2018/10/08

First Saturday GM October 2018 R1

昨日からハンガリーのGM トーナメント、First Saturday に再び戻ってきました。前回参加してから、実に4年ぶりのことです。まずは試合前の様子からお届けしようと思います。


少し前からFS の会場が変わりました。前回のハンガリー滞在時はアンダンテから徒歩5分のホテルでしたが、今はドナウ川を渡ったブダ側のホテルです。(ハンガリーの首都、ブダペストはドナウ川を挟んで西側がブダ地区、東側がペスト地区です。) 今回は会場まで距離があるため、バスを使っての移動となります。アンダンテから徒歩10分の地下鉄駅、Blaha Luiza のバス停位置をチェックするため、午前中にこちらへとやってきました。133E 路線のバスを使います。


Blaha Luiza 近くのケバブ屋さんでお昼ご飯。ピタパンに挟んだケバブが350フォリント(140円)と安いです。ケバブはハンガリーではポピュラーなファストフードですね。


午後になって会場のHotel Berlin へとやってきました。私だけでなく、他の参加者の中にも会場のホテルに滞在せず、バスで移動してきたプレーヤーもいるようです。どうしてこんなはずれのホテルを会場にしたのでしょうか...


私の初戦の相手はウズベキスタンの天才児、12歳のSindarov です。今年のWorld Junior の試合も見ましたが、非常にアツいファイティングチェスを指す少年です。将来、ウズベキスタンを担う存在になることは想像に難くありません。私も好調の白スタートですので、気合を入れて試合に臨みました。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Sindarov, J (IM, UZB, 2500)
FS GM October 2018 (1)

1. Nf3 Nf6 2. c4 c5 3. Nc3 d5 4. cxd5 Nxd5 5. e3!?



この3... d5 ラインに何か指すかはEnglish を研究し始めてからずっと課題でした。5. g3, 5. e4, 5. d4 のいずれも試したことはありますが、最近流行りの5. e3 を初めて指してみることにします。

5... Nxc3 6. bxc3 g6 7. d4 Bg7 8. Bb5+ Bd7 9. Be2


一度チェックしてから引くことで、Nb8-Nd7 からクイーンサイドフィアンケットのチャンスを消しておきます。9. Qb3 もありうる手です。

9... O-O 10. O-O Nc6 11. Ba3 Qa5!?



このクイーンは強力なような、逆にターゲットにされるような、なかなか評価の難しい存在です。私としてはあまり選択肢がなく、本譜のセットアップにするしかありません。

12. Qb3 Be6 13. Qb2 b6!?


クイーンの帰る道を閉ざしてくれたことで、ナイトでクイーンを当てにいくアイディアが有効になります。b3 にでるかc4 にでるか悩むところですが、白はナイトの組み換えをしてチャンスを待ちます。

14. Nd2 Rac8 15. Rac1 Rfd8 16. Rfd1 cxd4 17. cxd4 Nxd4?!



Sindarov は時間を使い、この怪しげなピースサクリファイスを実行してきました。さすがに足りていないだろうと思いつつ、かなり動揺します。17... Rc7!? くらいで黒は形勢互角で戦えるでしょう。

18. exd4 Rxc1 19. Rxc1


ここをどちらで取り返すかは悩むところですが、あえてクイーンをビショップの利き筋に残しておきました。19. Qxc1 Rxd4 20. Bxe7 Qxa2 でもピースの代償は十分ではなく、白が有利だったでしょう。

19... Bxd4 20. Qb4 Qxb4 21. Bxb4 Bc5 22. Bc3 Ba3 23. Rd1 Bxa2 24. Ra1?!



こうした3ポーンピースのポジションで、どういった構想で戦えば良いかわからないのは、自分の不勉強さが出たと思います。24. Bf1! Be6 (24... Rc8 25. Ne4! a5 26. Ra1 Bd5 27. Rxa3 Bxe4 28. Bd4+/-) 25. Ra1 Bb2 26. Bxb2 Rxd2 27. Ba3+/- こうしてダブルビショップをキープできるようにしておけば、白は安全に有利な状況を保つことができました。24... Rc8 にどうすれば良いかわからず、すぐにピースを捌きにいったのは失敗です。

24... Bb2 25. Rxa2 Bxc3 26. Nc4 Rd7 27. Kf1 e6 28. Bf3


3ポーンピースで、形勢判断がとても難しい状況になりました。白が手を作るとすれば、c6 のマスへの侵入や、f7 の攻撃だと思い、その準備を色々と進めてみます。

28... Rc7 29. Nd6 Bb4 30. Nb5 Rc1+ 31. Ke2 a5 32. Nd4 Kg7 33. Rc2 Rb1 34. Rc7 Kf6 35. Nc6 Rb2+ 36. Kd3 Rd2+ 37. Ke3!



