2018/12/09

First Saturday GM December 2018 R7


この日はハンガリーのベテランGM Farago Ivan との対戦です。初日にドイツのGungl に勝って以来、白星の無い私は、そろそろ貴重な白で勝ちが欲しいところです。

Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360)
First Saturday GM December 2018 (7)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 d5 4. d4 c5



近年とても流行しているこのQueen's Gambit Semi-Tarrasch が、Farago のレパートリーの1つであることを把握しておきながら、ここしばらくは指していなかったため、試合直前のチェックを怠っていました。メインラインで挑むか、4. e3 を指すか悩みましたが、メインラインが思い出せそうなのでこの日は正面からやってみることにします。

5. cxd5 Nxd5 6. e4 Nxc3 7. bxc3 cxd4 8. cxd4 Bb4+ 9. Bd2 Bxd2+ 10. Qxd2 O-O 11. Rc1 b6 12. Bd3 Ba6!?


しかし、この手は完全にノーチェックでした。12... Bb7 に比べればまだ指された数こそ少ないものの、トップのGM にも採用されています。考えてみれば、黒のアイディアは序盤で早々に2マイナーピースを交換し、白が築いたセンターポーンとそれが生み出すスペースのアドバンテージを活かしにくいようにする、というものです。その流れからすれば、e4 にプレッシャーをかける12... Bb7 よりも、3ピース目の交換を確定させる本譜のほうが、むしろ理にかなっているようにも思えます。

13. O-O



検討ではFarago から、13. Bxa6 Nxa6 14. O-O Qe7 (狙いはQe7-Qb7) と進めば、黒は特に問題ないと伝えられました。

13... Bxd3 14. Qxd3 Nd7 15. e5!


この手は少し考えた末に指してみて良かったと思います。白の狙いはいくつかあり、f6 を抑えることでNd7-Nf6 を防ぐ、b1-h7 のクイーンの利きを開くことで、Nf3-Ng5 との組み合わせからh7 のメイトを狙う、e4 のマスを空ける、d6 を抑えてNf3-Ng5-Ne4-Nd5 などのルートでナイトの侵入を狙う、などが挙げられます。もちろん15. e5 にも、d4 のポーンをバックワードポーンにし、d5 をアウトポストにするというデメリットがあります。しかし、d5 のアウトポストにナイトを運ぶルートは当面無く、ポーンを進めるメリットのほうが大きいと判断しました。

15... Re8!



一見すると少し意味が薄そうなルークの手ですが、f8 のマスを空けることで、Nd7-Nf8-Ng6-Ne7-Nd5 というナイトのマヌーバリングルートを作り出しています。時間こそかかるものの、d5 までナイトを運べるようであれば、黒はかなり指しやすくなるでしょう。これを実現させずにどう戦うかが、私にとってここからのポイントです。

16. Qe4


a6 への侵入も捨てがたかったのですが、ナイト退きの後のQd8-Qd5 からのアウトポストコントロールを防ぎ、c6 への利きを作っておきます。そうしたメリットの半面、e4 のマスを埋めてしまうので、ナイトがe4 にいけないというデメリットもあります。

16... Nf8 17. Rc6 Rc8 18. Rfc1 Qd7 19. Qc2



e4 と同じくc6 に利きを持つとしても、cファイルのヘビーピースを重ねることで、ルーク交換を催促します。ただのテンポロスだと思うかもしれませんが、黒からはNf8-Ng6-Ne7 と回してc6 のルークをアタックする手があり、こうされると明らかにアドバンテージがありません。本譜の手でcファイルを抑えたまま黒陣に入るチャンスを作れたので、多少有利になったと思いました。

19... Rxc6 20. Qxc6 Qxc6 21. Rxc6 Rd8


しかし、こうして落ち着いてd8 にルークを回されてみると、Rd8-Rd7 がシンプルに7段目のディフェンスになりますし、Rd8-Rd5-Ra5 というマヌーバリングで、a7 を守りながらa2 への反撃を作られることに気付きました。予想していたよりも白のアドバンテージが少ないことに気付き、またここから作戦を立て直します。

22. Kf1 h6



Ne4-Ng5 からf7 へのアタックを防ぎ、黒ルークが7段目を離れても大丈夫なようにしつつ、h7 にマスを作ってキングが上がるマスを作ることで、バックランクへの侵入にも対処します。

23. Rc7 Rd7 24. Rc8!?


ここはかなり悩みましたが、当初の作戦であったルーク交換を諦めました。最初は24. Rxd7 Nxd7 25. Ke2 と上がれば、白キングがセンターに近く寄っているため、多少良いエンドゲームかと思いました。しかし、25... b5! からNd7-Nb6-Nd5 の反撃が生まれ、黒もクイーンサイドポーンマジョリティを武器に戦うことができます。この変化はさっぱり自信がなかったため、本譜の多少怪しい変化に跳びこむことを決意します。

24... Rd5 25. Ke2 Ra5 26. Nd2!?



a2 を捨てると黒に2コネクテッドパスポーンが生まれるため、リスクが高いようにも見えます。しかし、バックランクを抑えてf8 のナイトをピンにし、一時的にout of play にすることで多少の代償があると考えました。26. Rc2 と退く手はパッシブで、黒にNf8-Ng6-Ne7-Nd5 のチャンスを与えてしまいますし、何よりc8 に侵入したことが単なるテンポロスにしかなっていません。やるなら8段目に侵入したままポーンを捨てて勝負です。

26... Rxa2 27. Ke3 Ra3+ 28. Ke2 Ra2


しかし、Farago はこれを勝負に来ないんですね。黒にはgポーンを突いてキングのマスを作る、fポーンを突いてキングのマスを作る、キングのマスは置いてa、もしくはbポーンを進めるというプランがあります。そのいずれも、白にNd2-Ne4 を許すことになり、評価の難しい形勢になるでしょう。本譜のナイトをピンにしたままにする作戦は、ドローを取る安全策です。

29. Ke3 Ra3+ 30. Ke2 Ra2 1/2-1/2



こうなってしまっては仕方がないですね。このSemi-Tarrasch の変化にどう勝負しにいくかは、もう少しゲームをチェックしながら検討してみようと思います。

12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446) 1/2-1/2
12/04 Rest Day
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533) 1/2-1/2
12/06 14:00 Balint, V (HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360) 1/2-1/2
12/09 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/10 Rest Day
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)

First Saturday GM December 2018

+2 Ilincic,
+1 Anisimov, Kantor
+-0 Kojima, Akshat, Farago, Gungl, Bilmos
-1 Pacher
-3 Shahaliyev

これで私は1勝1敗5ドローとなり、2試合を残してこの遠征で最多ドローのトーナメントであることが確定しました。GM 3人とに勝ちも負けもなく、3ドローだったのも今回が初です。2敗目を喫しない代わりに、なかなか2勝目が遠いですね。気負いすぎずに、あと2戦しっかりプレーできればと思います。

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