ラベル a6 Slav の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル a6 Slav の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2023/08/15

First Saturday August 2023 GM R8

ここブダペストでは8/19から世界陸上が開催されるため、街中ではこのような告知を多く見かけます。私はちょうど帰国日なのでこの目で直接見ることは叶いませんが、日本でもテレビ中継があるかもしれませんね。この遠征中、福岡で開催された世界水泳では、ハンガリーで水球で金メダルを獲得したと耳にしています。

8Rの相手であるSamunenkovは、ウクライナの14歳で、現在のU14世界ランキング2位につけているプレーヤーです。かつてブダペストのノームトーナメントでは、ハンガリーのGledura Benjamin、ウズベキスタンのSindarov Javokhirら(現在はともに2600のGM) と試合をしましたが、レイティングは当時の彼らよりも上です。この大会ではGMノーム獲得のチャンスはすでにありませんが、近いうちにタイトルを取ることは間違いないプレーヤーだと思います。

Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Samunenkov, I (IM, UKR, 2515)
First Saturday August 2023 GM (8)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 a6 5. cxd5!?

a6 QGDか、Semi-Slavを準備していたので、a6 Slavは意外なチョイスでした。他に用意していたものもありましたが、この日は手堅くExchange Slavにすることします。

5... cxd5 6. Bf4 Nc6 7. Rc1 Nh5 8. Bd2 Nf6 9. Bf4 e6!?


Bc8-Bf5とし、白と対称形にしたくなかったのでしょう。c8のビショップを閉じ込める一見損な手ですが、安易なピース交換を避けることは勝負するうえで有効な手段です。白側でもビショップのアクティビティをどう生かすかは、実際に指してみると難しいものです。

10. e3 Be7 11. h3 O-O 12. Bd3 b6 13. O-O Bb7

この形はa6 QGD から派生する形(1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 a6 5. c5 b6 6. cxb6 cxb6 7. Bf4 Bb7 8. e3 Nc6 9. h3 Be7 10. Bd3 O-O 11. O-O) に比べ、白が1手得をして手番を握っています。ここでは作戦の中心をキングサイドにするか、クイーンサイドにするかを少し悩みました。

14. Ne5 Rc8 15. Nxc6!


c6のナイトはNc6-Na5-Nc4など、クイーンサイドのアクションの中心になりうるピースなので、まずはこれを消しておきます。15. Qf3 b5 も考えましたが、さほどキングサイドのアタックチャンスが面白いとは思えませんでした。

15... Rxc6 16. Qb3 Qa8!? 17. Rc2 Rfc8 18. Rfc1 Nd7 19. Ne2?!

b6のポーンを1つのターゲットにするつもりでしたが、それならばここでナイトを退く単純なルーク交換ではなく、19. a4! としてb6を固定すべきでした。実はa8-h1ダイアゴナルを利用し、 19... Rc4 という手があるかと思ったのですが、これはエクスチェンジを取る誘惑をこらえ、20. Qa2! と一度かわせば良いだけの話でした。黒のルークはb4に到達しても、その先がありません。

19... b5! 20. a4 bxa4


私はa2-a4はb6の固定ではなく、伸びてきたbポーンを迎え撃つのに使いたかったのですが、あっさり交換に応じられてしまいました。これで黒はNd7-Nb6-Nc4のチャンスが生まれます。

21. Qxa4 Nb6 22. Qa2 Rxc2 23. Rxc2 Rxc2 24. Bxc2 a5 25. Nc3 Bb4 26. Na4 Nc4 27. Bd3 Ba6 28. Qb1

28. Nc5! Bb5 29. b3 Na3 30. Bxb5 Nxb5 31. Nd3= と組み替えても互角でしょう。私はクイーンをcファイルに戻すことを優先しました。

28... h6 29. Qc2 Qe8 30. Nc3 Qd7 31. Nd1 a4 32. Nc3 a3 33. bxa3


33. Na2 Qb7 34. Qa4 Bf8= これも互角で特に何か起こるわけではありません。

33... Nxa3 34. Qb3! Bxd3 35. Qxb4 Nc4 36. Na4 1/2-1/2

34. Qe2?! Bxd3 35. Qxd3 Nc4 もおそらくはドローになりますが、相手のビショップのみがこちらのポーンを狙うことができると、少し白は指すのに気を配らなくてはいけません。本譜は異色ビショップにし、ドローオファーをしてゲームを終わらせました。今回の遠征も残すところあと1試合です。

08/06 15:00 R2 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Mirzoev, A (GM, AZE, 2417) 0-1
08/07 15:00 R3 Munkhdalai, A (FM, MGL, 2437) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/08 15:00 R4 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Aveskulov, V (GM, UKR, 2470) 0-1
08/09 15:00 R5 Arhan, C A (FM, IND, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/10 15:00 R1 Levine, J (FM, USA, 2371) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1/2-1/2
08/11 15:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Setyaki, A (IM, INA, 2401) 0-1
08/12 15:00 R7 Neverov, V (GM, UKR, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1/2-1/2
08/13 Rest Day
08/14 15:00 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Samunenkov, I (IM, UKR, 2515) 1/2-1/2
08/15 15:00 R9 Dudin, G (IM, HUN, 2537) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)

