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2020/08/28

A Great French Master from East Germany

昨日、FIDE 公式アカウントやGM Emil Sutovsky のツイートで、ドイツのGM Wolfgang Uhlmann が24日に亡くなったことを知りました。最近チェスを始めたプレーヤーにとっては聞きなれない名前かもしれませんが、Uhlmann は1900年代半ばから後半にかけて活躍した名プレーヤーで、東ドイツのチャンピオンに複数回輝いています。1971年には、当時の世界チャンピオンであったSpassky への挑戦権をかけ、Candidates にも出場しました。このCandidates ではFischer が圧倒的な強さで挑戦権を獲得し、翌年にSpassky を破って世界チャンピオンになったことは、チェス史においてあまりに有名な出来事です。

また、Uhlmann はFrench Defence の研究家としても知られました。Chessgame では300試合台ですが、私のデータベースでは600試合を超える彼のFrench Defence のゲームが見つかります。私自身、彼の著であり、1995年に出版されたWinning With the French を高校生の頃に読み、French Defence のアイディアについて学んだことをよく覚えています。French Defence は様々な変化に富み、長い期間、世界中のチェスプレーヤーを魅了し続けてきました。Uhlmann はこの当時、Botvinnik やKorchnoj に並び、French Defence の発展に貢献してきたと人物だと言えるでしょう。

Hamann, S - Uhlmann, W 
Halle zt 1963 (3)

1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nd2 Nf6 4. e5 Nfd7 5. f4 c5 6. c3 Nc6 7. Ndf3 Qb6 8. Ne2 f6 9. g3 cxd4 10. cxd4 Bb4+ 11. Bd2 fxe5 12. fxe5 O-O 13. Bg2 Ndxe5!

現代ではポピュラーになったこのピースサクリファイスも、当時は新鮮だったと思います。a7-g1 のダイアゴナルとfファイルを開き、白キングをセンターに縛り付けてアタックを仕掛けます。

14. dxe5 Nxe5 15. Ned4 Nd3+ 16. Ke2 Nxb2 17. Qb3 Qa6+ 18. Kf2 Bxd2 19. Qxb2 Qd3 20. Rad1 Qe3+ 21. Kf1 b6!

French Defence の黒最大の問題である眠れるビショップが目覚めれば、白キングはひとたまりもありません。

22. Qxd2 Ba6+ 23. Ne2 Rxf3+ 24. Bxf3 Qxf3+ 25. Kg1 Bxe2 26. Re1 Bd3 0-1

最後は鮮やかなタクティクスが決まりました。Bd3-Be4 からh1 のルークを狙えば、黒はエクスチェンジを取りかえすことができます。Uhlmann のFrench Defence のゲームといえば、Fischer とのゲーム が有名ですが、私はこちらも好きなので紹介させていただきました。いつの時代にも溢れるFrench Defence のマニアたちと、世界中のチェスプレーヤーがUhlmann のことを忘れませんように。彼の冥福を祈ります。

2016/02/05

Gibraltar Masters 2016


Hungarian IM Gledula Benjamin, Photo from Chess News

久々の更新です。毎年この時期に、イギリス領のジブラルタルで行われているチェストーナメントが終了しました。7/9 で8人が並ぶ混戦の中、最終戦をともに勝ったフランスの Maxim Vacier Lagrave と、アメリカのNakamura Hikaru がタイブレークを行い、Hikaru の優勝が決まりました。今年は、Tata Steel に参加しなかった多くの強豪がジブラルタルに流れ、非常に見ごたえのある試合が多く行われましたね。応援する選手のプレーを毎晩、ライブ中継で追っていたチェスファンも多かったと思います。

そんな今年のジブラルタルで注目を集めたのは、23年ぶりにオープントーナメントに参加した、前世界チャンピオンのAnand です。招待制のトーナメントばかり出場していたAnand は、久々のオープントーナメントで活躍を期待されていましたが、残念ながら2500台に2人負け。レイティングを大きく落とす結果となってしまいました。最終戦の結果次第では、絶好調のインドNo.2、Harikrishna とのランキングが逆転していたことでしょう。Carlsen とのリベンジマッチに敗れてもなお、Anand の王座復活を願うファンにとっては、冷や冷やの結果だったと思います。

Anand を破ったのは、フランスのGM Demuth Adrien と、ハンガリーのIM Gledula Benjamin です。16歳のBenjamin は、ハンガリーで現在、最も有望視されているジュニアプレーヤーでしょう。彼のゲームを棋譜だけ載せておきます。

Gledura, B (IM, HUN, 2515) - Anand, V (GM, IND, 2784)
Gibraltar Masters 2016 (7)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 e6 5. e3 Nbd7 6. Qc2 Bd6 7. Bd3 O-O 8. O-O e5 9. cxd5 cxd5 10. e4 exd4 11. Nxd5 Nxd5 12. exd5 h6 13. Nxd4 Qh4 14. Nf3 Qh5 15. Bh7+ Kh8 16. Qf5 Qxf5 17. Bxf5 Nf6 18. Bxc8 Rfxc8 19. Rd1 Rd8 20. Be3 Be7 21. d6 Rxd6 22. Rxd6 Bxd6 23. Rd1 Bc7 24. Kf1 a6 25. h3 Kg8 26. b3 Rd8 27. Rxd8+ Bxd8 28. Ke2 h5 29. Bg5 Kf8 30. Kd3 Ke8 31. Bxf6 Bxf6 32. Ke4 Bd8 33. Ne5 Ke7 34. Kd5 Bb6 35. Nd3 Kd7 36. Nc5+ Bxc5 37. Kxc5 Kc7 38. h4 Kd7 39. Kb6 Kc8 40. b4 Kb8 41. f3 Kc8 42. g4 hxg4 43. fxg4 Kb8 44. h5 f6 45. a4 Kc8 46. Ka7 Kc7 47. b5 a5 48. Ka8 1-0



これまでも使ったことのある、Semi-Slav Anti-Meran のソリッドな変化をチョイスしたAnand でしたが、ちょっとしたミスから多少悪いエンドゲームとなり、最終的には白勝ちのポーンエンディングとなりました。ハンガリーのJudit Polgar も、最終ポジションは綺麗なツークツワンクだと、Benjamin のプレーを称賛しています。ゲームの解説を細かく見たい方は、リンク先のChess News の記事をご覧ください。


4年前、12歳だったGledula Benjamin

Benjamin とは2012年にハンガリーに渡った頃、一度だけ対戦した経験があります。当時から力強いプレーでベテランを圧倒し、ハンガリーやヨーロッパのジュニアタイトルを取ってきた彼は、ハンガリーの同世代でも頭一つ抜けた存在でした。今回のジブラルタルでAnand を破ってさらに脚光を浴び、GM タイトルも間近となった彼を見ていると、また彼と対戦したい、そして私ももっと頑張らなければという思いに駆られます。ハンガリー代表はまだ少し気が早いですが、いつかオリンピアードの舞台でも再会できることを楽しみにしています。

