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2021/12/21

Vezerkepzo GM December 2021 R6

R6 の相手であるGM Varga は、過去に3回対戦していずれもドローになっています。今大会は初日にいきなりNitish を黒で破り、1つ勝ち越し状態でここまできています。そんな彼を相手に9年ぶりに白を引けましたので、思い切って勝負にいきます。

Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Varga, Z (GM, HUN, 2387)
Vezerkepzo GM December 2021 (6)

1. d4 d5 2. c4 dxc4 3. e3 b5?!

Varga のいくつかあるQueen's Gambit Accepted のレパートリーを調べていましたが、これは予想外でした。3... Nf6 4. Bxc4 e6 5. Nf3 a6 6. 0-0 b5 7. Bd3 Bb7 8. a4! b4 9. Nbd2 Be7 10. Qe2 の変化を調べていました。後ほど説明しますが、本譜はこれに比べて白が得をしている点があります。

4. a4 b4


4... c6? 5. axb5 cxb5?? 6. Qf3+- これでa8 のルークが落ちるため、黒はc4 のポーンを守り切ることができないというのが、多くのQGA の本に載っている有名なアイディアです。

5. Bxc4 Bb7 6. Nf3 e6 7. O-O Nf6 8. Nbd2 Be7 9. a5!?

次にa5-a6 を見せておくと同時に、黒のa7-a6 を誘い、a6 のポーンを固定することで長期的な弱点にします。

9... a6 10. Qe2 O-O 11. e4 c5 12. dxc5 Nbd7 13. e5 Nd5 14. Nb3


白はセンターポーンを伸ばし、将来的なキングサイドへのアタックチャンスをもくろみます。c5 のポーンは返してよいのですが、黒がビショップでこれを取るとg5 の利きが無くなり、Nf3-Ng5 などのアイディアが使いやすくなります。また上記の変化と違い、白のc4 のビショップはポーンにアタックされなかったため、Bc4-Bd3 のタイミング(指すか指さないかも含め)を白が決めることができるのは大きなメリットです。

14... Qc7 15. Bd3! Rfd8 16. Bd2 Nxc5 17. Nxc5 Qxc5 18. Rfc1 Qa7 19. Rc4!

Varga はc5 をクイーンで取り返してきましたが、その間に白はルークをcファイルから4段目に振り、キングサイドへのアタックに参加しやすくします。

19... Rd7 20. Ng5! h6 21. Nxf7!


これが決まると読んでのNf3-Ng5 でした。無防備になった黒キングに襲い掛かるピースはすでに用意できています。

21... Kxf7 22. Qh5+ Kf8 23. Bxh6! Bc5 24. Bg5!

黒が空けたe7 のマスにキングを逃げられないようにしつつ、hファイルを開いてクイーンを突入できるようにしておきます。次にBd3-Bg6 が入れば黒キングは完全に逃げ場が無くなり、Qh5-Qh8 がメイトスレットになります。

24... Bxf2+


試合後、Varga になぜ24... Bd4 を指さなかったのか聞きましたが、それはメイトされるとの回答でした。試合中すぐ気づけてなかったのですが、25. Bg6! Ne7 26. Bxe7+! Kxe7 27. Qh4+ Kf8 28. Qh8+ Ke7 29. Qxg7+ Kd8 30. Qf8# で単純にメイトでした。

25. Kh1 Ne7 26. Rf4+ Nf5 27. Bxf5 1-0

Varga はここで試合を諦めました。27... exf5 28. e6!? からルークをアタックしつつf7 を抑えてメイトスレットを作れば勝ちだと思っていましたが、28. Qh7! もあったようです。いずれにせよ、白の必勝形となり、今回の遠征で初白星をつかむことができました。

12/15 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Nitish, B (FM, IND, 2464) 1/2-1/2
12/16 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Girinath, P.D.S (IM, IND, 2335) 0-1
12/17 Ajay, K (IND, 2401) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1-0
12/18 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Avinash, R (IND, 2391) 1/2-1/2
12/19 Aditya, V P (IND, 2281) - Kojima, S (IM, JPN, 2392) 1-0
12/20 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Varga, Z (GM, HUN, 2387) 1-0
12/21 Pasti, A (FM, HUN, 2377) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)
12/22 Kojima, S (IM, JPN, 2392) - Mirzoev, A (GM, AZE, 2420)
12/23 Nagy, G (GM, HUN, 2527) - Kojima, S (IM, JPN, 2392)

