とはいえ、Two Knights Variation は私も試合経験が豊富にあります。
3... Bg4 4. d4!?
h2-h3 を遅らせてくる変化は珍しいです。これであれば、黒はビショップをf3 で交換せずにすみます。
4... e6 5. h3 Bh5 6. g4 Bg6 7. exd5 exd5 8. Qe2+
しかし、この変化がスペインのVallejo Pons が成功し、白がやや良い変化だとは知りませんでした。French Exchange のポーンストラクチャーで、白マスビショップを出せた黒が満足そうにも見えますが、まだキングサイドのピースをどう出すかという課題が残っています。
8... Qe7 9. Be3 Nd7 10. O-O-O O-O-O
ここは先に10... Ngf6 もありえますが、少し白のNf3-Nh4 の可能性を遅らせようと考えました。
11. Ne5 Ngf6??
序盤で時間も豊富にあるのに、ブリッツでもしないようなミスをGM トーナメントでしてしまいました。白のナイト跳びこみの狙いは、あくまでf2-f4-f5 であり、その前にe4 を抑えておくのがシンプルだと思い込んでいました。
12. Nxc6!+-
この手で実質的にゲームは終わりました。a6 でのチェックのチャンスは頭にあったにもかかわらず、なぜこのナイトサクリファイスをもっと警戒しなかったのでしょうか。
12... Qe6
12... bxc6 13. Qa6+ Kb8 14. Bf4+ Ka8 15. Qxc6# ナイトを取れば、ぴったりメイトです。
13. Nxd8 Kxd8 14. f4 Be4 15. f5 Qd6 16. Bg2 Bxg2 17. Qxg2 Nb6
残された私のチャンスはb2 への反撃しかありません。しかし、相手もそれは百も承知で、きちんと守られてしまいます。
18. Qh2 Qc6 19. Rd3 Bd6 20. Bf4 Bb4 21. a3 Be7 22. Re1 Nc4 23. g5 Nd7
23... Nh5 24. Qe2 Nxf4 25. Qxe7+ では勝負にならないと思いましたが、本譜も読み抜けがありました。
24. Bc7+! Qxc7 25. Qxc7+ Kxc7 26. Rxe7 1-0
この日は本当にダメでした。早めに試合が終わったので、急遽翌日に変更になったAczel戦の対策をします。
そして翌朝、いつもと違う時間のバスは、途中でいつもとは違うルートを進み始めました(笑) 慌ててバスの運転手に頼んで降ろしてもらい、Hotel Berlin までの道のりを地図アプリで確認し、会場へと歩きで向かいます。席に到着したのは、試合開始のわずか2分前でした。
Aczel, G (GM, HUN, 2549) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
First Saturday GM November 2018 (6)
1. d4 d5 2. c4 c6 3. cxd5 cxd5 4. Bf4 Nf6 5. e3 Nc6 6. Bd3!?
First Saturday GM November 2018 (6)
5年前の対戦では、Nf3, e3 セットアップでしたが、Aczel はここ数年、Slav Exchange をメインで使っているようです。色々と試合を見て準備してきたつもりでしたが、ナイトよりも先に2つのビショップを展開するというムーブオーダーは私の常識から外れており、完全に予想外でした。確かにこれならば、黒からのいくつかの変化を避けることができます。
6... Bg4
色々と考えてこう指すことにしました。6... a6 7. Nc3 Bg4 の変化は何年も前に指したことがありますが、今回は全く用意しておらず、あまり記憶にもありませんでした。
7. f3 Bd7
7. Qb3 Na5 8. Qa4+ Bd7 9. Qc2 e6 10. Nc3 ならば、これまで何回も指してきたラインになるのでこれを期待しましたが、白はfポーンを躊躇なく着きました。また、白からのQd1-Qb3 を警戒してビショップをd7 へと退きましたが、7... Bh5 8. Qb3 Qd7 とすることもできたようです。
8. Nc3 e6 9. Nge2 a6 10. g4
キングサイドでのプレーの幅が広がり、勝負しやすいのがf2-f3 の特徴です。Nf6-Nh5 からのビショップナイト交換の狙いも防いでいます。
10... Rc8 11. Ng3 Bb4!?
Japan League でのSamuelくんとの試合を見返し、さらには最新のゲームも見てこのビショップナイト交換のアイディアをこの試合のために用意してきました。実際には想定していたラインと違いますが、黒のピースの位置は全て同じで、このアイディアも使えるだろうと考えました。
12. Rc1 Na5 13. g5 Ng8 14. Kf2
Aczel はかなり時間を使ってこの3手の流れを選びました。黒はNg3-Nh5, Bf4-Be5 のタイミングと威力を計算しつつ、クイーンサイド中心でまずはプレーします。
14... Nc4 15. Qe2 Ne7
Bd3-Bxc4 からe5 のマスのコントロールを消されても、Ne7-Nf5 がg7 のディフェンスにピッタリなることに気付き、Ng3-Nh5, Bf4-Be5 の組み合わせを恐れずに、ナイトを組み替えに行きます。
16. a3 Bd6
16... Nxa3 17. bxa3 Bxc3 18. Nh5! だと、今度は白の白マスビショップが残っているためにNe7-Nf5 が働かず、黒は守りが厳しくなります。そのため、ここはビショップを退いて交換する1手です。
17. Bxd6 Nxd6 18. h4 O-O 19. f4 f5
まだ持ち時間の増える40手まで半分しかきていませんが、お互いに序盤でかなりの時間とエネルギーを使いました。白はキングサイドで多少攻撃のチャンスがありそうですが、Kotronias戦と違ってキングが多少不安定です。
