Vilmos に悔しい負けを喫し、イーブンに戻った翌日は、GM Ilincic との対戦です。2012年の遠征以来、ブダペストとケチケメートで数えきれないほど試合をしました。私が過去最も多く試合をし、そして最も多くの白星を挙げているGM です。この日も相性の良さを活かせればと思い、試合に臨みました。
Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
First Saturday GM December 2018 (6)
1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. e3 Bf5 5. Bd3 Bg6 6. O-O e6 7. b3 Nbd7 8. Bb2 Ne4!?
First Saturday GM December 2018 (6)
7. Qe2 のラインばかりをチェックしていて、b2-b3 セットアップを見直すのを忘れていました。ナイトが入る手は面白いですが、8... Bd6 9. Ne5 (9. Nc3 Ne4 10. Qc2) 9... Qc7 10. f4 Bxd3 11. Qxd3 Ne4 という変化を調査していたのでした。
9. Bxe4!?
いきなり白マスビショップを諦めるこの判断には驚かされました。白はダブルビショップを放棄する代わりに早いピースの展開を得ますが、黒もどこまで遅いわけではなく、手堅いポジションです。
9... Bxe4 10. Nc3 Bg6 11. Qe2 Be7
白がe2-e4 からセンターを開こうとしているのは明白なので、それを止めるため、11... Bb4 12. a3 Ba5 13. b4 Bc7 14. e4 dxc4 15. Qxc4 O-O と指すのもありだったでしょう。これであれば、センターの厚みvs. ダブルビショップという本譜とは少し違う戦いの構図になります。
12. e4 dxe4 13. Nxe4 O-O 14. Rfd1 Re8 15. Ne5 Bxe4
私はここで白マスビショップを返す判断をし、ダブルビショップとは違った主張を求めます。白マスビショップをキープすることにこだわり、15... Nxe5?! 16. dxe5 Qc7 17. Nd6! とされては厄介です。
16. Qxe4 Nxe5 17. dxe5 Qc7
これが私の目指したポジションで、3マイナーピースを交換済みで、残ったのは互いにヘビーピースと黒マスビショップです。ルークは盤上から早々に消えるとして、e5 のポーンにビショップの利きを遮られ、この伸びすぎポーンが多少の負担になりえる白のほうが、注意しなくてはいけない局面でしょう。
18. Rd3 Red8 19. Rad1
19. Rh3 g6 20. Qe3 Qd7! まだバックランクが弱いうえ、3マイナーピースを交換済みですので、キングサイドへのダイレクトアタックは怖くありません。
19... Rxd3 20. Rxd3 Rd8 21. Kf1 g6 22. Ke2 Rxd3 23. Qxd3 b5!
これはクイーンサイドでの良い仕掛けだったと思っています。白キングは早々にセンターに繰り出してきましたが、c2 でのクイーンのチェックがダブルアタックになってしまうため、cファイルを開くことは黒にとってありがたい状況です。さらにはb5 のポーンはa4 のマスも抑え、Qc7-Qa5 を狙いにしています。
24. a3 a5
aポーンを守るためにはa3 に動かすしかありませんが、これがまたビショップと同じ黒マスなので、ターゲットになりえます。基本的にはポーンが黒マスに移動してくれるのは黒にとってありがたいですが、a3-b4-c5 まで押し込まれると、黒の黒マスビショップの行き場がなくなるため、それだけ気を付けて手を進めていきます。
25. g3 h5 26. h4 Kg7?!
ここは迷ったのですが、8段目にクイーンに入られた際にチェックのテンポを与えないよう上がっておく本譜のアイディアは決して悪くないと思います。しかし、1つ前のh7 にマスを作った狙いを考えるのであれば、ポーン交換から局面を難しくするほうが勝ちにいきやすかったでしょう。26... Bc5! f2 へのプレッシャーは当然重要な狙いです。27. cxb5 cxb5 28. Qxb5 Qa7! (試合中に考えていたのは28... Ba7!? 29. Qd3 で、これでもポーンの代償はありそうですが、黒が良いとまでは言えないでしょう。) 29. Qe8+ Kh7=/+ これでb5 を捨ててもf2 を落とし、g3, e5 をさらなるターゲットとすれば、黒が有利だったというのがコンピュータの評価です。f2 を狙うことは当然考えてはいましたが、b5 を捨てて白にパスポーンを与えるリスクを恐れてしまいました。
27. Qd4 a4
c4-c5 を狙われたのであれば、こうするほかありません。
28. cxb5 cxb5 29. b4 Bd8
ポーンストラクチャーが変わり、白のポーンは全て黒マス、黒のポーンは全て白マスになりました。これは黒にとってありがたいことではありますが、ビショップをなんとか使えるようにしなければ勝機は見えてきません。本譜ではb6 への切り替えから、上記のようにf2 をアタックしにいきます。
30. Bc3 Qb8 31. Qd7 Bc7 32. Qd4 Bb6 33. Qd7 Bc7 34. Qd4 Qb7 35. Qc5 Bd8?!
ここも勝ちを狙うのであれば、35... Bb6! 36. Qxb5 Qe4+ 37. Kf1 Bxf2! 38. Kxf2 Qc2+ 39. Qe2 Qxc3 40. Qe3 Qb3 と指すべきだったと思います。上記と同じf2 とb5 の交換をして白のポーンストラクチャーをバラバラにするアイディアです。ただビショップまで捌いた状態で、e5, a3 をどうしたら落とせるのかは簡単にはイメージできません。
36. Bd4 Be7 37. Qc3 g5
時間が増える40手間際、このアイディアを仕掛けます。g1-a7 のダイアゴナルを結局取れなかったため、ビショップの使い道はこれしか残されていません。
38. hxg5 Bxg5 39. Be3 Bxe3
39... Qe4 40. f3 Qg6 41. Qd3 Bxe3 42. Qxg6+ fxg6 43. Kxe3 g5= このポーンエンディングはドローです。
40. Kxe3 Qd5 41. f3 Qa2 42. f4
唯一の狙いであった、Qa2-Qh2 からのg3 ポーンアタックもこれで防がれ、黒には勝ちにいくアイディアが完全になくなりました。白のポーンはまだ多少危なく見えますが、3段目のクイーンでa3, g3 のどちらも守れるのであれば、大きな問題はありません。
42... Qg2 43. Kd4 Qd5+ 44. Ke3 Qa2 45. Kd4 Qd5+ 1/2-1/2
全体を通して上手く指せており、危ないところは一切無いチェスでしたが、勝つためにはもう1歩リスクを取り、踏み込まなければいけないということでしょうね。まだ自分に少し足りないところだと自覚もしているので、良い勉強になった試合でした。
12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446) 1/2-1/2
12/04 Rest Day
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533) 1/2-1/2
12/06 14:00 Balint, V (HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360)
12/09 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/10 Rest Day
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)
First Saturday GM December 2018
+2 Ilincic, Kantor
+-0 Anisimov, Kojima, Akshat, Farago, Gungl, Bilmos
-1 Pacher
-3 Shahaliyev
今大会、Shahaliyev が不調なくらいで、他の大きな浮き沈みはありません。GMノームのチャンスが唯一残っているKantor も、条件は残り4試合で3.5P となかなかシビアです。私は今日は初対戦となるハンガリーのベテランGM Farago とのゲームですので、これも楽しんでこられればと思います。
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