2018/12/03

First Saturday GM December 2018 R2


Hotel Berlin に移り、試合会場までの移動時間が無くなったのは良いのですが、代わりに問題となるのが食事場所です。ホテルの周辺は本当に食べるところが無く、初日の夜は困り果てました。ようやく2日目の昼から探索範囲を広げ、バスで1つ先のショッピングモールに、Burger King、Subway、中華料理、ケバブ屋などを発見しました。日曜日も含めて7日間、深夜まで営業しているのも助かります。

2日目の相手はモンテネグロでも試合をした、インドのAkshat です。先月は白で勝つことができ、その際は要所での判断が甘いと感じましたが、結局トーナメントを通してしっかりと勝ち越していました。黒で当たるこの大会では、ポイントを取るのは一苦労です。

Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
First Saturday GM December 2018 (2)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. cxd5 cxd5 4. Bf4 Nf6 5. e3 Nc6 6. Bd3



先月のAczel戦に続き、再びSlav Exchange のナイトを遅らせる変化です。ばっちり調べられていると思ったので、少し手を変えようと思いましたが、相手から先に外してきました。

6... Bg4 7. Qb3 Na5


Bf1-Bd3 ではなく、Nb1-Nc3 ならばこのナイト跳びが一般的ですが、ここは7... Qd7 8. Nd2 e6 9. Ngf3 と進む変化がメインのようです。e3 のポーンがc3 にあれば、完全にCaro-Kann Exchange で出てくるピースの配置です。

8. Qa4+ Bd7 9. Qd1!?



3手かけてクイーンがd1 に戻ったのは驚きでしたが、e2 にいくのであれば、d1-e2 もc2-e2 も手数は変わりません。9. Qc2 e6 10. Rc8 であれば用意していた変化に手順前後しますが、d1 にクイーンを退くことで様々なタイミングのNf6-Nh5 もストップしているのが、彼のアイディアだと思います。

9... e6 10. Nf3 Be7


本来であれば、Bf8-Bb4 からc3 のナイトを崩したいところですが、白がクイーンサイドのナイトを展開を遅らせているために、このアイディアは使えません。ビショップはe7 で我慢します。

11. O-O O-O 12. Ne5 Be8



このバッドビショップをわざわざキープするために、1手かけてe8 に退き、ルークの連携を断つ手が果たして良いのかどうか、好みが分かれるところだと思います。もちろん黒は、ナイトビショップ交換を受け入れてもさほど悪くないですが、Be8-Bb5 から白マスビショップ同士の交換がベストな安全策、さらにはfポーン突きからe8-h5 のダイアゴナルで使うアイディアもありえます。Bd7-Be8 が良いかどうかは、こうした組み直しができるかどうか、つまりはこの後の展開次第といったところでしょう。

13. Nd2


指されてみてなるほどと思いました。Slav Exchange ではc3 にナイトが出るのが常識ですが、ここまでくればd2 でもおかしくありません。f3 に出てセンターのナイトをサポートするのは分かりやすいですが、もう1つ典型的なNd2-Nb3-Nc5 も有効なアイディアです。

13... Rc8 14. Qe2


試合後にAkshat に、Qd1-Qf3 を恐れていたと伝えましたが、これには14. Qf3 Qb6! 15. Rab1 Bb5!= このビショップ交換がありました。こうして白マスビショップを消せれば白のアタックチャンスは激減し、黒は満足に指せるでしょう。

14... Nd7 15. Rfc1 Nxe5 16. Rxc8 Qxc8 17. Bxe5 f6!