Vezerkepzo GM December 2021 Standings

+3 Nagy
+1 Nitish、Mirzoev
+-0 Avinash、Varga、Girinath
-1 Ajay、Pasti、Aditya
-2 Kojima

今大会もNagy が独走で3つ勝ち越しになりました。私もようやく星に恵まれましたので、次のPasti Aron との試合も頑張ってきます!
この日は少し気分を変え、試合前の昼食は外で食べることにしました。ハンガリー料理が手頃な値段で食べられるFrici Papa は、長くブダペストで愛されるお店です。アンダンテに宿泊していた時代も、お勧めの店ということで何度か足を運びました。この日、揚げ物×揚げ物にしてちょっと失敗だったかもしれません。
対岸中央に国会議事堂が見えます。

試合直前も漁夫の砦から写真撮影などでリラックスしていました。 3つ負け越しまできてしまったのである意味開き直って試合に臨めたかもしれません。試合前の準備をどれくらいやり、リラックスタイムをどれくらい取るかは何年チェスをやっていても尽きない悩みですね。

2021/09/25

Queen's Gambit Accepted


久々にオンラインで納得できるゲームが指せたので、今夜はそちらをご紹介します。lichess のブリッツレイティングは一時2500近くまで落ちてしまいましたが、最近は復調気味で2600に戻そうと奮闘しています。

imsk (2550) - Pogi13 (2494)
lichess

1. d4 d5 2. c4 dxc4 3. e3 Nf6 4. Bxc4 a6 5. Nf3 e6 6. O-O b5 7. Bd3

初手1.d4 のレパートリーを初めて本格的に作っている最中ですが、この変化は1. Nf3 のときでも指していたので、アイディアはある程度知っています。

7... Bb7 8. a4! b4 9. Nbd2 c5 10. Qe2!


10. e4!? とポーンを突き捨てる手もありますが、クイーンを先にe2 に上げておけば安全にe3-e4 が目指せるうえ、ビショップと連携してf1-a6 ダイアゴナルのコントロールも強くなります。

10.... a5?

白からa4-a5 とされてa6 でポーンを固定されると、aポーンが連携したビショップ+クイーンのターゲットになりやすいうえ、Nd2-Nc4-Nb6 のような構想も白に生まれるので、この手を指したくなる気持ちは理解できます。しかし、展開の劣る黒がこうしてポーンに手をかけすぎるのはリスクがありますし、b5 のマスが将来的に白のビショップやナイトがもぐりこむマスにもなりえます。

11. e4! cxd4 12. e5! Nd5 13. Nb3


白は焦ってd4 を取り返す必要はなく、ピースをより理想的な位置に配置しておきます。b3 のナイトはd4 を取り返す準備になりつつ、黒ナイトがc5 に跳ぶのを抑える、a5 のポーンを狙うなどの働きも担います。

13... Be7 14. Qe4 Nd7 15. Nfxd4 Rb8 16. Re1

Qe2-Qe4 でh7 への利きを作ってキャスリングを止めておくと、黒はキングをどうするか、新しい課題を抱えることになります。e8 でしばらく様子を見たくとも、a6-a5 によってb5 のマスを弱めてしまったことが後々痛手となりそうです。

16... Qb6 17. Qg4! Bf8 18. Bb5 Rd8


白はクイーンサイド、キングサイドどちらからも揺さぶりをかけてセンターのキングの問題を大きくします。この後、決定的なタクティクスのチャンスが思ったより早く訪れました。

19. Bg5 Rc8 20. Nxa5! Qxa5 21. Nxe6!

1つ目のナイトサクリファイスでクイーンをe6 の守りから反らし、2つ目のナイトサクリファイスを実現します。このナイトは取るとクイーンでe6 を取る手からd7 のナイトをが落ちるため、黒は無視して耐える手を探さなければいけません。しかしこうして見ると、10... a5 は1手かけてb5 を弱めたうえ、結局aポーンは取られてしまったので、ここが大きな失敗であったことが分かります。

