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2019/08/22

Vienna Open 2019 R6


VOLKSinn から少し進んだ大通りはMuseum通りと名付けられ、その名が示すように美術館が並んでいます。その1つである美術史美術館にあるカフェは、世界で最も美しいカフェとの呼び声が高く、昨日はそこに足を運んでみようかと思っていました。しかし、カフェがあるのはチケットを購入して入場するエリア内とのこと。せっかく美術館に入るならば、試合が終わって時間ができる24日以降にしようということで、名物カフェはまたのお楽しみです。


美術館を離れ、向かったのはウィーン歌劇場、いわゆるオペラです。この日は場所の確認だけのつもりでしたが、日本語も喋れるチケット売りのおじさんのトークに乗せられ、24日夜のコンサートチケットを2人分購入してみました。その会場はここではなく、(おじさん曰く)ウィーンで最も美しいシェーンブルン宮殿のようです。カジュアルな格好でも大丈夫だと言われましたが、本当でしょうか...

さて、ウィーンでの試合も折り返しの5R を終え、昨日から後半戦がスタートです。この日の相手はイタリア代表のGM Valsecchi でした。イタリアのGM と言えば、ベテランのGodena、若手のBrunero、そしてまだジュニアのMoroni Lucas Jr などが思い浮かびますが、これからはValsecchi の名前もしっかり覚え、ゲームもチェックしてみようと思います。そんな彼も今大会は黒で下に3勝、白では下に2ドローと、やや調子は上がってきていません。チャンスだと思い、試合に臨みました。

Valsecchi, A (GM, ITA, 2497) - Kojima, S (IM, JPN, 2390)
Vienna Open 2019 (6)

1. Nf3 d5 2. g3 g6 3. Bg2 Bg7 4. O-O e5



初手は1. e4 もしくは1. c4 を予想していましたが、見事に裏切られました。King's Indian Attack 対策は去年の遠征時から試行錯誤し、現在はGrunfeld セットアップに落ち着いています。Ng8-Nf6 を遅らせることで、本譜のように早いe7-e5 を実現します。白はこれが嫌であれば、c2-c4、もしくはd2-d4 を指さなければいけませんが、それであればGrunfeld の変化に入り、KIA からは外れます。

5. d3 Ne7 6. Nbd2 O-O 7. e4 Nbc6 8. c3


私が白で指すのであれば、8. Re1 h6 9. exd5 Nxd5 10. Nc4 Re8 11. Bd2!? を試すかもしれません。これは黒がc7-c5 を突いていないものの、現在人気のあるFianchetto King's Indian に対しての組み方です。

8... a5 9. a4 h6 10. Re1 d4!?



少し迷いましたが、eファイルを開かれてe5 にプレッシャーをかけられる展開を避けるため、ポーンをぶつけてみることにします。10... Be6 11. exd5 Bxd5 がメインラインで、これでも白は簡単にNd2-Nc4 ができないため、黒はOK でした。

11. cxd4 Nxd4


11... exd4 からb4 のアウトポストにナイトを送り込み、勝負する展開もあったでしょう。しかし、私は本譜の流れでd3 が弱点として残ると判断し、d4 にはポーンを残さないことにします。

12. Nxd4 Qxd4 13. Nb3



13. Nf3 Qd6 もありえる展開です。これであれば、黒はBc8-Bg4 からビショップナイト交換を狙い、d4 のアウトポストを将来的に使いやすくする作戦で戦うつもりでした。

13... Qd6 14. Be3 Rd8


c5 のマスは少し気になるものの、ビショップ、ナイトのどちらが来ても問題ないことを確認して、d3 へのプレッシャーを増やしておきます。

15. Rc1 Qxd3?!



ここまでは良かったのですが、シンプルにポーンに跳びついた手がイマイチで、完全にドロー模様になってしまいます。黒が勝ちを目指すのであれば、d3 は長く弱点として残しておくべきでした。15... Nc6! 16. Rc3 Nb4 17. Qd2 Kh7 18. Rd1 は白がd3 を守り切れていますが、負担であることは間違いありません。d3-d4 をどこかで許すと完全にイコールかと思っていましたが、それも簡単ではないようです。

16. Qxd3 Rxd3 17. Nc5!


この手を見落としていたため、d3 を単純に取る手が黒良しになると勘違いしてしまいました。17. Rxc7? Rxb3 18. Rxe7 Be6-/+ ならば、b7 を守りながらb2 を攻撃するb3 のルークが好位置で、はっきりと黒が優勢でした。15. Rc1 はこの変化に入ると思い込んだのが私のミスです。

17... Rd8 18. Nxb7! Bxb7 19. Rxc7 Bc6



ナイトを捨ててb7 を取る手が白のアイディアで、これでポーンを取りかえされてしまいます。こうしてポーンとピースの交換が進めば、完全にドロー模様のエンドゲームです。

20. Rxe7 Bxa4 21. Bf1 Bb3 22. Rc1 Rac8 1/2-1/2


最後は互いにドローオファーのタイミングを窺っていたような状態で、私から提案してゲームを終わらせました。2500近いGM に黒で簡単にドローは悪くない結果にも思えますが、d3,d4 を弱めた段階でもう少し作戦を練り、勝ちを目指すような展開にできなかったか、熟考すべきでした。

8/17 15:00 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Lytvynets, D (UKR, 2117) 1-0
8/18 10:00 R2 Kokoszczynski, J (POL, 2198) - Kojima, S (IM, JPN, 2390) 1/2-1/2
8/18 17:00 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Makynovskiy, R (AIM, UKR, 2178) 1-0
8/19 17:00 R4 Steindl, J (AUT, 2277) - Kojima, S (IM, JPN, 2390) 0-1
8/20 17:00 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Blohberger, F (IM, AUT, 2467) 1/2-1/2
8/21 17:00 R6 Valsecchi, A (GM, ITA, 2497) - Kojima, S (IM, JPN, 2390) 1/2-1/2
8/22 17:00 R7 Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Diermair, A (GM, AUT, 2473)
8/23 17:00 R8
8/24 10:00 R9