First Saturday August 2023 GM Standings
私にとって唯一の休憩日だった13日は、ブダペストの子供鉄道に乗ってきました。駅員や車掌を子供が務めるブダペストの名物列車で、10年以上ハンガリーに通いながら私は初乗車でした。爽やかな風を受けながら森林を抜けるトロッコ列車は素晴らしい体験で、また雪の季節にも乗ってみたいと感じました。
夜は聖イシュトヴァ―ン大聖堂へ。クリスマスマーケット以外の時期だと聖堂前はがらんとした大きな広場ですが、その分人が少なく、ゆっくりと過ごすことができます。

2022/05/01

Japan Chess Chsmpionship 2022 Day2


全日本選手権2日目です。私は東京チェス選手権でも対戦した大塚さん、初対戦となる多賀さんとの連戦で、ともに良いポジションもありながら上手く進められずにドロー。どちらも負けもありえるポジションもあり、反省です。どちらも負けずにすんだことをラッキーだと考え、3日目に臨もうと思います。

Taga, H (JPN, 1928) - Kojima, S (IM, JPN, 2356)
Japan Chess Championship 2022 (3)

1. Nf3 d5 2. c4 c6 3. d4 Nf6 4. Nc3 a6 5. c5 g6 6. Bf4 Bg7 7. e3 O-O 8. Be2

初戦とは少し気分を変えてa6 Slav を指すことにしました。8. h3 Bf5 は以前指したことがあり、Bf5-Be4-Bxf3 と手数をかけてビショップナイトを交換するアイディアを使おうと思っていたため、g4 にすぐ出られる本譜はラッキーでした。

8... Bg4 9. Ne5 Bxe2 10. Qxe2 Nbd7 11. O-O Nh5!


h2-h3 を省いてきたことを利用し、ビショップナイト交換を仕掛けます。ただビショップをもらうだけでなく、e7-e5 を目指すことで、黒が指しやすくなったと感じました。

12. b4 f6 13. Nxd7 Qxd7 14. Bg3 e5 15. Rfe1 Rae8 16. Qd2 Re6 17. a4 Qe7

センターを開くのは少し待って、eファイルに先にヘビーピースを重ねておきます。

18. Ne2 Re8 19. Rac1 Nxg3 20. hxg3 f5 21. Rf1 h5!?


eファイルを開いて2段目にルークを突入させることも考えましたが、それだけでは不十分だと考えてキングサイドでもアクションを起こすことにします。

22. b5 axb5 23. axb5 h4 24. bxc6 bxc6 25. gxh4 Qxh4 26. dxe5 Bxe5 27. f4

試合後に少し話しましたが、この手は私は意外でした。Rf1-Rf3 のディフェンスはもちろん分かりますが、e3 を弱めるデメリットのほうが大きいと感じました。27. Nf4 Bxf4 28. exf4 は私が思っていたよりも、白がタフなディフェンスができるようです。

27... Bg7 28. Rf3 Qf6


28... Qe7 29. Nd4 Bxd4 30. exd4 Re2 31. Qd3 Kg7=/+ d4 でビショップとナイトを交換してルークを突入させることは考えていましたが、アドバンテージが十分か自信が持てず、踏み込めませんでした。

29. Rh3 Re4 30. Kh2 Qe7 31. Nd4 Qc7 32. Rf1 Ra8 33. Rg3 Kf7 34. Qb4 Rh8+

本譜も悪くないですが、白キングはg2 に押し戻したほうが良いとははっきり言いきれません。34... Rb8 35. Qa4 Bxd4! 36. exd4 Rxf4!-+ こうしてポーンをかすめ取った際、ルークはクイーンで守られていること、次こそRb8-Rh8+ が白にとって痛手になり、c6 を取られないことを見落としました。

35. Kg1 Rb8 36. Qa4 Rc8?


36... Bxd4 37. exd4 Rxf4-+ やはりポーンを取るべきです。ここで踏み込まなくては、チャンスは消えてしまいます。

37. Qa6 Bxd4 38. exd4 Rxd4 39. Rb1 Qd7?

本譜のリスクは分かっていたのですが、c6 を返す変化は怖くて選べませんでした。39... Rb8 40. Rxb8 Qxb8 41. Qxc6 Rd1+ 42. Kh2 Qxf4 43. Qxg6+ Ke7= と進み、白は勝てないというのがコンピュータの評価です。

40. Rb7 Rc7 41. Rb8?


41. Rgb3 Rd1+ 42. Kf2 Kf6 43. Qa8!+- とbファイルにルークを重ねたうえでクイーンを8段目に潜らせた場合、黒のディフェンスは難しい状況です。

41... Qe7 42. Qa8 Rd1+ 43. Kh2 Qh4+ 44. Rh3 Qxf4+ 45. Rg3 Qh6+

45... Rh1+ 46. Kxh1 Qxg3 47. Rf8+ Kg7 48. Rg8+ Kh6 49. Qf8+ Kg5 50. Qd8+ Kh5 51. Rh8+ Kg4 52. Qe8 と進んだ場合、1ポーンを取り、パペチュアルチェックを避けた黒にチャンスがあるとコンピュータは示します。しかし、1手間違えれば評価は覆るこの局面を時間切迫で指す自信はありません。

