8月のFirst Saturday 4日目の相手は、ハンガリーのIM Szeberenyi です。6月には1勝1ドローでしたが、先月は悔しい負けがあり、ここまで通算成績はイーブンです。前日のGalyas 戦に続き、彼のような強豪IM に負けないことが、IM ノーム獲得には必須条件です。
Szeberenyi, A (IM, HUN, 2334) - Kojima, S (FM, JPN, 2282)
First Saturday 2012 August IM (4)
1. d4 Nf6 2. Nf3 e6 3. Bg5!?
First Saturday 2012 August IM (4)
彼のレパートリーにはこのサイドラインもあったので、軽く対策はしていました。私が2007年に初めてGM に勝ったのもこのオープニングであり、実際に指すのはそれ以来です。
3... c5 4. e3 h6 5. Bh4 cxd4 6. exd4 b6
私が考える黒のベストセットアップがこれです。ポーンを一つ交換したうえで、Queen's Indian のように白マスビショップを組みます。
7. Bd3 Bb7 8. Nbd2 Be7 9. O-O O-O 10. c3 d6 11. Re1 Nbd7 12. a4
ここまではお互いに自然な流れで進んできましたが、白の12手目を見て少しプランを考えます。将来的にa4-a5 からaファイルを開かれれば、白はクイーンサイドでチャンスを掴みそうです。
12... Rb8!?
ここは捻った手を指します。a5 のポーンを取った際にbファイルからすぐ反撃ができるよう、ルークをあらかじめbファイルに回しておきます。さらには、b7 の浮いたビショップを守っておくという狙いもあります。
13. Nc4 Re8 14. Bg3 Qc7
g3-b8 のダイアゴナルにルークが来たことで、白はビショップの利きを切り替えますが、d6 のポーンをさらにアタックする駒がないので、守りは十分でしょう。
15. h3 Bf8 16. Qe2 Rbc8 17. Ne3 Qb8
e4 のマスにナイト、もしくはビショップを跳び込む手は常に考えていましたが、多少遅らせてクイーンの位置を切り替えます。17... Ne4 18. Bh2 Bc6 19. Nd2 Nxd2 20. Qxd2+/=
18. Ng4 Qa8 19. Bb5?!
この手をSzeberenyi はほぼノータイムで指してきましたが、あまり良い手だとは思えません。白マスビショップは残しておき、b5、a6 のマスをコントロールしておくほうが、白としてはベターでしょう。代わりに19. a5!+/= からaファイルを開けば、白はやや優勢で試合を進められそうです。
19... Bc6 20. Nxf6+ Nxf6 21. a5?!
アイディアは良いのですが、ビショップ交換を挟んでしまうとこの手がうまく働きません!黒は本譜の手順でaファイルを閉じたままにできます。
21... Bxb5 22. Qxb5 a6!
Szeberenyi はこの手を見落としていたのでしょう。23. Qxb6?? Rb8-+ はクイーンが落ちるので、白はb6 を取ることができず、クイーンを逃がさなくてはいけません。
23. Qb4 b5 24. Bxd6!?
ここでどちらの方針を取るか、白としてはとても判断の難しいところだと思います。d6 のポーンを取らずにいた場合、黒はどこかでd6-d5 と突いて、Caro-Kann Exchange のポーンストラクチャーにするでしょう。その形では、白にキングサイドアタックのチャンスがなければ、黒はクイーンサイドからの突破を安全に行うことができます。(例えばcファイルにルークを重ねたうえで、b5-b4 を突く。)そのため、やや不利なことが明らかでも、本譜のようにマテリアルバランスを崩すのも、ありえる判断だと私は思います。
24... Rc4 25. Qa3 Ra4 26. Bxf8 Rxa3 27. Bxa3
つい最近、どこかで見たことのあるマテリアルになりました(笑) 2R では、クイーン単発で狙いが作りにくかったため、ビショップ+ルーク+ポーンのほうが強く働くと考えましたが、このポジションではクイーンを持つ黒がやや優勢と言えるでしょう。白のビショップはさほど働きが良くなく、黒にはb5-b4 からクイーンサイドので手を作るチャンスが残されています。
27... Nd5 28. Bd6 Rc8 29. Nd2 Rc6 30. Bh2 Qd8 31. Rec1 Ne7!?
ナイトの位置を切り替えるのも悪くないアイディアですが、ストレートにクイーンサイドを崩しにいくのもOKです。31... b4! 32. Ne4 (32. c4 Ne7 33. Nf3 Nf5 34. Kh1=/+) 32... bxc3 33. bxc3 Rc4=/+
私はbファイルが開いて、白ルークの反撃のチャンスが生まれることや、白にc3-c4 を突かれることを、不必要に恐れていたようです。前者であれば、黒はc3 のポーンをターゲットにして充分指せますし、後者であれば白はc4、d4 両方のポーンが負担となります。
32. Ne4 Qd5 33. Nc5 Ng6 34. Bg3 e5!?
正直なところ、時間切迫の中、これで勝つチャンスがあると考えました。d4 を取っても、e5-e4、f7-f5-f4 から白キングにアタックを仕掛けても(ルークの横利きが通っているのが、黒にとって大きなプラス)、黒が良いと考えました。しかしこれらのプランが成功するのは、次の一手がなければの話です。
35. Nd3!
全く気付いていませんでした。36.Nb4 がエクスチェンジ取りのスレットになっているため、黒はd4 を取ることができません。さらには突いたばかりのe5 が狙われています。
35... Re6! 1/2-1/2
私はポーンが落ちたことで落胆し、ここでドローオファーをしました。Szeberenyi は残り時間がギリギリになるまで考え、これを受諾。この時点では、ほぼイコールだろうと思っていました。ところが、アンダンテに戻ってコンピュータでチェックしたところ、まだ黒のほうが良いという評価が出ました!
35... Re6 36. Nxe5 (36. Bxe5 Nh4! 37. f3 Nxf3+!! (このナイト跳ねからのピースサクリファイスは、全く読んでいない変化でした。) 38. gxf3? Qxf3 39. Nf4 Rxe5! 40. dxe5 Qxf4-+ エクスチェンジを返し、白キングの前を崩せば黒が勝勢のエンドゲームです。) 36... Nxe5 37. dxe5 Qb3 38. Rab1 Qa2 39. f4 Qxa5=/+ なんと落ちたはずのポーンが戻ってきました。これならば、まだ先は長く難しいですが、黒にややチャンスがあるエンドゲームでしょう。35.Nd3! を見落としたことで、少し冷静さを欠いていたかもしれません。
もちろん、Szeberenyi に黒でドローは悪い結果ではありません。今日からの2100台との連戦で勝つことができれば、1日休んで勝負の後半戦を迎えることができます。まず今日は、アメリカから来た98年生まれの少年、Wu Christopher との対戦です。棋譜やここまでの戦績を見る限り、絶対に勝ちたい相手なので、貯金を増やすきっかけにできればと思います。
IM B グループには香港の元チャンピオンで、現在はイギリスに籍を移しているAnya Corke の姿が見られます。2004年のカルビアオリンピアードでは、その可愛らしさで幾人もの男子プレーヤーを撃沈させたという伝説があります。
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