2016/01/28

GM Arkadij Naiditsch Simultaneous Event


バーゼルでプレー中のNaiditsch photo from Chess News

突然ですが、同時対局イベントの告知です。来月頭、アゼルバイジャンのトップグランドマスター、Arkadij Naiditsch が来日します。Naiditsch と言えば、今月のスイス、バーゼルのトーナメントで、羽生さんと対局したことを覚えているチェスファン、将棋ファンも多いのではないかと思います。その縁で今回、急な来日が決まり、羽生さんと私の協力の元、同時対局イベントを開く流れとなりました。Naiditsch は、世界チャンピオンのCarlsen に公式戦で連勝中の、世界でも数少ないプレーヤーです。是非この機会に、世界トップクラスのGM との対局をお楽しみください。

【日時】 2016年2月11日(祝) 13時開場、13時半対局スタート
【会場】 東京大学駒場キャンパス 21 KOMCEE WEST 地下ホール(最寄駅:駒場東大前駅)
【形式】 30面同時対局
【申し込み】 前日までに、shinya.kojima.chessplayer(a)gmail.com((a)を@ に変えて)宛てにメールでお申し込みください。
【参加費】 一般5000円、学生3000円
【備考】 先着の30名を超えた場合、参加できない可能性があることをご了承ください。
盤駒はご持参ください。盤駒をお持ちでない方は、その旨、申し込みの際にメールでお知らせください。

【ゲスト経歴】 1985年、ラトビアの首都、リガ生まれ。
1995年、European under-10 championship で優勝。
2005年、世界トップクラスのプレーヤーが集まるDortmund Sparkassenで優勝。
ベストレイティングは2737。
2005年からドイツ、2015年からアゼルバイジャンのプレーヤーとして活躍している。

2015/11/20

Japan Open 2015 Tournament Preview


昨年のジャパンオープン Photo by Uesugi

明日からの3連休は、蒲田で開催されるジャパンオープンに参加してきます。昨年は、ハンガリーに戻る直前の大切な調整として参加し、なんとか優勝できましたので、今年も連覇を狙って頑張ってきます。とは言え、今年のジャパンオープンは、来年のアゼルバイジャン、バク―でのオリンピアード代表選考も兼ねており、昨年よりもハイレベルな戦いが予想されます。今夜の記事は、これまで入ってきた情報で、注目の優勝候補をご紹介しておきたいと思います。

1. Tran Thanh Tu (CM, VIE, JCA 2495, FIDE 2292)


ベトナムのTu さんは、東京オープンの全勝優勝後、国内レイティング2495 というとてつもない数字がつきました。ジャパンオープンでは、リスト1 でプレーすることは間違いがなく、優勝候補の筆頭です。私や南條くんを含めた、国内上位クラスのメンバーをほぼ全員、1度は破っているため、2度目の対戦となる今大会、彼がどのようなプレーをするかが、優勝の行方をうらなうカギになるでしょう。

2. 小島慎也 (IM, JPN, JCA 2457, FIDE 2400)


私は昨年に引き続き、優勝を目指します。5月の全日本選手権では今年も優勝を逃したものの、ジャパンリーグや名古屋オープン、IVL での3回優勝など、IM 獲得以降の国内戦績は決して悪くありません。今年の集大成として、このジャパンオープンで良い結果を残せればと思います。

3. 南條遼介 (IM, JPN, JCA 2427, FIDE 2330)


社会人1年目の南條くんは、今年は大会の優勝になかなか恵まれず、苦難の年となっています。かつて、8戦全勝での優勝も果たしたことのあるこのジャパンオープンで、復活を狙いたいのではないでしょうか。戦力的にも、オリンピアードの日本代表に再び入ってもらいたいプレーヤーです。

4. 羽生善治 (FM, JPN, JCA 2415, FIDE 2398)


羽生さんも、昨年の東京オープン以来、1年ぶりの国内公式戦に参戦です。公式戦に限らなければ、チェスの試合やトレーニング自体は途切れることなく続けており、今年は好調を維持しています。2日目は参加することができず、3試合はbye になってしまいますが、それでも最注目のプレーヤーの1人です。私を含めたIVL メンバー以外と、どのような試合をするのか、楽しみに見せてもらうつもりです。

5. 青嶋未来 (JPN, JCA 2378, FIDE 2167)


今年、最もブレイクした日本人プレーヤーである青嶋くんは、ジャパンオープンにフルで参加します。6月の快速選手権以降、大会での優勝は逃していますが、それでもコンスタントに好成績を残しているのは、さすがだと言えるでしょう。来年は海外大会参加にも意欲を見せているので、今年最後のビッグトーナメントでも、活躍を期待したいと思います。

6. Andrew Lewis (FM, ENG, JCA 2166, FIDE 2275)


昨年の全日本選手権で3位を獲得した、イングランドのFM Andrew が日本に戻ってきているようです。全日本では、南條くんと私のデッドヒートに隠れてはいましたが、非常にテクニックのあるベテランプレーヤーです。2つのbye があるため、優勝は少し難しいかもしれませんが、また日本のプレーヤーを脅かすプレーを見せてもらいたいですね。

トーナメントは、ふたを開けてみなければ結果はどうなるか分からないもの。ここに挙げたプレーヤー以外が優勝を攫うような展開もありえますので、明日からのレポートもお楽しみに。それでは、ジャパンオープンに参加されるプレーヤーの皆さん、明日から3日間、よろしくお願い致します。

2015/06/04

The First Sponsored Chess Player from Japan - Kohei Yamada -


10th IVL より、Photo by Hasegawa

数日遅れですが、今夜はこちらの話題です。IM になった私や南條くんを含め、1988年生まれの世代には、不思議と強豪プレーヤーが揃っています。今回、その中の1人である山田弘平くんが、6月1日より株式会社エーアイネット・テクノロジのバックアップを受け、サポンサードチェスプレーヤーになったことを発表しました。弘平くんは2008年、2009年に私や南條くんを抑えて学生チャンピオンとなり、2010年にはチームメイトとして、ロシアのハンティマンシスクオリンピアードや、広州アジア大会に一緒に参加しています。

企業がチェスプレーヤーのスポンサーにつくという話を聞くと、2006年のアジア大会に参加した際に、インド代表のGM Sasikiran がそうであったことや、マレーシアのIM Mas がマレーシア初のGM を期待されて、石油会社からのバックアップを受けていたことを思い出します。しかし、日本のようなチェス後進国にとっては、おそらく初めてのことで、弘平くんにとって大変素晴らしいことだと思います。弘平くんは今後、大会参加費や遠征費の補助を受けるようで、これからの活動の幅も広がることでしょう。弘平くん、おめでとう!