Vienna Open 2019 R7 Pairings
Vienna Open 2019 R7 Live Games

今日の対戦相手はオーストリアのGM Diermair です、初戦からポイントを落とし、下のボードをフラフラしていましたが、ようやく10番台まで戻ってきました。まだ本調子とは言えないと思いますので、しっかりプレーしてポイントを取ってきたいですね。


上のリンクからライブをご覧になっている人にとってはもうお馴染みかもしれませんが、このChess Results のライブ画面、プレー中の様子と局面が同時に分かって良いですね。昨日は最長で6時間近いゲームがあり、ルーク+ナイトvs. ルークで100手以上続き、ドローになっていました。

2018/11/24

Third Saturday GM November 2018 R7


ハンガリーよりモンテネグロのほうが調子が良い理由を色々考えてみましたが、遅く寝ても朝は8時台に起きて、朝食を欠かさずとっていることは挙げられるかもしれません。最近は生ハムが出るようになって嬉しいです。これにハム、チーズ入りのオムレツをいつも食べて試合の準備に臨んでいます。

ペアリングが決まった際、一番きついと思われていたGM 3連戦は、意外なことに初戦、2戦目を勝つことができました。この勢いで3試合目のDrasko戦も勝つことができれば、2敗した時点で風前の灯火だったノーム獲得のチャンスが復活します。色々と考え、新しいセットアップで勝負に挑みました。

Drasko, M (GM, MNE, 2434) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
Third Saturday GM November 2018 (7)

1. Nf3 d5 2. g3 Nc6!?



King's Indian Attack の新しい対策として、この2... Nc6 を用意してきました。1. e4 e5 プレーヤーにとっては自然に受け入れられるc7 のポーンとc6 のナイトの組み合わせも、Caro-Kann, Slav を長く指し続けている私にとっては、違和感を強く感じます。しかし、白がd2-d4 と突かなければ、3... e5 からReversed Pirc に、突けば本譜のような流れになるのは分かりやすいと、ゲームを調べていて思いました。

3. d4 Bf5


3... Bg4 のラインも調べましたが、Drasko がドローにしかならないラインを白で指しており、今回のゲームでの投入は諦めました。別の機会では指すかもしれません。

4. Bg2 Nb4 5. Na3 c6 6. O-O Nf6



Nb4-Nc6 と戻るセットアップもありえますが、私はやはりc6 にポーンがあるほうが安心です。お互いに端に出たナイトをどう活用するかがゲームのポイントとなります。

7. c3 Na6 8. Nc2 h6 9. Nce1!?


私自身、黒でNa6-Nc7-Ne8-Nd6 のマヌーバリングをタイミングによっては考えていたので、白がこれを選んだことも理解できます。ただし手数をこのナイトにかけてくれるようであれば、黒としてはありがたいという面もあります。

9... e6 10. Qb3 Qb6 11. Bf4 Be7 12. Nd3 O-O 13. Nfe5 Rfd8 14. Rfe1 Rac8 15. Rac1 Ne8!



以前、Fianchetto Grunfeld を調べていた際に、a6 にナイトがある局面で、もう1つのナイトをe8 に退く組み合わせがあったことを思い出しました。アイディアはd6 への組み直しと、c7 のマスをカバーすることです。ここではさらに白のe2-e4 を誘っています。

16. e4?!


Drasko は私の狙いに見事に引っ掛かりました。このポーンブレイクは、黒がe4 のコントロールを減らしたので成立しますが、先まで読むと黒に分があることがわかります。さらにCaro-Kann プレーヤーの私としては、e4 とd5 のポーンを交換するCaro-Kann のポーンストラクチャーは願ったりかなったりです。

16... Qxb3! 17. axb3 Bxe4 18. Bxe4 dxe4 19. Rxe4 c5?!



白マスビショップが消えれば、h1-a8 のダイアゴナルの脅威が消え、このcポーンのブレイクが容易になるのは間違いありません。しかし、ここはもう1つの手を挟んでおくのが正確な手順でした。19... g5! 20. Bd2 (20. Be3?? Nf6!-+) 20... c5! 21. Nf3 Nd6! 22. Re2 cxd4 23. Nxd4 Bf6 24. Nc2 Nf5 25. Nce1 Nc5 26. Nxc5 Rxc5=/+ これで次にdファイルにルークを重ねれば、黒が指しやすいことは明らかでしょう。g7-g5 はもう少し掘り下げて効果を考えるべきでした。

20. Nf3?!


20. dxc5 Nxc5 21. Nxc5 Bxc5= 相手にダブルポーンがある分、黒はなんら不満のない局面ですが、アドバンテージがあるかと言われれば疑問です。

20... Nf6?!


ここが20... g5! と突く最後のチャンスでした。

21. Re2 cxd4 22. Nxd4 Nc5 23. Nxc5 Bxc5 24. Nf3 Nd5 25. Bd2 a6



黒はとても満足なポジションですが、これを勝ちにいくのは相当大変です。色々と試してみますが、Drasko はとても手堅く進めてきます。

26. Kg2 Be7 27. Rce1 Nb6 28. Be3 Nd5 29. Bd4 Kf8 30. Re4 Nf6 31. R4e2 Nd7 32. b4


Nd7-Nc5 を防ぐこのbポーン突きは、c4 のマスを空けるために弱みもあるかと思いましたが、黒にはそれをあまり利用する手段がありません。

32... Bf6 33. Bxf6 Nxf6 34. Nd2 Rd3 35. Nb3 Nd7



白のNb3-Nc5 の侵入を防ぎ、これでお互いにあまり手が無くなります。

36. Re4 Rc7 37. R1e2 Rd6 38. Nd4 Nf6 39. Re5 Nd7 40. R5e4 Nf6 41. Re5 Nd7 42. R5e4 Nf6 1/2-1/2


ノームチャンスのためにとことん戦うことも考えましたが、全く白を崩せるイメージが持てず、ここでドローにしました。5つ勝ち越しのノーム達成条件は今月もクリアできませんでしたが、GM トーナメントでGM に1敗もせず、2.5/3 で乗り切ったのは今回が初めてのことです。残り2戦の結果にかかわらず、これを今大会の1つの収穫にしたいと思います。

