昨日は再び1日2試合、アメリカのIM 2人との対戦です。ここで1.5P でも取れればレイティングが+ になるチャンスもあると思い、厳しいスケジュールながら2試合とも勝負にいくことにします。
先月のCAISSA とは手を変えてみます。このラインも何回か実戦での経験があり、定跡には詳しいと思っていたのですが、試合後に聞いた相手の研究は膨大なものでした。
ここで先月のGajek Radslow戦の13... 0-0 から外れます。黒は早めにセンターを固め、白からのブレイクe4-e5 を止めておきます。
ここは14. c5 と突いて、ダブルポーンを解消する唯一のチャンスだと知りつつも、あえて形をこのままで戦うことにしました。このcファイルのダブルポーンは、これまでは極力避けるようにしてきましたが、最近は勉強のために受け入れることにしています。
白が形の悪さと引き換えに手に入れるのは、将来的なキングサイドのブレイクチャンスです。黒はこの時点でそれを止め、ゆっくりとc4,e4 にプレッシャーをかけていきます。
このナイトのマヌーバリングは見落としていました!このナイトはd6 を守りつつ、将来的にはc5 からe4 を狙います。
白はギリギリc4,e4 を守りつつ、g4-g5 の準備を整えます。ポーンストラクチャーは悪いながら、決定的な突破のチャンスを与えなければ、チャンスは巡ってくると信じていました。
これは非常に深い手です。7段目を守ることで、白のキングサイドのブレイクに備えつつ、dファイルにルークを重ねることで、白がBxc5 と取りにくいようにします。
白は攻めを焦ってはいけません。27. g5?! hxg5 28. hxg5 f6! から、すぐにナイトが戦場に戻ってくることになります。さらにKg8-Kf8-Ke7, Rc8-Rh8 と指せば、オープンになったhファイルを黒も抑えることが可能です。
黒はa7-a5、Qc6-Qa4 といった狙いがあり、これに対抗する方法を考えます。この手はa7-a5 の後に弱くなったb6 をアタックしておくのと、2段目にあげてb2 を守る狙いがあります。
センターからルークが離れることに一抹の不安はありますが、g4-g5 の狙いを多少でも見せておかなければ、ジリ貧だと考えました。
残り時間が3分を切り、ピースを捨ててアタックすることに決めました。実戦的にはこれしかないと思っていましたが、Kislik には試合後、33. Ba3 Qa4 34. Bxc5 dxc5 35. Be2! ならば、黒良しなのは明らかながら、勝てるかどうかは分からないと指摘されました。確かにdファイルを開くことを恐れすぎ、多少劣勢のポジションを受け入れることができなかったのは、私のまだ甘いところです。
この手を見るまで、白のチャンスは十分あると考えていました。Rb1-Rh1,Rg5-Rh5 からhファイルのコントロール、Qe3-Qb3,c4-c5 からb3-g8 ダイアゴナルのコントロールの狙いで、ピースの展開は十分だと思っていたのです。ここでのKislik のディフェンスは、見事というべきものです。まずは黒はQc6-Qb6 からクイーン交換を狙います。
さらにポーンを突き捨てて、b3-g8 のダイアゴナルを閉じると同時に、クイーンをキングサイドに振れるようにします。まさに攻防一体といった手です。
39. cxd5 Qc3 では白にチャンスはないと思い、本譜を選びましたが、結局はダメでした。
残り2秒で指した手は確かにダメでしたが、試合後にしてきたナイトで守る手でも、本譜と同じアイディアで黒が勝てそうだと指摘されました。40. Ne4 bxc4 41. Qxa4 Bxd5 42. Rh1 Qb6+-+
ここまで1勝2ドローのKislik でしたが、昨日は実力差を見せつけられるようなゲーム内容でした。やはり2400台のIM は強いですね。この敗戦から2時間もせずに、もう一人のアメリカのIM Battey とのゲームを迎えます。
自分でもよくこう指す決断をしたと思います。Battey は私とLiu のゲームを研究して、序盤の用意してきていることは明らかだったので、これを外しにいきます。数試合見ただけの、c4 セットアップで勝負です!