中学生の頃、北海道から遠征してきた弘平くんと知り合って、10年以上経ちました。そんな彼が、こうして現在でもチェスプレーヤーとして努力を続けていることは、私にとっても大変嬉しいことですし、今回の話題は、日本のチェス界にとっても明るいニュースでしょう。私もますます、プレーヤーとしてもトレーナーとしても、国内外での活動に精を出していこうと思います。

株式会社エーアイネット・テクノロジ スポンサー情報

2015/04/16

Hungarian Historical Caro-Kann


Hungarian GM Peter Prohaszka, scacchierando より

私がチェスの留学先として選んでいたハンガリーには、Caro-Kann を好んで指す文化が存在します。Mega Database のCaro-Kann のゲーム解説に登場するPeter Lucas は、60歳を超えるハンガリーのベテランGM ですし、その研究は現在の代表である、Leko、Rapport、Berkes らに受け継がれています。2004年のWorld Championship Match の最終戦で、ハンガリーのLeko がCaro-Kann を使い、Kramnik に敗れたのは、私にとって思い出深い出来事です。

ハンガリーでは私が争ってきたジュニアたち(全員、IM になっています!)もCaro-Kann を使いますし、それに応じて発展してきた、Caro-Kann 対策も豊富に存在します。私自身、ハンガリーのGM トーナメントで、3人のGM、SaxVargaGroszpeter、らにCaro-Kann を指してポイントを取ってきたことは、大きな経験になっています。

そして今夜は、ハンガリーの若いGM をご紹介します。Peter Prohaszka は、1992年生まれの23歳で、黒番では1. e4 対策にほとんどCaro-Kann を使います。2012年途中から、Caro-Kann での負けゲームは1つもなく、先日終わったDubai Open でも、4試合Caro-Kann を指して3勝1ドローという結果を残しています。(この大会で、勝った試合は全てCaro-Kann!)

Rathnakaran, K (IM, IND, 2422) - Prohaszka, P (GM, HUN, 2601)
Dubai Chess Open 2015 (9)

1. e4 c6 2. d3 d5



Caro-Kann の2. d3 Variation は、昨年の全日本で2試合、先日のHawaii ではHou Yifan に1試合指されるなど、私にも馴染みのある変化です。

3. Nd2 e5 4. Ngf3 Bd6 5. g3 Nf6 6. Bg2 O-O 7. O-O Re8 8. b3 a5 9. a3 Qc7 10. Bb2 Bg4 11. h3 Bh5 12. Qe2 Nbd7 13. Rae1 dxe4 14. dxe4


オーソドックスですが、King's Indian Attack の...Bg4 の変化にトランスポーズしています。黒はナイトとビショップの組換えがここからのカギとなりますが、Prohaszka は見事な指しまわしを見せます。

14... Nc5! 15. Qd1 b5 16. Qc1 Nfd7 17. Nh4 Ne6



d4 にナイトを運ぶのは、スタンダードなマヌーバリングです。d4 に跳びこむタイミングと、もう1つのナイトとの行方にも要注目です。

18. Nf5 Bf8 19. Nf3 f6!


e5 を守るだけでなく、f7 にマスを作ることで白マスビショップを退けるようにします。

20. N3h4 a4! 21. b4 Nb6!



これで5段目に2つのナイトが跳びこむ準備ができました。先に黒陣に侵入している白のナイトはさほど脅威ではなく、ここまでくれば私も迷わず黒を持ちたいポジションです。

22. Ne3 Bf7 23. Nhf5 Rad8 24. Ng4 Nc4 25. Bc3 Nd4 26. f4 Nxf5 27. exf5 h5 28. Nf2 exf4 29. gxf4


白のナイトを捌いてしまい、ポーンストラクチャーも乱してしまいます。これで白のキングサイドを弱めると同時に、2つのビショップとナイトで、さらにクイーンサイドにプレッシャーをかけます。

29... Qb6 30. Be4 c5! 31. Kh2 cxb4 32. axb4 a3 33. Re2 a2



いまだにマテリアルはイコールですが、白はどうしようもないポジションです。こうした丁寧なプレーができるのであれば、大きなリスクを取ることなく、Caro-Kann でも大きく勝ち星を稼ぐことができるでしょう。

34. Rg1 Kh8 35. Nd3 Nd6 36. Ne5 fxe5 37. Bf3 Nxf5 38. fxe5 Nd4 39. Rf2 Qc7 40. Ba1 Qxe5+ 41. Kh1 Bd5 42. Bxd5 Qxd5+ 43. Rgg2 Qe6 44. Qf4 Qxh3+ 0-1


Prohaszka はDubai Open ではレイティングを下げたものの、現在ハンガリーの国内ランキング8位に食い込む強豪で、これからの活躍次第では、ハンガリーの代表入りも十分にありえます。今のところチェックしているのは、Caro-Kann の試合が中心ですが、今後は他のゲームも見ながら、応援を続けていきたいですね。

2014/10/01

Topalov's Comeback


Bulgarian GM Topalov Veselin, Chess News より

10月のFIDE レイティング更新により、4年ぶりに2800台に復帰したプレーヤーがいます。それがブルガリアのGM Topalov Veselin です。Topalov は現在、レイティングが2800ジャスト、世界ランキングは3位につけています。

私が初めてTopalov を意識したのは、10年程前でしょうか。World Cup ではKasimdzhanov に準決勝で敗れて姿をしましたが、間違いなく2004-2006年にかけて、Topalov は絶頂期を迎え、世界でも最注目のプレーヤーの一人でした。2005年のLinares は、Kasparov が出場した最後の公式大会でしたが、その最終戦、Kasparov に土をつけたのがTopalov であり、その存在感を大いにアピールしたことを、今でもよく覚えています。

Topalov, V (GM, BUL, 2757) - Kasparov, G (GM, RUS, 2804)
Linares 22nd (14)

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. Nc3 e5 4. Bc4 d6 5. d3 Be7 6. O-O Nf6 7. Nh4 Nd4 8. g3 Bg4 9. f3 Be6 10. Bg5 Ng8 11. Bxe7 Nxe7 12. f4 exf4 13. Bxe6 fxe6 14. Rxf4 Kd7 15. Nf3 Rf8 16. Rxf8 Qxf8 17. Nxd4 cxd4 18. Ne2 Qf6 19. c3 Rf8 20. Nxd4 Nc6 21. Qf1 Qxf1+ 22. Rxf1 Rxf1+ 23. Kxf1 Nxd4 24. cxd4 d5?


25. Kf2 Ke7 26. Kf3 Kf6 27. h4 g6 28. b4 b5 29. Kf4 h6 30. Kg4 1-0


Kasparov にとっては、ポーンエンディングでミスが出て悔いの残る最終戦だったと思いますが、それでもこのLinares はKasparov が優勝しています!