11/17 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Akshat, K (IM, IND, 2399) 1-0
11/18 14:30 Srinath, R (FM, IND, 2357) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/19 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Audi, A (FM, IND, 2347) 1-0
11/20 14:30 Nikolic, N (MNE, 2326) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/21 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Pikula, D (GM, SRB, 2485) 1-0
11/22 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2429) 1-0
11/23 14:30 Drasko, M (GM, MNE, 2434) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1/2-1/2
11/24 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Der Manuelian, H (USA, 2271)
11/25 09:30 Plenkovic, Z (IM, SRB, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)

Third Saturday GM November 2018

+3 Pikula, Srinath
+2 Drasko, Kojima, Nikcevic
-1 Akshat, Nikolic
-3 Plenkovic, Audi
-4 Der Manuelian

残りの2戦は下位に沈んでいるDer Manuelian とPlenkovic が相手です。ノームが消えても勝ちを目指して戦うことには変わりませんので、残り2試合、良いプレーで結果も出せるように頑張ります!

2018/11/21

Third Saturday GM November 2018 R4

4R はモンテネグロのベテランプレーヤー、Nikolic との対戦です。先月、オーガナイザーから紹介されたときは、ボスニアヘルツェゴビナのトップGM がこんなところに? と思いましたが、同じ名前の別人でした。

Nikolic, N (MNE, 2326) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
Third Saturday GM November 2018 (4)

1. g3 d5 2. Bg2 e5 3. d3 Nc6 4. a3 a5 5. Nc3 Be6 6. Nf3 Nf6 7. O-O Be7 8. Bg5



手順は予想外でしたが、オリンピアード後、King's Indian Attack に対して新しい変化、Reversed Pirc の形を試そうと思っており、その機会が訪れました。色々とゲームを調べてきましたが、Ng1-Nf3 が遅いとd5 にプレッシャーがかかるため、Bc8-Be6 を早めに挟む必要があるのは新しい発見でした。私の予定では、白マスビショップの位置は保留でキャスリングまで済ませ、白の駒組みの様子を窺うつもりでした。

8... O-O 9. e4 d4


ここはゲームの分かれ目で、9... dxe4 10. dxe4 h6 11. Bxf6 Bxf6 12. Nd5 Be7 13. Qd3 と進めるのは、イコールながら安全策だと分かっていました。d5-d4 の押し込みからセンターを閉じるKing's Indian のよくあるポーンストラクチャーは、評価が難しく苦手とするところなのですが、この試合はどうしても勝ちにいきたかったため、センターを開く単純化を避け、勝負に出ます。

10. Ne2 a4!



この手はb2 やc2 のポーンを動かしづらくし、クイーンサイドでスペースを取る良い手だったと思います。King's Indian の基本通りいくならば、黒はcポーンを伸ばしたいので、Nc6-Na5, c7-c5-c4 というアイディアも、時間があればやってみたいと思っていました。

11. Nh4 Qd7 12. Qe1!?


これはh4 のナイトに遠くから守りをつけ、f2-f4 を指しやすくするアイディアです。こんな手があるんだなと思いながら、こちらもfファイルからのブレイクを遅らせる、もしくは弱められるアイディアを探します。

12... Ra6!



6段目のルークは将来的にキングサイドに横移動できる可能性を持ちつつ、b,c ファイルに置いてクイーンサイドのポーンを狙うのもありえます。

13. Rd1 Ne8?!


ここで時間を使いながらも、何がベストか判断ができませんでした。将来的な局面が見えても、それが黒にとって十分なのか、優勢なのかを判断できなかったのは、このゲームの反省点です。13... Rb6 14. Bc1 Ng4! この手は考えたつもりでしたが、自分の予想よりも強力でした。15. h3 Bxh4 16. gxh4 (16. hxg4 Be7 17. g5 Rb5 18. f4 Bg4-/+) 16... Nf6 17. Kh2 Nh5! 18. f4 Nxf4 19. Nxf4 exf4 20. Rxf4 f6-/+ これは私がイメージし、実際に進めた局面よりもナイトを捌けている分、白のアタックチャンスは不十分で、好形のポーンストラクチャーとe5 のアウトポストは、白のダブルビショップに十分対抗できる武器になっています。h2-h3 を突かせればそれがターゲットになり、ナイトを退き直してもh5 に跳ぶ余裕があるのを読み切れなかったのが悔やまれます。

14. Bc1 Nd6 15. f4 Bxh4 16. gxh4 exf4



このポーンを取るのも悩みましたが、ダブルビショップを諦めている分、勝負のポイントはe5 のアウトポストに置くナイトの力だと思いました。ただし、白のf4 のナイトも私の予想より強力で、これが上記のナイトが捌けている変化との違いでした。16... Bg4 17. f5 (17. Rd2 f6 18. f5 Bh5) 17... f6 18. Kh1 も互いにナイトは大人しいですが、指せるポジションです。

17. Nxf4 f6 18. Qg3 Ne5 19. Kh1 Kh8 20. Rg1 Rg8 21. h5 Raa8


勿体ないような気もしましたが、b2, c2 への攻撃はさほど効果的でなく、f7-f6 のためにキングサイドへも行くチャンスがなくなったルークは、退いて8段目で使いなおすのが打倒だと考えました。何かあった際にバックランクの守りを強めておきたいという気持ちもありました。代わりの21... Rc6 22. Rd2 Bf7 23. Rf2 は評価の難しいポジションです。