ここはどちらを指すか迷いました。ナイトを1組交換した後、a5 のナイトをc6 に退き、再びe5 のコントロール争いをするのは自然ですが、f7-f6 を先に突いておいたほうが良いかどうかが難しところです。f7-f6 を突けば、白マスビショップがe8-h5 のダイアゴナルで使えるチャンスが生まれますが、代わりにe6 を弱め、1テンポ使うことになります。私がfポーンを突こうと決断したのは、実は間違った読みに基づくものなのですが、結果的には白マスビショップの利きが開いてオッケーでした。17... Nc6 18. Bxh7+? 私はこのビショップサクリファイスからの強制ドローを気にしていました。 18... Kxh7 19. Qh5+ Kg8 20. Bxg7 Lasker のダブルビショップサクリファイスを最も有名なモデルとするアイディアですが、黒はパペチュアルチェックを避けることができます。20... Kxg7 21. Qg4+ Kh6! (21... Kh8 22. Qh5+ Kg8 23. Qg4+=) 22. Qh3+ Kg6 23. Qg4+ Bg5! 24. f4 Kh7 25. fxg5 Nb4-/+ 本譜でも黒がイコアライズを目指す段階ですが、上記の強制ドローはさすがに面白くないと思い、本譜を選びました。実際には黒はビショップを1つ返してでもパペチュアルチェックを避け、有利だったんですね。

18. Bg3 Nc6 19. Rc1 Bg6!


少し考えて、いつまでもe8 にビショップがいるのではおかしいと結論付け、形を崩してでも白マスビショップの交換を迫ります。

20. Nb3



20. Bxg6 Nxd4!? (20... hxg6 21. Qg4 g5= 私の読みはこちらでしたが、これでも黒は大きな問題はありません。) 21. Bxh7+ Kh8 22. exd4 Qxc1+ 23. Nf1 Kxh7 24. Qxe6 Re8 25. Qf5+ Kg8 26. Qxd5+ Kf8 27. Qxb7 かなり形勢判断の難しいポジションですが、こうしてポーンをいくらか捨てても黒はエクスチェンジを取りにいく変化があり、Akshat が実際に選んだほうが白にとっては安全策です。

20... Bxd3 21. Qxd3 Qd7


ここまでくると、cファイルでヘビーピースがぶつかり合って消え、マイナーピースのみを残すドロー模様のエンドゲームが見えてきます。白のナイトはc5 に跳び込んでビショップと交換しても、十分なアドバンテージがありません。

22. a3


22. Nc5 Bxc5 23. Rxc5 Rc8 24. Qc2 Ne7= これも典型的なピースの捌き方で、ドローになりそうです。

22... Rc8 23. h3 Nd8 24. Rc3 Rxc3 25. Qxc3 Qc6 26. Qa5 a6 27. Bc7 Nf7 28. Qb6 Qxb6 29. Bxb6 Bd8 30. Bxd8 Nxd8 1/2-1/2



本譜ではナイト同士が残り、完全にイコールです。d8 のナイトがe6 とb7 をぴったり守っているため、何も起こりません。31. Nc5 a5! 32. Kf1 Kf7 33. Ke2 Ke7 34. Kd3 Kd6 35. Kc3 b6 くらいに進めると、やはり何もないことがわかりやすいです。実際にはドローオファーができる30手目で私からドローを提案し、ゲームを終わらせました。こうしたcファイルのみが空き、ピースがほとんど消えてドローという形は、いわゆるSlav Exchange の典型的ドローですが、私は黒で勝ちにいくアイディアをたくさん試してきており、Slav Exchange での勝率はかなり高めです。そのため、こうしたドロー型になるのはほとんど初めてで、良い勉強になりました。

12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446)
12/04 14:00 Balint, V (FM, HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533)
12/06 Rest Day
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360)
12/09 Rest Day
12/10 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)

First Saturday GM December 2018

+1 Kojima, Bilmos
+-0 Anisimov, Kantor, Pacher, Ilincic, Akshat, Farago
-1 Shahaliyev, Gungl

この日はIM セクションがほぼ延期で、GM セクションも私とAkshat 以外に、Anishimov - Shahaliyev のペアリングしか行われていませんでした。他の参加者たちはHungarian Team Championship から3日目の今日、ようやく合流するようです。10月はオリンピアードのために初戦を延期させた私が言うのもなんですが、今大会は延期の試合が多すぎでは? First Saturday では毎回2日間の休憩日が予定されていますが、今大会は休憩日というよりも延期したラウンドの調整日となりそうですね。

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