2018/10/29

Third Saturday GM October 2018 R9


モンテネグロのThird Saturday 最終戦、私はGM Nikcevic に白で挑みます。彼はここまで勝ったり負けたりではありますが、初戦でKotronias のドローオファーを蹴って勝ったのが印象的でした。これまでIMノームのかかった最終戦は幾度となく経験してきましたが、今回が人生初のGMノームをかけた最終戦です。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2424)
Third Saturday GM October 2018 (9)

1. Nf3 c5 2. c4 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 e6 5. Nc3 Nf6 6. g3 Qb6 7. Ndb5 Ne5 8. Bg2 a6 9. Qa4



GMノームをかけた最終戦、勝つために何を指せば良いのか試合前も試合中もとても悩みました。Nikcevic は私と白番のオープニングが、1. Nf3 からのEnglish と被っており、私よりもはるかに経験があります。そんな彼でも、この変化は7. Nb3 がレパートリーで、こちらのラインは指さないことを事前にチェックしていました。案の定、試合が始まってみると7手目からかなり時間を使って考え始めます。

9... Bc5!?


この手は初めて見ました。9... Rb8 10. Na3 Bxa3 11. Qxa3 Nxc4 12. Qb3 という変化を予想していた私も、ここから時間を使って考え始めます。

10. O-O Nxc4 11. b3!?



私はここで早々に勝負の手を出します。単純に考えればナイトを取り合う場面ですが、私はそれよりもポーンを捨てる変化がこれまで研究してきたラインに似ていて面白いと感じました。これまでの実戦例では、11. Qxc4 axb5 12. Qxb5 と進んで白十分なようです。

11... Nd6 12. Nxd6+ Qxd6 13. Bf4


白はc4をタダで取らせてしまいましたが、その分黒のピースを何度も動かさせ、それを追いかけてピースの展開のリードを広げます。

13... Qe7 14. Rac1?



しかし、こうしたギャンビット系のオープニングでは、ちょっとした緩手で苦しくなるものです。私としては、cファイルをコントロールしてc5 のビショップをターゲットにするプランが自然だと思いましたが、これでは黒が問題なくなってしまいます。代わりに14. Bg5! h6 15. Bxf6 Qxf6 (15... gxf6 16. Ne4) 16. Ne4 Qe7 17. Nxc5 Qxc5 18. Rac1+/= とするほうが良く、ピースを捌いてもcファイルのコントロールで、白は十分にポーンの代償を伴ってプレーできるようになります。

14... O-O 15. Bg5 d5


1手遅れてのBf4-Bg5 には、当然のごとく黒はdポーンを伸ばしてNc3-Ne4 を防ぎます。これに対して白はe2-e4 からのブレイクのアイディアを使って満足だと思っていましたが、Bc8-Bd7 がクイーントラップのスレットになっているため、すぐにはeポーン突きを実行できません。さらにb2-b3 と伸びたことの弱点がこの後で露見します。

16. Qh4 Ba3!



当たり前と言えばそれまでなのですが、黒はターゲットになるビショップを逃がしつつ、c1 のルークをアタックすることでテンポを得て、白のe2-e4 を遅らせます。この手を許してしまうことが、b2-b3Ra1-Rc1 の組み合わせの最大の失敗でした。

17. Rcd1 h6 18. Bxf6 Qxf6 19. Qxf6 gxf6 20. e4 dxe4 21. Nxe4


そしてこの試合の一番の反省点でもあるのが、こうしたポジションの形勢評価です。私はこの時点では、白は理想的な展開ではなくとも、まだb7 を取りかえして戦えるのではないかと安直に考えていました。しかし、ポーンを取りかえして異色ビショップにしたとしても、黒はf2 のポーンを狙うことができるためにはっきりと優勢です。これはFirst Saturday のPlat戦と同じであることに少ししてから気づき、段々と焦り始めます。こうしたことは、クイーンを交換する前から認識できなければいけません。

21... f5 22. Nd6 Ra7!



