2012/04/28
Check Mate Lounge - Behind the Scene -
今日はCheck Mate Lounge の振り返りということで、少し裏話もしていこうと思います。次号のチェス通信の記事とも少し被ります。
・Check Mate Lounge の運営に関して
主催者が私、プロデューサーが兄の穣二と公開されていますが、もちろん二人で全ての作業こなしてきた訳ではありません。主に7~8人のグループで、企画案の作成、web の立ち上げ、画像、映像の作製、メディアとの交渉などを行ってきました。各分野でプロの手を借りることができたのは、成功への大きな要因となりました。当たり前のことですが、チェス界の人間だけでイベントをやろうとしないで正解でした。
・Short の招待費に関して
具体的な数字は伏せますが、これは皆さんが想像しているよりも、相当安いと思います。彼が一人で来たうえ、東京の友人宅に滞在してくれたことは、招待費の面から言えばとてもありがたいことでした。私は航空券の手配なども考えて、昨年秋にはHIS に相談をしたりしましたが、結局のところ、航空券、滞在費、謝礼を含めていくら渡す、という形式に落ち着きました。この形が運営側としては最も楽でしょうね。
・electronic Board の使用に関して
会場にいらっしゃったチェスファンの皆さんはお気づきだと思いますが、Check Mate Lounge の試合には、DGT 社のelectronic Board を使用しました。これはセンサーが埋め込まれたチェスボードで、駒を動かすと接続したパソコンに指した手の情報が送られます。会場のスクリーンや、iPad の局面は、これを使用して表示していました。本当は公式HP でライブ中継もしたかったのですが、そこまでは叶いませんでした。ちなみに、e-Board は松戸チェスクラブからお借りした物で、日本のチェスイベントでこれを使用したのは初めてだと思われます。
・ニコニコ生放送に関して
ニコニコ動画での生放送が大成功だったのは、私としては嬉しい誤算でした。正直に言えば、視聴者は50000人に届くかどうかだと予想していたので、10万にという数字には大満足です。ニコニコ動画を運営するドワンゴさんとの打ち合わせには、私も出席しましたが、彼らがここまで協力してくれたことには心から感謝しています。
・次回のゲストに関して
Check Mate Lounge は私がハンガリーとトルコから帰国する今年秋に、第2回の開催を目指します。次回のゲストも海外からのGM にしたいのですが、Short があまりに大物だったため、誰にするか少し悩むところです。一応、候補は出ているので、これから交渉してみようと思います。
ラベル:
Check Mate Lounge
2012/04/25
Check Mate Lounge Game Review Vol.2
すでにいくつかのサイトでは、羽生さんの棋譜も公開されていますが、私も自分なりにこのゲームを振り返ってみようと思います。
GM Nigel Short - FM Yoshiharu Habu
Nigel の1.e4 に対して、羽生さんがこの初手を指すことを知っていたのは、事前に本人から聞いていた私と塩見さんのみだと思います。とは言え、私も実際に目撃するまで半分疑っていました。羽生さんはこれまで、フレンチとシシリアンが黒番のメインです。
この10年でMarshall Gambit の研究が進み、それに合わせてAnti-Marshall も進化してきました。8.d4 は8.h3 と並び、代表的なAnti-Marshall の形です。
8.c3 d6 9.d4 Bg4 でも同型で、私も白で持って何試合か指した経験があります。白は早くセンターにポーンを並べましたが、f3 のナイトがピンにされているので、それをすぐに崩さなくてはいけません。
かなり珍しい手だと思います。10.d5 か 10.Be3 が、普通は指されます。(10.Be3 Nxe4?? 11.Bd5+- は有名なトラップ。)
羽生さんも彼らしい独創的な手で応戦します。一手渡して白の出方を伺う、といったところでしょうか。気になるのは10... Bxf3 11. gxf3 (11. Qxf3 exd4 12. Qd1 dxc3 13. Nxc3 これが1ポーンの代償があるかの判断は大変難しい。) と進んだ形です。当然、白はKh1-Rg1 と組むと思いますが、個人的にはあまり好きな形ではありません。
黒が将来的にc7-c6 と突いてくることを見越した手です。a2-g8 のダイアゴナルが再び開くのであれば、ビショップはc4 のマスを抑えつつ、a2 にいるべきです。
14.Ba2 に引き続き、なるほどと思わせる手です。現在、ゲームはd5 のマスを中心に駒のにらみが行われているため、ナイトをd2 に置いてクイーンの縦利きを消すのはやや不自然です。a3 のナイトはd5 が捌けた後、b5 のポーンを狙いつつ、Na3-Nc2-Nb4 と組み変えられる絶好の位置となります。
