更新が遅れ気味ですが、追いつけるように頑張って書いていきます。オリンピアードの10Rは、同じアジアのミャンマーとの対戦になりました。ミャンマーのチェスは謎が多く、プレーヤーの多くが2500に到達したことがあるものの、その後数字を落として2400~2200に落ち着いています。私の相手のIM もベストは2550オーバー、数年前は2380、そして現在は2470と数字の振れ幅が激しいくなっています。今大会ではGMから黒でもポイントを取っているため、強敵と認識してゲームに挑みました。
これまでデータベースに残っている試合は全て2. g3 だったのに、いきなり外してきます。ただし、この形は私も経験があります。
直前までg2-g4-g5 のアイディアを警戒していたはずが、ここでふっと頭から抜けてしまいました。しかし、よく読んでみれば11. g4 Bg6 12. g5 Nh5 13. h4 Qa5! 14. a3 Bb8 と進んで大丈夫です。次にQa5-Qc7 があるため、h5 のナイトはトラップされません。
この形では、白の弱いb3 のポーンを狙うのが効果的だと考えました。b5 のマスをサポートし、ナイトに跳ばれないようにすれば、c6-c5 のチャンスも生まれます。
このナイトは好位置に見えますが、特に続きがありません。逆に連携したナイトをg7-g5 から崩すスレットが生まれるため、白はここでどうするか悩みます。本譜のようにポーンでf5 のナイトを支える選択肢はありえますが、キング周りが弱めてくれるのであれば黒にとってありがたいことは言うまでもありません。
ここでクイーンサイドから仕掛けます。このポーンはすぐには取られませんし、もし将来的に取られてもNc5-Nb3 が狙えるのは黒にとって良いでしょう。
単に20... cxb4 とポーンを交換してパスポーンを作る選択肢もありましたが、私はh4 のナイトが不安定なことを利用して手が作れるのではないかと考えました。
21... g6! 22. Ng3 d4! 23. Bd2 dxe3 24. fxe3 cxb4 25. axb4 Nxg4!-+ ナイトは本譜のようにd5 に跳ぶのをメインで考えており、このアイディアはさほど強くないと勘違いしていました。d7 のナイトを取らせても、g3 のナイトを浮かせていれば結局黒が駒得ですね。
私が思い描いたのはこのナイトビショップ交換で、c3 に刺さったパスポーンは強力だと考えました。もちろん、g7-g6 のスレットも残しています。
白はほぼこうするしか手がありません。この局面は丁寧にやれば黒勝ちで、31... Bxa3 32. Bxa4 Bb2-/+ くらいで良かったのですが、何が決定的になるか難しく考えすぎてしまいました。駒得はしていても、h7 のビショップが一時的に使えないことが評価を難しくするポイントです。
試合中に考えていながら踏み込めなかったのは、32... Ra5! 33. Bxa4 hxg4 34. hxg4 Rg5 35. f3 Bd6 36. Rh1 Qg3+ 37. Kf1 Re5!-+ こちらの変化です。最後のルークをg5 から振る手が見えず、指すのをためらってしまいました。e3-e4 と突かせれば、f4 とd4 に穴ができて黒はさらに攻めやすくなります。他にも32... Qd8! も良い手で、d5 とa8 の両方でチェックになるため、白のビショップはその場にとどまることもa4 を取ることもできずに困ってしまいます。
これで2ポーンピースとなり、キングも危ないので勝ちやすいかと思いましたが、h7 のビショップをどうするかという課題がまだ残っています。そして甘い手が出てしまいました。
白の正解の手は見えていませんでしたが、この手は本当にラッキーでした。39. Qc5! Rb7 40. g5! Qd8 ならばh7 のビショップをプレーに戻すことができず、形勢評価はまたかなり難しくなります。
ナイトフォークからさらにピースを取れてしまいました。残りはよっぽほひどいミスをしなければ黒勝ちは揺るぎません。
白はポーンを全て捌き、ルークも交換して私がビショップナイトのメイトを失敗することに託すしかないでしょう。ビショップナイトのメイトはできますが、ルークを交換する理由はありません。
ビショップナイトのメイトでも出てくる、2マイナーピースで白マス黒マスを両方抑える位置取りです。g4 でのルークのチェックも支え、メイトまで一直線となります。
白のポーンを1つ残しているため、ステールメイトにもなりません。ここまで苦しんだ黒番でしたが、ここで大きな勝利を挙げました!
