Vilmos との試合の前日、水曜日の夜にShahaliyev から一通のメールが届きました。それによると、彼は月曜日にペーチ(ハンガリー西部の町)に帰らないといけないため、翌日の木曜日に試合ができないかとのことでした。私はすでに延期していたVilmos との試合を木曜に入れていたため、それを断り、代わりに休憩日である日曜に試合をしようと提案しました。Shahaliyev との試合が1日前倒しされたのには、そういった流れがあったのです。
Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
First Saturday GM December 2018 (8)
1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nd2 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. Nf3 Nd7 7. Bd3
First Saturday GM December 2018 (8)
このh2-h4-h5 を入れない変化は1つの候補として予想していました。昔から研究はしていても、公式戦で指されたのは今回が初めてです。hポーンの伸びがない分、白はキングサイドにキャスリングしやすいですが、その代わりに典型的なキングサイドので攻撃がないため、黒としてはメインラインよりも安全です。互いに手堅く、ドローにもなりやすい変化ではありますが、エンドゲームのテクニック次第ではどちらにも結果は転びうるでしょう。
7... e6 8. O-O Ngf6 9. Bxg6!?
黒がまだキャスリングをどちらにするか決めていない段階で、こうしてビショップを交換するのはhファイルを開かせてしまう危険があるように思えます。実際、私が試合前にチェックしてきた棋譜では、ほとんどが黒のキングサイドキャスリングを見て、ビショップを交換していました。黒には通常通りキングサイドにキャスリングする手堅いラインに加え、hファイルからのアタックに期待して、クイーンサイドにキャスリングするオプションが生まれました。私は少し考えた末に後者を選ぶことにします。
9... hxg6 10. Bf4 Nd5 11. Bg5 Be7 12. Bxe7 Qxe7 13. c4 N5f6 14. Qb3 O-O-O 15. a4?!
この手は少しゆっくりすぎるような気がします。15. Rfe1 としてd4-d5 のアイディアを見せておくほうが自然で良いでしょう。
15... Nh5 16. Ne4 Ndf6 17. Rfe1
17. Neg5 Nh7 を見つけ、上手くナイトを捌いてhファイルからの攻撃が現実味を帯びてくると考えていました。本譜のようにナイトが捌けても、もちろん黒は不満がありません。
17... Nxe4 18. Rxe4 g5
私はこの手で黒が指しやすくなったと思いました。黒の狙いはシンプルで、次にNh5-Nf6(Nh5-Nf4 も捨てがたいですが)、g5-g4 を組み合わせることでf3 のナイトを脅かし、d4 のポーンとh2 のポーンを攻撃できるようにすることです。さらにはg4 までポーンが進めば、h2 のポーンが動かしづらくなるため、ルークをhファイルにダブルで重ねる作戦が強力です。これに対して上手い白の対策が無さそうだと思ったわけです。
19. d5!
しかし、Shahaliyev はこの試合初めての長考の末、この手を指してきました。クイーンがe7 にいる以上、十分に気を付けているつもりでしたが、Nh5-Nf6 のテンポがあるので大丈夫だろうと、警戒心は少し薄くなっていたように思えます。
19... Nf6 20. Ree1 g4
黒には勝負のやり方が2つあり、ポーンを進めるのはその1つです。しかし、ポーンを取りにいって勝負するのであれば、20... cxd5 21. cxd5! (21. Nxg5 d4! は黒が指しやすく、こうするつもりはなかったと試合後にShahaliyev に指摘されました。) 21... Rxd5 22. Ne5 と指すべきだったでしょう。これは本譜と似ていますが、どうせナイトはe5 に跳ぶため、g5-g4 のテンポを使っていません。しかし、これでもNe5-Nc6 の跳び込みがあるため、c8 のキングはb8 に避けられず、白はポーンの代償を伴ってアタックができそうです。
21. Ne5 cxd5?
私は白のアイディアを理解したつもりで、相手のポーン捨てに付き合うことにしました。しかし、これで実質的にゲームは終わりです。白の開いたcファイルは私の予想していた以上に強力なアタックを生み出すものでした。代わりに、21... Qc7! 22. dxe6 Rh5 23. Qg3 Rh5 24. Ng6 とするのが正解で、ここでクイーンを交換したエンドゲームはお互いがベストを指せばドローになりそうです。
22. cxd5 Nxd5 23. Rac1+ Nc7
23... Kb8?? 24. Nc6++- があるため、当然ナイトを挟む1手です。このピンとb8 に避けられないことの負担が私の予想していた以上でした。
24. Rc4!+-
cファイルにルークを重ねるプランは当然想像しており、それの対策も考えたうえでのd5 取りのつもりでした。しかし、実際にこの手を指されて愕然としました。どれだけ読んでも黒の生きる道が見えないのです。40分以上考えても、存在しない答えを見つけることはできません。
24... Qd6
24... Rh5 25. Rec1 Rxe5 26. Qc3!+- ナイトをすぐに取って2ルークvs. クイーンにする変化は、黒はなんら問題ありません。代わりのクイーンをcファイルに加えてトリプルヘビーピースにする手がe5 のルークとc7 のナイトのダブルアタックになっていて厳しく、黒には手がありません。ナイトを見捨ててルークを守る手も、26... Qd6 27. Rxc7+ Kb8 28. Rc8+ がメイトなのです! 本譜ではこれも無理だと分かっていながら、h2 への反撃を作ることでなんとかしようとします。
25. Nxf7 Qxh2+ 26. Kf1 Qh1+
26... Rdf8! 27. Nxh8 g3! 28. Rc2 gxf2 29. Rxf2 Qh1+ 30. Ke2 Qh5+ 31. Rf3 Rxh8 32. Qb4+- これならば多少は生きますが、それでも黒が相当厳しいことは変わりありません。26... Rd2 27. Rxc7+! Kxc7 28. Qc3++- もぴったりルークが当たりになっていて白が大きな駒得です。
27. Ke2 Qxg2 28. Nxh8 Rxh8 29. Rec1 1-0
この試合は結局のところ、g6-g5 の局面で自分が指しやすくなったという幻想、過大評価を捨てきれなかったことが敗因だと思います。また一つ、チェスの難しさを思い知ったような気がします。
12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446) 1/2-1/2
12/04 Rest Day
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533) 1/2-1/2
12/06 14:00 Balint, V (HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360) 1/2-1/2
12/09 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/10 Rest Day
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)
First Saturday GM December 2018
+2 Kantor, Ilincic, Akshat
+1 Anisimov
+-0 Farago, Gungl
-1 Pacher, Kojima
-2 Shahaliyev
-3 Bilmos
先月からなのですが、不調で沈んでおり、このプレーヤーには勝ちたいと思う相手に対して、私は負けています。ここはポイントを取れるぞと油断しているわけではないと思いますが、ここをなんとかしないとこの先のトーナメントも勝ちあがるのは厳しいですね。今日は休みをもらい、最終戦のKantor とのゲームこそ上手く指したいと思います。
今日は久々にドナウ川を渡り、ペスト側のお気に入りカフェでブログを書いています。少し休憩してから、またチェスの勉強に戻ります。
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