白はクイーン交換をd5 で行うべきだったと思います。19. gxf3 Qxd5 20. exd5 Rb8 21.b4 Nc4 22.Nxc4 bxc4+=
と進めば、堅いパスポーンのある白にちゃんがあると判断できるでしょう。
白のbポーンをブロックしているため、単にb5 のポーンを守るよりもずっと良い手です。ちょっとしたトラップになっており、白はb5 を取ることができません。
21.Nxb5?? Ra1 22.Bd2 Ra5-+
ここは先述の通り、22. Nc2 からナイトを組み変えるプランもあったと思います。b5 のポーンをターゲットとして残すことを重視します。
エンドゲームでは、キングはセンターへ。キングの道を作ります。
白は2対1のポーンを捌いてパスポーンを作りましたが、黒はそれをがっちりとブロックしています。駒も2ピースしか残っていないため、d6 もさほど負担にはならず、黒としては大きな問題はないでしょう。
ダブルポーンを解消するのではなく、あえてポーンを固めます。狙いはf2 へのカウンターです。
ポーンストラクチャーとアウトポストのナイトだけを見れば白優勢ですが、そこに繋がるターゲットがありません。あとはbファイルのパスポーンさえ抑え込めれば、黒はドローに持ち込めます。
白が間違えれば黒勝ちのチャンスもありえます。33.b4? Ne6! となれば、黒はキングサイドのポーンを攻撃し、パスポーンを作ることができます。白のb ポーンはキングで抑えに行くことができ、さほど脅威ではありません。
ぱっと隣を見るとこの局面になっていたので、かなり驚きました。あとは本譜のようにドローのポーンエンディングに一直線です。
確かこの辺りでドローオファーをしていたと記憶していますが、Short は観客に分かりやすいよう最後まで続けます。
このゲームではお互い、派手な攻撃や駒の取り合いがなかったために、初心者の方にはレベルの高さが伝わりづらいと思います。それでも凝ったアイディアの好手が互いに飛び交い、ミスらしいミスが出なかったことを考えれば、大変貴重なゲームであると言えます。このようなゲームを日本で、そして目の前で見せてくれたNigelと羽生さんには、心から感謝しています。
GM Nigel Short - FM Yoshiharu Habu
Check Mate Lounge
1. e4 e5!?
Nigel の1.e4 に対して、羽生さんがこの初手を指すことを知っていたのは、事前に本人から聞いていた私と塩見さんのみだと思います。とは言え、私も実際に目撃するまで半分疑っていました。羽生さんはこれまで、フレンチとシシリアンが黒番のメインです。
2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Be7 6. Re1 b5 7. Bb3 O-O 8. d4
この10年でMarshall Gambit の研究が進み、それに合わせてAnti-Marshall も進化してきました。8.d4 は8.h3 と並び、代表的なAnti-Marshall の形です。
8...d6 9. c3 Bg4
8.c3 d6 9.d4 Bg4 でも同型で、私も白で持って何試合か指した経験があります。白は早くセンターにポーンを並べましたが、f3 のナイトがピンにされているので、それをすぐに崩さなくてはいけません。
10. a4!?
かなり珍しい手だと思います。10.d5 か 10.Be3 が、普通は指されます。(10.Be3 Nxe4?? 11.Bd5+- は有名なトラップ。)
10...Qc8!?
羽生さんも彼らしい独創的な手で応戦します。一手渡して白の出方を伺う、といったところでしょうか。気になるのは10... Bxf3 11. gxf3 (11. Qxf3 exd4 12. Qd1 dxc3 13. Nxc3 これが1ポーンの代償があるかの判断は大変難しい。) と進んだ形です。当然、白はKh1-Rg1 と組むと思いますが、個人的にはあまり好きな形ではありません。
11. axb5 axb5 12. Rxa8 Qxa8 13. d5 Na5 14. Ba2!
黒が将来的にc7-c6 と突いてくることを見越した手です。a2-g8 のダイアゴナルが再び開くのであれば、ビショップはc4 のマスを抑えつつ、a2 にいるべきです。
14...c6 15. h3 Bh5 16. Na3!
14.Ba2 に引き続き、なるほどと思わせる手です。現在、ゲームはd5 のマスを中心に駒のにらみが行われているため、ナイトをd2 に置いてクイーンの縦利きを消すのはやや不自然です。a3 のナイトはd5 が捌けた後、b5 のポーンを狙いつつ、Na3-Nc2-Nb4 と組み変えられる絶好の位置となります。
16...cxd5 17. Bxd5 Nxd5 18. Qxd5 Bxf3 19. Qxa8?!