46. Rh3 Qf4+ 47. Rg3 Qh6+ 48. Rh3 Qf4+ 1/2-1/2


最後はドローで仕方ないとゲームを終わらせました。この日の2試合は上手く踏み込みができなかずに危ない展開を迎えてしまったので、しっかり反省して明日の試合も頑張ってこようと思います。

Japan Chess Championship 2022 R4 Pairings
【日本最強決定戦】全日本チェス選手権2022 第4ラウンド | 2022.05.02

トップシードたちがポイントを2日目で落とし、3連勝は2人だけとなっています。まだまだ先の長い全日本選手権、上位争いがどうなっていくか3日目も楽しみです。

2020/07/01

Croatian Chess Championship 2020 Vol.3


12人のラウンドロビンで開催されていたクロアチア選手権は、昨日最終戦を消化し、全日程が終了となりました。前回の記事ではトップの逆転が続いていることをお伝えしましたが、先に訂正とお詫びを。9R 終了時点でトップだったのは、GM Brkic Ante であり、Saric Ante ではありませんでした。失礼しました。

11戦を終え、優勝は7/11 でGM Martinovic でした。2位以下は6.5P がなんと4人、Kozul, Zelcic, Stevic, Brkic と並んでいます。Martinovic はなんと8R 終了時点ではイーブンの4/8 で6位、トップとは1.5P差でした。それが最後3連勝で上位5人を一気に抜き、単独トップに躍り出たのです。まさに劇的と言える逆転優勝です。日本のトーナメントでも、最後まで優勝の行方が分からないと言われることがありますが、それでも例年、全日本終盤は2人くらいで優勝争いをしており、このクロアチア選手権ほど最後まで分からないということはない印象です。レベルの高さだけでなく、そういった点でも、実に見ごたえのある大会でした。

Martinovic, S (GM, CRO, 2532) - Jovanic, O (GM, CRO, 2524)
Croatian Chess Championship 2020 (11)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. e3 a6 5. Nf3 b5 6. b3 Bg4 7. a4!?



8,9R を連勝し、勢いのあったMartinovic は、最終戦でJovanic のa6 Slav に対して少し珍しい変化を採用します。この7手目は7. h3 Bxf3 8. Qxf3 e5!? 9. dxe5 Bb4! という変化が1つ有名で、私もかつて1試合だけ指したことがあります。他にも7. Be2 e6 8. 0-0 Nbd7 9. Bb2 という変化も手堅いでしょう。7. a4 は統計的には5番手にも入っていない珍しい手ですが、近年少しずつ増えているようです。クイーンサイドを崩すアクションを早めに起こし、ポーンストラクチャーを決めておこうというアイディアですね。

7... b4 8. Ne2 Bxf3 9. gxf3 Nbd7 10. Bg2 a5


将来的に弱点になりうるb4 ポーンをサポートするため、このaポーンの突き直しは遅かれ早かれ必要になるでしょう。このa5,b4 のポーンストラクチャーはSlav やQGA では特徴的ですが、中盤以降この形がポイントになります。

11. e4 e6 12. Be3 g6 13. Rc1 Bg7 14. h4 h5 15. Qd2 Qb8 16. O-O O-O



見慣れない人もいるかと思いますが、白黒慎重にピースを組み、このような配置でキャスリングを済ませました。黒は白のeポーンの伸び方を見ながら、d4 に当てられるように手数をかけても黒マスビショップをフィアンケットしています。これはある意味自然なのですが、将来的にcファイルを白が開いてアクションを起こした際、黒マスビショップがa3-f8 のダイアゴナルを離れたことでc5 のマスに利きが少ないと、白がこのマスを利用するチャンスが少し気になります。

17. Bf4 Qd8 18. Bg5 Qb8 19. Bf4 Qd8 20. Bg5 Qb8 21. cxd5!


21. Bf4 で3回同一局面の成立でしたが、0.5P差でトップを走るBrkic を逆転するためには勝ちを狙います。そしてこの辺りではすでにBrkic がKozul 相手にかなり悪いポジションになっており、逆転優勝の気配が漂っていました。

21... cxd5 22. Rc6 Rc8 23. Qc2 Nb6 24. Rc1 Qa7 25. Qd3



白は開いたcファイルを突破口にしていますが、黒はディフェンスに少し手間取っているように見えます。黒のクイーンサイドは白マス、黒マスともにビショップの利きが無く、b5,c5.c6 など多くのマスが弱くなっています。それらの場所に白ピースの侵入を許せば、b4 のサポートに向かったa5 がターゲットになります。

25... Rxc6 26. Rxc6 Rc8 27. Qb5 Rxc6 28. Qxc6


ルークを2つ捌いて多少の窮屈さを解消しても、白のクイーンは好位置で、追い返す術がありません。さらにはルークを捌いたことで、白に新たなピースの使い道と、a5 を狙う手段が生まれます。

28... Nbd7 29. e5! Nh7 30. Bd8!



