2018/12/12

First Saturday GM December 2018 R9


ハンガリーのKantor とは、6年前にケチケメートのトーナメントで初めて出会って対戦をしました。ハンガリーの1999-2000年生まれの世代は、若くして才能を見出される子が多く、私も何人もハンガリーのIM, GM トーナメントで対戦してきました。2000年生まれのKantor は、未だにGMタイトルには届かず、すでにハンガリーの代表入りを果たした同い年の天才、Gledula Benjamin に比べれば少し遅れていますが、それでもハンガリーのトップジュニアプレーヤーの1人であることは間違いありません。彼との6年半ぶりの再戦は、このトーナメントで最も楽しみにしていた試合の1つです。

Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)
First Saturday GM December 2018 (9)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 c6 5. e3 Nbd7 6. Qc2 Bd6 7. Bd3 dxc4!? 8. Bxc4 b5 9. Be2



通常は7... 0-0 8. 0-0 dxc4 という手順が多いですが、ここはKantor は早速工夫を見せてきます。も白がビショップをd3 に退いた場合はキャスリングを遅らせ、9. Bd3 a6 10. O-O Bb7 とするつもりだったと試合後に教えてくれました。この変化が黒にとって良いかはさておき、白から有望視されているいくつかの変化を避けることができます。私もBc4-Bd3 と指すのがこれまでのメインでしたが、この試合のためにはBc4-Be2 を調べてきたため、この点は問題ありませんでした。

9... O-O 10. O-O Bb7 11. e4


羽生さんとも何回か指して研究した早いe3-e4 を、この最終戦で投入します。この3年ほどで、このラインには様々なアイディアが試され、進化してきました。11. Rd1 Qc7 12. Bd2 b4 13. Na4 c5 14. dxc5 a5 15. Rac1 Rac8 16. a3 Nxc5 17. Nxc5 Qxc5 18. Qxc5 Rxc5 19. Rxc5 Bxc5 20. axb4 Bxb4 21. Bxb4 axb4 は別のラインで、白が本当にわざかなアドバンテージでエンドゲームを戦うとして、Kantor と合意しています。

11... e5 12. dxe5 Nxe5 13. Nd4!?



ここで白がポーンを捨てるというアイディアが、この数年で爆発的に流行りました。黒としては多少のリスクを取って勝負にいく変化、安全にいく変化でいくつか種類がありますが、彼のチョイスは安全策でした。

13... Neg4 14. g3 Bc5


14... Bxg3 15. hxg3 Qxd4 16. Qd1! Qxd1 17. Rxd1 Rfe8 18. f3 Ne5 19. Be3 この変化は白がポーンダウンですが、ダブルビショップと黒マスのコントロールで、十分すぎる代償があります。実際にこの変化を数年前に羽生さんと試し、白で勝ったこともあります。

15. Nf5 Re8 16. Bf4 Qb6 17. Kg2



ここまで進み、お互いにドローラインを知っていることはなんとなくわかりました。ただし、まだその変化に跳びこむかは分かりません。ここでは白から、17. Bxg4!? Nxg4 18. Qe2 Nf6 19. e5 Bf8! 20. Be3 c5! 21. exf6 Qxf6 とする分岐もあり、これは黒がピースを捨てて白マスの強力な支配で戦うことになります。この変化は多少リスクがあり、難しいと思ったために今回の投入は避けました。

17... g6 18. h3 Ne5


18... gxf5!? 19. hxg4 Bd4 20. gxf5 Bxc3 21. bxc3 c5 22. f3 Rxe4! 23. Rae1 Rxf4!? 24. gxf4 Nd5 これはまた黒がエクスチェンジを切る評価の難しいポジションです。実戦はドローのゲームが2つありますが、もちろん結果はどうとでも転びうるでしょう。Kantor が勝負を仕掛けてくるならこの変化だと思い、試合を進めてきましたが、これも彼の好みではないようです。

19. Nh6+ Kg7 20. Bg5 Bd4 21. Bxf6+ Kxf6 22. f4 Nc4 23. Bxc4 bxc4 24. f5



f6 に上がってきたキングを目標にfファイルを開きますが、白の攻撃はアドバンテージを生み出すほどではありません。

24... c5 25. fxg6+ Kxg6 26. Nxf7 Rf8


ここは次にQc2-Qd2 から、g5, h6 の2つのマスに白クイーンが跳びこんでくる狙いを防ぐため、この1手しかないでしょう。

27. Nd5 Qxb2 28. Ne7+ Kg7 29. Nf5+ Kg6 30. Ne7+ Kg7 1/2-1/2



ここは白からナイトでパペチュアルチェックを入れるほかありません。2016年のFIDE Candidate のNakamura - Giri 戦で生まれたこの変化については、検討でもKantor と色々議論ができて勉強になりました。他のラインで登場する白の有望な変化は、どこかで試すことができると良いですね。

12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446) 1/2-1/2
12/04 Rest Day
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533) 1/2-1/2
12/06 14:00 Balint, V (HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360) 1/2-1/2
12/09 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/10 Rest Day
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512) 1/2-1/2

First Saturday GM December 2018

+3 Kantor, Akshat
+2 Anisimov
+1 Ilincic
+-0 Farago,
-1 Pacher, Kojima
-2 Shahaliyev, Gungl
-3 Bilmos

終わってみれば初戦以来勝ちは無く、この遠征最多の6ドローでした。先月のFirst Saturday ほど大崩れしなくて良かったのですが、それでもブダペストでは3か月連続で負け越し、レイティングもマイナスです。また気を取り直して、土曜日からモンテネグロで頑張ろうと思います。


オーガナイザーのNagy からは、First Saturday のロゴ入り石鹸を貰いました。ハンガリーでは手作り石鹸が名物になっています。

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