ラベル 合宿 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 合宿 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025/08/02

麻布学園チェス部夏合宿2025

7/30-31の2日間、山梨県の石和温泉で行われた麻布チェス部の夏合宿に指導でお邪魔させていただきました。山梨県の合宿地としては、これまで河口湖と三つ峠を訪れたことがありましたが、石和温泉は初めてです。新宿や八王子からは特急あずさを活用しても来ることができますが、私は京王線で高尾乗り換え、そこから中央線でのんびりやってきました。去年はあずさを使わずに長野の松本まで行ったので、その途中の石和温泉であれば、さほど遠くは感じません。
午前中に石和温泉に到着し、駅前の散策と昼食後に徒歩で宿に向かうつもりでしたが、ちょうど駅前で到着したばかりに現役生たちと合流しました。彼らは送迎のバスを頼んでいたため、ありがたく便乗させてもらい、合宿所の宿へと向かいます。後輩たちの昼食が済んでから、初日の指導がいよいよ始まります。
Fernandez Coria - Capablanca
Buenos Aires 1914
Position after 16.Qd2

最初は私の講座ではお馴染みになりつつある、Capablancaが指したゲームの局面から。ここでの黒番のタクティクスを紹介するだけなら簡単なのですが、ビショップとナイトの特性、どう組み合わせて使うか、2ピースvs.ルークなどを丁寧に説明していると、少し手間がかかります。Capablancaが指したベストの手は16...Bh3! ですが、16...Nxg2 だとどうなるかなど、検討の甲斐があるアイディアは豊富にあり、現役生たちには2人1組になって考えてもらいました。
Alexey Selezniev
Tidskrift for Schack, Dec 1921
White to move and win

可能なアイディアはなるべく全て考えるというテーマで、こちらの局面も出題しました。こちらはなかなか正解にたどり着かず、現役生たちは苦戦しましたね。こちらの問題をご存じないかたは是非チャレンジしてみてください。
初日の夜は同時対局で、春合宿の9面指しから17面指しと倍近くになり、とにかく大変でした。大阪の万博ではJuditが16面指して全勝だったため、それを超える17勝を目指しましたが、結果は部長の大沼くんとドローで、他勝ちの16勝1ドローでした。ある意味、Juditと同じですね笑。同時対局の中で唯一、危ないと思った試合をご紹介します。

Kojima - Kumasawa
Azabu Summer Chess Camp 2025 Simul

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. g3 Bg7 4. Bg2 c5 5. Nf3 O-O 6. O-O cxd4 7. Nxd4 Nc6 8. Nc2 b6 9. Nc3 Ba6 10. b3 Rc8 11. Bb2 d6 12. Qd2 Qc7 13. Ne3 e6 14. Rac1 Ne5 15. h3 Rfd8 16. f4 Nc6?!

翌日の振り返りで16...Ned7 のほうが良いことを指摘しましたが、熊沢くんは自分でも解析で見つけていたようです。部員たちはレベルも熱意もまちまちではありますが、自分で試合を調べたり、質問を積極的に持ってくる子も予想より多くて感心しました。

17. Ncd5! exd5 18. cxd5 Qe7 19. Rxc6


典型的なナイトのサクリファイスで優位を築いたのは良かったのですが、ここは19. Bxf6! Qxf6 20. dxc6 Qd4 21. Rfd1+- のほうが本譜のNf6-Ne4に悩まされることが無く、良かったと思います。黒マスを自分から手放すのは少し抵抗がありましたが、黒からの反撃は限定的で問題ありませんでした。

19... Bb7 20. Rxc8 Bxc8 21. Rc1?! Ne4!

