4R はフランスのベテランIM との試合です。相手が三連敗中ということもあり、前日の負けを跳ね退けてノーム獲得のチャンスを残すためには、何としても勝ちたいところでした。
Kojima, S (FM, JPN, 2282) - Roos, J (IM, FRA, 2270)
Ⅲ. Sarkany - Aranytiz International Master Tournament IM (4)
1. Nf3 d5 2. d4 e6 3. c4 Nf6 4. Nc3 Be7 5. Bf4 O-O 6. e3 c6!?
Ⅲ. Sarkany - Aranytiz International Master Tournament IM (4)
Queen's Gambit Bf4 Variation には、6手目で黒に様々なチョイスがありますが、本譜の6...c6 は、他の6...c5、6...Nbd7、
6... b6 に比べると勝率が悪く、はっきり白にチャンスがあると考えています。
7. h3 Nbd7 8. Qc2
これが用意していたセットアップで、白はQGD Rubinstein Variation (1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nc3 Nf6 4. Nf3 Be7 5. Bg5 O-O 6. e3 Nbd7 7. Qc2!? c6 8. Rd1) のように、黒からdxc4 と取ってくるのを待ちます。
8... dxc4 9. Bxc4 Nb6 10. Bb3 Nbd5 11. Bh2 b6 12. O-O Bb7 13. Rfd1
ここまで白は、オープニングで満足なアドバンテージがあるでしょう。2つのビショップは黒に比べアクティブで、e3-e4 とセンターを拡大するチャンスもあります。
13... b5!?
この手は予想外でした。b6 からポーンを動かすことでc5 のマスを弱めますが、その代わりにa5-d8 のクイーンの利き筋を開きます。
14. Ne5 a5 15. a4 Qb6 16. Rac1 Rac8 17. Qe2!?
c3 をルークで取り返せるようにした後に、クイーンをb5 に当てつつ、キングサイドへと切り替えます。ここまでは割とスイスイ指していましたが、次の手を見て長考に入ります。
17... Ba6
黒はc6-c5 を突くのが難しいため、ここでビショップのダイアゴナルを切り替えます。もちろんある程度、頭にあったアイディアですが、ベストの対応が分からず、40分ほどの時間のリードを丸々使って手を探します。
18. Nb1!?
これだけ悩んで、ナイトが退くのかよ!と自分でもツッコミを入れたくなりますが、深く考えてみると、なかなか面白いアイディアだと思います。b5-b4 の際にナイトがアタックされることを避け、1ポーンを捨ててイニシアチブを取ろうとします。18. Qd2 Nxc3 19. bxc3+/=
18... bxa4 19. Bc4 Bb5 20. e4 Nc7 21. Nc3
白はa4 を捨てた代わりにセンターポーンを並べ、黒のナイトを追い返すことでポジションのバランスを取ります。ナイトの出す位置としては、21. Na3!? Rfd8 22. Qe3+/= もあったようですが、d5 に利きを作りたかったこと、a3 からどこを目指せば良いかよく分からなかったことから、シンプルにc3 に戻すことにしました。
21... Bb4 22. Bf4!
眠っていたビショップが活動を開始します。Bf4-Bg5 の狙いは、単純ながら黒としては嫌なものです。
22... Rfd8 23. Bg5 Be7 24. Be3
ポーンを守ってゆっくり指そうと思いましたが、コンピュータは思いがけない指摘をします。24. d5! (もちろん狙っていたアイディアですが、このタイミングで成功することを読み切るのは、相当難しいでしょう。) 24... exd5 25. exd5 Ncxd5 26. Nxd5 Rxd5 27. Rxd5 Nxd5 28. Qg4+/-
24... Qb7 25. Ra1 Bb4 26. Bg5 Bxc3?!
a4 を守るためにc3 のナイトを消したいのは分かりますが、d4 ががっちり守られ、bファイルがオープンになる展開は、白の望むものです。26...a3! ならば、まだ難しいポジションでしょう。
27. bxc3 Nce8 28. Rdb1 Nd6 29. Bxf6?!
ここは少し勝負を焦りました。というのも、試合会場の上の階で工事かなにかが始まり、うるさくてとても集中できる環境ではなかったのです。29. Bd3!+/- bファイルのピンにより、e4 が落ちないことを見落としていました。
29... gxf6 30. Bxb5 cxb5 31. Ng4 f5 32. Nf6+?!
狙い通り、黒キングの前を開くことに成功しましたが、決め手を間違えてしまいます。32. exf5! Nxf5 (32... exf5 33. Nf6+ Kg7 34. Qe5!+- (これが見えず、32.exf5 を早々に切り捨ててしまいました。)) 33. Nf6+ Kh8 34. Rxb5+- この形でb5 のポーンを取ることができれば、白の勝ちはかなり近いところまで来ているでしょう。
32... Kg7 33. e5 Ne4!
オンリーディフェンスです。これ以外であれば、黒はシンプルにb5 を取られて、苦しい状況に追い込まれます。
34. Qh5?
是が非でも勝ちたい私は、ポジションを単純化することを避け、黒キングへのアタックチャンスを残そうとしました。実際には、白はドローで満足するしかないようです。34. Nxe4 Qxe4 35. Qxe4 fxe4 36. Rxb5 Rxc3 37. Rxa4 Rd3 38. Rbxa5 R8xd4= このエンドゲームは勝てないと判断し、リスクを承知で本譜をチョイスしました。
34... h6! 35. Nxe4 Qxe4 36. Rxb5 Rxc3 37. Rxa5 Qxd4?!
黒は勝ちのチャンスを逃しています。37... Rdc8! 38. Qd1 Qf4-+ ポーンを無視してルークを重ねるのが正解で、白はc1 へのルークの侵入に困ります。
38. R5xa4 Qxe5??
私も彼も、このポーンを取るのは当然だろうと考えていました。ところが互いに残り2分程で、突然私は勝ちのチャンスが舞い降りたことに気づきます。38... Rc4= ならば、何ら問題なくドローになるでしょう。
39. Rg4+!+-
正直このチェックがあったのは、まぎれもなく偶然であり、私にとって大きなラッキーでした。
39... Kf8
39... Kh7 40. Qxf7+ Kh8 41. Rg6 Rxh3 42. Rb1+-
40. Qxh6+ 1-0
ここで相手がキングをどちらに動かすか悩む間に、相手の持ち時間がなくなりました。先月の私同様、40手まですでに到達したと勘違いしていたようですが、いずれにせよ黒にはゲームを続けられる応手がありません。
40. Qxh6+ Ke8 (40... Ke7 41. Qh4+ f6 42. Rg7+ Kd6 43. Qb4+ Qc5 44. Rd1++-) 41. Rg8+ Kd7 42. Rd1++-
試合後に彼と話をしたところ、かつてパリで羽生さんと試合をしたことがあるそうです。しかし私のデータベースでは、残念ながらそのゲームを見つけることはできませんでした。
さて、これで3勝1敗、2つ勝ち越し状態に戻りました。今日のMark Lyell との試合も黒ですが、もちろん勝ちにいきます!彼も今月は調子が良さそうですが、1勝1敗1ドローの彼との戦績を、なんとか勝ち越し状態にしてこようと思います。
勝った日は、食事も一層おいしく感じます。
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