22. Qh4 Qf7?



f4 にナイトをキープしている以上、どこかでNf4-Ng6+ を狙っていることは承知していました。これに対してどうディフェンスするのがベストなのか、短い持ち時間では全く分かりませんでした。22... h6!? あえてg6 の守りを増やすのではなく、むしろg6 を弱めても、キングの上がるマスを作るというアイディアは頭にありました。 23. Ng6+ Kh7 24. Nxe5 fxe5 25. Rdf1+/= しかし、アウトポストのナイトを捌かれて少し悪そうです。22... Ndf7!? コンピュータの指摘したこの手は、試合中に考えてはいたものの、Nf4-Ng6 の対策に何もなっていないと思い込んでいました。 23. Rdf1! (23. Ng6+? hxg6 24. hxg6+ Nh6 25. Rdf1 (25. Bxh6 Nxg6!-+ いかにもつぶれそうなh6 取りには、この反撃がありました!) 25... Nxg6 26. Qh5 Nf8-/+) 23... h6 24. Ng6+ Kh7 25. Bf4 Rae8 26. Qg3 Bg4 27. Rf2 c5 28. Bf1 Bxh5 29. Bh3 Qd8 30. Bf5 Bxg6 31. Bxg6+ Kh8 32. Bxe5 Nxe5 33. Bxe8 Qxe8+/= こうしてエクスチェンジを返して守るというのが、コンピュータの1つの指摘です。確かにエクスチェンジダウンでも、e5 のアウトポストのナイトさえ脅かされないのであれば、守り切れる可能性があるでしょう。

23. Rdf1


この手はNe5-Nf3 を防いで白マスビショップを動けるようにする良い手ですが、この手を入れずともBg2-Bh3 が成立することに、私は22... Qf7 を指した直後気付きました。23. Bh3! Nf3 24. Qg3 Bxh3 25. Qxf3 Bd7 26. Ng6++-

23... g5?



この手が自分から守りを崩していることは承知していましたが、とにかく時間が無く、そしてg6 への跳び込みへの守り方が見つけられませんでした。23... Qe8 24. Bh3 Bf7 25. Nd5 でも白がかなり押していますが、まだこちらのほうが良かったでしょう。

24. hxg6 Nxg6 25. Qf2 Nb5 26. c4


f6 を取ってポーンアップにしても、エンドゲームは黒にとって絶望的だと思いますが、相手は黒マスビショップでf6 をゆっくり狙う作戦を選びました。

26... dxc3 27. bxc3 Ne5 28. c4 Nd6 29. Bb2 Raf8 30. Qh4 Ne8 31. Bc3 Rg4 32. Qh6 Rxf4 33. Rxf4 Nxd3 34. Rf3 Bxc4 35. Bf1 1-0



King's Indian 型はきちんと指せば大丈夫なポジションで、なにがきちんとした手なのか見つけるのが難しいと改めて思い知ったゲームでした。ここはポイントを取りたいラウンドですが、無念の黒星でまたイーブンに後退です。

11/17 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Akshat, K (IM, IND, 2399) 1-0
11/18 14:30 Srinath, R (FM, IND, 2357) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/19 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Audi, A (FM, IND, 2347) 1-0
11/20 14:30 Nikolic, N (MNE, 2326) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/21 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Pikula, D (GM, SRB, 2485)
11/22 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2429)
11/23 14:30 Drasko, M (GM, MNE, 2434) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
11/24 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Der Manuelian, H (USA, 2271)
11/25 09:30 Plenkovic, Z (IM, SRB, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)

Third Saturday GM November 2018

+3 Pikula, Nikcevic
+2 Srinath
+1 Drasko
+-0 Kojima, Plenkovic
-1 Akshat
-2 Audi, Nikolic
-4 Der Manuelian

白番での調子が戻ってきたと思いきや、黒番で連敗です。内容はブダペストでよゲームほど悪くはないので、また今日からのGM 3連戦で頑張ります!


昨日は天気が大荒れで、レストランに至る道は途中水没しました。仕方がないので、道路脇の高い段になっている部分に上がったり、砂浜を歩いてレストランを目指しました。昼はともかく、夜は辺りも暗くて怖かったです...

2018/10/02

Batumi Olympiad R7 United Arab Emirates - Japan


7R の相手はアラブ首長国連邦です。12年前、初めて参加したトリノのオリンピアードでも対戦し、そこで初めてUAE という表記を知ったことをよく覚えています。UAE のトップGM Salem とは2回対戦して敗れており、再び試合をしてみたい気持ちもありましたが、今回のオリンピアードは不参加でそれは叶いません。しかし、Salem 抜きの若いメンバーで構成されたチームでも、UAE は強敵です。

Omar, N (IM, UAE, 2356) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
Batumi Olympiad (7)

1. Nf3 d5 2. g3 c6 3. Bg2 Bg4 4. h3 Bxf3 5. Bxf3 e5 6. d3 Nf6 7. O-O Nbd7



彼の試合はデータベースでは1. d4 しか無く、今大会もそうであったため、こうしたスタートになったことに正直面くらいました。それでもKIA は過去何度も指した経験があります。

8. Nc3!? Be7 9. e4 dxe4 10. Nxe4 Nxe4 11. dxe4 O-O


早くも2ピースの交換が進みました。GMノームのためには黒番でも勝ちが欲しい私でしたが、Wiedenkeller戦の経験から局面がイコールでも、結果はどう転びうるか分からないことを知っていました。ここからは、黒マスビショップをぶつけて交換するのが黒としては理想です。

12. h4 Qc7 13. Qe2 a5



白はBe7-Bc5 を警戒してか、簡単にはビショップを展開してきません。ならば時間を貰った黒も、c5 にどちらのピースを置くか保留し、先に指しておきたい手を入れておきます。a7-a5 はこうしたポジションで典型的なアイディアで、b2-b4 を防ぐことでc5 のマスを確保します。

14. Rd1 Rfd8 15. a4 Nc5


ここはしばらく考えましたが、h7-h6, b7-b6 などで待つアイディアは流石にやりすぎだろうと、c5 に置くピースをナイトに決めます。

16. Rxd8+ Rxd8 17. Be3 Qb6!?



黒としては、f2 を狙える好位置にビショップが来られるのであれば、黒マスビショップとナイトの交換は歓迎すべきものです。これを避け、17... Ne6 18. c3 Bc5 19. Bg4! とされるのはおかしいと感じました。本譜ではb2 を攻撃しつつ、クイーンで積極的に狙いを作りにいきます。

18. b3 Qb4 19. Rd1!?