この手が来ることは分かっていたのですが、直前にどう対応すべきか自信が持てませんでした。21.Bd4!? くらいでビショップの位置をあらかじめ改善しておき、交換するとしてもb2でない場所を選ぶべきだったかもしれません。

22. Bxe4 Bxb2!


先に黒マスビショップ交換になり、クイーンがナイトの守りから引き離されてしまうことを失念していました。これでh3が落ちることが決まり、かなり焦りながら反撃しやすい形を模索します。

23. Qxb2 Qxe4 24. Kf2 Bxh3?!

試合中に気にしていたのは24... Re8! として先にeファイルからの反撃を強化しておく手で、これならば白クイーンはナイトの守りから離れられないため、本譜のa1-h8ダイアゴナルを抑える反撃は作れず、キングが不安定な白はやや劣勢かと思っていました。しかし、1ポーンダウンの黒が早くポーンを取り返したいと焦る気持ちは理解できます。

25. Qc2 Qb4 26. Qc3 Qa3? 27. g4!


黒にあまり良いディフェンスが無いことを確認し、このポーン突きを実行しました。h3に跳びこんだビショップの帰り道を消し、Rd8-Rc8のような反撃もできないようにしておきます。さらにここでRc1-Rh1がビショップトラップの狙いになることが、あらかじめKg1-Kf2と寄っておいたアイディアでもありました。

27... h5 28. Rh1!

g4を取る手に対しても、Ne3-Ng4ができ、h8でのメイトが狙えるためにビショップは助かりません。これで勝利を確信しましたが、途中かなりひやっとするところのあるゲームでした。

28... Qc5 29. Qxc5 dxc5 30. Rxh3 hxg4 31. Nxg4 Rxd5 32. Nf6+ Kg7 33. Nxd5 f5 34. Kf3 Kf7 35. e4 Ke6 36. Rh7 1-0


合宿2日目は午前中に17人全員に振り返りとアドバイスを行い、私の指導は全て終了しました。今年は久々の春夏両合宿にお邪魔しましたが、現役時代を思いしてやはり合宿は良いですね。呼んでくれた現役部員たちだけでなく、指導内容をメモして渡してくださったり、写真を提供してくださった顧問の先生2人にも深く感謝いたします。
現役生たちは3泊4日の合宿ですが、私の指導は最初の1泊2日だけですので、1人宿を離れて帰路につきます。駅から少し離れた場所に、リニューアルオープンしたばかりの甲斐の駅いさわがあり、寄ってみることに。動かざること山の如しを体現するような、巨大な武田信玄の像がありました。
山梨県は宝石や天然石加工の技術に優れてるそうで、県内で採掘ができなくなった現在でも、海外から素材を輸入して加工をしているそうです。言われてみれば、河口湖近辺にも天然石を扱うお店や宝石の美術館がありました。こちらは肉に見える石で、奥の焼き鳥か手前の豚肉のどちらかが天然の石です。どちらか分かりますか?

2025/04/30

麻布学園チェス部春合宿2025

更新が遅くなってしまいましたが、今月頭に山梨県の河口湖で行われた麻布チェス部の春合宿に、1年ぶりに1泊2日で指導に行ってきました。昨年は福島の会津若松での春合宿であったため、今年は少し近場になっています。河口湖は桜まつりがちょうど始まった頃でしたが、前日に降った雪が残っていました。自分が現役であった20数年前から、初合宿で雪を見るのは初めてのことです。
1日目は昼前に合宿所に到着。現役生たちと一緒にお弁当を食べてから、初日のプラグラムに入ります。最初の取り組んだのは、チェスのセオリーについての知識の確認と共有です。部員と輪になって最初の人がセオリーを言い、次の人がその解説をし、さらに次の人がセオリーの当てはまらない局面の例を出します。例えば「ポーンはセンターに向かって取る」というセオリーが挙がれば、次の人はそれがなぜかを解説し、次の人はそれが当てはまらない例を理由とともに挙げます。現役生の参加者は8名で、学年やレベルもバラバラなので、これをやりながら全員のレベルや考えを掴んでいきました。
単純ですが、Ruy Lopez Exchangeのこちらの局面では、bポーンでピースを取り返してポーンをセンターに寄せるよりも、dポーンでピースを取り返してc8ビショップのダイアゴナルと、dファイルを開いたほうが早いピースの展開に繋がるため良いでしょう。セオリーを挙げることとその解説することよりも、当てはまらない例を出すことのほうが難易度が高いように思えます。チェスへの理解と発想力が求められますね。私にも無い発想を挙げる現役生もいたので、とても面白かったです。他には「自分の手番のほうが基本的に良い」というセオリーに対しては、私から以下の局面を出しました。
こちらは2人1組になってもらい、実際に指して結果がどうなるかを確認してもらいます。もちろん最初から正確には指せないため、白が勝った、黒が勝ったを繰り返しながら、最終的にこの局面は手番側が負けであるという結論にたどり着きます。ツークツワンクの概念を知らない現役生もいるので、こうした体験型でチェスについて理解を深めてもらうほうが楽しめると考えました。
セオリーを言い合うプログラムが終わった後は、Fischer - Reshevsky、Tal - Forbis、Fischer - Petrosian といった名局を並べ、先に確認しておいたセオリーがどのように登場するかや、その重要性を確認しました。これだけでも5時間くらいかかり、夕食の後は現役生全員との同時対局です。

