スロバキアのGM Pacher Milan は、最近ブダペストのFirst Saturday にも積極的に協力しているGM として、ここ数年名前をよく見かけていました。今回調べるまでは、結構なベテランなのかと思っていましたが、1990年生まれで私よりも若いんですね。このトーナメントが顔を合わせるのも、そして当然ながら試合をするのも初めてです。
Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446)
First Saturday GM December 2018 (3)
1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 e6 5. e3 Nbd7 6. Qc2 b6
First Saturday GM December 2018 (3)
幅広いレパートリーを持つPacher 相手に準備は大変でしたが、Semi-Slav はありえると思って見直していました。しかし、このソリッドなDreev Line は最近チェックしていません。以前研究した形を目指して手を進めます。
7. b3 Bb7 8. Bb2 Be7 9. Bd3 O-O 10. O-O
この形は昔指していた、e3 Slav から派生します。1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. e3 e6 5. b3!? Nbd7 6. Bb2 Be7 7. Bd3 0-0 8. 0-0 b6 9. Nc3 Bb7 10. Qc2 くらいの手順でしょうかね。2007年のKramnik - Van Wely で有名になりましたが、大筋しか覚えていませんでした。
10... Rc8
Krasenkow 曰く、この手は少しパッシブでつまらないとのこと。ハワイでShankland と指した際は10... h6 でした。その後、黒のセットアップとしては、白のルークの位置を見た後で、ルークをcファイルにするかdファイルにするか決めるのが柔軟で良さそうです。
11. Rad1 Qc7 12. Ne5!
b2 に控えているビショップの力を借りてナイトが跳び込みます。このナイトをf2-f4 から支えれば、白はセンターを抑え込んで戦うことができます。
12... h6
かつて南條くんとの試合では、12... dxc4 13. bxc4 Nxe5?! 14. dxe5 Ng4 (14... Qxe5 15. Nd5!) 15. Bxh7+ Kh8 16. Qe2 f5 17. h3+/- と進んで白が良くなりました。h7-h6 はh7 のポーン取りの狙いを外しますが、このタイミングだとキング前の白マスを弱め、白にf2-f4-f5 のチャンスを与えてしまいます。
13. f4 c5 14. cxd5?!
かつてe3 Slav を指していた経験から、この形ではc6-c5 に対して、d5 をすぐに交換するのが良いと思い込んでしまいました。もちろん、ここで早めにポーン交換をする場合も多いのですが、このタイミングでは正確ではありません。このたった1つの疑問手で、白はアドバンテージを放棄してしまいました。代わりに14. Qe2 cxd4 15. exd4 dxc4 16. bxc4 と進め、Queen's Indian から派生するような形にすれば、白にはクラシカルなアドバンテージがありました。
14... cxd4! 15. exd4
検討戦で、15. dxe6 Nxe5 16. fxe5 Qxe5 17. exf7+ Kh8 18. exd4 Qxd4+ 19. Kh1 Qh4 も考えましたが、白がさほど良いようには見えません。
15... Nxe5! 16. fxe5 Nxd5 17. Nxd5 Bxd5 18. Qe2
15手目のナイト交換を全く考えておらず、このように進んでしまいました。2つのナイトを満足な形で捌けた黒には、大きな弱点はありません。これで白マスビショップまで捌けていれば、黒はd4 をただ攻撃すれば良いだけの楽なポジションになります。それを避けたい白は、わずかに残ったキングサイドへの攻撃チャンスに頼り、作戦を立てます。
18... f5
Pacher は遅かれ早かれ、この手は必要になると私に検討で言いました。確かにBd3-Bb1, Qe2-Qd3 からh7 への侵入を狙うようなプランに黒は対策が必要です。キング前を多少崩すリスクを背負っても、f7 のマスを空け、d4 への反撃を作るのは合理的です。
19. exf6 Rxf6 20. Rxf6 Bxf6 21. Rf1
Qc7-Qf4 を防ぎつつ、f6 でエクスチェンジを捨ててgファイルを開く可能性を作るアイディアです。黒はこれを止めるために本譜のように指すと、ピース交換が進んで結末が見えてきます。
21... Rf8 22. Qg4 Bg5! 23. Rxf8+
23. Bh7+? Kxh7 24. Rxf8 Qc2! と欲張ってエクスチェンジを取ると、強力なカウンターを食らいます。b2 のビショップがパッシブである以上、アクティブな白マスビショップを消すのはリスクが高すぎます。
23... Kxf8 24. Ba3+ Kg8 25. Qh5!
これでe8 のマスを見据えつつ、b1-h7 の白マスダイアゴナルに、ビショップとクイーンを重ねる作戦が実現します。しかし、他のピースを捌きすぎているために、白のアタックは勝ちに結びつきません。
25... Be3+ 26. Kh1 Qc6!
クイーンを8段目に退いてくれるようであれば、d4 を捨ててもじっくり攻める作戦が取れましたが、g2 でのメイトスレットを作られては白に選択肢はありません。
27. Qg6 Bxd4 28. Qh7+ Kf7 29. Qg6+ Kg8 30. Qh7+ 1/2-1/2
こうなっては、パペチュアルチェックでドローにするしかありません。1つの緩手でアドバンテージを放棄してしまう恐ろしさを肝に銘じつつ、また次の試合に備えようと思います。
12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446) 1/2-1/2
12/04 Rest Day
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533)
12/06 14:00 Balint, V (FM, HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360)
12/09 Rest Day
12/10 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)
First Saturday GM December 2018
+1 Kojima, Ilincic
+-0 Anisimov, Kantor, Pacher, Akshat, Farago, Bilmos
-1 Shahaliyev, Gungl
昨日はKantor - Anisimov、Akshat - Farago がドロー。Gungl - Balint が白勝ち、Shahaliyev - Ilincic が黒勝ちという結果でした。あまり人のことを気にしている余裕はないのですが、10月のFirst Saturday を無敗で乗り切ったShahaliyev は、大きな駒得からの逆転負けで、今大会すでに2敗目です。誰がどう崩されるか分かりませんので、油断せずにトーナメント中盤、終盤に向かっていこうと思います。
本来であれば今日予定されていたBalint との試合は、彼の都合により休憩日の木曜日へと延期されることになりました。Pacher との試合も早く終わったので、ホテルを出てブダペスト中心地へと向かいます。ブダペストでは11月末からクリスマスマーケットが始まっていましたが、今回の滞在で訪れるのは昨日が初めてです。ヴァーチ通りの中心、デアーク広場は大変な賑わいでした。
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