白はクイーン交換をd5 で行うべきだったと思います。19. gxf3 Qxd5 20. exd5 Rb8 21.b4 Nc4 22.Nxc4 bxc4+=
と進めば、堅いパスポーンのある白にちゃんがあると判断できるでしょう。
19... Rxa8 20. gxf3 Nb3!
白のbポーンをブロックしているため、単にb5 のポーンを守るよりもずっと良い手です。ちょっとしたトラップになっており、白はb5 を取ることができません。
21. Be3
21.Nxb5?? Ra1 22.Bd2 Ra5-+
21...Rb8 22. Rd1
ここは先述の通り、22. Nc2 からナイトを組み変えるプランもあったと思います。b5 のポーンをターゲットとして残すことを重視します。
22... f6
エンドゲームでは、キングはセンターへ。キングの道を作ります。
23. Rd5 b4 24. Rb5 Rxb5 25. Nxb5 bxc3 26. Nxc3
白は2対1のポーンを捌いてパスポーンを作りましたが、黒はそれをがっちりとブロックしています。駒も2ピースしか残っていないため、d6 もさほど負担にはならず、黒としては大きな問題はないでしょう。
26...Kf7 27. Kf1 Ke6 28. Ke2 f5 29. Kd3 f4!
ダブルポーンを解消するのではなく、あえてポーンを固めます。狙いはf2 へのカウンターです。
30. Bb6 Bh4 31. Nd5
ポーンストラクチャーとアウトポストのナイトだけを見れば白優勢ですが、そこに繋がるターゲットがありません。あとはbファイルのパスポーンさえ抑え込めれば、黒はドローに持ち込めます。
31...Kd7 32. Kc3 Nc5 33. Bxc5!
白が間違えれば黒勝ちのチャンスもありえます。33.b4? Ne6! となれば、黒はキングサイドのポーンを攻撃し、パスポーンを作ることができます。白のb ポーンはキングで抑えに行くことができ、さほど脅威ではありません。
33...dxc5 34. b4 cxb4+ 35. Nxb4 Bxf2
ぱっと隣を見るとこの局面になっていたので、かなり驚きました。あとは本譜のようにドローのポーンエンディングに一直線です。
36. Nd3 Bd4+ 37. Kc4 Ke6 38. Nxf4+ exf4 39. Kxd4 g5 40. e5 h5 41. Ke4 g4
確かこの辺りでドローオファーをしていたと記憶していますが、Short は観客に分かりやすいよう最後まで続けます。
42. fxg4 hxg4 43. hxg4 f3 44. Kxf3 Kxe5 45. Kg3 Kf6 46. Kf4 Kg6 47. g5 Kg7 48. Kf5 Kf7 49. g6+ Kg7 50. Kg5 Kg8 51. Kf6 Kf8 52. g7+ Kg8 53. Kg6 1/2-1/2
このゲームではお互い、派手な攻撃や駒の取り合いがなかったために、初心者の方にはレベルの高さが伝わりづらいと思います。それでも凝ったアイディアの好手が互いに飛び交い、ミスらしいミスが出なかったことを考えれば、大変貴重なゲームであると言えます。このようなゲームを日本で、そして目の前で見せてくれたNigelと羽生さんには、心から感謝しています。
Check Mate Lounge Game Review Vol.1
さて今夜は、先週末のCheck Mate Lounge のゲームを振り返ろうと思います。2試合分を一度に出すと分量が多くなりそうなので、羽生さんのゲームは明日に回し、まずは私のゲームからです。早い段階でミスをしたと思っていましたが、細かく見て行くとそう簡単でないことが分かってきます。
GM Nigel Short - FM Shinya Kojima
Nigel はSicilian に対し、Open もClosed もバリバリ指せます。白はこの2手目で黒の様子を見て、今後の展開を決めて行きます。とはいえ、Nigel は試合後のインタビューで、細かい計算に頼るシャープなポジションは避け、戦略的に指すつもりだった、と述べているので、この時点でClosed のつもりだったのでしょう。
3...e5 と指すのも一つの選択肢ですが、私はこのようにアウトポストを作る形を好みません。
通常のSicilian Closed (g3-Bg2-h3-g4) と比較し、一手早くgポーンを伸ばそうとしていることは明らかです。それをとがめに行くかどうかは迷いましたが、結局黒は通常のセットアップで対抗することに決めました。
すぐにキングサイドにキャスリングをするのは少し怖い気がしたので、クイーンサイドで手を作りつつ様子を見ます。
本譜は黒マスビショップのダイアゴナルを通す狙いですが、ここは10...Qd7 と指す手もあったと思います。ルークを連結させてセンターに回せるようにし、さらに様子見をします。