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Nxe4 6. d4 b5 7. Bb3 exd4 8. Re1 d5

Ruy Lopezで始めてたどり着いたこの局面で、ベストムーブが9. Nc3! であることは知りませんでした。Max Langeでも登場するような手ですが、d5が落ちた際にc6のナイト、a8のルークまでターゲットになるのがポイントで、黒はこのナイトを取ることができません。実際の試合は...

9. Nxd4 Nxd4 10. Qxd4 Be6 11. Bxd5!? Bxd5 12. Nc3


このように進んで無理やりポーンを取り返しましたが、あまり良くない局面からなんとかエンドゲームでひっくり返して勝ちました。もう1つ印象的だったゲームは以下のものです。

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6 6. Bc4 e6 7. Bb3 Be7 8. Bg5 Qc7 9. Qf3 Nbd7 10. O-O-O b5 11. Rhe1 Bb7?

自然な手に見えますが、Sozinで典型的なタクティクスが決まります。代わりに11... 0-0 ならば黒は手堅く指せるでしょう。

12. Bxe6! O-O


12... fxe6 13. Nxe6 Qb6 14. Nxg7+ Kf8 15. Nf5+- ならば、3ポーンvs.ビショップですが、白のナイトの強さと黒キングの不安定さで白の勝勢です。

13. Bxd7 Qxd7 14. Nf5 Rad8 15. Qg3 Qe6 16. Nxe7+ Qxe7 17. Nd5 Qe6 18. Bxf6 1-0

危ないゲームもありましたが、同時対局は8戦全勝でした。2日目の午前は8試合全てを振り返りながら、各々にアドバイスをしました。私の合宿での指導で、現役生たちのレベルがすぐに上がるわけではないですが、意識すべきポイントを伝えたり、今までにない視点を与えることはできたのではないかと思います。新年度に入って新入生も入部したであろうチェス部が、今後も活動を続けていくことを願っています。
河口湖は合宿地の定番で、私も何度も足を運んでいます。今年はあいにくの雨でしたが、解散後から帰りのバスの時間まで湖畔の散策を楽しむことができました。富士五湖は河口湖しか訪れた経験がありませんが、いずれ山中湖にも行ってみたいですね。

2024/04/05

麻布学園チェス部春合宿2024

今週の火曜から水曜にかけ、会津若松で行われていた麻布学園チェス部の春合宿に、指導者として顔を出してきました。コロナ禍で合宿を開催できなかった期間も長かったですが、昨年の春から私も再度合宿に呼ばれるようになっています。ちなみに、現役時代から現在にかけてチェス部の合宿には数えきれないほど参加してきましたが、福島県の会津若松は最も合宿地として遠い場所でした。
後輩たちは月曜日から会津若松に来ていたため、1日遅れで合流した私は早速初日のプログラムを始めます。今回考えてきたのは試合形式で15手目まで指し、それを観察して何かしらの意見、質問を出してもらうというものです。このプログラムの狙いは部員たちのレベルを把握すること、スムーズにコミュニケーションを取れるようになること、自分の知らないチェスのアイディアを学んでもらうことなどです。例えば1局目は私が白を持ち、以下のようなゲームの進行になりました。