ここで白がどう指すか、かなり難しい局面だと思うのですが、Omar はあっさりとe4 を見捨てました。勝ちにいきたい私にはありがたいですが、この先のポジションはお互いにとってとても難しいものでした。

19... Rxd1+



ルーク交換を挟まずにe4 を取る手も考えましたが、読み切れませんでした。19... Nxe4!? 20. Rxd8+ Bxd8 21. Qd3! Nd6 22. c3 Qa3 23. b4!? (23. c4 23... Be7 24. Qc3 こう進めるのが正解で、白はポーンを捨てていても戦えるようです。) 23... Be7 24. Bc5 e4! 25. Bxe4 Nxe4 26. Bxe7 (26. Qxe4 Bxc5 27. bxc5 Qxc5=/+) 26... Qa1+ 27. Kg2 Qh1+!


Analysis Diagram

ここまでくれば分かりますが、これを19手目から予測するのは私にはまだ無理でした。28. Kxh1 Nxf2+-+

20. Qxd1 Nxe4 21. Bxe4 Qxe4 22. Qd7 Bf8



私はこのエンドゲームを戦おうと決意しました。黒は1ポーンアップですが、まだまだ難解な局面です。ポイントはa5 で固定されたポーンが黒マスで狙われやすいこと、そして黒はバックランクが弱く、その問題を解決してビショップを使うのには多少の時間がかかることです。

23. Qxb7 Qxc2 24. Qa8!


これは19手目の時点である程度予想していながら、実際に指されてみると強烈でした。狙いはa5 のポーンを取ってパスポーンを作ると同時に、f8 のビショップをピンにして隙あらばBe3-Bc5 をすることです。特に後者を気にしなければいけない黒は、c5 のマスをクイーンで守り続けなければいけません。

24... Qc3?!



ここは試合中、特に時間をかけましたが、納得できる答えを見つけることはできませんでした。24... f5!? 25. Qxa5 f4! 26. gxf4 Qxb3!? (Misha との検討会では、よりシンプルな26... exf4 27. Bxf4 Qxb3 でも、黒は負けることがないのではないかという意見が出ました。) 27. fxe5 Qd1+ 28. Kh2 Qh5 29. Kg3 Qg6+ 30. Kf3 Qh5+ 31. Kg3 Qg6+= これでパペチュアルチェックというのがコンピュータの指摘です。

25. Bb6 e4


私が時間をかけて考えたのは、e4-e3 と押し込む狙いを作りつつ、f3 のマスを確保してパペチュアルチェックを入れやすくするこのeポーン突きです。

26. Qxa5 Qxb3 27. Qa7?



試合中、これは助かったと思いました。aポーンを進める準備とともにe3 を抑えるこの手は良さそうに見えますが、実際には黒にドローチャンスを与えてしまいます。27. Be3! と先にビショップを下げておく手が正解で、次にQa5-Qa8 とする手が強力でした。

27... f5?


ここが決定的なミスでした。a7 の位置に白がクイーンを置いたことで、私はバックランクを外し、早めにビショップをゲームに戻せると思いました。しかし、27. Be3 が正しい本当の理由はg5 のマスを抑えることにあり、これを利用することが黒の正しいドローチャンスの作り方でした。27... g5! 28. hxg5 (28. a5 gxh4 29. Qc7 h6 30. a6 h3! 31. Kh2 Qf3 32. Kxh3 Qh1+ 33. Kg4 Qd1+ 34. Kh3 Qf1+ 35. Kh2 Qxa6=/+ ならばドローの可能性は高いですが、黒のほうがチャンスがあります。) 28... Qd1+ 29. Kg2 Qf3+ 30. Kg1 Qd1+ 31. Kh2 Qh5+= 確実なパペチュアルチェックのために必要なことは、白のhポーンを剥がし、hファイルをオープンにすることでした。バックランクを外すために、h~fのどのポーンを突くべきかしっかり考えたつもりでしたが、g7-g5 のアイディアが出なかったのはこの試合で最も悔やまれるポイントです。

28. Be3 Bd6 29. Qa8+ Kf7 30. Qa7+ Kg8 31. Qd4!



私の残り時間は3分で、この手を指されては抵抗もここまでです。31. Qxc6? Qd1+ 32. Kh2 Bxg3+! からのパペチュアルチェックだけが黒の期待でした。

31... Qe6 32. a5 c5 33. Qa4 Qe7 34. a6 Qa7 35. Qe8+ Bf8 36. Qe6+ Kh8 37. Qxf5 Kg8 38. Qd5+ Kh8 39. Qb7 Qxb7 40. axb7 Bd6 41. Bf4 1-0


19手目付近でリスク覚悟で勝負にいったわけですが、結局最後までバックランクの弱さが解消されず、それが原因のピースの動きづらさを利用されての負けとなりました。これで今大会のノームチャンスは無くなったことはとても残念ですが、残りの試合は気負わずにプレーを続けられればと思います。