この黒マスビショップの侵入は大きかったと思います。e4-e5 のセンターを閉じるタイミングは、一歩間違えればd4 の根元のポーンにナイトでの反撃を食らいかねません。ここではc6 のマスなども抑えており、白がa5 を狙うのが十分に早いと見て勝負です。

30... Nb8 31. Qb5 Bf8 32. Bxa5


a5 の落ちた黒に取って厳しいのは、b4 の伸びすぎポーンも守るのが難しい負担になってしまうことです。ポーンをb4 に誘い込み、a5 のポーンやb5 のマスを弱点にするという7.a4!? の構想が、ここにきて完全にはまっていると言えるでしょう。

32... Na6 33. f4 Be7 34. Bf1 Nf8 35. Qb6 Qxb6 36. Bxb6



クイーンを交換し、白はどのようにb4 を落とすか、またはaポーンを進めるかという段階に入ります。もっとピースが残ってごちゃごちゃした局面ならいざ知らず、いまさらh4 を取られても黒のパスポーンは脅威にならないと判断できるところも面白いですね。

36... Nd7 37. Ba5 Nab8 38. Bc7 Na6 39. Bd6 Bd8 40. Nc1!


当然の構想ですが、Ne2-Nc1-Nd3 の組み換えによってb4 を狙いつつ、Bf1-Bg2-Bf1 と初期位置に戻った白マスビショップをクイーンサイドの利かせ、最後の仕上げへと向かいます。

40... Ndb8 41. Bb5 Bb6 42. Nd3 Ba5 43. Kf1 Kg7 44. Ke2 Kg8 45. Ke3 Kg7 46. Bxa6 Nxa6 47. Nc5 1-0



最後はナイトの強制交換から、2つ目のパスポーンができることが決まり、ここで決着です。1ポーンアップのうえ、ビショップ、ナイト、キングと残った全てのピースの働きの差で白は圧倒しました。私はJovanic とは2013年に対戦しており、その際は非常に手堅いチェス指すGM だという印象を受けました。そのJovanic をここまで完封するとは、派手さはさほどなくともマスターの技術が各所に現れたゲームだったと思います。

ちなみに最終戦はPalac - Zelcic のベテランのペアリングのみ短手数ドローで、他の5ボードは全て白勝ちになっています。久々のOTB で参加者の皆さん気合が入っていたか、ファイティングゲームが多く見られたのは嬉しかったですね。

おそらく日本の皆さんは2500-2600 くらいのクロアチアのGM は、あまり知らないという人も多いかと思います。今回のクロアチア選手権中も、Twitter などで見る限りはNakamura Hikaru やDIng Liren の参加するChessable のほうが関心は高かったのではないでしょうか。もちろん世界トップクラスのGM の試合は注目度が高いと思いますが、Martinovic のような20代の若いGM から、Kozul、Zelcic ら50代のベテラン勢がしのぎを削り合うクロアチアの試合も、非常に興味深いですよとお伝えしたく、3回も記事を書いてしまいました。旧ユーゴスラビアの国々のチェスについては、またどこかでご紹介できればと思います。今日ご紹介したゲームはリンクも貼っておきますので、こちらでも是非駒を動かしながら棋譜を確認してみてください。

Croatian Chess Championship 2020 Martinovic - Jovanic

2019/11/02

Japan Open 2019 Day2 Tournament Report


ジャパンオープン2日目です。今日は2R で塩見さんとドローで全勝組から一歩後退。3R では前嶋くんにきっちり勝って、3連勝の3人を追いかける展開になっています。塩見さんとの試合は色々と面白い場面がありましたが、もう少しじっくり考えてみたいので、今夜は3R の試合をご紹介します。

Maeshima, H (JPN, 1866) - Kojima, S (IM, JPN, 2400)
Japan Open 2019 (3)

1. c4 c6 2. d4 d5 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 a6 5. c5 g6 6. Bf4 Bg7 7. e3 O-O!?



去年の全日本の真鍋さんとの試合では、7... Nh5 に自信がなくこちらの手を、今年のクラブ選手権では同じく真鍋さんに7... Nh5 を指しています。結論としては、どちらの手も黒は指せそうです。

8. Bd3 Bg4 9. h3 Bxf3 10. Qxf3 Nbd7 11. O-O Re8


ここは11... e5!? 12. dxe5 Nh5 としてポーンを取りかえす手もあったようです。いずれにせよ、黒はビショップナイトを交換しても、e7-e5 のブレイクを成功させれば満足なポジションです。

12. b4 e5 13. dxe5 Nxe5 14. Bxe5 Rxe5 15. Na4?!



検討で指摘したのはこの手です。c4-c5 と押し込み、b6 にナイトが跳びこむのが有効なのは、クイーンサイドのピースがもっと詰まっており、c8 のビショップやa8 のルークが問題になる場合です。ここでは黒のルークは単にセンターに回るだけで、白のナイトは行き場がありません。15. Ne2 からd4 を目指すのが自然なマヌーバリングですが、それでも黒はNf6-Ne4 を狙って指しやすいでしょう。

15... Qe7 16. Nb6 Re8 17. Rad1 Ne4 18. Bxe4 Rxe4


白はビショップを返すのも、e4 にナイトが残るのもどちらも気が進まないでしょう。本譜ではピース交換が進み、ルークの働きとビショップナイトの働きの差で黒の指しやすさがはっきりしてきました。

19. a3 Be5!?