37. Kc4 Bc5 38. Nxa5?? Bd6-+ は白がダメですので、白キングはポーンを止めにいかず、ルークに張り付いたままにしておきます。

37... Rc2 38. Rb7 Bd6 39. Kd3 Rxf2 40. Nd8 Be7


ここぎりぎりだった相手が時間を増やし、再び難しい読み合いに入ります。単純にf7 を狙った場合、黒はビショップを挟んで守り続けるしかなく、これはドローかと私は思いました。

41. Nc6 Bc5 42. Nd8 a4!?



Sindarov は驚くべきことに、f7 を捨てて勝負にいきました。ナイトが上手いこと働いてポーンをいただき、aポーンも問題なく止められると読んでいました。しかし、その確認作業に時間を使いすぎたため、この後の悲劇に遭遇することになります。

43. Rxf7+


43. Ke4!? Be7 44. Nc6 Bd6 45. Rd7 Bxh2 46. Nd8 h5 47. Rxf7+ Kg5 48. Nxe6+ Kh6 49. Ra7+/= であれば、2つのポーンを取ったうえでaポーンを抑えにいき、本譜よりもチャンスがあったかもしれません。

43... Ke5 44. Rxh7 a3 45. Nf7+ Kf6 46. Nh6 a2 47. Ng4+ Kf5 48. Ra7?



ここでルークのチェックを一度挟んだほうが良いのか良くないのか、簡単に答えは出ないと思います。正解はチェックを入れとくほうが良く、48. Rf7+! Kg5 49. h4+! Kxh4 50. Ra7 b5 (50... Rb2 51. Kc3 Rb1 52. Rxa2+-) 51. Ra8 Rb2 52. Kc3 Rb4 53. Rxa2 Rxg4 54. Bxg4 Kxg4 55. Re2 これはおそらくドローですが、白はなんとか頑張ってチャンスを作ろうとするでしょう。

48... Bb4!!


48... Rb2 49. Kc3+- と進んでa2 が落ち、白が勝勢だと読んでいた私はこの手に度肝を抜かれました。何があるかわからずにルークを貰います。

49. Nxf2


49. Ra4 Rb2 50. Ne3+ Kf6 51. Bd5! exd5 52. Nxd5+ Ke6 53. Nxb4 Rxb4 54. Rxa2= これでドローというのがコンピュータの指摘ですが、自然には見えません。

49... Ba5 0-1



この当たり前の1手を指されるまで、全くこの手の存在に気付いていませんでした。aファイルをブロックされ、7分でどうにかアイディアを絞り出そうとしましたが、無情にも私の時間は0になりました。そして直後にSindarov がドロー筋を指摘します。50. Ng4! a1=Q 51. Rf7+ Kg5 52. g3!


Analysis Diagram

これでドローなのではないかというのが、Sindarov の指摘です。確かにクイーンを作らせても、メイトスレットを作ってしまえば、黒にはパペチュアルチェックしかありません。しかし私は、白のピースがどれも浮いていないこと、黒にメイト筋がないことなどを時間内に読めず、クイーンを作らせる変化に踏み込めませんでした。冷静に考えてみればクイーンを作るのを止められないので、クイーンを作らせてなんとか反撃するしかないのですが、なんとかクイーンを作らせない方法は無いかばかりを考えてしまいました。時間落ちではありますが、完全に最後は相手の読みに追いつけなかった感じで、力の差を痛感しました。

試合後はゲームも落ち着いて振り返ることができ、大きく悪くなったポジションが無かったことで、ひとまずは良しとしています。まだ大会は始まったばかり、ここから盛り返します。

10/07 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Sindarov, J (IM, UZB, 2500) 0-1
10/08 R2 Ilincic, Z (GM, SRB, 2411) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
10/09 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Nguyen, V T (CM, VIE, 2350)
10/10 R4 Manush, S (FM, IND, 2302) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
10/11 R5 Czebe, A (GM, HUN, 2426) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
10/12 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Plat, V (GM, CZE, 2539)
10/13 R7 Tran, M T (IM, VIE, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
10/14 Rest Day
10/15 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Shahaliyev, I (AZE, 2376)
10/16 R9 Mirzoev, E (IM, UKR, 2439) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)


夜はアンダンテ隣のビストロ小町へ。ブダペストの日本食ブームは続いているようで、地元の人でお店は賑わっていました。

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