ゲームが大きく動くきっかけとなった、問題の手です。指した直後、しまったと思いました。試合後の仲間内での簡単な検討でも、これはかなり悪いのではないかと指摘されました。(本譜の流れで、ポーンがすぐに落ちるため)しかし深く読んでいくと、そう単純に結論付けられるものでもないと思います。
これで黒は1ポーンを諦めなければいけません。その代わりに黒マスビショップをもらっているので、うまく黒マスの弱さを突くことができれば、ポーンの代償はある(きっとある、なきゃ困る!)と試合中考えていました。難しいのは、その具体的な方法を見つけることです。
d4 を守り、代わりにd6 を差し出します。d6 のポーンを取ったナイトは、将来的にc4 で交換するぐらいしかなく、白のポーンストラクチャーは乱れます。それプラス黒マスの弱さが、1ポーンの代償になるのではないかと考えました。しかしコンピュータの推奨変化は全く別で、難解です。
13...Nc5! 14. Nbxd4 e5 15. fxe5 dxe5 16. Nf3 Ne6
これで1ポーンの代償が十分にあり!というのが、コンピュータの指摘です。ポイントはf4,d4 の弱さとc,d ファイルからのカウンターです。白がポーンをc3 に進めれば、代わりにd3 のポーンが弱くなります。このように言われれば、半信半疑ながら多少は納得できそうです。しかし、これが黒にとってベストだと正確に判断し、短い思考時間で選択するのは、ハイレベルな理解力が必要とされます。ただ、ここまで書いておきながら、本譜もさほど黒が悪くなりません。
私もこの手を見て、チャンスが到来したと感じました。14...e5 の前に予測した、黒マスの弱さに突け込みやすい形になります。私が一番恐れていたのは、15.b3! で、これならばc4 のナイトをbポーンで取り返すことができます。そのポーンストラクチャーでは1ポーンの代償が明らかではなく、黒は他のポイントを模索しなければいけなかったでしょう。
この後の展開を見ると、16...Qe7(△17...Rad8)が最も正確な手順でしょう。
さらに白の緩手が入ります。19. fxe5 Rcd8 20. Nxd4 Qxe5 21. c3 Ne6 22. Kh1 Nxd4 23. cxd4 Rxd4 24. Qxd4 Qxd4 25. Rxd4 Bxd4 26. Rd1+/= ならば、白は安全に勝ちを目指せます。もちろん黒は、異色ビショップで粘るしかありません。
この辺りで、黒は十分盛り返しているのではないかと感じていました。白の黒マスはスカスカで、白マスビショップは自身のポーンの内側に閉じ込められています。さらに黒マスを利用することができれば、黒からは十分な反撃が作れそうです。
試合後に仲間内で、23...Bb8 と退くほうが良いのではないか(狙いは...Qc7 からh2 のメイト)と指摘されましたが、それは間違いだと断言できます。白はクイーンの横利きで容易にh2 を守れるので、黒が優先すべきはe5 のマスをブロックして、白の白マスビショップの働きを抑えることです。
当然ですが、ビショップを取りません。24.Nxe5? fxe5 の形は黒がf4 のマスを完璧にコントロールし、白の白マスビショップは永久に籠の中です。そして24.a4 は黒の地味な狙い、...Qa3-Qxa2 を防いでいます。
19手目以降はほぼ完璧な指し回しをしていた黒ですが、時間切迫からここでミスが出ます。もし白が誤ってe5 のビショップを取るようならば(Nigel がそのようなミスをすることはあり得ませんが)、g5 のポーンはf4 をサポートするためによく働きます。しかし、白がそうしない場合、この手は単にf5 を弱める不必要な存在です。
ビショップをe5 で取らせて問題ないことは十分理解していましたが、何を指して良いか分からず、ついビショップを下げてしまいました。この辺り、どうもプランが一貫していません。クイーンを重ねてh2 のメイトを狙うという単調なアイディアが、どうしても頭から消し去れなかったせいもあります。
ビショップをb8 に退いた時点では、このポーンが取れるとは思っていませんでした。それはクイーンが二段目から離れれば、今度こそh2 のメイト狙いが出現すると読んでいたからです。しかしNigel はキングセンターに逃げてOK との判断を下しました。
残り時間5秒ほどまで考えた手が、全くの勘違いでした。私がこの試合で完全にダメな手と評価するのは、唯一この一手です。b6 のポーンが落ちて、白に2コネクテッドパスポーンができた以上、黒は待つのではなく、ダイレクトなアタックによる反撃を仕掛けるほかありません。しかし本譜の手は一瞬で攻めが止まり、何事もなく白が勝ちます。
