8Rの相手はアゼルバイジャンのShahaliyev です。彼はここまで2勝5ドローで、トップを走るSindarov にドロー、Mirzoev に唯一土をつけたプレーヤーです。かなりの強敵と覚悟して挑んだラウンドでした。
Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Shahaliyev, I (AZE, 2376)
First Saturday GM October 2018 (8)
1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 d5 4. d4 Bb4 5. Bg5 Nbd7
First Saturday GM October 2018 (8)
5... h6 の人気に押され、しばらく遭遇することのなかった手ですが、こちらも立派なRogozin のメインラインです。長く対策が決まっていませんでしたが、最近流行の兆しを見せている新ラインを実戦投入します。
6. cxd5 exd5 7. Qc2 c5 8. g3!?
8. e3 Qa5 9. Bd3 c4 と進むことが多いですが、あえてキングサイドでフィアンケットを組み、d5 のポーンを攻撃できるようにします。
8... Qa5 9. Bg2 Ne4 10. Bd2 Bxc3!?
ここで調べていた実戦を外れました。10... Nxd2 11. Nxd2 cxd4 12. Nxd5 O-O 13. a3 Bxd2+ 14. Qxd2 Qxd2+ 15. Kxd2 Nc5 16. Rad1+/= はBacrot によって指されており、少し白が指しやすいと思います。
11. bxc3 c4 12. O-O O-O 13. Be1?!
ここでどうするか、とても悩みました。この形はカペルで指したCaro-Kann Panov の形と白黒逆でよく似ており、その際も私はビショップを退く悪い手を指しました。その試合とは違い、黒のナイトの位置が違うこと、色がそもそも違うので早いことから、白はダブルビショップをキープしてゆっくりe4 のナイトを消す余裕があると思いましたが、すぐにナイトをぶつけるほうがシンプルです。13. Ng5! Nxg5 (13... Nxd2?? 14. Qxh7#) 14. Bxg5+/- これで白はビショップのペアをキープしたうえで、展開の早さもd5 への攻撃チャンスもあります。恥ずかしながら、上記のメイト筋に気付いておらず、ビショップを取られるのを勿体ないと思ってしまいました...
13... Nb6 14. Nd2 Nd6!?
14... Qxc3 15. Bxe4 Qxa1 16. Bxh7+ Kh8 17. Nf3 Bh3 18. Ng5! Bxf1 19. Bc3 Qxc3 20. Qxc3 Bxe2 21. Bf5 はとても怪しい変化ですが、互いに指せそうです。
15. f3 Bf5
この手をノータイムで指され、驚きました。これから白がe2-e4 とポーンを伸ばそうとするのに対し、ビショップは単ににターゲットになると思っていたためです。しかし、実際にはg6 に下がるマスが確保できているため、ビショップがe4 のポーンをピンにした状態で長くターゲットにできます。これには少し困りましたが、いまさらe2-e4 を指さないわけにはいかないため、先まで少し考え、相手の誘いに乗ることにします。
16. e4 Bg6 17. g4!
これが大切な手で、ここを突いておくことでBe1-Bg3 のチャンスを作りつつ、黒のf7-f5 をストップしておきます。
17... dxe4 18. Nxe4
18. fxe4!? Nd5 19. Bg3! Ne3 20. Qb2 Nxf1 21. Rxf1 こうしてあえてエクスチェンジを捨て、厚いセンターとダブルビショップ、g6 のビショップの抑え込みで代償を図ることもできたとコンピュータは指摘します。私はNb6-Nd5 を恐れ、ポーンをセンターに並べる形をあえて取りませんでしたが、これはこれでd2 のマスが空き、白が面白く指せそうです。
18... Nd5 19. Qd2
19. Bd2 Rae8 20. Rae1 もありそうですが、厄介なピンは早めに外し、e4 のナイトを自由にすることを優先しました。
19... Rad8 20. Bh4!?
念願叶って黒マスビショップがアクティブになり、白がはっきりと盛り返してきました。ここはルークが避ける1手に見えますが、相手はここで長考に入ります。私ももちろん相手が何を読んでいるのかを察し、その複雑な変化を可能な限り考えます。
20... Nxe4!