オープンチームは相手全員が格上のミャンマー戦を2勝2ドローで乗り切り、最終戦に向けて弾みをつけることができました。一方で女子チームは同格に近いモロッコと、今大会の初の全ドローです。相手がマッチでの負けを避けるため、色々と状況を見ながらオファーしてきたそうです。こうした駆け引きも、オリンピアードのようなチーム戦ならではですね。
そして昨日すでに終えてしまった最終戦ですが、オープンはチュニジア、女子はアイルランドとの対戦でした。チュニジアは前回バクー大会でも対戦し、その際は3.5-0.5 で勝っています。しかし、今年はメンバーを全員入れ替え、はるかにパワーアップしてきました。そちらの最終戦の記事も後程お届けしようと思います。
Wynn, Z H (IM, MYA, 2470) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
Batumi Olympiad (10)
1. Nf3 d5 2. e3!?
Batumi Olympiad (10)
これまでデータベースに残っている試合は全て2. g3 だったのに、いきなり外してきます。ただし、この形は私も経験があります。
2... Nf6 3. c4 c6 4. b3 Bg4 5. Bb2 e6 6. h3 Bh5 7. Be2 Nbd7 8. O-O Bd6 9. d3 O-O 10. Nbd2 Re8!? 11. Re1
直前までg2-g4-g5 のアイディアを警戒していたはずが、ここでふっと頭から抜けてしまいました。しかし、よく読んでみれば11. g4 Bg6 12. g5 Nh5 13. h4 Qa5! 14. a3 Bb8 と進んで大丈夫です。次にQa5-Qc7 があるため、h5 のナイトはトラップされません。
11... h6 12. a3 a5 13. Nd4 Bg6 14. cxd5 exd5 15. N2f3 Qb6!
この形では、白の弱いb3 のポーンを狙うのが効果的だと考えました。b5 のマスをサポートし、ナイトに跳ばれないようにすれば、c6-c5 のチャンスも生まれます。
16. Nh4 Bh7 17. Ndf5?! Bf8
このナイトは好位置に見えますが、特に続きがありません。逆に連携したナイトをg7-g5 から崩すスレットが生まれるため、白はここでどうするか悩みます。本譜のようにポーンでf5 のナイトを支える選択肢はありえますが、キング周りが弱めてくれるのであれば黒にとってありがたいことは言うまでもありません。
18. g4 a4! 19. b4 c5!
ここでクイーンサイドから仕掛けます。このポーンはすぐには取られませんし、もし将来的に取られてもNc5-Nb3 が狙えるのは黒にとって良いでしょう。
20. Bc3 Qd8!?
単に20... cxb4 とポーンを交換してパスポーンを作る選択肢もありましたが、私はh4 のナイトが不安定なことを利用して手が作れるのではないかと考えました。
21. Rb1 d4!?
21... g6! 22. Ng3 d4! 23. Bd2 dxe3 24. fxe3 cxb4 25. axb4 Nxg4!-+ ナイトは本譜のようにd5 に跳ぶのをメインで考えており、このアイディアはさほど強くないと勘違いしていました。d7 のナイトを取らせても、g3 のナイトを浮かせていれば結局黒が駒得ですね。
22. Bd2 Nd5 23. Bf3 Nc3
私が思い描いたのはこのナイトビショップ交換で、c3 に刺さったパスポーンは強力だと考えました。もちろん、g7-g6 のスレットも残しています。
24. Bxc3 dxc3 25. Bxb7 Ra7 26. bxc5 Nxc5 27. Bc6 Re6 28. Bb5 g6 29. Nd4 Qxh4 30. Nxe6 Nxe6 31. Kg2 h5
白はほぼこうするしか手がありません。この局面は丁寧にやれば黒勝ちで、31... Bxa3 32. Bxa4 Bb2-/+ くらいで良かったのですが、何が決定的になるか難しく考えすぎてしまいました。駒得はしていても、h7 のビショップが一時的に使えないことが評価を難しくするポイントです。
32. Rc1 Nc7
試合中に考えていながら踏み込めなかったのは、32... Ra5! 33. Bxa4 hxg4 34. hxg4 Rg5 35. f3 Bd6 36. Rh1 Qg3+ 37. Kf1 Re5!-+ こちらの変化です。最後のルークをg5 から振る手が見えず、指すのをためらってしまいました。e3-e4 と突かせれば、f4 とd4 に穴ができて黒はさらに攻めやすくなります。他にも32... Qd8! も良い手で、d5 とa8 の両方でチェックになるため、白のビショップはその場にとどまることもa4 を取ることもできずに困ってしまいます。
33. Bxa4 Bxa3 34. Rxc3 Bb4 35. Rc4 Bxe1 36. Qxe1 hxg4 37. hxg4
これで2ポーンピースとなり、キングも危ないので勝ちやすいかと思いましたが、h7 のビショップをどうするかという課題がまだ残っています。そして甘い手が出てしまいました。
37... Qf6 38. Qb4! Kg7 39. Rf4??