黒が続けるとすれば、やはりh2 に飛び込む一手でした。29... Nxd3! 30. Rxd3 Qe5 31. Kg1 Qh2+ 32. Kf2 Qf4+ 33. Ke2 (33. Rf3 Qd2+ 34. Kg1 Bf4+/=) 33... Qh2 34. Rf2 Bg3 35. Rxd4 Bxf2 36. Kxf2+/=
白はルークを切り、3ポーンエクスチェンジにします。白にチャンスがありそうですが、キングの不安定さから、形勢が一二転する可能性も十分に考えられる局面です。
なぜかこのような、単純な手が見えていませんでした。白のキングには攻めは届かず、黒のチャンスが完全に消滅します。残りは流して良いでしょう。
最後はノーチャンスなので、リザインする代わりに時間が0になるのを待ちました。黒マスを利用する作戦は良かったはずですが、時間がなくなってから冷静になれず、プランをごちゃごちゃと混ぜてしまったのが敗因です。
ところでこのゲーム、d4 が落ちたところと結果だけしかチェックしないと、何事もなく私が負けたように見えます。しかし、ここまでの解説を読めば、実際は難解なポジションが多く、簡単に結論付けられないゲームだと思えます。そのことを局後に私に指摘したのは、解説の塩見さんぐらいでしょう。
私もd4 が落ちた際はまずいと思いましたが、本当にそうなのか、簡単に結論を出さずに疑ってかかるべきではないのか、という思考は、実は羽生さんとのこれまでの対局や、対話の中で学んできたことです。持ち時間の少ない状況で、正確に指せなかった未熟さは反省すべきですが、それでも面白いポジションがいくつもあり、勉強になったゲームでした。それでは、明日は羽生さんのゲームを、私なりに解説しようと思います。
GM Nigel Short - FM Shinya Kojima
Check Mate Lounge
1. e4 c5 2. Ne2!?
Nigel はSicilian に対し、Open もClosed もバリバリ指せます。白はこの2手目で黒の様子を見て、今後の展開を決めて行きます。とはいえ、Nigel は試合後のインタビューで、細かい計算に頼るシャープなポジションは避け、戦略的に指すつもりだった、と述べているので、この時点でClosed のつもりだったのでしょう。
2...Nc6 3. Nbc3 Nf6
3...e5 と指すのも一つの選択肢ですが、私はこのようにアウトポストを作る形を好みません。
4. f4 d6 5. d3 g6 6. h3!?
通常のSicilian Closed (g3-Bg2-h3-g4) と比較し、一手早くgポーンを伸ばそうとしていることは明らかです。それをとがめに行くかどうかは迷いましたが、結局黒は通常のセットアップで対抗することに決めました。
6...Bg7 7. g4 b6
すぐにキングサイドにキャスリングをするのは少し怖い気がしたので、クイーンサイドで手を作りつつ様子を見ます。
8. Bg2 Bb7 9. O-O O-O 10. Be3 Nd7
本譜は黒マスビショップのダイアゴナルを通す狙いですが、ここは10...Qd7 と指す手もあったと思います。ルークを連結させてセンターに回せるようにし、さらに様子見をします。
11. Qd2 Nd4!?
ゲームが大きく動くきっかけとなった、問題の手です。指した直後、しまったと思いました。試合後の仲間内での簡単な検討でも、これはかなり悪いのではないかと指摘されました。(本譜の流れで、ポーンがすぐに落ちるため)しかし深く読んでいくと、そう単純に結論付けられるものでもないと思います。
12. Bxd4 cxd4 13. Nb5
これで黒は1ポーンを諦めなければいけません。その代わりに黒マスビショップをもらっているので、うまく黒マスの弱さを突くことができれば、ポーンの代償はある(きっとある、なきゃ困る!)と試合中考えていました。難しいのは、その具体的な方法を見つけることです。
13...e5!?
d4 を守り、代わりにd6 を差し出します。d6 のポーンを取ったナイトは、将来的にc4 で交換するぐらいしかなく、白のポーンストラクチャーは乱れます。それプラス黒マスの弱さが、1ポーンの代償になるのではないかと考えました。しかしコンピュータの推奨変化は全く別で、難解です。
13...Nc5! 14. Nbxd4 e5 15. fxe5 dxe5 16. Nf3 Ne6
これで1ポーンの代償が十分にあり!というのが、コンピュータの指摘です。ポイントはf4,d4 の弱さとc,d ファイルからのカウンターです。白がポーンをc3 に進めれば、代わりにd3 のポーンが弱くなります。このように言われれば、半信半疑ながら多少は納得できそうです。しかし、これが黒にとってベストだと正確に判断し、短い思考時間で選択するのは、ハイレベルな理解力が必要とされます。ただ、ここまで書いておきながら、本譜もさほど黒が悪くなりません。