こういったEnglish では一般的な手です。黒がキングサイドでアクションを起こす前に、白はクイーンサイドのポーンを伸ばして対抗します。
13.Bb2 から、もう少しゆっくり組むプランもあったっと思いますが、ここでは早々に仕掛けてクイーンサイドの形を決めます。
この後、白がc5 のマスを抑えてポジショナルアドバンテージを得ると考えていましたが、ここから黒の不思議な手により、ポジションはカオスと化します。
自分の目を疑いました。このように侵入してきたクイーンが、果たして生きて帰れるのでしょうか。
このポジションはコンピュータでも評価が目まぐるしく変わり、何がベストかは簡単に判断できません。例えば、20. e3 Qg4 21. h3 Qh5 22. Ba3 Rf7 ならば黒のクイーンは生きており、しかも黒がさほど悪いとは思えなくなります。私は本譜でとりあえずルークをアタックしてから、有効な手を考えようとしました。ところが...
非常に力強いエクスチェンジサクリファイスです!20... Rfd8?! 21. e3 Qg4 22. h3 Qh5 23. Nd6+/- では、黒は面白くないでしょう。
エクスチェンジをすぐに取るより、クイーントラップのチャンスを残します。21. dxe4!? Rxa4 22. Qxa4 Nc3 23. Qa7 Bxc4 24. Bxf8 Bxf8! このダブルエクスチェンジサクリファイスでも、黒は強力なダブルビショップにより、十分代償がありそうです。
試合後にKislik が指摘したのは、エクスチェンジ取りを諦め、21. Bb2! exd3 22. exd3 Qg4 23. Bxg7 Kxg7 24. f4+/= と指して、クイーンをプレーに参加させない変化です。な、なるほどぉ。
白はエクスチェンジアップにこそなりましたが、黒マスが弱く、a4 のナイトは次に跳ぶマスがありません。黒は十分にエクスチェンジを補って戦うことができます。
b4 に来るピースはナイトだと思い込んでいました。仕方なくルークをeファイルから戻します。
最後は向こうからドローオファー。白からはポジションを改善する方法が思い浮かばなかったため、これを受けることにしました。
0.5/2 でしたが、両方とも勝負にいって良かったと思っています。久々にハンガリーでレイティングはマイナスになる可能性が高いですが、これも勉強料です。
そして少しフライング気味ですが、今日の試合結果を。今日は午前中のラウンドで、インドのChopra にひやひやの勝利。久々の勝ちが大変嬉しかったので、昼食は5月以来となる近所のイタリアンへ行ってきました。
Kojima, S (FM, JPN, 2339) - Kislik, E (IM, USA, 2413)
CAISSA IM November (7)
1. Nf3 c5 2. c4 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e6 6. g3!?
CAISSA IM November (7)
先月のCAISSA とは手を変えてみます。このラインも何回か実戦での経験があり、定跡には詳しいと思っていたのですが、試合後に聞いた相手の研究は膨大なものでした。
6... Qb6 7. Nb3 Ne5 8. e4 Bb4 9. Qe2 d6 10. f4 Nc6 11. Be3 Bxc3+ 12. bxc3 Qc7 13. Bg2 e5!?
ここで先月のGajek Radslow戦の13... 0-0 から外れます。黒は早めにセンターを固め、白からのブレイクe4-e5 を止めておきます。
14. O-O
ここは14. c5 と突いて、ダブルポーンを解消する唯一のチャンスだと知りつつも、あえて形をこのままで戦うことにしました。このcファイルのダブルポーンは、これまでは極力避けるようにしてきましたが、最近は勉強のために受け入れることにしています。
14... b6 15. f5 h6
白が形の悪さと引き換えに手に入れるのは、将来的なキングサイドのブレイクチャンスです。黒はこの時点でそれを止め、ゆっくりとc4,e4 にプレッシャーをかけていきます。
16. Rfd1 Ba6 17. Bc1 Nd8!
このナイトのマヌーバリングは見落としていました!このナイトはd6 を守りつつ、将来的にはc5 からe4 を狙います。
18. Ba3 Nb7 19. Bf1 O-O 20. Nd2 Rfd8 21. Qe3 Rac8 22. Bb4 Nc5 23. Be2
白はギリギリc4,e4 を守りつつ、g4-g5 の準備を整えます。ポーンストラクチャーは悪いながら、決定的な突破のチャンスを与えなければ、チャンスは巡ってくると信じていました。
23... Bb7 24. Bf3 Qc6 25. g4 Rd7!