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6 6. Be2 e5 7. Nf3 Be7 8. O-O O-O 9. Bg5 h6 10. Bxf6 Bxf6 11. Nd5 Be6 12. Bc4 Nc6 13. a4 Rc8 14. Qe2 Bxd5 15. Bxd5 Qb6

次に16.c3と指すつもりの局面で15手目を迎え、ここでストップです。これを初手から並べなおしながら、意見と質問を募集しました。部員たちからの質問は例えば以下のようなものです。

・13. a4と指したのはなぜか?
・14. Qe2と指したのはなぜか
・Bf1-Be2-Bc4と指し直すくらいなら、最初からBf1-Bc4と指せば良かったのではなかったか。

どれも良いですが中学1年生からでた最後の意見は、部員間での議論を盛り上げるという点で素晴らしかったですね。オープニングやチェスの理論をしっかり学ぶと、逆にこうした意見が出にくくなってしまいます。チェスを始めたばかりの後輩がこのような意見を持ち、それを素直に場に出せることはとても良いことです。こうした意見や質問には部員に先に考え、回答してもらいつつ、ポーンの特性やマスのコントロールについての説明をしました。さらにこの後、3人グループを3つ作り、2人で対局、残った1人が意見と質問をして、3人で考察という形式にしました。
初日の夕飯後は恒例の同時対局です。今回の合宿の現役部員参加数は9名だったため、以前よりも少なく比較的多面指しも楽でした。とは言え、簡単に土俵を割る部員もおらず、多少苦戦するゲームもありました。
翌朝は前日の同時対局の内容を踏まえ、ポイントになった局面や考え方を説明しました。単に最初にポーンを伸ばすだけではない、ピースも含めたセンターのコントロールの重要性というのものは、何人かの部員に欠けている意識だったので、そこを最も強調しました。最後に余った時間でブリッツを2局ほど指しましたが、前夜の同時対局よりも指し方、考え方の改善が見られる部員が多く、少し安心しました。後はもっとたくさん試合経験を積んで、学んだことを定着させるのが大切ですね。
今回の合宿では初日、2日目ともにいつもよりも指導に割ける時間が少なく、伝えられることも限られていました。それでも後輩たちにとって良い学び、良い刺激になったのであれば幸いです。宿泊先であるホテルを離れた後は、新選組所縁の地や鶴ヶ城(会津若松城) を見てから郡山に移動。そちらでもう1泊してから東京への帰路につきました。また次の合宿で指導できる機会を楽しみにしています。

2023/04/04

麻布学園チェス部春合宿2023

報告が遅くなりましたが、先月末に母校、麻布学園のチェス部春合宿にコーチとして参加してきました。2020年からの新型コロナ流行により、春合宿の開催は4年ぶりのこと。当然ながら私の参加も4年ぶりとなります。懐かしい気持ちで、2018年の夏合宿と同じ、山梨県の河口湖駅に降り立ちました。帰りはバスですが、行きは京王線、JR、富士急行線などを乗り継いで昼前に到着しました。
合宿所で前日から来ていたチェス部の現役部員たちと合流し、昼食後からチェスを始めます。初めて合宿に参加するメンバーもいる中で、久々の合宿メニューをどうするか悩みましたが、最初は「チェスは○○ゲーム」 というテーマで、○○に入るものを自由に考えてもらいました。(相手キングを追い詰める、だけは一番出やすそうなので無しにします) チェスがどんなゲームかまずは皆でイメージし、様々なアイディアを出しあうことで、その後の講座を進めやすくする狙いでしたが、「チェスは戦略立てるゲーム」 「チェスは違う特性の駒を使うゲーム」 「チェスは駒の連携が大事なゲーム」など様々な意見を出してくれて、私自身このミニゲームを楽しめました。

その後、Nimzowitsch の試合を解説し、途中途中でどう指すか質問しながら、チェスの局面の考え方、手の作り方などを説明していきました。時間が少し余ったときには、有名なスタディを2人1組で解いてもらいます。先輩、後輩が力を合わせながら、ああでもない、こうでもないとアイディアを出し合うのは、過去の合宿でもOBたちが繰り返してきたことです。夕飯前には私の講座を中断し、12人の部員同士で試合をする時間設けます。私は全6試合を見回りましたが、ちょっとした面白いポジションが現れました。
Position after 7. Bg5

白がf2-f3 と突いたのがすでに変ですが、それとBc1-Bg5 の悪さを咎めるアイディアが分かるでしょうか?

