長い長い12試合のトーナメントも、いよいよ7日目。インドのChopra とアメリカのIM Battey に黒を持つ日です。試合は予想通り、両方ともCaro-Kann Defence に。お互いの研究と読みが試されます。
クイーンがd3 に退き、すぐにg2-g4 と仕掛けるラインは、ここ数年流行の兆しがあります。このポジションでは16... c5 が自然であることは分かっていましたが、自分のお気に入りであるこのクイーンムーブを指さずにはいられませんでした。実際には白のNg3-Ne4 がもっと遅く、g2-g4 がまだ準備できていない状態でなければ、この手はさほど働きません。
19. Qe2 と先にe6 をアタックする手ばかりを考えており、それを無視してナイトが入る手は考えていませんでした!白は邪魔なg4 のナイトをどかし、黒キングへのラインを開きます。
黒はポーンを返してでも、やや不利なポジションを受け入れなければなりませんでした。19... Bf6 20. Nxg4 fxg4 21. Rxg4 Rad8 22. c3 Kh8 23. Rhg1+/=
クイーンを無視してビショップが跳び込む手はとても強力に見えますが、ベストではありません。ここからは大分、白の不正確な手に助けられることになります。局後のKislik の指摘は、20. Qe3! Ng4 (20... Bf6 21. Nd7 Qxd4 22. Nxf6+ Qxf6 23. Qxf2+- この3ポーンピースは、白のキングサイドアタックが両力な為、黒にチャンスはないでしょう。) 21. Nxg4 fxg4 22. Qxe6+(ここでチェックができ、g4 はルークで取れるのが、20. Qe3! のポイントです。) 22... Rf7 23. Rxg4+-
これも強力そうに見えてやや不正確です。21. Qc4! Bxe5 22. Qxe6+ Rf7 23. dxe5 Ng4 24. Bxg7! c5 25. Qc4+/- ならば、白は大きなアドバンテージをキープしています。
23... Qxd4 24. Qxe6+ Rf7 25. Bc1 も考えましたが、白がイニシアチブをキープしているでしょう。
白キングは危なそうに見えますが、24. b3! Rf7 25. Rd1+/= が白のベスト。Bh6-Bc1 からキングをサポートし、h5-h6 と仕掛ければ、やはり白にチャンスがあります。
白がドローを逃がす最後のミス。25. Bc1! Bxg1 26. h6! gxh6 27. Qg6+!(私は試合中、この手を読み落としていました。) 27... Rg7 28. Qe6+ Rf7 29. Qg6+ こうなれば、黒はルークアップですが、パペチュアルチェックを受け入れざるをえません。
この手はChopra にとって予想外だったでしょう。黒は一度キングをかわしておくことで、次に安全にルークを取り、勝ちに十分なマテリアルを手に入れることができます。
27. Qxf7 Bxh6-/+ でもピースアップなので、順当に黒が勝つと思いますが、ルークがないより勝負はできます。
これで白のチェックが途切れ、黒の勝ちです。残りはおまけ。
勝ちはしたものの、薄氷の勝利でした。2000台相手にこのチェスは、少し危ういですね...続いて午後に行われたBattey とのゲームへ。
今まで3... c5!? ばかりでしたが、FIDE公式戦では初めて、こちらのラインを試します。
ここは様々なセットアップが考えられますが、私が勉強したのはこのようにナイトが端に跳ぶ変化です。これにより、Nf3-Nh4 からビショップが捕まることなく、ナイトをf5 まで運べます。
10... dxc4 11. Na5 このようにd5 のマスを空けて戦うのが一般的であることは知っていましたが、cファイルを開けさせても大きな問題はないと考え、ポーンは相手から取らせることにします。
Kislik からは、16... h6 17. Nd2 Bh7= と指してはどうかと提案されました。ビショップをパッシブに使うか、それともe4 で交換してしまうかは、判断の難しいところでしょう。