これは非常に深い手です。7段目を守ることで、白のキングサイドのブレイクに備えつつ、dファイルにルークを重ねることで、白がBxc5 と取りにくいようにします。
26. h4 Nh7 27. Kf2
白は攻めを焦ってはいけません。27. g5?! hxg5 28. hxg5 f6! から、すぐにナイトが戦場に戻ってくることになります。さらにKg8-Kf8-Ke7, Rc8-Rh8 と指せば、オープンになったhファイルを黒も抑えることが可能です。
27... f6 28. Rab1
黒はa7-a5、Qc6-Qa4 といった狙いがあり、これに対抗する方法を考えます。この手はa7-a5 の後に弱くなったb6 をアタックしておくのと、2段目にあげてb2 を守る狙いがあります。
28... Rcd8 29. Rb2 Ba6 30. Be2 Nf8 31. Rg1
センターからルークが離れることに一抹の不安はありますが、g4-g5 の狙いを多少でも見せておかなければ、ジリ貧だと考えました。
31... Bb7 32. Bf3 a5 33. g5?!
残り時間が3分を切り、ピースを捨ててアタックすることに決めました。実戦的にはこれしかないと思っていましたが、Kislik には試合後、33. Ba3 Qa4 34. Bxc5 dxc5 35. Be2! ならば、黒良しなのは明らかながら、勝てるかどうかは分からないと指摘されました。確かにdファイルを開くことを恐れすぎ、多少劣勢のポジションを受け入れることができなかったのは、私のまだ甘いところです。
33... hxg5 34. hxg5 fxg5 35. Rxg5 axb4 36. cxb4 Na4 37. Rb1 b5!?
この手を見るまで、白のチャンスは十分あると考えていました。Rb1-Rh1,Rg5-Rh5 からhファイルのコントロール、Qe3-Qb3,c4-c5 からb3-g8 ダイアゴナルのコントロールの狙いで、ピースの展開は十分だと思っていたのです。ここでのKislik のディフェンスは、見事というべきものです。まずは黒はQc6-Qb6 からクイーン交換を狙います。
38. Qb3 d5!
さらにポーンを突き捨てて、b3-g8 のダイアゴナルを閉じると同時に、クイーンをキングサイドに振れるようにします。まさに攻防一体といった手です。
39. cxd5 Qc3 では白にチャンスはないと思い、本譜を選びましたが、結局はダメでした。
39. exd5 Qh6! 40. Rbg1
残り2秒で指した手は確かにダメでしたが、試合後にしてきたナイトで守る手でも、本譜と同じアイディアで黒が勝てそうだと指摘されました。40. Ne4 bxc4 41. Qxa4 Bxd5 42. Rh1 Qb6+-+
40... Nh7 41. Ne4 Nxg5 42. Rxg5 bxc4 43. Qxa4 Bxd5 44. Rh5 Qf4 0-1
ここまで1勝2ドローのKislik でしたが、昨日は実力差を見せつけられるようなゲーム内容でした。やはり2400台のIM は強いですね。この敗戦から2時間もせずに、もう一人のアメリカのIM Battey とのゲームを迎えます。
Kojima, S (FM, JPN, 2339) - Battey, A (IM, USA, 2361)
CAISSA IM November (8)
1. Nf3 f5 2. d3 Nc6 3. g3!?
CAISSA IM November (8)
自分でもよくこう指す決断をしたと思います。Battey は私とLiu のゲームを研究して、序盤の用意してきていることは明らかだったので、これを外しにいきます。数試合見ただけの、c4 セットアップで勝負です!