2005年は他にも、Sofia MTel Masters、San Luice で優勝、年が明けた2006年頭のCorus も、Anand とタイでトップでした。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったTopalov ですが、Kramnik とのマッチで様々なトラブルがあってKramnik ファンから敬遠されるようになり、近年も多少は戦績を落としていました。しかし、今年はOlympiad での1B ボード賞を獲得するなどの活躍を見せ、2800への復帰を果たしたのです。

現在、世界のトップはCarlsen とCaruana が引っ張る形になっていますが、2005年以前にKasparov と争っていたプレーヤーたち、Anand, Kramnik, Topalov たちも、まだまだ負けてはいられないはずです。2005年のMTel Masters のような、Topalov が無双する大会も、再び見られることを楽しみにしています。

2014/05/19

A Hope from Croatia


Croatian GM Ivan Saric, Chess News より

私がハンガリー留学中、機会があれば一度足を伸ばそうと思った国がヨーロッパにあります。それがハンガリーの南西に位置する、クロアチア共和国です。ブダペストのアンダンテにいる際も、首都ザグレブやドゥブロブニクから来た、これから行くという声を何回も聞きました。日本人旅行者に人気があるだけでなく、海に面していないハンガリーの国民にとっても、海へ行きたくなった際に足を伸ばすのは、隣国クロアチアだそうです。

もちろん、私がクロアチアに興味を持ったのは、海水浴ではなく、チェスによるものです(笑) Sicilian Alapin を勉強していた2010年頃、クロアチアと、北のスロベニアのGM の棋譜は多く並べました。かつてはユーゴスラビアという、巨大なチェス強豪国家だったこの辺りの国々は、使うオープニングや棋風が、現在も少し似ているような印象を受けます。

そして、現在クロアチアを率いるGM と言えば、最近名前を頻繁に聞くようになった、Ivan Saric です。私より2つ若い、1990年生まれで、FIDE レイティング2666、国内ランキングは1位で、2位のStevic (2010年のオリンピアードでは1番ボードを務めていたGM です。) とは、レイティングを50以上離しています。今年始めのTata Steel Challenger Class で安定した戦績で優勝し、現在は15th Poikovsky Karpov Tournament に参戦中です。

Saric, I (GM, CRO, 2666) - Eljanov, P (GM, UKR, 2732)
15th Poikovsky Karpov Tournament (4)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. h4 h5 5. Bd3 Bxd3 6. Qxd3 e6 7. Bg5 Be7 8. Nf3 Nh6 9. Nbd2 Nf5 10. Nf1 Qa5+ 11. c3 Qa6 12. Qc2 Nd7 13. Ne3 g6 14. b4 b6 15. a4 c5 16. b5 Qc8 17. Bxe7 Nxe7 18. O-O cxd4 19. cxd4 Qxc2 20. Nxc2 Nf5 21. Nb4 O-O 22. Rfc1 Rfc8 23. Kf1 Kf8 24. g3 f6 25. exf6 Nxf6 26. Rxc8+ Rxc8 27. Nc6 Ne7 28. Nfe5 Nxc6 29. Nxc6 a5 30. f3 Ne8 31. Re1 Kf7 32. Ne5+ Kf6 33. Nd7+ Kf7 34. Ne5+ Kg7 35. Nc6 Kf7 36. Ke2 Nd6 37. g4 hxg4 38. fxg4 Ne4 39. Ke3 Rh8 40. Rh1 Kg7 41. h5 gxh5 42. gxh5 Kh6 43. Kf4 Nf2 44. Rb1 Kxh5 45. Ke5 Kg5 46. Rg1+ Ng4+ 47. Kd6 Kf4 48. Kc7 e5



49. Rxg4+!+- Kxg4 50. Nxe5+ Kf5 51. Kxb6 Ke6 52. Ka7 Rh7+ 53. Ka6 Kd6 54. b6 Rh1 55. b7 Rb1 56. Nd3 1-0


おそらくSaric のレイティング、2666はクロアチアのプレーヤーとして、過去最高の数値だと思います。今後もクロアチア初の2700GM になれるか、注目は高いでしょう。私も要チェックのプレーヤーとして、今後の活躍を見守ろうと思います。

2014/04/28

Judit Polgar The Princess of Chess


タイにいた1ヶ月で届いていた郵便物の中から、この本を発掘しました。馬場さんが放出することを決め、Behind the Scene で告知していた中の1冊で、ハンガリーのGM Judit Polgar のゲーム集です。

言わずもがな、Judit Polgar は歴史上最も強い女子プレーヤーであり、ハンガリーの生んだ天才です。ハンガリー国内では、男子のトッププレーヤーである、Peter Leko を知らずとも、Judit のことは知っているという人も多いのではないかと思います。今でこそ、Hou Yifan, Koneru Humpy が2600台にレイティングを乗せていますが、他の女子プレーヤーが2500台である中、1人で2700を超え、世界中のトッププレーヤーと渡り合っていたPolgar は、やはり特別な存在なのでしょう。


同時対局中のJudit Polgar。昨年のPolgar Chess Festival にて。

そんな彼女の、1980年代後半から2000年代初期までのゲームを扱った本書は、これからゆっくり読み進めていくつもりです。本書をお持ちで、おススメのゲームがある方は、是非お知らせください!

2014/04/06

Bundesliga 2014 - Domination from Baden-Baden -


一昨日、長谷川さんからライブのリンクが送られてきたので、バンコクに戻ってきてからは、夜のBundesliga 観戦が日課となっています。チェスの世界でBundesliga と言えば、ドイツのチームリーグ戦のこと。今期は、チームBaden-Baden の面子がめっぽう強く、他のチームが全く太刀打ちできていません。

今日試合をしているBaden-Baden のメンバーは、Aronian(アルメニア)、Adams(イングランド)、Bacrot(フランス)、Naidisch(ドイツ)、Nisipeanu(ルーマニア)、Gustafsson(ドイツ)、Schlosser(ドイツ)、Bochis(ドイツ) となっています。(ここまで書いて、昨日敗れたShoriv が外されたことに気づきましたw) Candidate がショックな結果で終わったばかりなのに、もうドイツで試合をしているとは、Aronian もタフですね。

さて、今日はそんなBundesliga から、最強チームBaden-Baden のゲームを1つ、ご紹介します。昨夜のBacrot、もしくはNisipeanu のゲームは非常に興味深かったのですが、残念なことに現在は棋譜がチェックできません。そこでまさに今行われている、München とのゲームを取り上げます。

Naiditsch, A (GM, GER, 2724) - Jorczik, J (IM, GER, 2405)
Schachbundesliga 2013/2014

1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nd2 Be7 4. Ngf3 Nf6 5. e5 Nfd7 6. Bd3 c5 7. c3 b6 8. Nf1 Ba6



黒はFrench Defence において、典型的な手法で白マスビショップを交換しにいきますが、それでもNaiditsch は巧みにキングサイドアタックのチャンスを残します。

9. Ng3 Bxd3 10. Qxd3 Nc6 11. Bd2 Rc8 12. h4!?


私も経験がありますが、French Tarracsh において、g3 のナイトをどう使うかは少し悩むところ。キャスリングを放棄し、h2-h4 と絡めてキングサイドの攻めを作るのは、面白いアイディアでしょう。

12... cxd4 13. cxd4 Nb4 14. Bxb4 Bxb4+ 15. Kd1!?