14. Nxd6 Ba6 15. Nc4?!
私もこの手を見て、チャンスが到来したと感じました。14...e5 の前に予測した、黒マスの弱さに突け込みやすい形になります。私が一番恐れていたのは、15.b3! で、これならばc4 のナイトをbポーンで取り返すことができます。そのポーンストラクチャーでは1ポーンの代償が明らかではなく、黒は他のポイントを模索しなければいけなかったでしょう。
15...Bxc4 16. dxc4 Nc5
この後の展開を見ると、16...Qe7(△17...Rad8)が最も正確な手順でしょう。
17. Rad1 Rc8 18. b3 Qe7 19. Kh1?!
さらに白の緩手が入ります。19. fxe5 Rcd8 20. Nxd4 Qxe5 21. c3 Ne6 22. Kh1 Nxd4 23. cxd4 Rxd4 24. Qxd4 Qxd4 25. Rxd4 Bxd4 26. Rd1+/= ならば、白は安全に勝ちを目指せます。もちろん黒は、異色ビショップで粘るしかありません。
19...Rcd8 20. Nc1 exf4 21. Qxf4 Be5
この辺りで、黒は十分盛り返しているのではないかと感じていました。白の黒マスはスカスカで、白マスビショップは自身のポーンの内側に閉じ込められています。さらに黒マスを利用することができれば、黒からは十分な反撃が作れそうです。
22. Qf2 Ne6! 23. Nd3 f6!
試合後に仲間内で、23...Bb8 と退くほうが良いのではないか(狙いは...Qc7 からh2 のメイト)と指摘されましたが、それは間違いだと断言できます。白はクイーンの横利きで容易にh2 を守れるので、黒が優先すべきはe5 のマスをブロックして、白の白マスビショップの働きを抑えることです。
24. a4!
当然ですが、ビショップを取りません。24.Nxe5? fxe5 の形は黒がf4 のマスを完璧にコントロールし、白の白マスビショップは永久に籠の中です。そして24.a4 は黒の地味な狙い、...Qa3-Qxa2 を防いでいます。
24...g5?!
19手目以降はほぼ完璧な指し回しをしていた黒ですが、時間切迫からここでミスが出ます。もし白が誤ってe5 のビショップを取るようならば(Nigel がそのようなミスをすることはあり得ませんが)、g5 のポーンはf4 をサポートするためによく働きます。しかし、白がそうしない場合、この手は単にf5 を弱める不必要な存在です。
25. Qd2 Nf4 26. a5 Bb8
ビショップをe5 で取らせて問題ないことは十分理解していましたが、何を指して良いか分からず、ついビショップを下げてしまいました。この辺り、どうもプランが一貫していません。クイーンを重ねてh2 のメイトを狙うという単調なアイディアが、どうしても頭から消し去れなかったせいもあります。
27. axb6 axb6 28. Qb4 Bd6 29. Qxb6!
ビショップをb8 に退いた時点では、このポーンが取れるとは思っていませんでした。それはクイーンが二段目から離れれば、今度こそh2 のメイト狙いが出現すると読んでいたからです。しかしNigel はキングセンターに逃げてOK との判断を下しました。
29...Ne2?
残り時間5秒ほどまで考えた手が、全くの勘違いでした。私がこの試合で完全にダメな手と評価するのは、唯一この一手です。b6 のポーンが落ちて、白に2コネクテッドパスポーンができた以上、黒は待つのではなく、ダイレクトなアタックによる反撃を仕掛けるほかありません。しかし本譜の手は一瞬で攻めが止まり、何事もなく白が勝ちます。
黒が続けるとすれば、やはりh2 に飛び込む一手でした。29... Nxd3! 30. Rxd3 Qe5 31. Kg1 Qh2+ 32. Kf2 Qf4+ 33. Ke2 (33. Rf3 Qd2+ 34. Kg1 Bf4+/=) 33... Qh2 34. Rf2 Bg3 35. Rxd4 Bxf2 36. Kxf2+/=
白はルークを切り、3ポーンエクスチェンジにします。白にチャンスがありそうですが、キングの不安定さから、形勢が一二転する可能性も十分に考えられる局面です。
30. Rf2
なぜかこのような、単純な手が見えていませんでした。白のキングには攻めは届かず、黒のチャンスが完全に消滅します。残りは流して良いでしょう。
30...Ng3+ 31. Kg1 Bc7 32. Qc5 Bd6 33. Qc6 Rfe8 34. c5 Bf4 35. Nxf4 gxf4 36. b4 Qe5 37. Bf3 Re6 38. Qb5 1-0
最後はノーチャンスなので、リザインする代わりに時間が0になるのを待ちました。黒マスを利用する作戦は良かったはずですが、時間がなくなってから冷静になれず、プランをごちゃごちゃと混ぜてしまったのが敗因です。
ところでこのゲーム、d4 が落ちたところと結果だけしかチェックしないと、何事もなく私が負けたように見えます。しかし、ここまでの解説を読めば、実際は難解なポジションが多く、簡単に結論付けられないゲームだと思えます。そのことを局後に私に指摘したのは、解説の塩見さんぐらいでしょう。
私もd4 が落ちた際はまずいと思いましたが、本当にそうなのか、簡単に結論を出さずに疑ってかかるべきではないのか、という思考は、実は羽生さんとのこれまでの対局や、対話の中で学んできたことです。持ち時間の少ない状況で、正確に指せなかった未熟さは反省すべきですが、それでも面白いポジションがいくつもあり、勉強になったゲームでした。それでは、明日は羽生さんのゲームを、私なりに解説しようと思います。