f5 までポーンを伸ばさせたのはミスだったかと思いましたが、コンピュータはそこまで白良しの評価を出しません。19... exf5 20. Qb3 Nb6 21. gxf5 Qd7= ぐらいでイコール評価です。確かにこうして見ると、白のe5、f5 のポーンはさほど脅威的ではなく、むしろf5 が落ちないよう、白は注意しなけれないけません。
20. Qb3! Qxb3 21. axb3 a6 22. b4+/= これも試合後、Kislik の指摘です。
このナイトのマヌーバリングは、白の20. a4 を見た時点で考えていました。弱くなったb4 のマスを目指してナイトを組み替えます。
ところが予想外だったのが、ここからの白のアタックプランです。キングサイドはしばらく問題ないと思っていましたが、Battey は素晴らしいセンスを発揮し、ポーンサクリファイスから攻撃のチャンスをつかみます。
24... fxe5 25. g5!+/- でも本譜同様、白マスビショップが攻めに参加して黒は厳しい展開となります。
しかし、ここまで良かったはずの白がここで緩手。28. Bxd5!! Rxf1+ 29. Rxf1 Qxd5 30. e6+- ならば、即白勝ちでした。
これで多少生き延びましたが、まだ白は1ポーンを補うイニシアチブがあります。黒はずっと攻撃されている、d5 のポーンを何とかしなければいけません。
この付近数手は、正直どう改善すれば良かったのか... 白は素晴らしいプランで、再び大きなアドバンテージを獲得します。
黒は次のRc1-Rc8 を防がなければいけません。もう一つの選択肢としては、33... e3 34. Qd3 Rc7 35. Qxe3+/- があります。eポーンとgポーンのどちらを捨てるかは、黒としては悩むところですが、白としてはさほど変わらぬプランで勝ちのエンドゲームを手繰り寄せることができます。
36. Qxg7+? Kxg7 37. Bxd5 Bd2 38. Bxe4 Bc1 であれば、黒にはドローチャンスのあるエンドゲームとなります。本譜のようにクイーンをしばらく残し、キングをセンターに運べば、異色ビショップかつ、シメトリカルなポーンストラクチャーでも、白はd5、e4 のポーンを取って勝つことが可能です。
時間の増える40手目でクイーン交換を決断。しかし、この異色ビショップエンディングが望みがないものだとはまだ気づいていませんでした。
白勝ちを確実にする重要な一手。黒のBh6-Be3 を防ぎます。43. Bxe4?! Be3 44. d5 Bd4 45. e6 Bc5 ならば、白が勝つのはずっと大変でしょう。
白はキングをf5 まで進めることで、パスポーンを6段目にならべることができ、そうなれば黒はお手上げです。異色ビショップのエンドゲームはハンガリーでも何回か持ちましたが、このように決着がついたのは初めてです。
Chopra, A (IND, 2051) - Kojima, S (FM, JPN, 2339)
CAISSA IM November (9)
1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nd2 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7 8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 e6 11. Bd2 Ngf6 12. O-O-O Be7 13. Ne4 Nxe4 14. Qxe4 Nf6 15. Qd3 O-O 16. Kb1 Qb6?!
CAISSA IM November (9)
クイーンがd3 に退き、すぐにg2-g4 と仕掛けるラインは、ここ数年流行の兆しがあります。このポジションでは16... c5 が自然であることは分かっていましたが、自分のお気に入りであるこのクイーンムーブを指さずにはいられませんでした。実際には白のNg3-Ne4 がもっと遅く、g2-g4 がまだ準備できていない状態でなければ、この手はさほど働きません。
17. g4! Nxg4 18. Rdg1 f5 19. Ne5!
19. Qe2 と先にe6 をアタックする手ばかりを考えており、それを無視してナイトが入る手は考えていませんでした!白は邪魔なg4 のナイトをどかし、黒キングへのラインを開きます。
19... Nxf2?