7... Nxe4! 8. Bxd8??


8. fxe4 Qxg5 9. Nf3 Qd8-+ と進めてもポーンを失った白は敗勢ですが、粘るならばメイトされる本譜ではなく、こちらを選ばなくてはいけません。

8... Bf2+ 0-1


以下、9. Ke2 Nd4# がぴったりチェックメイトになっています。色が逆ですが、Legal's Mate と呼ばれる200年以上前からあるメイトの1つです。実戦で目の当たりにするとは思いませんでした。黒もよく見逃しませんでしたね。
初日の夜はもう1つNimzowitsch の試合を見てからメニューは終了。2日目を迎えます。いつもはのんびり起きて朝食から合流していましたが、この日は集合時間を確認しておらず、早めに外に出て部員たちを探すと、ちょうどチェス部合宿伝統のゲーム、灯台守をやっているところでした。このゲームを簡単に説明すると、鬼を中心において円形で行う、だるまさんがころんだです。鬼は動いた人の名前を呼ばなければいけないため、部員同士、先輩後輩同士が顔と名前を一致させるのにもってこいのゲームとして、私が現役当初からありました。
また到着初日は曇り空で気づきませんでしたが、合宿所のすぐ裏には富士山が顔を覗かせていました。凄い迫力!

その後、2日目の午前中は恒例の同時対局を行いました。私にとってもかなり久々の対面での多面指しでしたが、なんとか12面全てを勝ち切って、コーチといての面目を保ちました。今回はそこまで部員数が多くなかったことも要因だと思います。過去の合宿では、歴代部長に結構ポイントを落としており、この合宿での同時対局は私にとってハードなメニューです。2日間で教えた内容をすぐに実戦に活かすのは難しいですが、「説明されたのはこういうことだったのか」 と腑に落ちるようなゲームがあったならば幸いです。

次はまたスケジュールが合えば、8月の夏合宿にお邪魔させていただきたいと思います。新年度を迎え、新入部員を増やして賑やかなチェス部になっていくことを願っています。また大会でも後輩たちが活躍するのを楽しみにしています!

2019/08/31

麻布学園チェス部夏合宿2019


今年も母校麻布学園のチェス部夏合宿に、コーチとしてお邪魔させていただきました。今回の合宿地は茨城県の潮来(いたこ) です。合宿の開催地として連絡を貰うまで、読み方も知りませんでした。都内からの移動は高速バスと電車がありますが、便の本数と所要時間からバスのほうが便利だと言えます。東京駅の八重洲口から高速バスに乗り、28日朝に潮来へと向かいました。

潮来で有名な場所と言えば、JR 潮来駅すぐ近くのあやめ園でしょう。5-6月のあやめまつりシーズンには、園内にあやめの花が咲き誇り、多くの観光客を楽しませるそうです。あいにく観光シーズンは外れていましたが、合宿所のホテルに到着前にあやめ園を少し散策することができました。あやめ園の脇を流れる川には時期によって遊覧船が出ますし、少し足を延ばせば、日本第二の大きさを誇る湖、霞ケ浦もあるので、水辺が好きな人にとっては色々と楽しめる場所だと思います。


今年の夏合宿は新入部員の中1が9人参加と、ここ数年でも比較的多く、全体でも久々に30人を超える大所帯でした。そこでいつもと違い、最初は中1を中心とした低学年向けの基礎レクチャーを行い、後で上級生を合流させて合同のレクチャーを行いました。基礎の内容は、ポーンストラクチャーから考えるポーンや他のピースの働き、手の作り方などです。


