7R の相手はアラブ首長国連邦です。12年前、初めて参加したトリノのオリンピアードでも対戦し、そこで初めてUAE という表記を知ったことをよく覚えています。UAE のトップGM Salem とは2回対戦して敗れており、再び試合をしてみたい気持ちもありましたが、今回のオリンピアードは不参加でそれは叶いません。しかし、Salem 抜きの若いメンバーで構成されたチームでも、UAE は強敵です。
Omar, N (IM, UAE, 2356) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
Batumi Olympiad (7)
1. Nf3 d5 2. g3 c6 3. Bg2 Bg4 4. h3 Bxf3 5. Bxf3 e5 6. d3 Nf6 7. O-O Nbd7
Batumi Olympiad (7)
彼の試合はデータベースでは1. d4 しか無く、今大会もそうであったため、こうしたスタートになったことに正直面くらいました。それでもKIA は過去何度も指した経験があります。
8. Nc3!? Be7 9. e4 dxe4 10. Nxe4 Nxe4 11. dxe4 O-O
早くも2ピースの交換が進みました。GMノームのためには黒番でも勝ちが欲しい私でしたが、Wiedenkeller戦の経験から局面がイコールでも、結果はどう転びうるか分からないことを知っていました。ここからは、黒マスビショップをぶつけて交換するのが黒としては理想です。
12. h4 Qc7 13. Qe2 a5
白はBe7-Bc5 を警戒してか、簡単にはビショップを展開してきません。ならば時間を貰った黒も、c5 にどちらのピースを置くか保留し、先に指しておきたい手を入れておきます。a7-a5 はこうしたポジションで典型的なアイディアで、b2-b4 を防ぐことでc5 のマスを確保します。
14. Rd1 Rfd8 15. a4 Nc5
ここはしばらく考えましたが、h7-h6, b7-b6 などで待つアイディアは流石にやりすぎだろうと、c5 に置くピースをナイトに決めます。
16. Rxd8+ Rxd8 17. Be3 Qb6!?
黒としては、f2 を狙える好位置にビショップが来られるのであれば、黒マスビショップとナイトの交換は歓迎すべきものです。これを避け、17... Ne6 18. c3 Bc5 19. Bg4! とされるのはおかしいと感じました。本譜ではb2 を攻撃しつつ、クイーンで積極的に狙いを作りにいきます。
18. b3 Qb4 19. Rd1!?
ここで白がどう指すか、かなり難しい局面だと思うのですが、Omar はあっさりとe4 を見捨てました。勝ちにいきたい私にはありがたいですが、この先のポジションはお互いにとってとても難しいものでした。
19... Rxd1+
ルーク交換を挟まずにe4 を取る手も考えましたが、読み切れませんでした。19... Nxe4!? 20. Rxd8+ Bxd8 21. Qd3! Nd6 22. c3 Qa3 23. b4!? (23. c4 23... Be7 24. Qc3 こう進めるのが正解で、白はポーンを捨てていても戦えるようです。) 23... Be7 24. Bc5 e4! 25. Bxe4 Nxe4 26. Bxe7 (26. Qxe4 Bxc5 27. bxc5 Qxc5=/+) 26... Qa1+ 27. Kg2 Qh1+!
ここまでくれば分かりますが、これを19手目から予測するのは私にはまだ無理でした。28. Kxh1 Nxf2+-+
20. Qxd1 Nxe4 21. Bxe4 Qxe4 22. Qd7 Bf8
私はこのエンドゲームを戦おうと決意しました。黒は1ポーンアップですが、まだまだ難解な局面です。ポイントはa5 で固定されたポーンが黒マスで狙われやすいこと、そして黒はバックランクが弱く、その問題を解決してビショップを使うのには多少の時間がかかることです。
23. Qxb7 Qxc2 24. Qa8!
これは19手目の時点である程度予想していながら、実際に指されてみると強烈でした。狙いはa5 のポーンを取ってパスポーンを作ると同時に、f8 のビショップをピンにして隙あらばBe3-Bc5 をすることです。特に後者を気にしなければいけない黒は、c5 のマスをクイーンで守り続けなければいけません。
24... Qc3?!
ここは試合中、特に時間をかけましたが、納得できる答えを見つけることはできませんでした。24... f5!? 25. Qxa5 f4! 26. gxf4 Qxb3!? (Misha との検討会では、よりシンプルな26... exf4 27. Bxf4 Qxb3 でも、黒は負けることがないのではないかという意見が出ました。) 27. fxe5 Qd1+ 28. Kh2 Qh5 29. Kg3 Qg6+ 30. Kf3 Qh5+ 31. Kg3 Qg6+= これでパペチュアルチェックというのがコンピュータの指摘です。
25. Bb6 e4
私が時間をかけて考えたのは、e4-e3 と押し込む狙いを作りつつ、f3 のマスを確保してパペチュアルチェックを入れやすくするこのeポーン突きです。
26. Qxa5 Qxb3 27. Qa7?
試合中、これは助かったと思いました。aポーンを進める準備とともにe3 を抑えるこの手は良さそうに見えますが、実際には黒にドローチャンスを与えてしまいます。27. Be3! と先にビショップを下げておく手が正解で、次にQa5-Qa8 とする手が強力でした。
27... f5?