Open R7 United Arab Emirates - Japan 2-2

Omar, Noaman (IM, UAE, 2356) - Kojima Shinya (IM, JPN, 2408) 1-0
AlHuwar, Jasem (FM, UAE, 2245) - Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) 0-1
Al Hosani, Omran (FM, UAE, 2115) - Matsuo, Tomohiko (CM, JPN, 2170) 1-0
Ammar, Sedrani (FM, UAE, 2099) - Otawa, Yuto (JPN, 2161) 1-0

Women R7 Japan - Singapore 1-3

Hoshino Karen (WFM, JPN, 1945) - Liu, Yang Hazel (WFM, SGP, 2064) 1/2-1/2
Sakai Azumi (JPN, 1713) - Hng, Mei-En Emmanuelle (SGP, 2020) 0-1
Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1655) - Siew, Kai Xin (SGP, 1751) 1/2-1/2
Shibata Misaki (JPN, 1605) - Hng, Mei-Xian Eunice (SGP, 1687) 0-1


オープンは白番がどちらも勝ってくれたおかげで、マッチに敗れずに済みました。このオリンピアードで、日本チームの初ドローです。女子は強敵シンガポールに白番2人がドローで、マッチは1-3 で敗れています。また残り4試合、オープンも女子も盛り返していきたいですね。


8R はオープンが10年ぶりの対戦となるアフガニスタン、女子が聴覚障害を持つプレーヤーのチーム、ICCD との対戦です。私は10年前のドレスデンオリンピアード、初戦のアフガニスタン戦で自分だけが負けるという悲しい思いをしたのでした... 今日はしっかりと勝って、また上位チームとの対戦につなげていきたいと思います。


この日は試合前に相手選手からお土産を貰いました。86年のドバイオリンピアードでの記念メダルだそうです。

2016/03/22

Hyakketsu 2016 Day3 Tournament Report


今年の百傑戦、オープンクラス入賞者たち, Photo by Hasegawa

今年最初のビッグトーナメント、全日本百傑戦は昨日、無事に3日間の全日程を終了しました。3日コースの参加者67名のトップに立ったのは、昨年からの勢いが衰えないTu さんで、6戦全勝という圧倒的なスコアでした! 昨年のクラブ選手権、東京オープンに引き続き、3回目の全勝ですね。Tu さん、おめでとうございます!

1st Place Tran Than Tu (CM, VIE, 2445) 6/6
2nd Place Kuwata Susumu (JPN, 2258) 5/5
3rd Place Irie Yuki (JPN, 2196) 5/5
4th Place Shinoda Taro (JPN, 1994) 4.5/6


私は3日目も1勝1ドローとなり、トータルでは3勝3ドロー。4位タイの6位に終わりました。有利だと思ったエンドゲームが、実際はそうでもなかったり、どのようにチャンスを広げれば良いか分からなかったりで、星をそこまで伸ばすことができませんでした。今回の反省を踏まえ、1か月半後の全日本選手権に臨みたいと思います。

今回の入賞者の中での注目は、オープン初入賞となる篠田くんです。今大会では最終戦で南條くんを破り、3勝3ドローの負けなしで、堂々の4位獲得となりました。2月のカペルでも格上からポイントを取り、FIDE レイティングを大きく上げています。10年以上の付き合いになる後輩が、こうして結果を残してくれるというのはとても嬉しいものです。この数年間はトレーニングやIVL でしか対戦の機会がありませんが、近いうちに公式戦でも対戦できることを楽しみにしています。

それでは、今大会最後の棋譜解説へ。初対戦となる、高橋さんとのゲームです。

Takahashi, M (JPN, 2001) - Kojima, S (IM, JPN, 2471)
Hyakketsu 2016(6)

1. g3 e5 2. d3 d5 3. Nf3 Bd6 4. Bg2 c6 5. O-O Nf6 6. c4 h6 7. Qc2 O-O 8. Na3 Bg4 9. Re1 Nbd7 10. h3 Bh5 11. Nh4 Re8 12. Nf5 Bf8 13. e4 Rc8 14. Bd2 dxe4 15. dxe4 Nc5 16. g4 Bg6 17. Red1



最終戦の高橋さんとのゲームは、意外な手順で始まりましたが、進めてみればKing's Indian Attack のような形に落ち着きました。ここでは白がe2-e4 だけでなく、c2-c4 もついているため、d3 やd4 のマスが弱いとみて仕掛けます。

17... Qd3! 18. Qc1 Rcd8 19. f3


e4 を守るためには仕方のないように見えますが、この手では厳しいだろうと試合中には読んでいました。e4 を捨てる代わりに7段目にルークを入れるのがベストですが、それでも黒が優勢です。19. Be3! Qxd1+ 20. Qxd1 Rxd1+ 21. Rxd1 Ncxe4 22. Bxe4 Nxe4 23. Rd7 Bxf5 24. gxf5 a5=/+

19... Bxf5! 20. gxf5 Qe2!



f5 のナイトを取り除いた後は、Nf5-Ng3 がないため、e2 にクイーンを侵入させることができます。黒からはNc5-Nd3, Bf8-Bc5, Nf6- Nh5-Nf4 といった狙いが豊富にあり、白が守り切ることは難しいでしょう。

21. Be1 Rxd1 22. Qxd1 Qxb2 23. Nc2 Qb6!


1ポーンアップになりましたが、まだまだ油断はできません。次にRa1-Rb1 が意外に厄介であることに気づいた私は、クイーンをさげつつ、Re8-Rd8 としてルークを攻撃に参加できるようにします。

24. Bf2 Rd8 25. Qe2 Nh5 26. Be3 Qb2 27. Rd1 Rxd1+ 28. Qxd1 Qxa2 29. Qd8 Qxc4 30. Ne1 b6 31. Kh2 Qe2 32. Bxc5 bxc5 33. Nd3 c4 34. Nxe5 Nf4 0-1



5R の三ツ矢さんとの試合は、黒マスビショップを30回以上動かしてへとへとでしたので、最終戦はなんとか勝てて一安心です。また全日本選手権でも、気を引き締め直して頑張りたいと思います! 百傑戦参加者の皆さん、お疲れ様でした。また次の大会でも、よろしくお願い致します。