21... Bc6 22. Nd4


ここは何がベストか自信はありませんでしたが、白マスビショップを黒から取るよう催促し、a1 ルークを端の位置で働けるようにすれば十分だと考えました。

22... Bxb5 23. axb5 Qb6 24. e6 1-0

最後は黒の時間が落ちましたが、そうでなくとも黒には厳しい局面です。小さな相手のミスを突いてポジショナルアドバンテージを拡大し、タクティクスのチャンスを逃さない、シンプルながら理想的なゲーム運びができたように思えます。

2018/11/10

First Saturday GM November 2018 R7

ベトナムのNguyen とは先月に続いて2回目の対戦です。前回は勝ちのエンドゲームで進めるポーンを間違え、惜しくもドローに逃げられてしまいました。同じ白番を持って再挑戦です。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Nguyen, V T (CM, VIE, 2343)
First Saturday GM November 2018 (7)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 dxc4 4. e3 e6 5. Bxc4 a6!?



今回はオーソドックスな5... c5 ではなく、早めにbポーンを伸ばしてくる変化を選んできました。こちらもある程度準備して、理想的なポジションを頭に入れています。

6. O-O b5 7. Bd3 Bb7 8. Qe2 c5 9. a4


早めのb7-b5 の弱点としては、こうしてクイーンサイドから崩され、c4 のマスを明け渡してしまったり、a6 のポーンを将来的なターゲットにされてしまうことが挙げられます。

9... b4 10. Nbd2 Nc6 11. dxc5 Bxc5 12. e4



ここは12. Nb3 として先にd4 のマスをカバーしておくアイディアも考えましたが、b3 のナイトがその後でどこに行くのか迷い、c4, f3 など他のマスに行くチャンスを残しておくことにしました。

12... Nd4 13. Nxd4 Bxd4 14. Nf3 Bc5 15. e5


このeポーン伸ばしでスペースを作り、白はある程度満足です。キングサイドでもクイーンサイドでも、アクションを積極的に起こすチャンスを白は持ちます。

15... Nd7 16. Bf4 Be7 17. Rfd1 Qb8 18. Rac1!



スペースと展開の早さという2つのアドバンテージを持ち、キングサイドへの攻撃のチャンスも見せておくことで、黒のキャスリングをやりづらくしておきます。これはかなり理想的なポジションになったと確信しました。

18... Nc5 19. Bb1 Bd5 20. Nd4?!


しかし、この先が上手く指せませんでした。この20手目のポジションで、時間をたくさん使って作戦を考えました。20. Ng5 Qb7 21. Qg4 はナイトが邪魔をしてg7 を攻撃できず、b3 のマスをカバーしていないことが気になります。20. Rxd5?! exd5 21. Rxc5 (21. Nd4 Ne6!) 21... Bxc5 22. Ng5 も考えましたが、e5-e6 の押し込みは上手く成功せず、白がダブルエクスチェンジを捨てる代償は十分ではなさそうです。結局この読みに時間を使いすぎた挙句、b3 をカバーする無難な本譜を選びましたが、ベストではありませんでした。

20. Nd2! ナイトが上がるではなく、下がるが正解でした。同じようにb3 をカバーするだけでなく、Nd2-Nc4 というマヌーバリングが次にあり、d2 はd4 よりも将来性のあるマスです。20... Qb7 21. Qg4 g6 22. Bh6! これで本譜のhポーン伸ばしの流れも止めれば、白の優位は揺るがなかったでしょう。22... Nxa4 23. Nc4 Rd8 24. Qf4 として、次にd6 にナイトを入れれば大きく優勢です。c4 に跳んだナイトはb2 を守っているために、a4 を取られることを気にしなくても良い点も、本譜と大きく違います。

20... Qb7 21. Qg4 g6 22. a5?!



ここも黒に反撃のチャンスを与えないよう、22. Bh6 としておくべきでした。g6 が弱くなり、ビショップを切り込むチャンスが生まれるため、相手にhポーンを伸ばさせても良いと思っていました。

22... h5! 23. Qg3 h4 24. Qg4 h3 25. gxh3


ここまできた以上、取って勝負しかないと思いました。黒としては、一時的にポーンを捨ててもhファイルからルークが出るチャンスが生まれ、キャスリングできない問題が解決できたのでOKでしょう。

25... Rd8 26. Bg5 Bxg5 27. Qxg5 Rh5 28. Qg3 Ne4 29. Bxe4 Bxe4 30. Ne2?