Chess Composition by Pal Benko
White to move and Mate in three

上級生を入れてからのレクチャーはゲームを並べたり、エンドゲームをやったりと色々ですが、最初のウォームアップはこちら。合宿2日前に残念ながら亡くなったPal Benko の有名な作品です。白番で3手メイト、ご存じない方は是非チャレンジしてみてください。当てずっぽうだと時間をかけてもなかなか解けないので、しっかりと最終図を推測すること、そこに至る方針を絞ることが大切です。白マス黒マス両方のコントロールが綺麗な問題ですね。


Botvinnik, M - Donner, J
Amsterdam 1963
White to move

並べたゲームのうちの1つはこちら。有名なゲームではありませんが、各所にBotvinnik の素晴らしいアイディアが登場します。ゲームのテーマは一応マスのコントロールのつもりでしたが、序盤から細かく説明していくと1局終わるので1時間以上かかりますね。初日は昼食と夕食の間、そして夕食後併せて6時間半くらいレクチャーを行いました。


夜のレクチャー後、自主的にブリッツ大会を始める中学生たち。本当にタフです。


一夜明けた翌日は恒例の同時対局です。合宿によっては初日の夜にやることもありますが、それだと私がばて気味なので2日目のほうが私としてはありがたいです(笑) 今回は30面だと多すぎて午前中に終わるかわからないため、低学年はミスの出にくいようにペアを組んでもらい、22面まで減らしました。松山くん、小柴くん、牛山くんには少し無理なプレーをして敗れましたが、他の19面は勝ち、19勝3敗でした。この夏合宿で部長の松山くんを含め、高2は引退して高1が最高学年になりますが、高1以下の部員たちも皆、力をつけてきていると思います。9月のチーム選手権は私も参加しますので、こちらの大会でも後輩がどういったプレーをするか、楽しみにしています。

2019/04/03

麻布学園チェス部春合宿2019


今週は月曜、火曜の2日間、1泊2日で麻布学園チェス部の合宿にコーチとして参加してきました。今回の初合宿の場所は、千葉県の白子町です。東京駅から高速バスで2時間弱、終点の白子中里から合宿地の宿はすぐでした。前回の河口湖もそうでしたが、新宿や東京からバス一本で行ける場所はありがたいですね。

合宿の参加人数は、中1から高1までの4学年で15人でした。(私が去る火曜の午後に2人合流して増えました。) 13時から途中15分の休憩を挟み、19時まではレクチャーです。最近の短手数のゲームから、タクティクス、ポジショナルプレーをテーマにしたゲーム、エンドゲームのスタディまで、幅広くポジションやゲームを紹介しました。これもいつも合宿の記事では書いていることですが、私のレクチャーが初体験の子にとっては、長時間の集中的なチェスへの取り込みは新鮮で、また大変でもあると思います。様々なポジションや考え方を見る中で、今の自分必要なものを吸収していってもらえればと思います。


夕飯後の午後20時半からは、90分+1手30秒の持ち時間あり15面指しがスタートします。前回の夏合宿では同時対局を2日目に持ってきましたが、今回はうっかり初日のレクチャー後、そして持ち時間ありでOKを出してしまいました。これがけっこう条件が厳しく、結果は11勝4敗(2つ時間落ち)という過去の同時対局でも最もポイントを落とすことになりました。その中でも、先日の東京チェス選手権で好成績を残した仲佐くんは、一瞬のスキを突いて良いプレーをしました。


Kojima, S - Nakasa, Y
Black to move

直前で指した22. Qd2? がひどい手で、黒はエクスチェンジダウンながら一気にアタックを決めます。

22... Ng4! 23. g3 d4!?


ここは23... Qh5! 24. h4 Rxe3!!-+ という手も美しい決め手になります。

24. exd4 Bxd4 25. Rce1


夜布団に入ってから、エクスチェンジを返すつもりでもう1つのルークを回し、f1 のマスを空けておくべきだったかと思いましたが、それにも黒には妙手があって勝ちとなります。25. Rfe1 Nxh2!!