2014/12/21

Chess in Kecskemet 2014 December GM 5th and 6th rounds


私にとって昨日の日付、12月20日は、今後も決して忘れられない日になるでしょう。この日はGM クラスは唯一の1日2試合で、しかも私が2試合とも黒番の厳しい戦いとなります。朝、チェス盤とにらめっこばかりしていても仕方がないと、寝ぼけ眼をこすりながら、酒井くんと2人でケチケメートのマーケットへ顔を出してきました。この時期はクリスマスのツリーやリース、オーナメントの販売が多かったですね。

この日の試合、午前はロシアのGM Fominyh に黒を持ちます。先週のFirst Saturday のゲームでは、中盤から終盤にかけて苦しい展開をなんとか粘り、最終的にはドローとなりました。彼は1日2試合でも俄然試合をやる気だったので、こちらも長期戦覚悟のソリッドな変化で勝負です。

Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
Chess in Kesckemet 2014 December GM (5)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. e3 g6



Santarius 戦では4... e6 を使いましたが、この日はなんとなく去年までのパートナー、g6 Slav を採用します。同じ大会内で、オープニングを使い分けるのは私としては珍しいことです。

5. Nf3 Bg7 6. Be2 O-O 7. O-O a6 8. Qb3 e6 9. Rd1 Nbd7 10. a4 a5 11. Qc2 Re8!


ここまではかつて研究した手順です。黒は白マスビショップを使う方法として、e6-e5b7-b6 があり、その両方のチャンスを柔軟に作っておきます。

12. b3



12. e4 Nxe4 13. Nxe4 dxe4 14. Qxe4 e5 15. dxe5 Qc7 16. Bf4 Nxe5 17. Nxe5 Bf5= と進んで簡単にイコアライズすることを期待していましたが、Fominyh は時間を使ってじっくりセットアップを決めてきました。e3-e4 を突かないのであれば、局面は閉じたままでゲームは進んでいくことになります。

12... b6 13. Ba3 Bb7 14. Rac1 Rc8 15. Qb1 c5


b5 のマスを弱めることは気がかりですが、b7 のビショップのダイアゴナルは開かなければ話にならないですし、他に手を作るところもありません。すぐに、d5,c5 が負担にならないことを確認して、ポーンを進めます。

16. Nb5 Bf8 17. Bb2 Ne4! 18. Ba1 Bg7 19. Ne1 Qe7



この辺りは膠着状態のまま、互いに細かなピースの改善が続きます。Qd8-Qh4 と大胆に跳びこむ手も考えましたが、g2-g3 を突かせることが黒のプラスになるのかは分からなかったので、ひとまずd6 のマスを安全に守っておくことにします。

20. Bb2 Bh6!


クイーンがdファイルから外れたことで、ポジションをそろそろ黒から開いても良いのですが、先にこの手を入れ、白からcxd4 と取り返せないようにしておきます。

21. Nf3 Red8 22. Nc3 cxd4 23. Nxd4?


これは3試合連続のGM戦で、三度チャンスが巡ってきたことを確信しました。23. Rxd4 Bg7 24. Rdd1 Ndc5-/+ と進んだ場合、黒はb3 を攻めて優勢でしょう。互いのポーンストラクチャーは同じですが、弱いマス(b4,b5)を抑えるよりも、弱いポーン(b3,b6)を攻撃することのほうがプラスは大きく、その点で黒にチャンスが出てきたことを理解していました。

23... Nxf2!



ナイトが動いてh4 のマスの守りが外れたことで、この典型的なタクティクスが成功します! Fominyh ほどのベテランが、この手を見落としたことは意外でした。

24. Kxf2 Qh4+ 25. Kg1 Bxe3+ 26. Kh1 Bxd4 27. Rxd4 Qxd4


黒には次に、Bd4-Be5 からのメイトスレットがあるため、白は2ポーンに加え、さらにエクスチェンジを捨てざるをえません。完全に勝勢のマテリアルとなり、後は黒マスの弱さにだけ気を配って丁寧に指すのみです。

28. Bf3 Qh4 29. Nb5 Nc5 30. Be5 dxc4 31. Rxc4 Qf2 32. Rc2 Qe3 0-1



こうしてソリッドなゲーム展開から、ワンチャンスをものにして、自身初となるGM戦連勝です! これでライブレイティングを2392 まで上げ、いよいよIM タイトルのかかった午後の試合に向かいます。


お昼ご飯はクリスマスマーケットの屋台で。セルフサービスで、100g 520フォリントだよと言われた肉料理を、200g ぐらいかなーと思って盛ったところ、500g を超えてしまいました(笑) タフな試合スケジュールをこなすためには、これぐらいはペロッと食べられないといけないかもしれませんね!


午後の6R からは、1R からの対戦相手と色を逆にして試合をするのが、ダブルラウンドロビンのシステムです。相手は初戦で怪しいエンドゲームを勝ち切った、アメリカのFM Betaneli、彼に勝つとレイティングはプラス7.6なので、ライブレイティングがちょうど2400 に乗る計算になります。自身初となる、IM タイトルをかけた重要な一戦のスタートです。

Betaneli, A (FM, USA, 2268) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
Chess in Kesckemet 2014 December GM (6)

1. Nf3 d5 2. g3 Nf6 3. Bg2 c6 4. O-O Bg4 5. d3 Nbd7 6. h3 Bh5 7. Qe1 e5 8. e4 dxe4 9. dxe4 Be7 10. Nbd2 O-O 11. Nc4 Qc7!?



オープニングは、Caro-Kann かEnglish を用意していましたが、まさかのKing's Indian Attack でした。このセットアップはFirst Saturday のBenkovic 戦の準備で見直していたばかりだったので、ラッキーと言えばラッキーです。オリンピアードで敗れた、スウェーデンのGM Tiger 戦の11... Bxf3 とは手を変え、ピースを盤上にキープしておくことにします。

12. a4 Rfe8 13. Nh4 Bf8 14. Bd2?!