しかし、20手目で時間を使いすぎたツケがここで回ってきました。時間切迫から読み抜けがあり、単純な悪手でゲームをダメにしてしまいました。試合直後はすでにこの局面はまずいのかと思っていましたが、30. f4 Qd5 31. Qe3 としてe5 を守り、g5 のマスをカバーしておけば、まだ勝負は分からなかったでしょう。

30... Rxd1+ 31. Rxd1 Bf3!


この手は考えていたつもりでしたが、予想よりもずっと強力でした。e5 のポーンが落ちて白は途端に苦しくなります。

32. Re1 Qe4 33. Qf4 Rxe5 34. Qxe4 Rxe4 35. Kf1 g5 36. b3 Kf8 0-1



最後はツークツワンクになります。白のナイトは動くと、Bf3-Bg2+ でエクスチェンジを取られてしまうため、白はどうしようもありません。今大会は要所で良いプレーができていませんが、これも勉強だと思って残り2試合に取り組もうと思います。

11/03 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Todorovic, M (GM, SRB, 2435) 0-1
11/04 Kotronias, V (GM, GRE, 2469) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/05 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Srinath Rao, S.V (FM, IND, 2357) 1/2-1/2
11/06 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Krstulovic, A (FM, HUN, 2309) 1-0
11/07 Audi, A (FM, IND, 2347) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/08 Aczel, G (GM, HUN, 2549) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1/2-1/2
11/09 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nguyen, V T (CM, VIE, 2343) 0-1
11/10 Ghannoum, M (FM, CAN, 2280) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
11/11 Rest Day
11/12 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Balint, V (HUN, 2299)

First Saturday GM November 2018

+4 Aczel, Kotronias
+2 Srinath
+1 Todorovic
+-0 Audi
-1 Nguyen, Ghannoum
-3 Kojima, Krstulovic, Balint

最下位グループにきてしまいました... あと2つ、なんとか勝ちたいです!

2018/10/10

First Saturday GM October 2018 R3


First Saturday 3Rは、ベトナムの若武者、Nguyen Van Thanh との対戦です。今年はずいぶん長くブダペストに滞在しているようで、FS でのプレーを続けていました。今月は2つ負け越しスタートですので、私としてもここで叩いておきたい相手です。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Nguyen, V T (CM, VIE, 2350)
First Saturday GM October 2018 (3)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 dxc4 4. e3 e6 5. Bxc4 c5 6. O-O a6 7. dxc5 Bxc5 8. Qxd8+ Kxd8 9. Ne5 Ke7 10. Be2 Nbd7 11. Nc4 Ne4!?



QGA のメインをラインを指すのは、いつ以来か思い出せないほど久しぶりです。新しく研究していたクイーン交換の変化は、リスクを減らしポジショナルプレーとエンドゲームで戦うという意思の表れです。

12. Nbd2 Ndf6 13. Nb3 Ba7 14. f3!


e3 のポーンは多少弱くなりますが、十分にフォローできると思っていました。それよりも黒が手数をかけたナイトを追い払い、捌いてしまうほうがメリットがあります。

14... Nd6 15. Nxd6 Kxd6 16. Bd2 Nd5 17. Rfd1 Ke7 18. Kf2 Bd7 19. Bc4! Nb6 20. Bd3?!



しかし、ここで正確に指せませんでした。Bd2-Bb4+ はいかにもな手ですが、後でNb6-Nd5 と戻られる手で困るかと思い、ゆっくりe3-e4 を目指す作戦を取りました。ところが、ここでは白マスビショップを諦めるアイディアで白が大きく優勢です。20. Bb4+! Ke8 21. Na5!+/- このナイトの跳び込みは様々なタイミングで考え、実際に指してもいるのですが、このタイミングだけはなぜかすっぽりと頭から抜けており、ビショップを取らせるのは21. Rac1 ばかり考えていました。b4 にビショップ、c4 にナイトの組み合わせは絶好ですので、黒はナイトビショップ交換ができません。そうであるならば、h8 のルークの連携を切るBd2-Bb4+ が働いていることは明らかです。

20... Rhc8 21. Na5 Nd5 22. Ke2 b6 23. Nc4 b5 24. Ne5 Be8 25. f4


私が見落としていたのは、e3-e4 に対してBa7-Bd4! という切り返しがあることです。そのため、e3-e4 を急ぐことはせず、ナイトの戻るマスを作って作戦の立て直しを図ります。25. Bxh7!? Bb8 26. Ng4 f5 27. e4! Nf4+ 28. Bxf4 Bxf4 29. exf5 Rc2+ 30. Kf1 exf5 31. Bxf5 Rxb2 という変化もありそうですが、かなり読むのは難しそうです。

25... f6 26. Nf3 Bg6 27. e4?!