白の正解の手は見えていませんでしたが、この手は本当にラッキーでした。39. Qc5! Rb7 40. g5! Qd8 ならばh7 のビショップをプレーに戻すことができず、形勢評価はまたかなり難しくなります。
39... Nd5!-+
ナイトフォークからさらにピースを取れてしまいました。残りはよっぽほひどいミスをしなければ黒勝ちは揺るぎません。
40. Rxf6 Nxb4 41. g5 Rxa4 42. Rf4 f5 43. gxf6+ Kf7 44. Rd4 Kxf6 45. Kg3 Bg8 46. f4 Bb3 47. Rd6+ Kf7 48. e4 Bc2 49. f5 gxf5 50. exf5 Nxd3
白はポーンを全て捌き、ルークも交換して私がビショップナイトのメイトを失敗することに託すしかないでしょう。ビショップナイトのメイトはできますが、ルークを交換する理由はありません。
51. Rc6 Bd1!
ビショップナイトのメイトでも出てくる、2マイナーピースで白マス黒マスを両方抑える位置取りです。g4 でのルークのチェックも支え、メイトまで一直線となります。
52. Rd6 Rg4+ 53. Kh3 Nf4+ 54. Kh2 Rg2+ 55. Kh1 Bf3 56. Rd7+ Ke8 0-1
白のポーンを1つ残しているため、ステールメイトにもなりません。ここまで苦しんだ黒番でしたが、ここで大きな勝利を挙げました!
Open R10 Myanmar - Japan 1-3
Wynn Zaw Htun (IM, MYA, 2473) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 0-1
Nay Oo Kyaw Tun (IM, MYA, 2389) - Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) 1/2-1/2
Myo Naing (IM, MYA, 2327) - Yamada, Kohei (FM, JPN, 2128) 1/2-1/2
Win Tun (FM, MYA, 2235) - Matsuo, Tomohiko (CM, JPN, 2170) 0-1
Women R10 Japan - Morocco 2-2
Hoshino Karen (WFM, JPN, 1945) - Rania, Sbai (WIM, MAR, 1893) 1/2-1/2
Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1655) - Mayar ElIdrissi Firdaous (MAR, 1797) 1/2-1/2
Shibata Misaki (JPN, 1605) - Ibrahimi Khadija (MAR, 1531) 1/2-1/2
Hoshino, Meilin (JPN, 1533) - Alaoui Belghiti Chaimaa (WFM, MAR, 1689) 1/2-1/2
Wynn Zaw Htun (IM, MYA, 2473) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 0-1
Nay Oo Kyaw Tun (IM, MYA, 2389) - Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) 1/2-1/2
Myo Naing (IM, MYA, 2327) - Yamada, Kohei (FM, JPN, 2128) 1/2-1/2
Win Tun (FM, MYA, 2235) - Matsuo, Tomohiko (CM, JPN, 2170) 0-1
Women R10 Japan - Morocco 2-2
Hoshino Karen (WFM, JPN, 1945) - Rania, Sbai (WIM, MAR, 1893) 1/2-1/2
Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1655) - Mayar ElIdrissi Firdaous (MAR, 1797) 1/2-1/2
Shibata Misaki (JPN, 1605) - Ibrahimi Khadija (MAR, 1531) 1/2-1/2
Hoshino, Meilin (JPN, 1533) - Alaoui Belghiti Chaimaa (WFM, MAR, 1689) 1/2-1/2
オープンチームは相手全員が格上のミャンマー戦を2勝2ドローで乗り切り、最終戦に向けて弾みをつけることができました。一方で女子チームは同格に近いモロッコと、今大会の初の全ドローです。相手がマッチでの負けを避けるため、色々と状況を見ながらオファーしてきたそうです。こうした駆け引きも、オリンピアードのようなチーム戦ならではですね。
そして昨日すでに終えてしまった最終戦ですが、オープンはチュニジア、女子はアイルランドとの対戦でした。チュニジアは前回バクー大会でも対戦し、その際は3.5-0.5 で勝っています。しかし、今年はメンバーを全員入れ替え、はるかにパワーアップしてきました。そちらの最終戦の記事も後程お届けしようと思います。
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