ここは15. Ke2 でも悪くないと思いますが、Naiditsch の構想では違ったキングの守りを見せます。

15... Be7 16. Rc1 h6 17. Nh5 O-O 18. Nf4 Rxc1+ 19. Kxc1 Qc7+ 20. Kb1 Rc8 21. g4!


白はうまくキングをカバーしつつ、いよいよ本格的なキングサイドアタックを開始します。

21... Qc4 22. Qd2 Bb4?



指したくなる1手ですが、この手を省いてすぐに22... Nc5! (白がこのナイトを取れば、Qc4-Qd3+) と指していると、形勢は黒に傾いていたかもしれません。

23. Qd1 Bf8 24. g5! Nc5? 25. b3! Qb4 26. Qc2!


cファイルをピンにしつつ、b1-h7 のダイアゴナルを睨む絶妙な1手です。

26... Ra8 27. g6 Ne4 28. Qc6 Nc3+ 29. Kc2 Nxa2 30. gxf7+ Kh8



白は一気に攻勢に立ちました。次はルークを取っても勝てそうですが、キングへのカウンターを少し読まなければいけません。そこで...

31. Ng5! 1-0


Naiditsch はさほど目立った印象はないかもしれませんが、強豪国ドイツを長年率いるNo.1 で、ドルトムントでの優勝経験も持っています。他の2700GM に負けない活躍を、今後も見せてほしいですね。

Bundesliga 2014 Live Games

2014/03/19

Alexander Motylev - A New European Champion -


最終戦を終え、金メダルを受け取るGM Motylev, Chess News より

今月はCandidate が一番の目玉だと思われますが、他にも気になるビッグトーナメントが2つ、すでに終了しています。1つはアイスランドで毎年開催されている、Reykjavik Open、そしてもう1つがアルメニアで開催された、European Individual Championships です。後者はJudit のFacebook 投稿でハンガリーの上位勢も参加することを知り、トーナメント序盤からゲームをチェックをしていました。強豪GM が集うこの大会での優勝者、ヨーロッパチャンピオンは大変名誉のあるタイトルでしょう。

そして今年のEuropean Individual Championships を制したのは、ロシアのGM Alexander Motylev です。(発音はモティリョーフでしょうかね。) 4連勝中だったロシアの新鋭、Artemiev に黒番でストップをかけ、そのままの勢いで終わってみれば7勝4ドロー。2位に1ポイント差をつける独走の優勝でした。

Motylev, A (GM, RUS, 2656) - Riazantsev, A (GM, RUS, 2689)
European Individual Championships (6)

1. e4 c6 2. Nc3 d5 3. Nf3 Bg4 4. h3 Bxf3 5. Qxf3 e6 6. d3 Nf6 7. Bd2 Bd6 8. g4 Bb4 9. a3 Ba5 10. g5 Nfd7 11. d4 O-O 12. O-O-O e5 13. dxe5 d4 14. Ne2 Bxd2+ 15. Rxd2 Qxg5 16. Nxd4 Qxe5 17. Nf5 Nf6 18. Qg2 g6 19. Qg5 Re8 20. f3 Kh8 21. Rg1 Ng8 22. Nd6 Qxg5 23. Rxg5 Re7 24. Re5!



24... Rc7 25. Re8 b5 26. Nf5 1-0


同国のCaro=Kann スペシャリスト、Rizantsev を鮮やかに退けました。b8 のナイトが...

Motylev はロシアの2700軍団からは一歩退いた位置にいるGM ですが、この大会で高いポテンシャルを見せたことで、今後はどうなるかわかりませんね。ヨーロッパチャンピオンとして君臨するこれから1年、どのようなゲームを見せてくれるか楽しみにしておきます。今大会のMotylev の全ゲームは、こちらからチェックしてみてください。

2014/03/12

Master of Ukrainian Masters


Ukrainian IM Grabinsky Vladimir, wikipedia より

先日終了したカペルで、惜しくも優勝を逃がしたウクライナのGM Vovk Andrey のことを調べていて、興味深いチェスサイトを発見したので、今夜はそちらをご紹介します。リンクは以下の通りです。

Grandcoach.com

最初はVovk のベストゲームのページから入ったため、彼のHP なのかなと思っていましたが、よくよくチェックしてみると違いました。こちらはIM Grabinsky Vladimir のHP です。彼は強豪国ウクライナのマスターとしては、かなり無名に近い人物だと思います。しかし、、プロフィールのページを見ると、ウクライナ代表クラスのGM である、Kryvoruchko や、Volokitin を育てたと記されています。プレーヤーとしてよりも、コーチングや本の出版(2007年にVolokitin と共に、Perfect Your Chess という有名な本を執筆) などが、メインの仕事のようですね。

ちなみに、プレーヤーとしてあまり名前を聞いたことがないのも当然で、調べてみると彼のFIDE レイティングは2263 でした。まさか、ウクライナでチェスの仕事をしていながら、私よりも低いレイティングだとは驚きです。しかし考えてみれば、チェスの実力と、コーチングの技術は別のものです。(もちろん、ある程度の実力は必要ですが) 現在のウクライナのトップGM のトレーニングを行っていたのは、彼らがもっと幼い頃でしょうが、きちんとトレーナーとしての資格を持ち、こうした実績を残しているというのは、とても立派なことだと思います。

そして、私がさらに素晴らしいと思うのは、HP の作り方です。かつての生徒たちの実績紹介や、本人による解説入りのベストゲームが公開されているのは、ファンにとって喜ばしいことですし、これを見て彼にチェスを習いたいと思うウクライナのプレーヤーも当然いるでしょう。まだすべてのページをチェックしたわけではないですが、読み物としても非常に面白そうです。私もコーチングの仕事を行う以上、こうした点は見習っていきたいと思います。他にも、どこかのマスターやコーチのHP が面白いといった情報があれば、是非教えてください。

2014/02/28

Looking for Good Ways to Compete with Your Rivals

中学校入学の直前に初めてチェスに出会った私も、チェスとの付き合いが13年を超えようとしています。この13年という時間を聞いて、とても長いと感じる人も、まだまだこれからだと感じる人もいるでしょう。私自身には判断はつきかねますが、今後も自分はチェスと関わりながら生きていくだろうと信じています。

そんな私がこの13年間でこなしてきた試合は、棋譜をとったラピッド以上の持ち時間のゲームで、2000試合弱と言ったところでしょうか。多くのプレーヤーと数えきれないほどの試合をこなす中で、少しずつ実力を伸ばしてきました。そして、そんな私の成長の中で欠かせないのは、何名かのライバルと呼べる存在たちです。