黒はポーンを返してでも、やや不利なポジションを受け入れなければなりませんでした。19... Bf6 20. Nxg4 fxg4 21. Rxg4 Rad8 22. c3 Kh8 23. Rhg1+/=
20. Bxh6?!
クイーンを無視してビショップが跳び込む手はとても強力に見えますが、ベストではありません。ここからは大分、白の不正確な手に助けられることになります。局後のKislik の指摘は、20. Qe3! Ng4 (20... Bf6 21. Nd7 Qxd4 22. Nxf6+ Qxf6 23. Qxf2+- この3ポーンピースは、白のキングサイドアタックが両力な為、黒にチャンスはないでしょう。) 21. Nxg4 fxg4 22. Qxe6+(ここでチェックができ、g4 はルークで取れるのが、20. Qe3! のポイントです。) 22... Rf7 23. Rxg4+-
20... Bf6 21. Qg3?!
これも強力そうに見えてやや不正確です。21. Qc4! Bxe5 22. Qxe6+ Rf7 23. dxe5 Ng4 24. Bxg7! c5 25. Qc4+/- ならば、白は大きなアドバンテージをキープしています。
21... Ng4 22. Nxg4 fxg4 23. Qxg4 Bxd4
23... Qxd4 24. Qxe6+ Rf7 25. Bc1 も考えましたが、白がイニシアチブをキープしているでしょう。
24. Qxe6+?
白キングは危なそうに見えますが、24. b3! Rf7 25. Rd1+/= が白のベスト。Bh6-Bc1 からキングをサポートし、h5-h6 と仕掛ければ、やはり白にチャンスがあります。
24... Rf7 25. Rxg7+?
白がドローを逃がす最後のミス。25. Bc1! Bxg1 26. h6! gxh6 27. Qg6+!(私は試合中、この手を読み落としていました。) 27... Rg7 28. Qe6+ Rf7 29. Qg6+ こうなれば、黒はルークアップですが、パペチュアルチェックを受け入れざるをえません。
25... Kh8!!
この手はChopra にとって予想外だったでしょう。黒は一度キングをかわしておくことで、次に安全にルークを取り、勝ちに十分なマテリアルを手に入れることができます。
26. c3 Bxg7 27. Bxg7+?!
27. Qxf7 Bxh6-/+ でもピースアップなので、順当に黒が勝つと思いますが、ルークがないより勝負はできます。
27... Rxg7 28. Qh6+ Kg8 29. Qe6+ Kh7 30. Qe4+ Kh8-+
これで白のチェックが途切れ、黒の勝ちです。残りはおまけ。
31. Rf1 Qb5 32. c4 Qg5 33. h6 Re7 34. Qd4+ Qe5 35. Qd2 Qe4+ 36. Ka1 Qxc4 37. Qf2 Qe6 38. h7 Rae8 39. a3 b6 40. Qd4+ Qe5 41. Qc4 c5 42. Qg4 Qd4 0-1
勝ちはしたものの、薄氷の勝利でした。2000台相手にこのチェスは、少し危ういですね...続いて午後に行われたBattey とのゲームへ。
Battey, A (IM, USA, 2361) - Kojima, S (FM, JPN, 2339)
CAISSA IM November (10)
1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5!?
CAISSA IM November (10)
今まで3... c5!? ばかりでしたが、FIDE公式戦では初めて、こちらのラインを試します。
4. Nf3 e6 5. Be2 Nd7 6. O-O Bg6 7. Nbd2 Nh6
ここは様々なセットアップが考えられますが、私が勉強したのはこのようにナイトが端に跳ぶ変化です。これにより、Nf3-Nh4 からビショップが捕まることなく、ナイトをf5 まで運べます。
8. Nb3 Nf5 9. Bd2 Be7 10. c4 O-O!?
10... dxc4 11. Na5 このようにd5 のマスを空けて戦うのが一般的であることは知っていましたが、cファイルを開けさせても大きな問題はないと考え、ポーンは相手から取らせることにします。
11. cxd5 cxd5 12. g4 Nh4 13. Nxh4 Bxh4 14. f4 Be4 15. Bb4 Be7 16. Bc3 f5!?