すぐにa6-a5 とする手もありますが、ここではビショップを白キングに向けてみます。黒のプランはh7-h5-h4 と突く、f7-f5-f4 と突く、d5-d4 と突く、a6-a5 と突く、Be5-Bc7, Qe7-Qe5 とバッテリーを組むなど豊富です。これらの組み合わせに白が対処するのは大変でしょう。

20. Kh1


ビショップのダイアゴナルを警戒するのであれば、20. g3 h5 21. h4 とするべきですが、それでもg3 やe3 のサクリファイス、g6-g5 の将来的なブレイクなど、白が気にすべき課題はまだまだ残っています。

20... Bc7! 21. Rd4 Qe5-+



これで駒得を決め、一気に黒勝ちのエンドゲームへと持っていきます。

22. g3 Bxb6 23. cxb6 Rxd4 24. exd4 Qxd4 25. h4 Qxb6


後はテクニックの問題です。

26. h5 Qd4 27. hxg6 hxg6 28. Kg2 Qe4 29. Qxe4 Rxe4 30. Kf3 Kg7 31. Rb1 Kf6 32. a4 Ke5 33. b5 axb5 34. axb5 c5 35. Rc1 c4 36. Rc3 Re1 37. b6 Kd4 0-1



このラウンドは南條くんがミドルゲームからエンドゲームにかけ、テクニックを見せて黒で勝っていました。今大会前半戦の最も面白いゲームなのではないかと思います。南條くんたちに追いつけるよう残り2日間、4試合も頑張ります。

Japan Open 2019 4R Pairings

2019/08/12

Japan Chess Classic 2019 Day4 Tournament Report


今年のジャパンチェスクラシック入賞者たち

今日、ジャパンチェスクラシックの最終戦が行われ、7R の全試合が終了しました。参加者と運営の皆さん、4日間お疲れ様でした。最終戦のトップボードでは、南條くんがIM らしい巧みな指しまわしを見せてトップを走っていた青嶋くんを破り、久々の国内大会優勝となりました。2人のゲームの棋譜は細かくチェックできていませんが、今大会と言わず、今年日本で指された試合の中でも、ベストゲームの候補となるでしょう。南條くん、素晴らしいゲームでの逆転優勝おめでとう!

1st Place Nanjo Ryosuke 6/7
2nd Place Aosima Mirai 5.5/7
3rd Place Kojima Shinya 5.5/7
4th Place Averbukh Alexander 5.5/7

Japan Chess Classic 2019 Final Standings


昨年の香港、東京チェス選手権、全日本選手権、快速選手権と優勝を続けてきた青嶋くんですが、今大会でついに連続優勝にストップがかかりました。それでも6R までトップを走り、レイティングもプラスで終えているのは流石です。南條くん、青嶋くん、私は三つ巴状態で1勝1敗ずつでしたが、青嶋くんと私は2日目に1つだけドローでポイントを削られたのが最終順位に響きましたね。

それでは私の最終戦の棋譜解説へ。杉本さんとは久々の対戦です。

Kojima, S (IM, JPN, 2390) - Sugimoto, K (JPN, 1983)
Japan Chess Classic 2019 (7)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 a6 5. g3 Bg4?!



5... e6, 5... Bf5, 5... dxc4 などはチェックしてきましたが、この手は見たことがありませんでした。ここではありがたく、ナイトをセンターに跳ばせてもらいます。

6. Ne5 Bc8


黒は6... Bh5 7. Qb3! が予想以上に苦しいと読んだのでしょう。b7-b5 からbポーンを守ろうとしても、a2-a4 からすぐに崩されてしまいます。

7. Bg2 e6 8. O-O Be7 9. Qc2



Catalan Player にとっては、白がかなりテンポを得して理想的な状態に思えるでしょう。ここはすぐに9. e4 O-O 10. Bf4 と進めたほうが、わかりやすく白良しだったかもしれません。

9... O-O 10. Rd1 Nfd7 11. Nf3 b5 12. c5 f5


黒はe2-e4 を止めて局面を閉じたままにすることで、展開の遅れをカバーしようとします。白はもちろん、e5, e6 の弱さをついて違うアドバンテージを取りにいくのが正解です。

13. h4



ありえる手ですが、13. Bf4 g5 14. Bd2 とわざとg7-g5 を突かせるアイディアもあったでしょう。

13... Nf6 14. Ne5 Ne4 15. Bf4 Bb7 16. f3 Nf6 17. Nd3 Nh5 18. Qd2 Nd7 19. Qe3 Rf6?!