今日、この記事を書くにあたり、ライバルというのはどういったものかと改めて考えてみました。例えば、Carlsen のレイティングが2800を超えたことをすごいとは思っても、彼に負けていられないと思うプレーヤーは、世界でもトップの一握りだけでしょう。あまりに実力が離れていれば、ライバルとは呼びづらいはずです。そこを踏まえると、ライバルというのはレイティングが比較的近く、切磋琢磨し合うことができ、負けたくないという思いを抱く存在ではないかと思います。私にとっては様々な成長過程において、誰がライバルかというのは変化してきましたので、現状で私がライバルと考えるプレーヤーを紹介してみようと思います。紹介するのはライバル度数順(?) ではなく、単に年齢順です。いつものタイトル、国、レイティングのほかに、生まれ年も表記しておきます。


Nanjo Ryosuke (JPN, 2307, 1988)

私がチェスを始めて13年ということは、同級生の南條くんとの付き合いも13年ということになります。麻布学園チェス部入部当初から、アメリカでの試合経験で磨かれた実力と、鋭いチェスのセンスとを持っていた彼の存在は、12歳でチェスを始めた私やチェス部の同期、そして先輩方に大きな刺激を与えたことでしょう。南條くんに負けたくないという気持ちが、中高時代の私の1つのモチベーションであったことは間違いありません。

彼との試合は13年間で80試合以上となり、FIDE 公式戦に絞るとJapan League で私の1敗3ドロー、全日本選手権で1勝8ドローと、完全に五分五分の戦績です。レイティングが多少離れた時期もありますが、彼が昨年のジャパンオープンで全勝優勝したことで国内レイティングは2400台に乗り、明日からのカペルでもFIDE レイティングを稼いでくると信じています。大学生活最後となる今年、ノルウェーでは頼れるチームメイトとしてともにプレーしつつ、どういった将来へのチェスのプランを持ち、どんなゲームを見せてくれるのか、楽しみにしておきます。


Ikeda, Junta (FM, AUS, 2338, 1991)

惇多くんとは2006年に東京で初めて出会い、翌年にシンガポールで再会。それからしばらく交流はありませんでしたが、2011年にアメリカの大会でともに過ごして以来、ライバルとして強く意識するようになりました。オーストラリアの代表と、私と同じIM のタイトルを狙う彼は、昨年から1年間京都大学に留学し、日本のチェス界に貢献してきました。昨年の全日本選手権で優勝し、私が南條くんから取り戻したかった日本チャンピオンのタイトルは、現在彼の手にあります。

そんな惇多くんも、今月で1年弱の日本滞在を終え、オーストラリアへと帰っていきました。京都での生活は非常に有意義だったと思いますが、チェスのトレーニングという点では、やはりオーストラリアのほうが多くの刺激を受けられるはずです。4月のオーストラリアの大会では、3つ目のIM ノームに手が届くか、そしてレイティングを2300台後半に戻せるかに注目したいと思います。


Sean, Winshand Cuhendi (FM, INA, 2364, 1997)

チェスのライバルは必ずしも日本人とは限りません。ハンガリーでの留学生活中、しのぎを削り合ってきたプレーヤーたちは、ライバルと呼ぶにふさわしい存在です。ハンガリーで過ごした計1年間の生活の中で、最も交流が多く、また密に試合をしたのがインドネシアのSean でした。2か月の間に同じプレーヤーと計5試合のFIDE 公式戦をこなすことは、今後もめったにないでしょう。直接対決は私が多く勝ち越していますが、私がハンガリーを去った後の戦績で、レイティングは抜き返されています。

Sean は昨年の秋に15歳になったばかり。アジアの強豪国、インドネシアの代表にはまだ実力が足りませんが、この若さと成長速度を考えれば、将来はさらなる活躍が期待できるでしょう。10代前半で親元を離れ、遠くヨーロッパの地でチェスの腕を磨くという彼のガッツとチェスへの情熱も、日本のプレーヤーには見習ってほしいですね。彼も現在はハンガリーを離れて帰国したようですので、来年のインドネシアオープンか、その他のアジアのトーナメントで再会を果たしたいです。


Abdumalik, Zhansaya (WIM, KAZ, 2379, 2000)

今日紹介するプレーヤーで、最も若く、最もレイティングが高いのが彼女、カザフスタンのWIM Abdumalik です。彼女のヨーロッパ遠征は現在も継続中のようで、今月は Gibraltar でレイティングを稼ぎ、いつの間にか私やSean より上に来ています。女子のU14 ランキング世界1位であることは知っていましたが、男子を含めても世界2位のようですね。末恐ろしい...

Abdumalik とはこれまでの記事で書いてきたとおり、チェコのトーナメントで1勝1敗。特にBrno Open では、私を破った彼女が優勝したため、リベンジを誓った翌週のPilsen Open での再戦は、自分でも信じられない程に燃えました。(そこできっちり戦績をタイに戻しながら、最終戦でコケるところが私の甘いところです。) 直接対決の結果や大会での順位、そしてレイティングで競るというのは、いかにもライバルのようですね。今後もカザフスタンの女子代表として、そしてこの世代トップクラスのプレーヤーとして、周りのプレーヤーたちをリードしていってほしいと思います。

自分が不調時にライバルが活躍すれば、大きな劣等感を抱いたり、自分のプレーを見失ったりと、悩むことも多いでしょう。しかし、そういった悩みこそ、成長のためには欠かせないものですので、ライバルの存在は時に疎ましくとも、必要なものだと思います。年齢、レイティング、関わり方、どういった形でも良いですので、日本のプレーヤーには良いライバルを見つけて、切磋琢磨していってほしいですね。

ちなみに今回、もう1人紹介したかったプレーヤーがいましたが、良い写真が手元になかったので諦めました(笑) IM ノームを7つもっているプレーヤーだと言えば、誰のことか分かる人は分かるでしょう。その人については、また別の機会に。

2014/02/18

Rubinstein Master - GM Ivan Sokolov -

今年、IM を真剣に目指すことをふまえて白番のオープニングを見直してみたところ、1つ気になる形がありました。それがNimzo-English と呼ばれる以下のポジションです。

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4



全てのNimzo-Indian プレーヤーが、黒でこの形を指すわけではないと思いますが、考え方は分かりやすいと思います。これに対し、1.Nf3 の研究を始めた当初は、4. Qc2 から、a2-a3 を突き、ダブルビショップで勝負をするラインを指すことを決めていました。しかし、これがまったくもって私とマッチせず、ノルウェー、ルーマニア(No.1 GM のNisipeanu!)、スウェーデンのマスターたちに、ことごとく敗れる結果となりました。3試合ぐらいでなにをぐだぐだ言ってるのかと思われるかもしれませんが、昨年のFS GM クラスの最終戦、ドローでIM ノーム確定のゲームで、スウェーデンのFM Westerberg に何もできずに負けたことのショックは非常に大きいものでした。(最終戦、負けたのにIM ノームを獲得できたのは、完全にラッキーでした。)

それから昨年秋にハンガリーを離れるまで、3. Nc3 ではなく、3. g3 と指してCatalan にするアイディアも試してきましたが、3... Bb4 に対する苦手意識を完全に払拭できないのは癪なので、また少しこちらのラインを調べ直しています。そこで私の頭に昨日ぐらいから浮上してきたのは、Nimzo-Indian のメインライン中のメインラインとも呼べる、Rubinstein Variation を白で指すという選択です。