白マスビショップを交換すると、c2 のマスを弱めて黒ルークの侵入を気にしなければいけないと思いましたが、27. Bxg6 hxg6 28. Rac1+/= くらいでシンプルに進めて良かったでしょう。白マスビショップを交換したほうが、e4 もターゲットになりづらく、本譜のような展開を避けられました。

27... Nb6 28. Bb4+ Ke8! 29. Rac1 Na4 30. Bb1!? Nc5


ここで相手からドローオファーがきましたが、最近は強気にいくチェスが板についてきていますので、ここは蹴って勝負です。30... Nxb2 31. Rxc8+ Rxc8 32. Rd6+/= は白がポーンを取りかえして指しやすいでしょう。

31. Rd6?!



しかし、オファーを蹴って指した手がイマイチでした。6段目はいかにも良さそうなルークの場所ですが、次の相手の手が見えていません。31. f5! exf5 32. exf5 Bf7 33. b3+/= くらいで白OKです。

31... a5!


この手が成立するとは、とても驚きました。a5 もe6 も白は取ることができず、完全に作戦の立て直しです。

32. Bd2


32. Bxa5 Ke7 33. Rd4 Nd3 34. Bb4+ Nxb4 35. Rxc8 Rxc8 36. Rxb4 Rb8 は怪しいですが、ダブルビショップを持つ黒はポーンを差し出しても大丈夫でしょう。

32... Ke7 33. e5 Bxb1 34. Rxb1 Ne4 35. Ra6 Nxd2 36. exf6+ gxf6 37. Nxd2 Bd4



白はビショップナイトの交換を許しましたが、これでルークを交換したうえでさらに先手が取れるのであれば、大きな問題はありません。ポジションはイコールでも、もう一勝負できると感じました。37... a4 38. Ne4=

38. Rxa8 Rxa8 39. Nb3 Bb6 40. Rc1 Kd6 41. Rd1+ Kc6 42. Nd4+


ここは迷わずビショップを返してもらい、ルークエンディングで戦います。

42... Bxd4 43. Rxd4 e5!?



これは怪しいと思いました。パスポーンをセンターに作るだけでなく、キングサイドで将来的にパスポーンを作られるリスクも白は考えなければいけません。このルークエンディングはイコールながら正確に指すのは黒のほうが難しく、チャンスがあるのではないかと思いました。43... Rg8=

44. fxe5 fxe5 45. Rh4 Ra7 46. g4 Kd5 47. Kd3 Rf7 48. Ke3 Rc7 49. g5 Rc2


黒は少し感がて、即ポーンを取りあう展開を選びましたが、私は1手待ってクイーンサイドのポーンを伸ばしておくほうが黒に得なのではないかと考えていました。49... b4 50. b3 Rc3+ 51. Kd2 Rc7= ならば、互いに進展を作れずにドローでしょう。

50. Rxh7 Rxb2 51. h4 Rg2!



なるほどと思いました。a2 まで取っているようであれば、白のパスポーンが早いという私の読みは合っており、黒はこうして早めに後ろからgポーンを止めるしかありません。51... Rxa2? 52. h5! Rg2 53. Rg7! これが私の思い描いた局面で、gポーンを前からルークで守ったうえで、hポーンを突くアイディアが強力です。 53... a4 54. h6 a3 55. h7 Rh2 56. g6+-

52. Kf3 Rg1 53. Rg7 e4+!


eポーンは白キングから近く、止められやすそうですが、白キングがg,hポーン方面にいけばプロモーションのチャンスができ、eファイルでブロックすればhポーンの守りが無くなります。白はキングをどちらに向けるか悩むところです。