試合後の検討では、ここは14. Bg5 と指すべきだったと、Betaneli 自身が指摘しています。確かに、f6 のナイトをアタックしておけば、黒は理想的なNd7-Nc5-Ne6-Nd4 というマヌーバリングがやりづらくなるでしょう。

14... Nc5! 15. b3 Ne6 16. Ba5 b6 17. Bc3 Nd7 18. Nf5 f6 19. Kh1 Rad8



私はこの時点で、すでに何も黒に不満がないことを確信しています。このナイトをd4 に運ぶ準備をしつつ、2つのビショップをg8-a2, f8-a3 のダイアゴナルに置くセットアップは、かつてKramnik のゲームから学びました。

20. f3 Bf7 21. Qc1?


この手はどう見ても不自然ですし、何かアイディアがあるとしても捻りすぎです。21. Rd1 と指すのが自然で、それならば黒は満足ながらも、優位に試合を進めるには、もう一工夫必要になるでしょう。

21... Ndc5 22. Qe3 Nd4!



時間を使い、この手を思い切って指せたのは、私の成長の証だと思います。d4 とc6 でポーンを一時的に取らせても、白のg3 のポーンを掠め取ったうえで黒マスを支配すれば、1ポーンの代償は十分すぎるでしょう。

23. Qf2 Nce6!?


試合中悩んだのは、23... Bxc4 24. bxc4 Nxf5 25. exf5 e4-/+ とピースを捌いて仕掛ける変化で、これでも黒の優位は確実でした。本譜では、白がf3-f4 と仕掛けてくることを見越し、白マスビショップは別のダイアゴナルで使い直そうと考えましたが、白のクイーンサイドのポーンストラクチャーを乱せるのであれば、ビショップナイトの交換は躊躇わなくても良かったでしょう。

24. Nfe3 a5!



すでにd4 に強力なナイトを指している黒は、次にビショップを使い直すことを考えます。黒マスビショップのベストの位置は、明らかにc5 ですので、白からb3-b4 を突かれぬよう、まずはb4 のマスをポーンで抑えておきます。

25. f4 exf4 26. gxf4 Bc5 27. Rae1 Bh5!


続いて白マスビショップも、ダイアゴナルを切り替えてアクティブに使えるようにします。f3, e2 辺りは、白としては抑えられると嫌なマスでしょう。Nd4-Ne2 と黒のナイトが跳びこんでくる筋は、常に頭に置いておかなければいけません。

28. Nb2 b5! 29. Nd3 Bb6!



ポジションの改善が難しくなってきた白に対して、黒はゆっくりと盤全体でプラスを広げていきます。黒マスビショップをキープし、a7-g1 のダイアゴナルを抑えている限り、c6 のポーンが消えても、Ne3-Nd5 は怖くありません。

30. f5?! Ng5


最初、f4-f5 を見た際は、次のNd3-Nf4 を警戒しましたが、それが全く問題ないことに気づき、冷静さを取り戻してこの手を指します。

31. Qh4? Ngf3!



彼の見落とした、決定的なタクティクスです。黒のナイトは、クイーンとルークを狙うだけでなく、h2 でのメイティングスレットを作る、トリプルフォークになっています! これで完全に黒の勝勢ですが、もちろん相手がリザインするまでは気を緩めることはできません。

32. Qf4 Nxe1 33. Bxe1 Nxc2 34. Nxc2!


エクスチェンジに留まらず、さらにマテリアルを確保して勝ちを引き寄せます。

34... Rxd3 35. Qh4 Bf7 36. b4 Ba7 37. e5 Qxe5 0-1



彼がリザインした瞬間、これまでハンガリーで過ごしてきた日々のことを思い返しました。2264というレイティングでハンガリーを訪れたのは、今から2年半以上前の、2012年5月のことでした。それから何度となく、ブダペストとケチケメートのIM トーナメント、GM トーナメントで戦いを続けてきて、ようやくこの日、3つのノームとレイティング2400を達成しました。リガの最終戦で見事な勝利をおさめ、IM タイトルの条件を揃えた南條くんから遅れること4か月、私もこれでIM となります! 長い間、応援してくださった皆さん、本当にありがとうございます!

12/16 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Betaneli, A (FM, USA, 2268) 1-0
12/17 15:00 Santarius, E (USA, 2319) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
12/18 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Varga, Z (GM, HUN, 2473) 1/2-1/2
12/19 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2432) 1-0
12/20 09:00 Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 0-1
12/20 16:00 Betaneli, A (FM, USA, 2268) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 0-1
12/21 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Santarius, E (USA, 2319)
12/22 15:00 Varga, Z (GM, HUN, 2473) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/23 15:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2432) - Kojima, S (FM, JPN, 2356)
12/24 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438)

+4 Kojima
+2 Santarius
0 Varga, Fominyh
-2 Ilincic
-4 Betaneli

一夜明けて、多くの方からお祝いのメッセージを頂き、あらためて喜びがふつふつと湧き上がってきました。しかし、こうして書くと、すでにトーナメントが終わったようにも思えてしまいますが、実際には全くそんなことはありません(笑) まだ後半戦は始まったばかりで、今日から24日まで、残り4試合を戦います。アメリカのSantarius は、Varga を見事に黒で下し、2つ勝ち越し状態で私を追っています。私もここまで来た以上、初のGM トーナメント優勝と、GM ノーム、そして羽生さんの持つ日本籍プレーヤーのベストレイティング、2415 を超えることを目標に、残り試合をしっかりプレーしてこようと思います! 6つ勝ち越しの8P ならば、初のGM ノーム獲得、5つ勝ち越しの7.5P ならば、私のレイティングは2416になる計算です。

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