19... Nxf4 20. Nxf4 e5!? 21. Ne6 Qb8 22. Nxf8 Kxf8 このエクスチェンジを捨てるアイディアは読んでいたつもりでしたが、黒が駒損でも十分戦えるというのが意外でした。確かにd4 が崩れると、伸ばしすぎたcポーンも負担となります。

20. Bg5 Rg6 21. f4?!



Bf4-Bg5 と入った時点で、こちらのポーンを伸ばすつもりでした。しかし考えてみれば、別のポーンを伸ばすほうが簡単であるとすぐに分かります。21. g4! Bxg5 22. hxg5 f4 23. Qf2 Qxg5 24. gxh5 Rh6 25. Re1+/- 本譜のようにg5 の守りを増やす必要はなく、すぐに端のナイトを狙いにいけば駒得確定でした。

21... h6 22. Bf3


これがBf4-Bg5 の時点から頭にあった動きで、ビショップを差し出す代わりに端の不安定なナイトと、その先のルークを狙います。

22... Nxg3 23. h5 hxg5



23... Nxh5 24. Bxh5 Qe8! 25. Kf2 hxg5 26. Rh1 この変化での黒クイーンの動きは見えていませんでした。ナイトに続いてg6 でルークを取らせても、ピンを利用してビショップを取りかえせれば、黒は戦える駒割りです。

24. hxg6 Ne4?


最終的にはこの手が負けを決めるミスになってしまいました。e6 をサポートするにはこうしてアウトポストのナイトを入れる手が自然に見えますが、よくよく考えてみれば、g3 のナイトはアタックされていないため、後でタイミングを見てNg3-Ne4 のアイディアは使えます。代わりに24... Nf8 25. Ne5 Qe8 ならば、まだ形勢不明で勝負は続いていたでしょう。

25. Bxe4! dxe4 26. Qh3+-



こうして素早くhファイルにクイーンを回してしまえば、h7 のマスへの攻撃が強く、黒はディフェンスすることができません。

26... Nf8


26... Nf6 27. Nxe4! fxe4 28. Qxe6+ Kh8 29. Kg2+- これもhファイルを利用し、鮮やかなフィニッシュです。

27. Ne5 Qe8 28. Qh5 Bf6 29. Nf7 1-0



29... Nxg6 30. Nd6 でも黒はさらにピースを諦めざるをえないため、ここでリザインしました。a6 Slav は私も黒番のレパートリーで、前日の試合では青嶋くんに敗れているため、対策をどうするか色々と考えました。調べていたラインとは違ううえ、細かいミスも多かったですが、最後に面白いゲームができて良かったと思っています。

ジャパンチェスクラシックは昨年までのジャパンリーグと比べ、参加費が半額以下になったことで参加もぐっとしやすくなったと思います。今大会、FIDEレイティング非保持者の参加も多く、しかも皆さん結構FIDEレイティング保持者からポイントを取っていた印象を受けました。8月に続き、9月のFIDEレイティング更新でも、新たに日本国籍のFIDEレイティング保持者が増えることを楽しみにしています。

それでは皆さん、また次の大会でもよろしくお願い致します。私は4日後からオーストリアのウィーンに向かい、今年の夏最後のビッグトーナメントにチャレンジです!

2019/04/29

Japan Chess Championship 2019 Day 1 Tournament Report


Photo by Yamada, A

今年も全日本選手権が始まりました。昨日の記事通り54名の参加で、初日は申告bye 無しの全員が揃っています。10時からスタートした初戦、リスト2の南條くんがドロー、リスト4の松尾さんが負けと、波乱含みのスタートとなりましたが、それでも概ね上位勢は強さを見せています。私は初戦で藤井くんに勝ち、午後は生徒の逢阪くんとの試合となりました。

Osaka, T (CM, JPN, 1995) - Kojima, S (IM, JPN, 2395)
Japan Chess Championship 2019 (2)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 a6 5. c5 g6 6. Bf4 Bg7 7. h3 Bf5 8. e3 Nbd7 9. Be2 Be4!?



c4-c5 と突かれる変化に対しては、e7-e5 で対抗したいところ。そのための準備として、e5 を抑えるナイトをビショップで取りにいくアイディアは、私のお気に入りです。

10. O-O Bxf3 11. Bxf3 O-O 12. b4 Re8 13. Qc2 e5 14. dxe5 Nxe5 15. Be2 Qe7


まだ白にはダブルビショップを持たれたままですが、黒は2つのナイトがアクティブで、すでに満足なポジションと言えそうです。

16. Rfd1 Nfd7 17. Rab1 Nf8 18. Bh2 Rad8 19. Bf1 Ne6 20. Ne2 Nc4



白がd5-d4 を嫌ってナイトを退いたことを見逃さず、ナイトをc4 の嫌なマスに侵入させます。

21. Rb3 a5! 22. Nd4 Nxd4 23. exd4 axb4 24. Rxb4 b6!


24... b5?! 25. a4! ならば、c4 のナイトが不安定になって白優勢でしょう。少し自信はありませんでしたが、異色ビショップの勝負に持ち込みます。

25. Bd6 Nxd6 26. cxd6 Rxd6



26... Qb7!? 27. Rdb1 Rxd6 28. Rxb6 こうしてb6 を取らせるのに一度クイーンを寄せておく手もあったようです。白はルークがd4 の守りから外れるので、再びその守りを考えなくてはいけません。

