昨日は四連敗中のスペイン人との対戦です。彼は今回のクラスの中でも、そこまで負けるほど弱いプレーヤーではありません。誰でもこうなりうるのが、(私も6月は四連敗スタートでした。)このトーナメントの恐ろしいところです。
Laliena Solanes, L (ESP, 2199) - Kojima, S (FM, JPN, 2282)
First Saturday 2012 August IM (6)
1. d4 d5 2. Bf4 Nf6 3. e3 c5 4. Nf3 Nc6
First Saturday 2012 August IM (6)
事前に相手がLondon System を指すことが分かっていたので、こういった手順で入ります。
5. Nbd2?!
この手は黒の次の手を過小評価しています。クイーンを出す準備をする5.c3 が自然です。
5... Qb6!
d4 とb2 がダブルアタックになっており、黒にはこれらを両方守るうまい手がありません。
6. dxc5 Qxb2 7. Rb1 Qc3 8. Bb5 e6 9. O-O Qxc5!?
9... Bxc5 10. Nb3 Be7 11. Be5 Qb4 でも、白のポーンの代償はわずかでしょう。
10. c4! dxc4?!
d5 のマスを空ければ十分と判断して、このポーンを取りましたが、展開が遅れている黒にとって、相手のピースを前進させるのはあまりに危険でした。10... Be7!= から安全にキャスリングを目指すべきでした。
11. Nxc4 Nd5 12. Be5 Bd7 13. Bd4!
このパワフルな手を過小評価していました。白はクイーンをアタックしつつ、g7 のポーンを狙うことで黒のピースの展開を邪魔します。
13... Qe7
黒は仕方なく、このマスにクイーンを逃がします。13... Nxd4? 14. Bxd7+ Kxd7 15. Nce5+ Ke8 16. exd4+-はゲームセットです。
14. e4 Nc7 15. Bxc6 Bxc6 16. Qe2 Nb5 17. Be5 Rd8 18. Na5!
18.Rfd1 と18.a4 を最も警戒していた私にとって、この手はかなり意外でした。しかし、指されてみると嫌な手で、黒は次の19.Rxb5 の対処に困ります。
18... f6 19. Rxb5?!
彼はすでに相当時間切迫でした。一見すると2ピースとルークの交換は白に良いように思えますが、駒を捌くことは展開の遅れている黒の手助けになってしまいます。ここは一旦、19. Ba1!+/- とビショップを退くことで、白は強力なプレッシャーを残すことができます。
19... Bxb5 20. Qxb5+ Qd7 21. Qxd7+?!
ここはクイーンを交換すしかないようにも見えますが、これでは白はアドバンテージを完全に失ってしまいます。21. Qb3! b6 (21... fxe5 22. Nxe5 Qc7 23. Qb5+ Ke7 24. Nxb7+/-) 22. Nc4 Bc5 23. Bc3+/= 黒にとって、ビショップを取ってナイトを招き寄せることは大変危険です。
21... Rxd7 22. Bd4(=)
ここで相手からドローオファー。局面としては受けても良いのですが、相手の残り時間が少ないことと、盛り返している勢いを考え、試合を続けることにします。
22... Bb4 23. Nb3 Kf7 24. Be3 Rc8 25. Rb1?!
白の安全策は、お互いのaポーンを交換しておくことでしょう。25. Bxa7 Ra8= は、ほぼイコールだと思います。
25... a5 26. Nbd4?!
これも手痛いミスです。白はバックランクのスレットを早めに消しておくべきでした。26. Kf1!
26... e5 27. Nb5 Rc2 28. a3 Be7?!
ここはc5 に退いてビショップ交換をするべきかどうか迷いましたが、もっとダイレクトな好手がありました。28... Bxa3! 29. Nxa3 Rc3 30. Nb5 Rb3-+ 白はバックランクメイトがあるため、b5 のナイトを諦めるしかありません。このような、ちょっとしたタクティクスが見えなかったのは残念です。
29. g4 Bc5!?