Analysis Diagram

26. Rxe5 Nf3+ 27. Kg2 Nxd2+-+ Qe5-Qh5 がメイトになるため、26手目でナイトを取ることはできません。黒のダブルビショップは警戒しているつもりでしたが、d5-d4 からどちらのラインも開かれ、それを活用された形となります。

25... Bxf2+ 0-1



エクスチェンジを返すしかなく、h2 も取られて厳しくなるため、ここでリザインしました。予想外だったのは、25. Qxf2 Nxf2 26. Rxe5 Nh3# がぴったりメイトになることです。ちなみに同じメイトのアイディアをいかし、25... Nxf2! 26. Qxf2 Bxf2+ 27. Rxf2 (27. Kxf2 Qc5+ 28. Re3 Qxe3#) 27... Qxe1+-+ がさらに正確でしたが、いずれにしろ白は苦しい駒損です。夕飯前にMacShane のゲームで、黒のNf6-Ng4 が上手くアタックにいきる例を紹介しましたが、それをしっかり覚えていましたね。同時対局でも負けは悔しいですが、その反面後輩の成長は嬉しいものです。

翌日も午前中3時間ほどレクチャーをして、この合宿での指導を全て終えました。子供たちの指摘する手の中には私が気付いていなかったものもあり、毎回自分自身が勉強させてもらうことが多々あります。また夏の合宿にもお邪魔させてもらい、この麻布チェス部でのコーチングは続けていきたいですね。私は火曜の午後で白子を後にしましたが、現役部員たちは明日まで合宿を続ける予定です。最後まで気を抜かず、頑張ってください。


2018/08/31

麻布学園チェス部夏合宿 2018


3月の春合宿に続き、麻布学園チェス部の夏合宿で、コーチとして指導をしてきました。今回の合宿地は山梨県の河口湖。中学高校の部活動の合宿や、大学のサークル合宿でも人気の地です。私が河口湖を訪れるのは、数年前の暁星の夏合宿以来で、とても懐かしい気持ちになりました。


河口湖は東側の温泉街が人気エリアですが、今回の宿は西側にあるホテルです。近年の合宿としてはかなり多い、22人の参加者がありました。(春は13人) 中学1年生も複数入部し、初の合宿にも参加しており、OB としては嬉しい限りです。

初日はレクチャーがメインとなり、昼食後から夕飯までみっちりと6時間ほどチェスに取り組みます。前半では発想力を試す課題やチェスの知識を問う質問に答えさせ、その後で実際のゲームを見せて、どのような考え方、ピースの働きが登場するかを確認します。最近見つけて面白かったポジションは、以下のものでしょうか。


Debray, C - Kvashyna, T
Syre Memorial Open 2013 (3)
Black to move

ピースを捨てた直のこの局面、黒が正しい手を指せば勝ちですが、それを見つけられなければピースアップで白勝ちになります。実際のゲームでは、黒は正解を見つけられずに負け... 自分がこうなったらと思うと悔しいですね。


手を考えてもらっている間、22人11ボードを回って生徒の意見に耳を傾けます。「これでどうか」「それに対して、こうならどうするか」「そうかー」とみんな真剣です。上級生と下級生では当然レベルに差はありますが、完全に下に合わせてしまうと上の子たちは退屈です。上手く課題のレベルを調整しながら、難しくとも面白いと感じてもらえる局面、ゲームはどんなものか、私も毎回の悩みですね。

夕飯後は恒例の同時対局を翌日に回し、ブリッツにしました。私と指したい人はどうぞ、と声をかけたところ、次々と挑戦者が現れ1時間半はブリッツタイムが続きました。いつものこの時間は同時対局をしていることを考えれば、私の負担は多少軽いですが、河口湖までの移動もあって終わる頃にはへとへとです。


2日目は私にとっても人生最多となる22面同時対局です。午前中の3時間ほどしか時間がないため、事前に相談して通常の同時対局ではなく、22個の対局時計を使ったクロックサイマルにすることにしました。私が回ってきたら1手指すスタイルの同時対局では、おそらく22面で3時間半~4時間ほどかかりますが、60分+1手30秒の持ち時間であれば、おそらく3時間以内に全て決着はつくと判断しました。しかし、普通はこれほど多い同時対局で時計を使うことはありえないですね(笑)


Kojima, S - Nagataki, K
Azabu Summer 2018 Clock Simul
Position After 33. Qxh6

長瀧くんとのゲームはクイーンを取って勝勢になったはずが、ちょっとした緩手で黒に反撃を許してしまい、形勢をおかしくしてしまいました。

33... Rb8!


