待ちに待った白を引いて指す3R は、ギリシャのGM Kotronias が相手です。King's Indian の名手として知られ、数年前にGrandmaster Repertoire シリーズで、King's Indian の本も出しています。私も近年、Fianchetto Variation の勝率は悪くありませんので、ここは真っ向勝負です。
Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Kotronias, V (GM, GRE, 2487)
Third Saturday GM October 2018 (3)
1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nbd7 7. Nc3 e5 8. e4 exd4 9. Nxd4 Re8 10. h3 Nc5 11. Re1 Bd7 12. Bf4!?
Third Saturday GM October 2018 (3)
Kotronias が自身のKing's Indian の本で、8... c6 を紹介していながら、最近は新しいラインを試していることは事前にわかっていました。私もオリンピアード前からこの変化が6... Nbd7 のラインの中で最も難しいと考え、いくつかの対策を調べていました。今年のカペルでGM Shyam とは12. Rb1 h6 13. Kh2 a5 14. Ndb5 h5! を指していますが、その試合の感触がしっくりこなかったため、手を変えます。
12... h6 13. Qc2!?
昨年から13. g4!? h5 14. f3 hxg4 15. hxg4 (15. fxg4!?) という変化が流行の兆しを見せており、私もチェックしていましたが、どうしても納得できる局面にならなかったため、古くからあるオーソドックスな手を指すことにします。
13... Qc8
13... Nfxe4 14. Nxe4 Bxd4 15. Qd2 Bg7 16. Nxc5 dxc5 17. Rxe8+!?N Bxe8 18. Bxh6 Qxd2 19. Bxd2+/= という変化が私の研究で、白は少し良いですが勝つには十分か疑わしいでしょう。
14. Kh2 a5 15. Rad1 a4 16. Ndb5 Bc6 17. f3!
この手は3年前の羽生さんとのトレーニングで、私が黒を持ってKing's Indian を指した際に使われたアイディアです。ビショップの筋を止めるのは良くないようにも思えますが、e4 への反撃をがっちりと抑え込んでしまえば、黒は何をここからすれば良いか難しくなります。白はゆっくりとビショップを退き、f3-f4 とポーンを突き直すのと、ナイトをd5 に跳び込むタイミングさえ考えればよいので、とても楽にゲームを進めることができます。
17... Nfd7 18. Be3 Ne5 19. Nd5 Bxd5 20. exd5!
最初はルークで取りかえすつもりでしたが、それは20... Nc6! からNc6-Nb4 の切り替えが厄介です。ならば、c6, e6 のマスを抑えつつ、黒のクイーンがc7 の守りから離れられないことでルークの連携が取れていないことを利用し、eファイルを開くのが白にとって良いと気付きました。この局面で次に、Be3-Bxc5, d5-d6 もスレットになっています。
20... Ned7 21. Re2
コンピュータは21. b4 axb3 22. axb3 このように早めにbポーンを突くべきだと指摘しますが、せっかく抑え込んでいるaファイルのルークに出てくるチャンスを与えるのは癪なため、私としてはなるべくbポーンは突かないままでいたかったです。
21... Nf6 22. Rde1 Qd7 23. Qd2 Kh7 24. h4!
f2-f3 の時点で、メインはどこかでのf3-f4 突き直しでしたが、h3 にビショップを切り替えるアイディアももちろん頭にありました。黒クイーンがd7 にいったいまこそ、このビショップ切り替えを使うときです。
24... Qd8 25. Bh3 Ncd7 26. Kg2 Ne5 27. b3
ここは、27. Bd4! Nxc4?! 28. Qc3! Rxe2+ 29. Rxe2 Ne5 30. Nxc7+- というアイディアがあり、c4 をすぐに守らなくても良かったようです。
27... axb3 28. axb3 Bf8 29. Bd4!
黒はビショップを退いてd6 を守り、c7-c6 からナイトを追い返そうとします。ならば、f6 のナイトの守りが薄くなったことを利用してビショップのダイアゴナルをa1-h8 へと切り替えます。
29... c6 30. Nc3 c5 31. Bg1!?
31. Bxe5 dxe5 32. Rxe5 Rxe5 33. Rxe5 Bd6 34. Re2+/- とポーンを取っても、黒の代償が不十分であることは理解していました。しかし、ポーンを捨てて黒マスビショップをアクティブにし、g3 への反撃を作らせるのはあまりに相手の狙い通りだと感じます。そこでビショップのペアはキープしたままで、d6 のポーンを再び狙うチャンス(Nc3-Nb5 or Nc3-Ne4) を窺うことにします。
31... h5 32. Be3! Qa5?
私がf3-f4 を突くことを警戒し、hポーンを伸ばしてきたところで、g5 のマスの弱さに注目します。Be3-Bg5 は確かに嫌なアイディアで、早めにクイーンが避けておきたいところですが、これは白の狙い通りのタクティクスが決まります。32... Ned7 33. Bg5 Rxe2+ 34. Rxe2+/- のほうがまだ黒は戦えたでしょう。
33. Bg5! Bg7 34. Bxf6!
ナイトをビショップで消し、コントロールのなくなったセンターのマスにナイトを跳ばすアイディアは、私の十八番です!
34... Bxf6 35. Ne4! Be7 36. Qxa5 Rxa5 37. f4!
これで白の駒得がはっきりと決まりました。白はピンを利用して、d6 のポーンを取ったり、f6 でナイトフォークを決めることができます。
37... Nd3 38. Rd1 Nb4 39. Nxd6! Ra2 40. Rxa2 Bxd6
少し予想外な駒の捌かれ方でしたが、1ポーンエクスチェンジアップになり白勝勢です。
41. Ra7 Re2+ 42. Kf3 Re7 43. Rd2 1-0
最後は43. Bc8 でも良かったのですが、Nb4-Nc2-Nd4+ などの余計なカウンタープレーを与えないほうが良いと思って本譜を指したところ、Kotronias はすぐにリザインしました。最近は調子を落としているとはいえ、強豪国ギリシャを代表するGM Kotronias からの勝利は本当に嬉しいです!
10/20 Miroslav Miljković (GM, SRB, 2484) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/21 Arseny Kargin (IM, RUS, 2420) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) 1/2-1/2
10/22 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Kotronias Vasilios (GM, GRE, 2487) 1-0
10/23 Der Manuelian, Haik (USA, 2269) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408)
10/24 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Vladan Rabrenović (IM, SRB, 2343)
10/25 Manush Shah (IND, 2302) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408)
10/26 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Theo Gungl (FM, GER, 2347)
10/27 Atakisi Umut (IM, TUR, 2394) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408)
10/28 Kojima, Shinya (IM, JPN, 2408) - Nebojša Nikčević (GM, MNE, 2424)
Third Saturday GM October 2018
+2 Atakisi
+1 Miljković. Nikčević, Kojima
+-0 Kargin, , Gungl, Manush
-1 Der Manuelian
-2 Kotronias, Rabrenović
この日は3つのボードで決着がつきました。私にはFirst Saturday でなしえなかった勝ち越し状態に入りましたので、ここからさらにプラスを伸ばしていきたいですね。
勝った日の夕飯は1枚でも十分そうなステーキが3枚(笑) モンテネグロに来てからは海産物は一切出ずに、肉ばかりです。
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