2018/12/04

First Saturday GM December 2018 R3


検討をする私とGM Pacher

スロバキアのGM Pacher Milan は、最近ブダペストのFirst Saturday にも積極的に協力しているGM として、ここ数年名前をよく見かけていました。今回調べるまでは、結構なベテランなのかと思っていましたが、1990年生まれで私よりも若いんですね。このトーナメントが顔を合わせるのも、そして当然ながら試合をするのも初めてです。

Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446)
First Saturday GM December 2018 (3)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 e6 5. e3 Nbd7 6. Qc2 b6



幅広いレパートリーを持つPacher 相手に準備は大変でしたが、Semi-Slav はありえると思って見直していました。しかし、このソリッドなDreev Line は最近チェックしていません。以前研究した形を目指して手を進めます。

7. b3 Bb7 8. Bb2 Be7 9. Bd3 O-O 10. O-O


この形は昔指していた、e3 Slav から派生します。1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. e3 e6 5. b3!? Nbd7 6. Bb2 Be7 7. Bd3 0-0 8. 0-0 b6 9. Nc3 Bb7 10. Qc2 くらいの手順でしょうかね。2007年のKramnik - Van Wely で有名になりましたが、大筋しか覚えていませんでした。

10... Rc8



Krasenkow 曰く、この手は少しパッシブでつまらないとのこと。ハワイでShankland と指した際は10... h6 でした。その後、黒のセットアップとしては、白のルークの位置を見た後で、ルークをcファイルにするかdファイルにするか決めるのが柔軟で良さそうです。

11. Rad1 Qc7 12. Ne5!


b2 に控えているビショップの力を借りてナイトが跳び込みます。このナイトをf2-f4 から支えれば、白はセンターを抑え込んで戦うことができます。

12... h6


かつて南條くんとの試合では、12... dxc4 13. bxc4 Nxe5?! 14. dxe5 Ng4 (14... Qxe5 15. Nd5!) 15. Bxh7+ Kh8 16. Qe2 f5 17. h3+/- と進んで白が良くなりました。h7-h6 はh7 のポーン取りの狙いを外しますが、このタイミングだとキング前の白マスを弱め、白にf2-f4-f5 のチャンスを与えてしまいます。

13. f4 c5 14. cxd5?!



かつてe3 Slav を指していた経験から、この形ではc6-c5 に対して、d5 をすぐに交換するのが良いと思い込んでしまいました。もちろん、ここで早めにポーン交換をする場合も多いのですが、このタイミングでは正確ではありません。このたった1つの疑問手で、白はアドバンテージを放棄してしまいました。代わりに14. Qe2 cxd4 15. exd4 dxc4 16. bxc4 と進め、Queen's Indian から派生するような形にすれば、白にはクラシカルなアドバンテージがありました。

14... cxd4! 15. exd4


検討戦で、15. dxe6 Nxe5 16. fxe5 Qxe5 17. exf7+ Kh8 18. exd4 Qxd4+ 19. Kh1 Qh4 も考えましたが、白がさほど良いようには見えません。

15... Nxe5! 16. fxe5 Nxd5 17. Nxd5 Bxd5 18. Qe2



15手目のナイト交換を全く考えておらず、このように進んでしまいました。2つのナイトを満足な形で捌けた黒には、大きな弱点はありません。これで白マスビショップまで捌けていれば、黒はd4 をただ攻撃すれば良いだけの楽なポジションになります。それを避けたい白は、わずかに残ったキングサイドへの攻撃チャンスに頼り、作戦を立てます。

18... f5


Pacher は遅かれ早かれ、この手は必要になると私に検討で言いました。確かにBd3-Bb1, Qe2-Qd3 からh7 への侵入を狙うようなプランに黒は対策が必要です。キング前を多少崩すリスクを背負っても、f7 のマスを空け、d4 への反撃を作るのは合理的です。

19. exf6 Rxf6 20. Rxf6 Bxf6 21. Rf1



Qc7-Qf4 を防ぎつつ、f6 でエクスチェンジを捨ててgファイルを開く可能性を作るアイディアです。黒はこれを止めるために本譜のように指すと、ピース交換が進んで結末が見えてきます。

21... Rf8 22. Qg4 Bg5! 23. Rxf8+


23. Bh7+? Kxh7 24. Rxf8 Qc2! と欲張ってエクスチェンジを取ると、強力なカウンターを食らいます。b2 のビショップがパッシブである以上、アクティブな白マスビショップを消すのはリスクが高すぎます。

23... Kxf8 24. Ba3+ Kg8 25. Qh5!



これでe8 のマスを見据えつつ、b1-h7 の白マスダイアゴナルに、ビショップとクイーンを重ねる作戦が実現します。しかし、他のピースを捌きすぎているために、白のアタックは勝ちに結びつきません。

25... Be3+ 26. Kh1 Qc6!


クイーンを8段目に退いてくれるようであれば、d4 を捨ててもじっくり攻める作戦が取れましたが、g2 でのメイトスレットを作られては白に選択肢はありません。

27. Qg6 Bxd4 28. Qh7+ Kf7 29. Qg6+ Kg8 30. Qh7+ 1/2-1/2



こうなっては、パペチュアルチェックでドローにするしかありません。1つの緩手でアドバンテージを放棄してしまう恐ろしさを肝に銘じつつ、また次の試合に備えようと思います。

12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446) 1/2-1/2
12/04 Rest Day
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533)
12/06 14:00 Balint, V (FM, HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360)
12/09 Rest Day
12/10 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)

First Saturday GM December 2018

+1 Kojima, Ilincic
+-0 Anisimov, Kantor, Pacher, Akshat, Farago, Bilmos
-1 Shahaliyev, Gungl

昨日はKantor - Anisimov、Akshat - Farago がドロー。Gungl - Balint が白勝ち、Shahaliyev - Ilincic が黒勝ちという結果でした。あまり人のことを気にしている余裕はないのですが、10月のFirst Saturday を無敗で乗り切ったShahaliyev は、大きな駒得からの逆転負けで、今大会すでに2敗目です。誰がどう崩されるか分かりませんので、油断せずにトーナメント中盤、終盤に向かっていこうと思います。


本来であれば今日予定されていたBalint との試合は、彼の都合により休憩日の木曜日へと延期されることになりました。Pacher との試合も早く終わったので、ホテルを出てブダペスト中心地へと向かいます。ブダペストでは11月末からクリスマスマーケットが始まっていましたが、今回の滞在で訪れるのは昨日が初めてです。ヴァーチ通りの中心、デアーク広場は大変な賑わいでした。

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