20. gxf6 Rxf6 21. Rcg1 Be8 22. h5 Nef5
多少キング前を弱めましたが、その代わりにfファイルを開くことでf5 のコントロールを得ました。これならば黒は十分に戦えます。
23. Nxf5 Nxf5 24. Qg4 Rc7 25. Bxf5 Rxf5 26. h6 g5!?
最初は26... Bg6 と指せば、白マスビショップをb1-h7 のダイアゴナルで使うことができ、もはやバッドビショップではなく十分だろうと考えていました。しかし、時間ぎりぎりまで考えて本譜を指してみたいという誘惑に乗ることにします。ポーンを捌かなければ、将来的に白のhポーンをターゲットにできる狙いもあります。
27. Ke1 Bg6 28. fxg5 Rcf7 29. Rf1 Qxg5 30. Qxg5 Rxg5 31. Rh2
こうしてビショップvs. ナイトのエンドゲームになりました。黒のビショップはセンターのポーンと色が同じで理想的ではありませんが、それでもナイトにクイーンサイドさえ襲われることが無ければ、ビショップの強みを十分に発揮できる可能性はあります。
31... Rxf1+ 32. Kxf1 Kf7 33. Na4 Ke7 34. Ke2 Be8!
まずはナイトを追い返し、b7 を守っておきます。b5 でのチェックがダブルアタックになるため、当然ナイトは潜り込んで黒のポーンを取ることはできません。
35. Nc3 Kf6 36. Kd2 Rg4
ここは少し考えすぎて時間が落ちるかと思いました。とりあえずNc3-Ne2-Nf4 を許しても、ルークを無難な位置に置いておきます。
37. Ne2 Bg6 38. Nf4 Be4 39. Rf2 Ke7 40. Rh2 Kf6 41. Rf2 Ke7 42. Rf1!?
時間が増えてさぁこれからという局面で、Aczel の指し方は私の理解を超えました。hポーンをどうするつもりなのかと思いましたが、そこを守る負担を抱えるよりもいっそ捨てるという判断です。
42... b6 43. Kc3 Rh4
試合後にKotronias から、hポーンを取りにいく間に反撃を作られてはドローなのではないかと言われましたが、代わりに黒ができる有効なプランもないと思います。
44. Rg1 Rxh6 45. Rg7+ Kd6 46. b4
なるほど。まずは黒のa6-a5 を止めておき、それからa6 をルークで取りにいく作戦です。ここで私もかなり時間を使い、e3 を取りにいけないか、c2 でチェックした際に何かないか、慎重に考えました。しかし結論としてはこれらは上手くいかず、hポーンを伸ばすだけが黒の有効な作戦だと判断します。ただしその前に最低限、ポーンを守っておきます。
46... Kc6 47. a4 Bf5 48. Ra7 Rh1 49. Rxa6 Kb7 50. b5 h5 51. a5
ここでAczel からドローオファーがきて驚きました。このエンドゲームをドローと読み切れているのかもしれませんが、当然まだ難しいのは白です。私が受ける理由はないので続けます。
51... bxa5 52. Nxe6 Bxe6 53. Rxe6 h4 54. Re7+!
この手を指されて、やはりドローだと理解しました。54. Rh6? h3 55. Kb2 h2 は、黒がaポーンを伸ばした際に最終的に白がツークツワンクとなり、bポーンが落ちます。そのうえでキングが侵入すれば楽に黒勝ちなので、白は数手猶予があることを利用して、本譜のようにdポーンをアタックすのが正解です。
54... Kc8
手持ちのエンジンも意見が割れましたが、最終的には一番強いKomodo で、54... Kb6 55. Re6+ Kxb5 56. Rd6 Rc1+ 57. Kb2 Rg1 58. Rxd5+ Kb4 59. Rh5 Rg2+ 60. Kc1 でもドローだと判明しています。しかし、こうしてd5 を取らせてもキングが侵入して勝負するアイディアはゲーム中に考えなかったため、参考になりました
55. Re8+ Kd7 56. Re5 Kd6 57. Rh5
57. e4 dxe4 58. Rxe4 h3 59. Rh4= としてセンターのポーンを捌いても、黒はa,hファイルのポーンでは勝てません。
57... h3 58. Rh7 Rb1 1/2-1/2
こうしてエキサイティングなAczel との試合はドローに終わりました。準備不足で負けていたらアービターを恨んでいましたが、試合内容も良かったので前日の落ち込んだ気持ちが少し晴れました。しかし、まだ2つ負け越し状態であることは変わっていないので、残り3試合で少しでも取り戻したいですね。
11/03 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Todorovic, M (GM, SRB, 2435) 0-1
11/04 Kotronias, V (GM, GRE, 2469) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/05 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Srinath Rao, S.V (FM, IND, 2357) 1/2-1/2
11/06 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Krstulovic, A (FM, HUN, 2309) 1-0
11/07 Audi, A (FM, IND, 2347) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/08 Aczel, G (GM, HUN, 2549) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1/2-1/2
11/09 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nguyen, V T (CM, VIE, 2343)
11/10 Ghannoum, M (FM, CAN, 2280) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
11/11 Rest Day
11/12 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Balint, V (HUN, 2299)
First Saturday GM November 2018
+4 Aczel
+3 Kotronias
+2 Todorovic
+1 Srinath
+-0 Ghannoum
-1 Audi
-2 Kojima, Nguyen, Krstulovic
-3 Balint
昨日は休日返上で試合をこなしているペアリングがいくつかありました。しかし相変わらずGM勢が強すぎます...
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