3... Nf6 4. Bg2 g6 5. O-O Bg7 6. c4 e5 7. Nc3 O-O 8. Rb1
こういったEnglish では一般的な手です。黒がキングサイドでアクションを起こす前に、白はクイーンサイドのポーンを伸ばして対抗します。
8... a5 9. a3 d6 10. b4 axb4 11. axb4 h6 12. b5 Ne7 13. c5!?
13.Bb2 から、もう少しゆっくり組むプランもあったっと思いますが、ここでは早々に仕掛けてクイーンサイドの形を決めます。
13... Be6 14. b6 c6 15. Qc2 Qb8 16. cxd6 Qxd6 17. Na4
この後、白がc5 のマスを抑えてポジショナルアドバンテージを得ると考えていましたが、ここから黒の不思議な手により、ポジションはカオスと化します。
17... Nd7 18. Nd2 Qd4!?
自分の目を疑いました。このように侵入してきたクイーンが、果たして生きて帰れるのでしょうか。
19. Nc4 Nd5 20. Ba3!?
このポジションはコンピュータでも評価が目まぐるしく変わり、何がベストかは簡単に判断できません。例えば、20. e3 Qg4 21. h3 Qh5 22. Ba3 Rf7 ならば黒のクイーンは生きており、しかも黒がさほど悪いとは思えなくなります。私は本譜でとりあえずルークをアタックしてから、有効な手を考えようとしました。ところが...
20... e4!?
非常に力強いエクスチェンジサクリファイスです!20... Rfd8?! 21. e3 Qg4 22. h3 Qh5 23. Nd6+/- では、黒は面白くないでしょう。
21. h3!?
エクスチェンジをすぐに取るより、クイーントラップのチャンスを残します。21. dxe4!? Rxa4 22. Qxa4 Nc3 23. Qa7 Bxc4 24. Bxf8 Bxf8! このダブルエクスチェンジサクリファイスでも、黒は強力なダブルビショップにより、十分代償がありそうです。
試合後にKislik が指摘したのは、エクスチェンジ取りを諦め、21. Bb2! exd3 22. exd3 Qg4 23. Bxg7 Kxg7 24. f4+/= と指して、クイーンをプレーに参加させない変化です。な、なるほどぉ。
21... exd3 22. exd3 Qf6 23. Bxf8 Bxf8
白はエクスチェンジアップにこそなりましたが、黒マスが弱く、a4 のナイトは次に跳ぶマスがありません。黒は十分にエクスチェンジを補って戦うことができます。
24. Rfe1 Bf7 25. Kh2 f4 26. Re4 g5 27. Rbe1 Bb4
b4 に来るピースはナイトだと思い込んでいました。仕方なくルークをeファイルから戻します。
28. Rb1 f3 29. Bf1 h5 30. Ne3 Bd6 31. Nc4 Be7 32. Rbe1 Bb4 33. Rb1 Be7 1/2-1/2
最後は向こうからドローオファー。白からはポジションを改善する方法が思い浮かばなかったため、これを受けることにしました。
0.5/2 でしたが、両方とも勝負にいって良かったと思っています。久々にハンガリーでレイティングはマイナスになる可能性が高いですが、これも勉強料です。
そして少しフライング気味ですが、今日の試合結果を。今日は午前中のラウンドで、インドのChopra にひやひやの勝利。久々の勝ちが大変嬉しかったので、昼食は5月以来となる近所のイタリアンへ行ってきました。
4 件のコメント:
ハードな毎日をこなしていますね‼
勝ちが入り、良かったですね! おめでとうございます。
残り、まだありますが頑張ってください‼
海を挟んだ日本では、Japanオープンが行われています(^^)
Yumiさん いつもコメントありがとうございます。
長かったトーナメントもあと1試合です。
Japan Open も結果をチェックしていますよ!
>勉強料
囲碁・将棋の方では「授業料」と言っています。こちらの方が分かり易いのでは?
Yamagishi さん コメントありがとうございます。
確かにそうでした。次からそう書くようにしましょう。
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