2012/07/29

CAISSA 2012 July 9th round - Smash Opponent King -

7月のCAISSA も終盤の9R を迎えました。今月3回目、白では初めての対戦となるZhu Yanshen との試合は、思惑とは正反対に、相手キングに猛攻を仕掛けるすさまじいゲーム展開になりました。

Kojima, S (FM, JPN, 2290) - Zhu, Y (CHN, 2176)
CAISSA 2012 July IM (9)

1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 Be7 5. Bf4!?



Dresden Olympiad でGM Baburin に敗れて以来、封印し続けてきたQGD Bf4 Variation をここで使います。2008年には私のメインレパートリーでしたが、不幸なことに出番はほとんどありませんでした。

5... O-O 6. e3 b6!?


私の記憶が正しければ、Zhu Yanshen はSarosi との試合で、6...c6、もしくは6...Nbd7 と指しており、私の準備もそちらのみでした。6...b6 のゲームはPelletier のゲームを一つ見ただけです。

7. Rc1 Bb7 8. cxd5 Nxd5 9. Nxd5 Qxd5



cファイルが開く展開は白に好ましいかと思っていましたが、黒は早々にクイーンをアクティブに使ってきます。

10. a3 c5 11. Bc4 Qh5 12. Be2 Qg6 13. O-O


変な形にならないことを心がけてここまで指しましたが、どうやら実戦でも例があるようです。次の手はナイトをどちらに出すかと待っていましたが、予想外の一手が来ます。

13... cxd4?



一目見て、ルークのダブルアタックにどう対応してくるのか分かりませんでした。しばらく考えても分からないので、実際に指してみることに。

14. Rc7! Be4


なるほど。これならば次のd4-d3 がビショップ取りのスレットになるので、黒は難を逃れているように見えます。

15. Rxe7


色々迷いましたが、異色ビショップにしても、7段目のルークで多少チャンスを作れるだろうと思いました。

15... d3 16. Bxd3 Bxd3 17. Re1?!



この手が緩手でした。ゲーム中と検討では全く気がつきませんでしたが、試合後にコンピュータで解析を行ったところ、思いがけない変化が出てきました。

17. Ne5! (私も試合中、当然のように考えましたが、e7 の浮いたルークをどうすれば良いのかが分かりませんでした。) 17... Qf6 18. Rxf7! (これがポイントとなるエクスチェンジサクリファイスです。)18... Rxf7 19. Qxd3 Rf8


Analysis Diagram

こうして見ると、確かに白のピースはセンターを支配しており、クイーンサイドのピースが展開できない黒は苦しそうに見えます。エクスチェンジの代償は十分にありそうです。20. Qe4 Na6 21. Qc4 Nb8 22. Rd1+/-

17... Be4 18. Bg3!?


g2 をサポートして、ナイトを動かせるようにしたつもりでしたが、次の手を見落としていました。

18... Qf6


7段目に入ったルークが狙われ、f3、b2 もアタックされています。少し混乱しましたが、冷静に対処できました。

19. Qd6!? Bxf3 20. gxf3 Na6


彼はポーンを取る前に、ピースの展開を完了させました。しかし、a6 のナイトは良い位置とは言えず、白から抑え込むことができます。

21. Be5!? Qxf3 22. b4!



白はf3 のポーンを犠牲にすることで、bポーンを進める1テンポを稼ぎ、a6 のナイトの行き場を奪うことに成功しました。7段目のルークと、ナイトよりも明らかに強力なビショップの働きにより、1ポーンの代償はあると考えていました。

22... Qg4+ 23. Bg3 Qc4 24. Rd1!