2012/04/22
Check Mate Lounge - unexampled chess event in Japan -
本日、南青山のクラブ、Velours で日本初のビッグチェスイベント、Check Mate Lounge が開催されました。本イベントのメインである、GM Nigel Short の2面指しの結果は、私が負け、羽生さんがドローでした。羽生さんは相変わらずお強いですね!申し訳ないですが、棋譜は後日の公開と致します。
2面指しの個人的な結果は残念でしたが、イベント全体としては大成功だったと言えるでしょう。一般来場客とNigel、羽生さんのブリッツ対決、その後のパーティーには、会場に足を運んでくださったお客様の多くが、満足してくださったと思っています。そしてその全ての様子を中継したニコニコ生放送は、10万人を超える視聴者が集まり、かつてない規模でチェスイベントのアピールができました。本イベントに協力してくださった、ゲストのGM Nigel Short, 羽生善治さんのお二人、Check Mate Lounge 実行委員会のメンバーの皆さん、解説役を引き受けてくださった塩見さん、来場者とニコ生視聴者の皆さん、その他多くの方々に心より感謝致します。次回はさらに皆さんにご満足していただける企画を、検討していこうと思います。
明日は(もう今日ですが)北千住での、30面同時対局イベントです。それが終わった後、また細かい振り返りをしようと思います。皆さん、今日はお疲れ様でした!
ラベル:
Check Mate Lounge
2012/04/20
夜明け前
とうとうCheck Mate Lounge 前日となりました。昨年の秋にイベントの構想が持ち上がって以来、ここまであっという間だったように感じます。今日はNigel を無事に滞在先まで送り届け、会場での準備も最終調整を残すのみとなりました。明日のCheck Mate Lounge が無事に成功すれば、過去日本で行われたチェスイベントの中でも、最大級の物となるでしょう。一人でも多くの方に、日本での新しい形のチェスイベント、というアピールができれば良いと思います。もっと色々と語りたいのですが、それはイベント終了後にします。
それでは皆さん、明日はCheck Mate Lounge を楽しみましょう!夕方以降のNHK ニュースで扱われる可能性もあるので、パソコンだけでなく、テレビでもこのイベントをチェックしてみてください。
ラベル:
Check Mate Lounge
2012/04/19
Short wins BCC Open
The Week In Chess より
タイの首都、バンコクでBangkok Chess Club Open に出場していたShort は、最終戦をドローで締め、8/9 という素晴らしい戦績での単独優勝です。ライバルであった2人の2600GM 相手に白を引き、両方勝ったことでトーナメントの行方を決めました。特にGibraltar で共に競り合ったHow Yifan を下したことは、彼にとっても感慨深いものだったのではないかと予想します。
Short, Nigel D (ENG,2697) - Hou, Yifan (CHN,2639)
12th BCC Open (7)
1. d4 Nf6 2. Nf3 e6 3. c4 b6 4. e3 Bb7 5. Bd3 d5 6. O-O Bd6 7. b3 O-O 8. Bb2 Nbd7 9. Nc3 a6 10. Qc2 dxc4 11. bxc4 Bxf3 12. gxf3 c5 13. d5 exd5 14. cxd5 b5 15. Be2 c4 16. Ne4 Nxe4 17. fxe4 Qe7 18. f4 f6 19. Rad1 Rac8 20. Bd4 Nc5 21. Bxc5 Bxc5 22. Bg4 Bxe3+ 23. Kh1 f5 24. Bxf5 Rcd8 25. e5 Kh8 26. Qe4 Qc5 27. Bxh7 c3 28. Bg6 c2 29. Qg2 Bxf4 30. Bxc2 Qe7 31. d6 Qe6 32. Rde1 g5 33. Rf3 g4 34. Rf2 Qh6 35. Qxg4 Bxe5 36. Rxe5 Rxf2 37. Rh5 Rxd6 38. Rxh6+ Rxh6 39. Qc8+ Kg7 40. Qc7+ Rf7 41. Qg3+ Kf8 42. h4 Rhf6 43. Bb3 Rf1+ 44. Kg2 R7f6 45. h5 1-0
Queen's Indian 4.e3!? の変化とは驚きです。4.g3 と比較すれば、トップレベルではほとんど指されません。これは日本でも何を指してくるか、全く予想できないですね。
そして本人のFacebook の書き込みによれば、(当然ですが)この大会で自身のレイティングを2700台に戻したとのことです。久々の2700復帰に加え、今年中に自身のベストレイティングである、2712 を突破する可能性もあります。
これほどのレベルのプレーヤーが日本に来てくれることは、大変幸運だと感じます。Short は明日来日し、明後日に表参道で私と羽生さんとの対戦です!私とShort との出会いなどは、時間があればニコニコ生放送の中で語ろうと思いますので、お楽しみに!