54. Kf4 Rf1+ 55. Kg3 Ke6 56. Kg2 Rf8?!



ここはどうしたことでしょう。後ろまで下がるのはパッシブなディフェンスで、56... Rf4 57. Rb7= のほうがシンプルです。

57. Rc7 Kf5?!


この辺りで黒に不正確な手が続き、白にチャンスは生まれ始めました。57... b4 58. g6 Kf6 59. h5 Kg5 60. Rc5+ Kh6 61. Rxa5 e3 62. Re5 Rf2+ 63. Kg3 Rxa2= ならばリスクなくドローです。

58. Kg3 Re8 59. Rc5+ Kg6 60. Rxb5 e3 61. Rb6+ Kf5?



この手は完全に予想しておらず、とても驚きました。確かになるべくgポーンから離れたくない気持ちも分かりますが、ここは離れても問題なくドローです。61... Kg7 62. Rb1 Kg6 63. Kf3 Kh5 64. Rg1 e2 65. Kf2 Kxh4= 本譜ではf6 でのチェックがあるため、黒キングはルークの利きを邪魔してしまう悪い位置にいかざるを得なくなり、白に勝ちのチャンスが出ます。

62. Rf6+?!


この手でも勝ちですが、もっとわかりやすく簡単なのは、62. Kf3! とする手でした。Rb6-Rf6+ で黒キングをeファイルにいかせることができるため、黒はeポーンを進められません! 63... Rh8 63. Rf6+ Ke5 64. Rh6!+- これでhポーンを守り、e3 を取れば完全に白勝ちでした。

62... Ke4 63. h5?


相手のミスを落ち着いて捉え、ルークを捨ててもキングサイドの2コネクテッドパスポーンで勝てることに気付いたところまでは良かったです。問題はg,hポーンのどちらから伸ばすべきかということです。私の勘違いはいくつかあり、例えば相手キングから遠いポーンから突いたほうが良いと思ったこと(そういうケースもあります)、gポーンを伸ばすとしても、どうせhポーンも伸ばすので、確実に進めるポーンから突いておくべきだと思ったこと、そしてなによりも、どちらを突いても勝ちだと思ったことです。残り時間が2分でなければ分かりませんでしたが、この試合中には相手の次の手は全く見えていませんでした。63. g6! Kd3 64. Rf1 e2 65. Re1 Kd2 66. Rxe2+ Kxe2 67. h5+- これでルークを捨ててもプロモーションが確実にできる白の勝ちです。

63... Re5!



通常であればKg3-Kg4 として何もないルークの上がりですが、白キングはe3-e2Kg3-Kf2 としなければいけないため、4段目に上がることができません。これで勝ちの目は消えました。ここで慌てたままであれば、ズルズルと負けてもおかしくないですが、残り時間1分でなんとかドローの筋を見つけました。

64. g6 Rxh5 65. Re6+ Kd3 66. g7 Rg5+ 67. Kf3 Rxg7 68. Rxe3+


ここで私からドローオファーしました。余談ですが、オリンピアードでは妻がこうしたルークエンディングをやっていましたね。

68... Kc4 69. Ke2 Rd7 70. Rb3 Rd5 71. Rh3 Kb4 72. Rg3 a4 73. Rd3 Rh5 74. Kd1 Rh2 75. a3+ Kc4 76. Rg3 Ra2 77. Kc1 1/2-1/2



10/07 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Sindarov, J (IM, UZB, 2500) 0-1
10/08 R2 Ilincic, Z (GM, SRB, 2411) - Kojima, S (IM, JPN, 2408) 0-1
10/09 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Nguyen, V T (CM, VIE, 2350) 1/2-1/2
10/10 R4 Manush, S (FM, IND, 2302) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
10/11 Rest Day
10/12 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Plat, V (GM, CZE, 2539)
10/13 R6 Tran, M T (IM, VIE, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
10/14 R7 Czebe, A (GM, HUN, 2426) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
10/15 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Shahaliyev, I (AZE, 2376)
10/16 R9 Mirzoev, E (IM, UKR, 2439) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)

First Saturday GM October 2018 Standings

+2 Sindarov, Shahaliyev
+1 Mirzoev, Plat
+-0 Kojima, Czebe, Manush
-2 Tran, Nguyen, Ilincic