ここが決定的なミスでした。a7 の位置に白がクイーンを置いたことで、私はバックランクを外し、早めにビショップをゲームに戻せると思いました。しかし、27. Be3 が正しい本当の理由はg5 のマスを抑えることにあり、これを利用することが黒の正しいドローチャンスの作り方でした。27... g5! 28. hxg5 (28. a5 gxh4 29. Qc7 h6 30. a6 h3! 31. Kh2 Qf3 32. Kxh3 Qh1+ 33. Kg4 Qd1+ 34. Kh3 Qf1+ 35. Kh2 Qxa6=/+ ならばドローの可能性は高いですが、黒のほうがチャンスがあります。) 28... Qd1+ 29. Kg2 Qf3+ 30. Kg1 Qd1+ 31. Kh2 Qh5+= 確実なパペチュアルチェックのために必要なことは、白のhポーンを剥がし、hファイルをオープンにすることでした。バックランクを外すために、h~fのどのポーンを突くべきかしっかり考えたつもりでしたが、g7-g5 のアイディアが出なかったのはこの試合で最も悔やまれるポイントです。
28. Be3 Bd6 29. Qa8+ Kf7 30. Qa7+ Kg8 31. Qd4!
私の残り時間は3分で、この手を指されては抵抗もここまでです。31. Qxc6? Qd1+ 32. Kh2 Bxg3+! からのパペチュアルチェックだけが黒の期待でした。
31... Qe6 32. a5 c5 33. Qa4 Qe7 34. a6 Qa7 35. Qe8+ Bf8 36. Qe6+ Kh8 37. Qxf5 Kg8 38. Qd5+ Kh8 39. Qb7 Qxb7 40. axb7 Bd6 41. Bf4 1-0
19手目付近でリスク覚悟で勝負にいったわけですが、結局最後までバックランクの弱さが解消されず、それが原因のピースの動きづらさを利用されての負けとなりました。これで今大会のノームチャンスは無くなったことはとても残念ですが、残りの試合は気負わずにプレーを続けられればと思います。
Open R7 United Arab Emirates - Japan 2-2
Omar, Noaman (IM, UAE, 2356) - Kojima Shinya (IM, JPN, 2408) 1-0
AlHuwar, Jasem (FM, UAE, 2245) - Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) 0-1
Al Hosani, Omran (FM, UAE, 2115) - Matsuo, Tomohiko (CM, JPN, 2170) 1-0
Ammar, Sedrani (FM, UAE, 2099) - Otawa, Yuto (JPN, 2161) 1-0
Women R7 Japan - Singapore 1-3
Hoshino Karen (WFM, JPN, 1945) - Liu, Yang Hazel (WFM, SGP, 2064) 1/2-1/2
Sakai Azumi (JPN, 1713) - Hng, Mei-En Emmanuelle (SGP, 2020) 0-1
Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1655) - Siew, Kai Xin (SGP, 1751) 1/2-1/2
Shibata Misaki (JPN, 1605) - Hng, Mei-Xian Eunice (SGP, 1687) 0-1
Omar, Noaman (IM, UAE, 2356) - Kojima Shinya (IM, JPN, 2408) 1-0
AlHuwar, Jasem (FM, UAE, 2245) - Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) 0-1
Al Hosani, Omran (FM, UAE, 2115) - Matsuo, Tomohiko (CM, JPN, 2170) 1-0
Ammar, Sedrani (FM, UAE, 2099) - Otawa, Yuto (JPN, 2161) 1-0
Women R7 Japan - Singapore 1-3
Hoshino Karen (WFM, JPN, 1945) - Liu, Yang Hazel (WFM, SGP, 2064) 1/2-1/2
Sakai Azumi (JPN, 1713) - Hng, Mei-En Emmanuelle (SGP, 2020) 0-1
Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1655) - Siew, Kai Xin (SGP, 1751) 1/2-1/2
Shibata Misaki (JPN, 1605) - Hng, Mei-Xian Eunice (SGP, 1687) 0-1
オープンは白番がどちらも勝ってくれたおかげで、マッチに敗れずに済みました。このオリンピアードで、日本チームの初ドローです。女子は強敵シンガポールに白番2人がドローで、マッチは1-3 で敗れています。また残り4試合、オープンも女子も盛り返していきたいですね。
8R はオープンが10年ぶりの対戦となるアフガニスタン、女子が聴覚障害を持つプレーヤーのチーム、ICCD との対戦です。私は10年前のドレスデンオリンピアード、初戦のアフガニスタン戦で自分だけが負けるという悲しい思いをしたのでした... 今日はしっかりと勝って、また上位チームとの対戦につなげていきたいと思います。
この日は試合前に相手選手からお土産を貰いました。86年のドバイオリンピアードでの記念メダルだそうです。
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