白がバックランクを外したところで、ビショップ交換を行います。次の狙いはe4 のポーンです。
30. Bxc5 Rxc5 31. Ne1 Rc4 32. f3 Rd2!
これで少し勝てるチャンスが出てきたと思いました。白のキングはルークにカットオフされ、一段目から出ることができません。一般的に2ピースはルークよりも強いですが、ピースの配置によってはそれが逆転します。
33. Ng2 Rcc2 34. Ne3 Ra2 35. Nc3 Rab2!
ここでルークを交換しておきます。35...Rxa3?? 36.Nc4 はもちろんダメです。
36. Rxb2 Rxb2=/+
さてルークを交換したところで、改めてプランを考えます。黒は引き続き、相手キングをカットオフしているのが大きなプラスなので、それをキープしたまま、次のようなことを考えます。
① クイーンサイドでパスポーンを作る。(一般的にエンドゲームでパスポーンを作り、それをルークでサポートした場合、2ピースよりもルークが働きやすいと言われます。)
② キングサイドからキングの侵入を図る。(駒数は2ピースルークですが、白のキングは働けないので、2ナイトvsルーク+キングという構図にすれば、勝ちのチャンスは拡大します。)
③ ルークで相手のポーンを狙う。(もちろんこれには、相手の2ナイトによる反撃、そして相手キングをアクティブに指せてしまうというリスクが伴います。)
37. a4 Kg6 38. h4 h5
①のプランが止められたので、②を実行します。白はクイーンサイドでポーンの交換ができないので(黒キングの侵入を許してしまうため)、正しい指し手を見つけるのが難しくなってきます。
39. Kh1 Kh7 40. Kg1 Kg6
この辺りは勝ちのプランがはっきり分からなかったので、とりあえず持ち時間を増やします。ここで互いに30分追加です。
41. Kh1 Rf2
最初、この手でfポーンがすぐに落ち、楽に勝てるのではないかと思いました。しかし、白にも粘る手があります。
42. Ncd5! Rb2!?
42...Rxf3? 43.gxh5+ Kxh5 44.Kg2 はルークが落ちるので、黒の負けです。もう一つの候補手としては、42... Ra2!? 43. Nb6 (43. Nc3 Rd2 ならば本譜と同じ) 43... Ra3 44. Nec4 Rxf3 45. Nxa5 hxg4 46. Nxb7 Rb3 47. a5 Kh5 が挙げられ、aポーンを捨ててもこれならば勝てそうです。
43. Nc3
白はb7-b5 を止めるためにナイトを同じマスに退きます。43. Nc4 Rb1+ 44. Kg2 hxg4 45. fxg4 b5 46. axb5 Rxb5-/+ ならば、黒はパスポーンを作ることに成功し、こちらもなんとか勝てそうです。
43... Rd2!
何度か同じポジションを繰り返し、ようやく勝ちが見えてきました。正解はこのようにルークをdファイルに置き、Rd2-Rd3 を狙うことです。2つのナイトとf3、a4 をターゲットにし、白の負担を増加させます。
44. Ned5?!
最も抵抗になるのは、44.Ned1 hxg4 45.fxg4 Kf7 46.Kg1 Ke6 だと思いますが、ナイトが下がったのを見てキングがクイーンサイドに向かえば、黒はやはり大きな勝ちのチャンスがあると思われます。
44... Rf2!-+
先程とはd5 にいるナイトが逆なので、今度こそf3 のポーンを取ることができます。
45. f4?
45. Ne7+ Kf7 46. Ned5 Rxf3 47. gxh5 Rh3+ 48. Kg2 Rxh4 49. Ne3 Rxh5 50. Nc4 Rh8 51. Nxa5 Rb8-+
45... hxg4 46. fxe5 fxe5 47. Nb6 Kh5 48. Nd7 Kxh4 49. Nxe5 Kg3 50. Kg1 Rc2 0-1
最後はメイトとナイト取りのダブルスレットで勝利。途中かなり劣勢でしたが、前日は勝勢のポジションから負けたので、それの逆です。やはりチェスの勝敗は途中の形勢がどうあれ、最後まで分からないものです。
今月のIM クラスは11人のラウンドロビンなので、毎日誰かが休みになります。今日は私が休みなので、いくつかたまった仕事を片しつつ、あとで会場の様子を見に行こうと思います。休み明けの残り4試合も頑張ります!
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