この日はSindarov がPlat を、Shahaliyev がMirzoev を破って勝ち越し勢の順位が入れ替わっています。すでに勝ち越し、負け越しの差が開きつつあるので、上のグループに入れるように早く2勝目を挙げたいですね。ちなみにCzebe との試合は木曜日から日曜日に変更になり、木曜日が久々の休日になりました。


会場にはコーヒーとお菓子だけでなく、水も置かれるようになりました。これは私にとってありがたいです。

2018/05/18

Opening Preparation for The Next Step


全日本選手権が始まる少し前、自分が使うオープニングを整理し、振り返りやすくするための専用データベースをChessbase で2つほど作りました。1つは白のオープニング、もう1つは黒のオープニングで、それぞれ20~30ほどのラインが入力されています。ひとまず1つのラインとして作り始めたものでも、細かくなりすぎて見にくくなれば、2つに分けるなどの工夫をしています。

他にも自分の指すラインをデータベースで管理しているプレーヤーもいると思いますが、私はここ数年、それをしていませんでした。ここにきてあらためてデータベースを作り始めたのは、その場の発想ではなかなか上手い手が見つけにくいゲームが増えたり、これまで実戦で試してきたアイディアをまとめてみたいと思ったためです。オープニングの研究はもとから好きでしたが、このデータベースの作り込みも最近楽しく、日毎ラインは増殖しています。今夜はまだ公開していなかった全日本のゲームから、自分の事前のオープニング研究がどのようなものだったかご紹介したいと思います。

Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Kanda, D (JPN, 1859)
Japan Chess Championship 2018 (1)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 dxc4 4. e3 Bg4



この4... Bg4 のQueen's Gambit Accepted は、今回のデータベース作りで真っ先に取り掛かったラインでした。2016年のラスベガスのZhu, J との試合では、なんとか勝ったもののオープニングでアドバンテージが取れるようなものでなく、その後のオンラインのゲームでもひどい試合展開になったものも多かったです。このデータベース作りでは一念発起し、この変化の対策をしっかりと考えてきました。

5. Bxc4 e6 6. h3 Bh5 7. Nc3 Nc6!?


こちらの手はもう1つに比べ、対策は少なめでした。別のナイトの手に対しては、7... Nbd7 8. O-O Bd6 9. g4! Bg6 10. e4 e5 11. dxe5 Nxe5 12. Nxe5 Bxe5 13. f4 Qd4+ 14. Qxd4 Bxd4+ 15. Kh2 Bxc3 16. bxc3 Bxe4 17. g5 Bd5 18. Re1+ Kf8 19. Bb5 a6 20. Ba4 b5 21. Bc2+/= という面白い変化を見つけています。白はポーンを捨てても、ビショップのペアと不安定な黒キングを攻めて、十分な代償があると考えられそうです。

8. Bb5 a6?!



この手をほぼノーチェックでしたので、ここから考え始めることになります。私が調べてきたのは、8... Bd6 9. e4 Nd7 といった流れで、白はタイミングを見てc6 を交換し、黒のポーンストラクチャーを乱して勝負します。ならば、黒は本譜のように1手かけて交換を促す必要はなく、ありがたくナイトビショップの交換をすることに決めます。

9. Bxc6+ bxc6 10. g4 Bg6 11. Qa4 Nd7


Nf3-Ne5 のアイディアもあるので、黒はc6 を守り切ることはできません。ポーンアップになった後のセットアップにはあまり自信はありませんでしたが、なんとか形にできたと思っています。

12. Qxc6 Bd6 13. b3!? O-O 14. Bb2 e5 15. O-O-O exd4 16. Rxd4 Qf6 17. Nd5! Qe6 18. Rhd1 Ne5 19. Nxe5 Bxe5 20. Qxe6 fxe6 21. Ne7+ Kh8 22. Nxg6+ hxg6 23. R4d2 1-0



このゲームは、ようやくこのQGA のラインにアドバンテージを握って勝てたという感触があり、嬉しかったです。続けて黒番でのゲームも1つご紹介します。

Manabe, H (JPN, 2073) - Kojima, S (IM, JPN, 2400)
Japan Chess Championship 2018 (9)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 a6 5. c5 g6!?



a6 Slav を指すことは以前から構想にあり、すでにIVL では1試合試しています。メインの5. c5 に何を指すか(他の候補手は5... Nbd75... Bf5)迷いましたが、かなり時間をかけて調べて、自分には5... g6 が合っていると判断しました。