ルークが避ける手ははっきり黒が悪く、黒はエクスチェンジを捨てて勝負するしかありません。20... Rd7? 21. Nc5! Rc7 22. Bg3! Rd8 23. Rae1+/-
21. fxe4 Qxc3 22. Qxc3 Nxc3 23. Bxd8 Rxd8
これがお互いにしっかり読んでたどり着いたポジションで、黒はエクスチェンジを捨てたことで白のセンターポーンを崩し、クイーンサイドにパスポーンを作っています。さらにd4, e4 のどちらかが落ちることが確定しているなか、落ち着いてベストのディフェンスを見つけることができました。
24. Rfe1 Rxd4 25. Rac1! Nxa2 26. Rcd1!
黒のバックランクが弱いことを利用し、ルークを交換してテンポを得る。これしか白が黒のパスポーンに対抗する方法はありません。
26... Rxd1 27. Rxd1 h6
検討戦ではMirozev も加わり、27... h5 が良かったのではないかと意見が出ましたが、これにも白に絶妙なアイディアがありました。28. gxh5! Bxh5 29. Ra1 Nc3 30. Rxa7 b5 31. Rb7 Ne2+ 32. Kf2 c3 33. Rb8+ Kh7 34. e5! これが見つけづらい手で、白はBf3-Be4+ の狙いを作ることで、黒に簡単にcポーンを伸ばさせません。h5 に移動したビショップがe2 のマスを守り、ナイトが素早くc1 を抑えられると思われたこの変化も、白はディフェンスできます。ただし、これを正確に読むのはとても難しいですね。
28. Ra1 Nc3 29. Rxa7 b5 30. Ra8+ Kh7 31. Rb8 Nxe4
ここで黒はbポーンを諦めました。この時点で負けがないことが分かり、安心して指すことができるようになりました。しかし、勝てるかどうかは別問題です。
32. Bxe4 Bxe4 33. Rxb5 Kg6
ここで相手からドローオファー。もちろんドローポジションですが、私には受ける理由がないため、とことんやることにします。
34. Rc5 Bd3 35. Kf2 Kf6 36. Ke3 g5 37. Kd4 Kg6 38. Re5 h5!
ドローを目指す側は、なるべくポーンを交換する。基本通りのプレーですね。
39. h3 hxg4 40. hxg4 f5 41. gxf5+ Bxf5 42. Kxc4 Bh3
完全にポーンを消され、さらにドロー模様が濃厚ですが、どのように最後までやるのか確認したく、付き合ってもらうことにしました。
43. Kd4 Kh5 44. Ke3 Kg4 45. Ra5 Bg2 46. Rc5 Ba8 47. Kf2 Kf4 48. Rc8 Be4 49. Rf8+ Kg4 50. Rg8 Kf4 51. Rf8+ Kg4 52. Ke3 Bg2 53. Kd4 Kg3 54. Ke5 g4 55. Kf5 Bf3 56. Kg5 Be2 57. Rf4 Bf3 58. Ra4 Bd1 59. Ra3+ Bf3 60. Rb3 Kf2 61. Kf4 Be2
かなり頑張って押し込んできましたが、gポーンがあるためディフェンスは簡単です。
62. Rb2 g3 63. Rxe2+ Kxe2 64. Kxg3 1/2-1/2
今大会、負けなしでここまできていたShahaliyev に、あわよくば土をつけようと意気込んでいましたが、それもかないませんでした。しかし、なかなか面白いゲームだったと思います。彼はこれほどの実力を持ちながら、今大会で初めてのIMノーム獲得だそうです。
そしてこの後、Mirzoev とは最終戦をドローで合意し、今月のFirst Saturday の全試合を終えました。この日はSindarov もManush とドローで、5つ勝ち越しを決めました。Mirzoev は1つ目のGMノーム、Sindarov は3つ目のGMノームでGMタイトル獲得、Shahaliyev は1つ目のIMノームとノームラッシュの今大会でした。Sindarov は今年GMを獲得したPraggnanandhaa の記録を5日間更新し、12歳10か月8日で、Karjakin に次ぐ世界第2位の若さでのGMタイトル獲得となりました。なんともすごいプレーヤーと居合わせてしまったものです。
10/07 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Sindarov, J (IM, UZB, 2500) 0-1
10/08 R2 Ilincic, Z (GM, SRB, 2411) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 0-1
10/09 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Nguyen, V T (CM, VIE, 2350) 1/2-1/2
10/10 R4 Manush, S (FM, IND, 2302) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 1-0
10/11 Rest Day
10/12 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Plat, V (GM, CZE, 2539) 0-1
10/13 R6 Tran, M T (IM, VIE, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 0-1
10/14 R7 Czebe, A (GM, HUN, 2426) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/15 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Shahaliyev, I (AZE, 2376) 1/2-1/2
10/16 R9 Mirzoev, E (IM, UKR, 2439) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
First Saturday GM October 2018 Standings
+5 Sindarov, Mirzoev
+2 Shahaliyev, Plat
+-0 Manush
-1 Kojima
-2 Nguyen, Czebe
-4 Tran
-5 Ilincic
バツミに続く最初のGMトーナメントが幕を閉じ、次は20日からモンテネグロでのGMトーナメントに挑みます。またそちらの情報も早めに出しますので、引き続き応援をよろしくお願い致します。
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