27. Rxb6 Qc7 28. Qc5 Rde6


自分としては、最も自然な手を指したつもりでした。c6 を6段目で守りつつ、eファイルにルークを重ねて反撃を試みます。白のポーンはばらばらで弱いと考えるか、aファイルのパスポーンは将来的に強みとなるか、判断の難しいところでしょう。しかし、ここは28... Ra8! とaポーンを攻撃するのがベターだったようです。

29. g3? Bf8! 30. Qa5 Bd6!



d4 を当てておくだけでも強力ですが、不用意なg2-g3 を見てアイディアを切り替えることにします。ビショップを捨ててg3 のポーンを取るアイディアは、eファイルに重なったルークと相まって白にとっては嫌な狙いです。直前のビショップ退きで、白クイーンがやや使いづらいマスにいってしまったのもポイントです。

31. Rd3 Re1! 32. Kg2 Qe7?!


ここはやや自信に欠けたものの、決めにいくタイミングだと思いました。Qe7-Qe4 はかなり受けづらい狙いかとも思いましたが、白にはなんとか粘れる手があります。クイーンはb6 のルークをピンにしたままで、32... Rc1! などからバックランクに2つ目のルークを入れるアイディアのほうが白は困っています。

33. Rxc6?



この手では黒のアタックを受け切れません。33. Qc3! Qe4+ 34. Rf3 ならば白は耐えています。

33... Qe4+ 34. Rf3


34. f3 Qe2+ 35. Bxe2 R8xe2# こちらは簡単にメイトです。

34... Rxf1 35. Rxd6 Rxf2+!



これが決め手になります。

36. Kxf2 Qe2+ 37. Kg1 Qxf3 38. Rd8


このルークは落ちてしまうのでダメですが、38. Rxd5 Re2-+ でも当然黒勝ちです。

38... Qxg3+ 39. Kf1 Qxh3+ 40. Kg1 Qg4+ 41. Kf1 Qf4+ 42. Kg2 Qg5+ 43. Kh1 Rxd8 0-1



初日の連勝は9人に絞られ、少しずつ上位同士の対戦を迎えます。しかし、まだまだ始まったばかり。ここからどうなるかは予想できません。参加者の皆さん、2日目もよろしくお願い致します。

Japan Chess Championship 2019 R3 Parings

2018/05/18

Opening Preparation for The Next Step


全日本選手権が始まる少し前、自分が使うオープニングを整理し、振り返りやすくするための専用データベースをChessbase で2つほど作りました。1つは白のオープニング、もう1つは黒のオープニングで、それぞれ20~30ほどのラインが入力されています。ひとまず1つのラインとして作り始めたものでも、細かくなりすぎて見にくくなれば、2つに分けるなどの工夫をしています。

他にも自分の指すラインをデータベースで管理しているプレーヤーもいると思いますが、私はここ数年、それをしていませんでした。ここにきてあらためてデータベースを作り始めたのは、その場の発想ではなかなか上手い手が見つけにくいゲームが増えたり、これまで実戦で試してきたアイディアをまとめてみたいと思ったためです。オープニングの研究はもとから好きでしたが、このデータベースの作り込みも最近楽しく、日毎ラインは増殖しています。今夜はまだ公開していなかった全日本のゲームから、自分の事前のオープニング研究がどのようなものだったかご紹介したいと思います。

Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Kanda, D (JPN, 1859)
Japan Chess Championship 2018 (1)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 dxc4 4. e3 Bg4



この4... Bg4 のQueen's Gambit Accepted は、今回のデータベース作りで真っ先に取り掛かったラインでした。2016年のラスベガスのZhu, J との試合では、なんとか勝ったもののオープニングでアドバンテージが取れるようなものでなく、その後のオンラインのゲームでもひどい試合展開になったものも多かったです。このデータベース作りでは一念発起し、この変化の対策をしっかりと考えてきました。

5. Bxc4 e6 6. h3 Bh5 7. Nc3 Nc6!?


こちらの手はもう1つに比べ、対策は少なめでした。別のナイトの手に対しては、7... Nbd7 8. O-O Bd6 9. g4! Bg6 10. e4 e5 11. dxe5 Nxe5 12. Nxe5 Bxe5 13. f4 Qd4+ 14. Qxd4 Bxd4+ 15. Kh2 Bxc3 16. bxc3 Bxe4 17. g5 Bd5 18. Re1+ Kf8 19. Bb5 a6 20. Ba4 b5 21. Bc2+/= という面白い変化を見つけています。白はポーンを捨てても、ビショップのペアと不安定な黒キングを攻めて、十分な代償があると考えられそうです。

8. Bb5 a6?!



この手をほぼノーチェックでしたので、ここから考え始めることになります。私が調べてきたのは、8... Bd6 9. e4 Nd7 といった流れで、白はタイミングを見てc6 を交換し、黒のポーンストラクチャーを乱して勝負します。ならば、黒は本譜のように1手かけて交換を促す必要はなく、ありがたくナイトビショップの交換をすることに決めます。