Nikcevic のプランの立て方、そして要所要所での手はとても勉強になりました。私はなぜか22... Rb8 しか考えておらず、黒はc8 のビショップの展開に長く苦労するので、ポーンの代償は多少あるだろうと、この手を見るまで思っていました。

23. Rd3 b5 24. Rfd1 Rc7 25. Bf3 Rd8 26. Nxc8


次にRcd7 が困るため、ここで不本意ながら相手の使えていないビショップを取らざるをえません。一瞬、b5 のポーンが取れるのではないかと思いましたが、ピースがトラップされてしまいます。26. Nxb5? Rxd3 27. Nxc7 Rxf3 28. Rd8+ Kh7! 29. Rxc8 Rc3-+ 黒キングの寄けるマスがg7 ではなくh7 であることがポイントで、c7 のナイトをピンにした黒が勝ちとなります。

26... Rdxc8 27. Rd7 Kf8 28. Bh5 Be7 29. R1d2 b4 30. Be2?



時間が増えるまであと10手を、残り時間2分を切る中で正確に指すのは難しいにしろ、このミスはひどかったです... 依然として苦しいですが、30. Rxc7 Rxc7 31. Be2 Rc1+ 32. Kg2 a5 33. f4 Bc5-/+ としておくほうが良かったでしょう。

30... Rxd7 31. Rxd7 Rc2-+


こうして7段目に入られ、a2,f2 がどうしようもなくなった時点で勝負は決しました。勝ちにいくためにリスクを取った結果ですので仕方ないと言えば仕方がないですが、途中の手の不正確さ、形勢評価の甘さは反省材料として、しっかりブダペストに持って帰ろうと思います。

32. Bxa6 Bc5 33. Rd8+ Ke7 34. Rc8 Bxf2+ 35. Kf1 Rxa2 36. Be2 Bd4 37. Rc4 Bc3 38. Rh4 Bd2 39. Rd4 Rb2 40. Bc4 Be3 41. Rd3 f4 42. gxf4 Bxf4 43. h3 f5 44. Bb5 Rd2 0-1



すでにご存じのかたも多かったと思いますが、こうして最終戦は敗れてしまい、初のGMノーム獲得はお預けとなってしまいました。また週末にブダペストで始まるトーナメントで出直しです。応援ありがとうございました!

10/20 Miroslav Miljković (GM, SRB, 2484) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/21 Arseny Kargin (IM, RUS, 2420) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/22 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Kotronias Vasilios (GM, GRE, 2487) 1-0
10/23 Der Manuelian, Haik (USA, 2269) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 0-1
10/24 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Vladan Rabrenović (IM, SRB, 2343) 1-0
10/25 Manush Shah (IND, 2302) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/26 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Theo Gungl (FM, GER, 2347) 1/2-1/2
10/27 Atakisi Umut (IM, TUR, 2394) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 0-1
10/28 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Nebojša Nikčević (GM, MNE, 2424) 0-1

Third Saturday GM October 2018

+3 Kojima
+2 Miljković, Nikčević
+1 Atakisi
+-0 Gungl, Manush
-1 Kotronias, Kargin
-3 Rabrenović, Der Manuelian

最終戦は予想に反してファイティングゲームばかりで、勝ち星が大きく変動しました。ノームを逃したことは残念でしたが、それでもこうしてGMトーナメントで優勝できたことは嬉しいですね。これについてはまた後日、今大会の総評の記事でお伝えしようかと思います。


天気はあいにくですが、無事にクロアチアのドゥブロブニクへと到着しました。今日から3日間をこの街で過ごし、ブダペストへ帰ります。

2 件のコメント:

R.T さんのコメント...

タイトルホルダーしか居ない大会で優勝するとか凄すぎるんですが・・・。優勝おめでとうございます!

Shinya_Kojima さんのコメント...

ありがとうございます。この調子で11月も頑張ります!

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