12th BCC Open Final Standing
ラベル:
Check Mate Lounge,
海外大会
2012/04/16
Check Mate Lounge web site updated
Check Mate Lounge の公式HP が更新されました。トップ画像は今までの黒ベースの物から、白ベースの物へとチェンジされ、がらっと雰囲気を変えています。
今回、追加された情報も多くあります。、ニコニコ生放送の解説は元日本チャンピオンの塩見さんにお願いしており、まだ名前は伏されていますが、女性MC とのトークが期待されます。試合が終わり次第、私も解説ブースへと移動しますので、当日どんな雰囲気で生放送が進むか、大変楽しみにしています。
そしてなんといっても、今回の更新の目玉は、プレーする私たち3名の代表的なゲームが3試合ずつ公開されたことです。ゲームのヴュワーは完全オリジナルの物で、当日もこのデザインでゲームをライブ中継する予定です。ニコニコ生放送と併せ、こちらもご覧いただければ嬉しいです。
Check Mate Lounge 開催まであと5日です。本日、いくつかのニュースサイトでも取り上げられ、ますます注目を集めています。是非、どなたもこのビッグイベントをお見逃しなく!
Check Mate Lounge Official HP
Yahoo! News
livedoor News
ラベル:
Check Mate Lounge
2012/04/13
CML new infomation
from J-WAVE
昨日はJ-WAVE のTOKYO MORNING RADIO に兄と出演し、Check Mate Lounge の宣伝をしてきました。写真は兄の穣二と、DJの別所さんとの一枚です。事前のお知らせしてた方からも、そうでない方からも、放送後に色々とメッセージをいただきました。ありがとうございます!もう一度、ラジオ番組への出演機会をいただけるようであれば、もう少し緊張せずにしゃべれるよう頑張ります(笑)
そしてこの番組内で初公開した情報ですが、Check Mate Lounge はイベントの模様をニコニコ生放送で完全中継します。本日、ニコニコ動画に配信用のページが公開されたので、そちらのリンクも貼っておきます。アカウントをお持ちでない方は、新規登録したうえでログインしてください。
ニコニコ生放送 - Check Mate Lounge -
e+ でのチケットはまだわずかに残っているので、イベントを直接ご覧になりたい方にはチケットをご購入していただき、遠方の方やスケジュールが合わない方には、ニコニコ動画で会場の様子やゲームの中継を楽しんでいただきたいと思います。Check Mate Lounge 本番まであと8日です!
ラベル:
Check Mate Lounge
2012/04/04
Check Mate Lounge チケット販売情報
皆さん、ずいぶんとお待たせしてしまいましたが、本日Check Mate Lounge の詳細やチケット情報が公開されました。公式のトップページの構図から、私と羽生さんの対局だと思われた方もいらっしゃるようですが、正しくは私とNigel Short、羽生さんとNigel Short の2面同時対局(Clock Simul)がメインです。勘違いをさせてしまい、申し訳ないです。
当日の入場チケットのお買い求めは、以下のリンクからe+に跳んでお願い致します。チケットの販売日程は、2012/04/09~04/18 です。私に直接言ってもチケットは手に入りませんので、お気を付け下さい。
Check Mate Lounge チケット情報
Check Mate Lounge の公式HP もそろそろ更新が入ります。皆さんがあっと驚くであろう仕掛けも準備してありますので、更新をお楽しみに!
Check Mate Lounge 公式HP
ラベル:
Check Mate Lounge
2012/03/05
Check Mate Lounge
Check Mate Lounge
イングランドのGM Nigel Short と将棋棋士の羽生善治さんを招いた、4月のビッグイベントです。すでにfacebook やTwitter では話を盛り上げてくださっているようで、誠にありがとうございます。イベントの詳細は公式HP や、facebook ページ、Twitterアカウントで公開していきますので、今後もチェックをお願い致します。
ラベル:
Check Mate Lounge