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. e3



この変化は黒で散々アイディアを研究しながらも、白で指すという考えはこれまで欠片も頭にありませんでした。しかし、考えてみればそこまで白でこの変化を嫌がる理由は何一つとしてありません。今年、自分のチェスの幅を広げるためにも、このNimzo-Indian のメインの変化にチャレンジしてみようと思います。1. d4 を指しても良いですし、ラインは限定されますが、1. Nf3 から入るのもありでしょう。


Dutch GM Ivan Sokolov, Chessdom より

そして私が新しいオープニングを調べる際に必ずやるのは、そのラインでのゲームを多く指し、モデルとしやすいGM を探すことです。Rubinstein ならば、Aronian かなと思っていましたが、調べてみると意外とゲームが多くありませんでした。そこで初めて、このGM にスポットを当ててみることにします。それがオランダのNo.3 GM Ivan Sokolov です。

Sokolov は現在、レイティングが2650、世界ランキングは100位をわずかに割る位置です。あまり詳しく知らないプレーヤーも多いかもしれません。私としても、オランダ代表の一人で、かつてカペルで見かけたことがある(しかし、不調でどこのボードで試合をしていたかよくわからなかった...) ぐらいの印象でした。しかし、もう少し深く考えてみれば、かつてKasparov をRubinstein Variation で破ったゲームは有名ですし、彼の著書であるWinning Chess Middlegame は、前半とにかく彼のNimzo-Indian Rubinstein Variation のゲームが多く使われています。そこで今回、Rubinstein Variation を調べるにあたり、最初の師匠と仰ぐべきは彼なのではないかと考えたわけです。(これを伝えるためだけの、長すぎる前置きでしたw) 実際調べてみるとSokolov は白番で100試合近くRubinstein Variation を指しており、勝率もかなり高いです。今日並べたゲームの中で、面白かったゲームを一つ紹介しておきます。

Sokolov, I (GM, NED, 2657) - Maze, S (GM, FRA, 2579)
EU-ch 10th (11)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. e3 O-O 5. a3 Bxc3+ 6. bxc3 d5 7. cxd5 exd5 8. Bd3 c5 9. Ne2 b6 10. O-O Ba6



白の最も危険なピースである白マスビショップを交換することは、黒として最もロジカルなプランだと言えそうです。しかし、それでも白はセンターとキングサイドでアドバンテージを主張します。

11. f3! Re8 12. Ng3 Qc8 13. e4 cxd4 14. cxd4 Bxd3 15. Qxd3 Qa6


クイーンをこのように使い、交換を持ちかけるのが黒のQd8-Qc8 のアイディアです。(こうした少し凝った手の作り方は、日本のプレーヤーに見習ってほしいと思います。) これに対して白は当然、このクイーン交換を避けます。

16. Qe3! Nc6 17. e5 Nd7 18. f4 Qa4 19. Bb2 Na5 20. Qf3 Qb3 21. Bc3!



こうしたポジションで私が難しいと考えるのは、クイーンサイドからのカウンタープレーにいかに対応しつつ、キングサイドでのアタックチャンスを求めるかです。このバランスを間違えると、クイーンサイドを突破され、白は駒か攻撃のチャンスを失うでしょう。

21... Rac8 22. Ne2!


ナイトはf5 に向かうものだとばかり思っていたので、ここで一度守りに使うのが面白いアイディアだと感心しました。このナイトはまた別のルートで攻撃に戻ってきます。

22... Qb5 23. f5 Nf6 24. a4 Qa6 25. Nf4!



a5 を取る選択肢もありそうですが、こうしてd5 の孤立ポーンを攻撃すれば勝負ありです。マテリアルは1ポーンダウンでも、黒のセンターからキングサイドにかけての負担はとても大きいものです。

25... Ne4 26. Nxd5 Nxc3 27. Nxc3 Nb3 28. Rad1 Qa5 29. Ne4 1-0


Sokolov のプレーについては、これから彼の著書も読みつつ、勉強させてもらおうと思います。

2014/02/12

Chess Fundamentals - Lessons from Cuba -


現代のチェス界で南米キューバの有名人と言えば、ランキング1位のLeinier Dominguez Perez でしょう。2700を超えるレイティングを保ち、南米でもNo.1 の実力者である彼は、今年のTata Steel でも好成績を残しました。Aronian にストップをかけることはできませんでしたが、Caruana とのRuy Lopez とのゲームでは、非常に難解なポーンストラクチャーの戦いを制したことが印象的でした。このポーンの形を見て、ゲームを思い出す人も多いかと思います(笑)


Dominguez Perez, L (GM, CUB, 2754) - Caruana, F (GM, ITA, 2782)
76th Tata Steel Masters (4)
Position After 50. Ra5

一方で100年以上昔のチェス界にも、キューバの有名人が存在しました。それが第3代の世界チャンピオン、Jose Raul Capablanca です。(意外と過去の世界チャンピオンがどこの国出身かということは、気にしないチェスプレーヤーも多いかもしれませんね。) これまでCapablanca のチェスについては、ベストゲームのチェックのほか、以前にブログでも紹介したCapablanca's Best Endings を並べたぐらいでしたが、最近はもう少し彼の古いゲームを見るようにしています。2月に入ってからは電車内で、携帯のアプリに移した彼の白番での勝ち試合を片っ端から並べています。


第3代世界チャンピオン、Jose Raul Capablanca, World Chess Hall of Fame より

そして今日、あらためてCapablanca の本が何かないかと探していたところ、Chess Fundamentals という1冊を発掘しました。1921年(!)に本人の手によって書かれた初版が出版され、1994年に現在出回っている一般の版、そして2011年にKindle 版が出版されました。以前内容に目を通した際は、基本的なメイトの形やエンドゲームの解説から書かれていたので初心者向けなのかと思っていましたが、読み進めていくと、とてもためになるゲームも出てきます。細かい解説は省きますが、1つだけ試合を紹介しておきます。

Capablanca, Jose Raul - Blanco, R
Masters, Havana

1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Nd7 5. Nf3 Ngf6 6. Nxf6+ Nxf6 7. Ne5 Bd6 8. Qf3 c6 9. c3 O-O 10. Bg5 Be7 11. Bd3 Ne8 12. Qh3 f5 13. Bxe7 Qxe7 14. O-O Rf6 15. Rfe1 Nd6 16. Re2 Bd7 17. Rae1 Re8 18. c4 Nf7 19. d5!


19... Nxe5 20. Rxe5 g6 21. Qh4 Kg7 22. Qd4 c5 23. Qc3 b6 24. dxe6 Bc8 25. Be2!