黒はクイーンだけでは局面を進展させられませんが、a7 とf7 がアタックされている以上、ポーンを返さずに、新たなピースを持ってくることは簡単ではありません。黒がクイーンで手を作ろうとする間、白はシンプルにオープンファイルを取り、ルークの活用を図ります。

24... h6


この手を見て、おやっ?と思いました。バックランクを外すのは自然なアイディアですが、逆にキング前のディフェンスを緩めてしまいます。私は当初、25.Qd3!? と安全にクイーンをぶつけるつもりでしたが、面白いアタックを思い付き、そちらを試してみることにしました。

25. Rd4!?



ルークを4段目に振り、黒キングにダイレクトアタックを仕掛けます。a3 のポーンはさほど重要な役割を果たしているわけではなく、捨てても問題ないと判断しました。

25... Qc1+ 26. Kg2 Qxa3


彼にしては珍しく、時間を使ってポーンを取る決断をしました。私は25.Rd4 の時点で、この変化は早々に勝てるだろうと楽観視していましたが、白が正着を見つけるのはそんなに簡単ではありません。

27. Rg4 Qb3?



試合直後は分かりませんでしたが、どうもこれが敗着であるというのが、コンピュータの指摘です。とは言え、かなり強力なエンジンでも本譜通りに進めてみないと、白勝勢にはなりませんでした。

本譜の代わりに27... Qa2 28. e4!? Qe2! (この手でルークをアタックできるのが、本譜との最大の違いです。) 29. Qxe6!? Qf3+! 30. Kxf3 fxe6+ 31. Kg2+/= ならば、確かに白の攻めは決定的ではありません。

28. e4!


黒の狙いである28...Qd5+ を消すことで、クイーンを盤上にキープし、ダイレクトアタックのチャンスを残します。28. Rxg7+ Kxg7 29. Qd4+ Kg6 30. Qg4+ Kh7 31. Qe4+= ならばドローですが、ここはそれ以上を求めるべきポジションです。

28... g5 29. Qd4!+-



残り時間20分を切るまで考え、この手でエクスチェンジアップすることを読み切りました。しかし、試合中は気付きませんでしたが、もう一つ別の勝ち筋もあったようです。

29. Qe5?? f6-+ これでは白の攻めが完全に止まり、大失敗です。
29. Rxg5+! hxg5 30. Qd2 Kh7 31. Qxg5+- いきなりルークを捨てるのがもう一つの正解で、こちらのダイレクトアタックも決定的です。

29... e5


ここは予想通りの手でした。すでに黒には他に良い受けがありません。

29... Nxb4 30. Qf6 Nd3 31. Qxh6+-
29... Rfe8 30. Qf6 Rxe7 31. Be5+-


30. Qxe5 f6 31. Qf5 Rf7 32. Qg6+ Kf8 33. Bd6!



この手が勝ちを決める、最も重要な一手です。すぐにルークを交換してしまっては、クイーンがディフェンスに戻ってきてしまいます。

33... Rxe7 34. Qxf6+ Kg8


34... Qf7 35. Bxe7+ Ke8 36. Qc6+ Kxe7 37. Qxa8+- このエクスチェンジアップは、白にとって楽勝です。

35. Bxe7 Kh7 36. Qf5+ 1-0


最後は、36. Qf5+ Kg7 37. Bxg5 からメイトになります。1ポーンが落ちた時はどうなる事かと思いましたが、どうすれば代償が十分かをしっかりと考えることができ、実にうまく指せたと自画自賛のゲームです。


また、注目の最終戦、Zhu Yanshen - Xu Yi は、白のブランダーであっさりと決着です。 これでZhu Yanshen は1勝8敗1ドロー、Xu Yi は5勝5ドローでのフィニッシュとなりました。Xu Yi は2つ目のIM ノーム獲得です。おめでとう!


そして昨日の試合後には、Xu Yi の母親とGupta の母親から、それぞれプレゼントを貰いました。Xu Yi ママからは、左の吊るす飾りを、Gupta ママからは右のインド菓子を貰いました。対戦し、交流した相手から(相手の身内から)こういった贈り物をされるのは、大変嬉しいことです。彼らのように、同じノームという目標を目指して切磋琢磨したライバルたちのことは、10年経っても忘れないでしょう。Xu Yi はまだハンガリーに残るでしょうが、Gupta は今日、インドに帰国するそうなので、今度はアジアのトーナメントで会えることを期待しています!

それではこれから、Sarosi との最終戦です。久々にレイティングを+ にして、トーナメントを終えられるよう、何とか勝利をもぎ取りたいと思います。

2 件のコメント:

hidepyon さんのコメント...

おめでとうございます^^

Shinya_Kojima さんのコメント...

コメントありがとうございます!
最終試合の記事も、後ほどアップします。

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