Kislik からは、16... h6 17. Nd2 Bh7= と指してはどうかと提案されました。ビショップをパッシブに使うか、それともe4 で交換してしまうかは、判断の難しいところでしょう。
17. Nd2 Rc8 18. Nxe4 fxe4 19. f5 Qb6?!
f5 までポーンを伸ばさせたのはミスだったかと思いましたが、コンピュータはそこまで白良しの評価を出しません。19... exf5 20. Qb3 Nb6 21. gxf5 Qd7= ぐらいでイコール評価です。確かにこうして見ると、白のe5、f5 のポーンはさほど脅威的ではなく、むしろf5 が落ちないよう、白は注意しなけれないけません。
20. a4
20. Qb3! Qxb3 21. axb3 a6 22. b4+/= これも試合後、Kislik の指摘です。
20... a5 21. Kh1 Nb8!?
このナイトのマヌーバリングは、白の20. a4 を見た時点で考えていました。弱くなったb4 のマスを目指してナイトを組み替えます。
22. Qd2 Nc6 23. f6!
ところが予想外だったのが、ここからの白のアタックプランです。キングサイドはしばらく問題ないと思っていましたが、Battey は素晴らしいセンスを発揮し、ポーンサクリファイスから攻撃のチャンスをつかみます。
23... gxf6 24. Qh6 Qd8
24... fxe5 25. g5!+/- でも本譜同様、白マスビショップが攻めに参加して黒は厳しい展開となります。
25. g5! fxg5 26. Bg4 Kh8 27. Bxe6 Rc7 28. Rxf8+?
しかし、ここまで良かったはずの白がここで緩手。28. Bxd5!! Rxf1+ 29. Rxf1 Qxd5 30. e6+- ならば、即白勝ちでした。
28... Bxf8 29. Qh3 Nb4
これで多少生き延びましたが、まだ白は1ポーンを補うイニシアチブがあります。黒はずっと攻撃されている、d5 のポーンを何とかしなければいけません。
30. Rf1 Rg7 31. Qf5!
この付近数手は、正直どう改善すれば良かったのか... 白は素晴らしいプランで、再び大きなアドバンテージを獲得します。
31... Be7 32. Bxb4! Bxb4 33. Rc1 Rc7
黒は次のRc1-Rc8 を防がなければいけません。もう一つの選択肢としては、33... e3 34. Qd3 Rc7 35. Qxe3+/- があります。eポーンとgポーンのどちらを捨てるかは、黒としては悩むところですが、白としてはさほど変わらぬプランで勝ちのエンドゲームを手繰り寄せることができます。
34. Rxc7 Qxc7 35. Qxg5 Qg7 36. Qe3!+-
36. Qxg7+? Kxg7 37. Bxd5 Bd2 38. Bxe4 Bc1 であれば、黒にはドローチャンスのあるエンドゲームとなります。本譜のようにクイーンをしばらく残し、キングをセンターに運べば、異色ビショップかつ、シメトリカルなポーンストラクチャーでも、白はd5、e4 のポーンを取って勝つことが可能です。
36... Qf8 37. Kg2 Qd8 38. Qf4 b6 39. Kf1 Be7 40. Qf7 Qf8
時間の増える40手目でクイーン交換を決断。しかし、この異色ビショップエンディングが望みがないものだとはまだ気づいていませんでした。
41. Qxf8+ Bxf8 42. Bxd5 Bh6 43. Ke2!
白勝ちを確実にする重要な一手。黒のBh6-Be3 を防ぎます。43. Bxe4?! Be3 44. d5 Bd4 45. e6 Bc5 ならば、白が勝つのはずっと大変でしょう。
43... Bc1 44. b3 e3 45. Bf3 Kg7 46. h4 Kf8 47. Kd3 h6 48. Ke4 1-0
白はキングをf5 まで進めることで、パスポーンを6段目にならべることができ、そうなれば黒はお手上げです。異色ビショップのエンドゲームはハンガリーでも何回か持ちましたが、このように決着がついたのは初めてです。
1 件のコメント:
お疲れ様でした〜‼ 長く厳しい大会でしたね。でも、evenで終了、ということで、マイナスより、いいですよね‼
休みをとって次に向かってください‼ 頑張ってください‼
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