25... Bxe6 26. Bf3 Kf7 27. Bd5 Qd6 28. Qe3 Re7 29. Qh6! Kg8 30. h4! a6 31. h5 f4 32. hxg6 hxg6 33. Rxe6 1-0



シンプルながらも、Capablanca の強さが表れており、勉強になるアイディアが詰まっていると思います。難しすぎないところも良いので、どこかのレクチャーで使いましょうかね。Capablanca の話をしだすと、まだまだ記事が長くなりそうなので、今日はこれぐらいにしておきましょう。この本を読み終わってしばらくしてから、また彼について語る機会を設けようと思います。

2014/02/05

Old Soldiers Never Die, They Just Play


Hungarian GM Zoltan Ribli, Chessgames.com より

「老兵は死なず、ただ去るのみ」という言葉を残したのはマッカーサーですが、先月のSax やGashimov のように、老兵であろうとなかろうと、この世を去る人は去ります。一方で老兵でありながらも、現役バリバリでプレーを続け、40歳下の若者たちに一歩も退かないプレーヤーたちも存在します。1月のTata Steel Challengers Class では、オランダのJan Timman (1951年生まれ) が、あわや優勝かという好成績を残したことに驚かされました。他にもスロベニアのAlander Beliavsky (1953年生まれ) などもまだ現役で、スロベニアの国内ランキングで2位、オリンピアード代表メンバーの1人として活躍しています。

もちろんアクティブでなかったり、レイティングを大きく落としているプレーヤーもカウントすれば、存命の有名なGM は多数存在します。定跡の名前にもなっているPal Benko (1928年生まれ) や、もはや生きる伝説とさえ言われる、スイスのVictor Korchnoi (1931年生まれ) などは、特に有名だと思います。Korchnoi がレイティング2500を割り、2012年を最後にプレーしていないことは、長年のファンには残念なことでしょう。

私は今日、多くのプレーヤーをチェックしてみましたが、60歳を過ぎても現役で、なおかつ2500代後半のレイティングを保っているGM というのは、世界でも大変に希少なようです。(Timman やBeliavsky のように、2600台を保つGM は怪物とさえ呼べるかもしれません。) それを知ったうえで、久々にハンガリーの国内ランキングをチェックしていると、意外なプレーヤーが上位を保っていることに気が付きました。それがハンガリーのランキング9位、Zoltan Ribli (1951年生まれ)です。


1978年のハンガリーチーム。左からPortisch, Ribli, Sax, Adorjan, Csom, Vadász です。Chess News より。

Ribli という名前には聞き覚えない人も多いかと思いますが、私は不思議なことに中学生の頃から知っていました。(知ったきっかけは、こちらの負けゲームでしたが) 1970年代には世界のトップクラスにおり、オリンピアード優勝経験もある彼が、世界でもレベルの高いハンガリーで、いまだに代表クラスの力を保っていたのは完全に盲点でした。1年もハンガリーにいてチェスをしていたのに、少し恥ずかしくなります。

Ribli は現在も、ドイツのBundesliga のような有名なトーナメントに参加し、2500台の若いGM たちと互角に渡り合います。最近のゲームにも目を通しましたが、ポジショナルプレーによって得たわずかなアドバンテージを、丁寧に指して勝ちにつなげるKarpov スタイルのプレーは、60歳を過ぎても冴えているようです。同世代のSax が亡くなったことで彼としては複雑だと思いますが、私にとってはまたハンガリーに戻った際に会ってみたいプレーヤーですので、今後も元気にプレーを続けてもらいたいと思います。

Ribli, Z (GM, HUN, 2554) - Tazbir, M (GM, CZE, 2555)
Bundesliga 2012-13 (10)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 d5 4. cxd5 Nxd5 5. Qb3 Nb6 6. d4 Bg7 7. Bf4 O-O 8. Rd1 c6 9. e4 Be6 10. d5 cxd5 11. exd5 Bg4 12. Be2 N8d7 13. h3 Bxf3 14. Bxf3 Rc8 15. O-O Nc5 16. Qb4 Nbd7 17. Rfe1 Re8 18. d6 e6 19. Ne4 Nxe4 20. Bxe4 Qf6 21. Be3 b6 22. Qa4 Red8 23. b4 Qh4 24. Bc6 Ne5 25. Bb5 Nc4 26. d7 Rc7 27. Bxc4 Qxc4 28. Bg5 f6 29. Rc1 1-0



2014/01/29

R.I.P. GM Gyula Sax


Sean にコーチングを行うGM Sax, 2013年9月のケチケメート

今月は私にとって信じられない、悲しいニュースが続きます。私が2012年と2013年の2年間中、ハンガリーに滞在した約1年の期間で、対戦したGM は6人、Sax, Groszpeter, Ilincic, Fogarasi, Seres, Gordon というメンバーです。そのうちの1人、ハンガリーの元代表GM Sax が亡くなったと、今日の昼に複数の友人から情報が届きました。昨日、ブログで久々に彼の名前を出したのは、何か虫の知らせだったのでしょうか。オリンピアードにハンガリー代表として10回参加し、1978年には祖国を世界一に導いた名プレーヤーは、まだ62歳でした。

2週間ほど前に、GM Gashimov が亡くなった時もショックでしたが、彼とは直接面識があったわけではありません。しかし、Sax とは一昨年、ケチケメートで2度対戦し、その後の検討でも丁寧にチェスを教えてもらいました。Leko, Almasi, Polgar といった現代のトップのプレーヤーを除けば、ハンガリーのマスターでは憧れの存在でした。昨年9月にインドネシアのライバルであるSean のコーチとして、ケチケメートで再会した時も、私のことを覚えていてくれて、とても嬉しかったです。60歳を超えても、プレーヤーとして、コーチとして、若い人プレーヤーたちとチェスの交流を続けるというのは、私の思い描く1つの理想の姿です。


私と対戦中のSax, 2012年12月のケチケメート

これからも私がチェスを中心にして生きていく以上、今後も多くのマスターと関わりを持ち、こうした体験も数多くすることになるでしょう。Sax の死については、これからハンガリーの友人たちから詳しい情報が入ると思いますので、なるべく早めに心の整理をつけたいと思います。ハンガリーが生んだ偉大なプレーヤーの、ご冥福をお祈り致します。

Sax, G (GM, HUN) - Sveshnikov, E (GM, LAT)
Hastings 1977 (4)

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 Nf6 4. Nc3 Nd4 5. e5 Nxb5 6. Nxb5 Nd5 7. O-O a6 8. c4 Nb6 9. Nc3 d5 10. d4 e6 11. Bg5 Qd7 12. cxd5 Nxd5 13. Nxd5 Qxd5 14. dxc5 Bxc5 15. Qc2 O-O 16. Rfd1 Qc6 17. Rac1 Ba7 18. Qd2 Qb6 19. Bf6 h6 20. Qf4 Qxb2 21. Qg4 Qxf2+ 22. Kh1 g6 23. Qb4!!


23... Bb6 24. Rd2 Qe3 25. Rc3 a5 26. Qxf8+ Kxf8 27. Rxe3 1-0


Gyula Sax, Chessgames
Chess Olympiad 1978, OlyimpBase

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