9. Bxc6+ bxc6 10. g4 Bg6 11. Qa4 Nd7


Nf3-Ne5 のアイディアもあるので、黒はc6 を守り切ることはできません。ポーンアップになった後のセットアップにはあまり自信はありませんでしたが、なんとか形にできたと思っています。

12. Qxc6 Bd6 13. b3!? O-O 14. Bb2 e5 15. O-O-O exd4 16. Rxd4 Qf6 17. Nd5! Qe6 18. Rhd1 Ne5 19. Nxe5 Bxe5 20. Qxe6 fxe6 21. Ne7+ Kh8 22. Nxg6+ hxg6 23. R4d2 1-0



このゲームは、ようやくこのQGA のラインにアドバンテージを握って勝てたという感触があり、嬉しかったです。続けて黒番でのゲームも1つご紹介します。

Manabe, H (JPN, 2073) - Kojima, S (IM, JPN, 2400)
Japan Chess Championship 2018 (9)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 a6 5. c5 g6!?



a6 Slav を指すことは以前から構想にあり、すでにIVL では1試合試しています。メインの5. c5 に何を指すか(他の候補手は5... Nbd75... Bf5)迷いましたが、かなり時間をかけて調べて、自分には5... g6 が合っていると判断しました。

6. Bf4 Bg7 7. e3


正直に言えば、この手順から入られるのが一番嫌でした。真鍋さんはh2-h3 を突かず、Nf6-Nh5 を気にしないというスタンスですが、私は色々とゲームを見ても、ナイトビショップの交換を迫るのはしっくりきていませんでした。本譜の代わりに7. h3 Bf5 8. e3 Nbd7 9. Be2 Be4!? 10. 0-0 Bxf3 11. Bxf3 0-0 という手順を研究しており、Bc8-Bf5-Be4-Bxf3 と手数をかけてもビショップナイトの交換をして、e7-e5 のブレイクを準備しようと考えていました。

7... O-O 8. Bd3?!



この手は研究の中にありませんでしたが、これまで学んだアイディアから考えれば少し妙だと感じました。白がc4-c5 とポーンを押し込んだ場合、黒はe7-e5 のブレイクが強力となります。そのためにf3 のナイトを手数をかけても消しにいくわけですが、本譜では黒は1テンポアップでBc8-Bg4-Bxf3 ができてしまいます。さらに言えば、d3 のビショップは将来的にナイトのターゲットとなる良くない位置です。私が最も嫌だった手順が8. h3 Bf5 9. Be2 Nbd7 で、これだとBc8-Bg4 ができないうえ、10. 0-0 Be4 11. Nd2! が成立するため、上記のビショップナイト交換を避けられてしまいます。

8... Bg4! 9. h3 Bxf3 10. Qxf3 Nbd7 11. O-O Re8!


これで簡単にe7-e5 をつけるようになりました。f3 のクイーンとd3 のビショップは、e7-e5-e4 でポーンフォーク、Nd7-Ne5 でナイトフォークになる位置で、黒の格好の的となります。このことからも、d3 にビショップを配置するプランが白にとって良くなかったと考えられるでしょう。

12. Ne2 e5 13. Bxe5?



どちらで取っても同じだと思うのは間違いで、ここはポーンで取る一択です。それでも、13. dxe5 Nxe5 14. Bxe5 Rxe5 15. Nd4 Ne4 16. Rfc1 Qe7 17. b4 Re8 とeファイルに戦力を集め、黒が指しやすいのは間違いないでしょう。

13... Rxe5! 14. dxe5 Nxe5 15. Qf4 Nxd3!?


こうして黒はルークから取ることで駒得を確定させますが、ここは2ピースルークを取るか、2ポーンを取るか少し悩みました。2ピースルークのほうが一般的には得であるようにも思えますが、本譜のようにf2 やb2 が落ちれば、白にとってはかなり厳しいエンドゲームであるため、今回はそちらを採用することにします。15... Nh5!? 16. Qb4 Nxd3 17. Qxb7 Nxc5-+

16. Qd4 Nxf2! 17. Rxf2 Ne4 18. Qb4 Nxf2 19. Kxf2 Qf6+ 20. Kg1 Qxb2 21. Qxb2 Bxb2 22. Rb1 Ba3 23. Rxb7 Bxc5



15手目の段階でここまで読み、この先はよほどのことがない限り勝てるだろうと判断しました。最後まで油断せず、きちんと勝てるルークエンディングに持っていく流れも良かったと思います。

24. Nd4 Re8 25. Nxc6 Rxe3 26. Kf1 Re6 27. Rc7 Kg7 28. Nd8 Rf6+ 29. Ke2 Bb6 30. Rd7 h5 31. g4 hxg4 32. hxg4 Bxd8 33. Rxd8 Rf4 34. Rxd5 Rxg4 35. Ra5 Re4+ 0-1


結局、いつもの棋譜解説とあまり変わらないようにも思えますが、自分としては事前の研究がどうであったか、そこから実戦で何を考えたかを中心に書いたつもりです。オープニング用のデータベースは今後も更新を続けながら、さらなる大会でも使えるようにしていきたいと思います。

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.