ルークがクイーンサイドにまわる手を完全に見落としていて、ここからかなり焦ります。ルークのバックランクの侵入を許すことになれば、g2 のポーンが突如として脅威になって黒勝ちになるでしょう。

34. Bd1 Rb1 35. Qd2 Nd5! 36. f3??



ここが一番難しい局面で、他のゲームも回らなければいけない状況では正解を見つけることができませんでした。36. Qg5+! Ke6 37. Kh2!! Nxc3 (37... Rxd1?? 38. Qg4++-) 38. Bg4+ f5 39 Bxf5+! Bxf5 40. Kxg2= こうしてビショップを捨ててもg2 のポーンを消せば、白はドローに持ち込めるというのがコンピュータ評価です。

36... Bxf3 37. Qg5+ f6??


しかし、ここで黒に痛恨のミスが出てゲームは終わりました。37... Kf8 38. Qd8+ Kg7 39. Qg5+= ならばドロー。しかし、37... Ke6!-+ ならば白クイーンに有効なチェックは無く、Nd5-Nxc3 があるため、白はビショップを守ることができません。

38. Qg7+ Kd8 39. Qh8+ 1-0



長瀧くんはh7 でのチェックから、ルークが取られてしまうことを見落としていました。ビショップがe4 にいる時点ではルークは守られていたため、そのままだと勘違いしてしまったのでしょう。完全に拾わせてもらったゲームでした。

同時対局は21勝1敗で、新部長の松山くんにだけ敗れました。このゲームは30分私が持ち時間を残していましたが、簡単なタクティクスの見落としでどうしようもない駒損となり、リザインです。クロックサイマルの難しい点として気付いたことですが、通常の試合であれば30分残り時間があれば10分でも、15分でもベストの手を考えられますが、この形式ではそうしてると他のゲームの持ち時間も考えた分だけ減り、どこも時間切迫となってしまいます。どのボードのどこで時間を使い考えるか、もしくは指さずに考えたままで他のボードに移るか、なかなか判断が難しいことを実感しました。それでも良い経験でしたので、また機会があればやってみたいですね。


2日目の昼食後、私は後輩たちに別れを告げて宿を後にしました。移動先は駅ではなく、河口湖の北側に位置する大石公園です。ここでは季節の草花と、目の前の雄大な河口湖を楽しむことができます。この日も海外からの多くの観光客でにぎわっていました。


ちなみに私の目的は大石公園に隣接するハナテラスという場所です。ここには河口湖のお土産を売るショップや、山梨の特産品をメインとしたカフェが集まっています。山梨にせっかく来たので桃か葡萄を食べたいと思い、葡萄屋 Kofu の葡萄ソフトクリームをいただいたのでした。見た目の色の通りの味の濃さで、足を運んだ甲斐がありました!


大石公園を後にしてからは、猫のダヤン作品が展示されている木の花美術館までバスで移動し、そこからオルゴール美術館、河口湖美術館と湖畔に沿って歩き、河口湖大橋も渡って駅まで戻りました。このルートは数年前の合宿でも歩いており、そこを久々に歩きたかったことも、この帰り道を選んだ理由でした。どこかでも書いたかもしれませんが、私は海や川、湖などの水辺でゆっくりするのが好きなようです。

後輩たちの合宿は金曜日が最終日でしょうかね。これが最初、もしくは現役最後の合宿になるメンバーもいることでしょう。皆さん、最後まで楽しんだくださいね。また来年の春合宿でもよろしくお願いします。

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.