6. Bf4 Bg7 7. e3


正直に言えば、この手順から入られるのが一番嫌でした。真鍋さんはh2-h3 を突かず、Nf6-Nh5 を気にしないというスタンスですが、私は色々とゲームを見ても、ナイトビショップの交換を迫るのはしっくりきていませんでした。本譜の代わりに7. h3 Bf5 8. e3 Nbd7 9. Be2 Be4!? 10. 0-0 Bxf3 11. Bxf3 0-0 という手順を研究しており、Bc8-Bf5-Be4-Bxf3 と手数をかけてもビショップナイトの交換をして、e7-e5 のブレイクを準備しようと考えていました。

7... O-O 8. Bd3?!



この手は研究の中にありませんでしたが、これまで学んだアイディアから考えれば少し妙だと感じました。白がc4-c5 とポーンを押し込んだ場合、黒はe7-e5 のブレイクが強力となります。そのためにf3 のナイトを手数をかけても消しにいくわけですが、本譜では黒は1テンポアップでBc8-Bg4-Bxf3 ができてしまいます。さらに言えば、d3 のビショップは将来的にナイトのターゲットとなる良くない位置です。私が最も嫌だった手順が8. h3 Bf5 9. Be2 Nbd7 で、これだとBc8-Bg4 ができないうえ、10. 0-0 Be4 11. Nd2! が成立するため、上記のビショップナイト交換を避けられてしまいます。

8... Bg4! 9. h3 Bxf3 10. Qxf3 Nbd7 11. O-O Re8!


これで簡単にe7-e5 をつけるようになりました。f3 のクイーンとd3 のビショップは、e7-e5-e4 でポーンフォーク、Nd7-Ne5 でナイトフォークになる位置で、黒の格好の的となります。このことからも、d3 にビショップを配置するプランが白にとって良くなかったと考えられるでしょう。

12. Ne2 e5 13. Bxe5?



どちらで取っても同じだと思うのは間違いで、ここはポーンで取る一択です。それでも、13. dxe5 Nxe5 14. Bxe5 Rxe5 15. Nd4 Ne4 16. Rfc1 Qe7 17. b4 Re8 とeファイルに戦力を集め、黒が指しやすいのは間違いないでしょう。

13... Rxe5! 14. dxe5 Nxe5 15. Qf4 Nxd3!?


こうして黒はルークから取ることで駒得を確定させますが、ここは2ピースルークを取るか、2ポーンを取るか少し悩みました。2ピースルークのほうが一般的には得であるようにも思えますが、本譜のようにf2 やb2 が落ちれば、白にとってはかなり厳しいエンドゲームであるため、今回はそちらを採用することにします。15... Nh5!? 16. Qb4 Nxd3 17. Qxb7 Nxc5-+

16. Qd4 Nxf2! 17. Rxf2 Ne4 18. Qb4 Nxf2 19. Kxf2 Qf6+ 20. Kg1 Qxb2 21. Qxb2 Bxb2 22. Rb1 Ba3 23. Rxb7 Bxc5



15手目の段階でここまで読み、この先はよほどのことがない限り勝てるだろうと判断しました。最後まで油断せず、きちんと勝てるルークエンディングに持っていく流れも良かったと思います。

24. Nd4 Re8 25. Nxc6 Rxe3 26. Kf1 Re6 27. Rc7 Kg7 28. Nd8 Rf6+ 29. Ke2 Bb6 30. Rd7 h5 31. g4 hxg4 32. hxg4 Bxd8 33. Rxd8 Rf4 34. Rxd5 Rxg4 35. Ra5 Re4+ 0-1


結局、いつもの棋譜解説とあまり変わらないようにも思えますが、自分としては事前の研究がどうであったか、そこから実戦で何を考えたかを中心に書いたつもりです。オープニング用のデータベースは今後も更新を続けながら、さらなる大会でも使えるようにしていきたいと思います。

2016/12/29

North American Open 2016 Day3


朝食はBally's ロビー階のカフェ、Nosh でいつも食べています。チェックインの際にもらった朝食券で1人$9分の食事を頼むことができ、オーバーした場合は超えた分を現金で払えばオッケーです。ここまでの朝食メニューは、ベーグル、クロワッサン、ホットドッグと続いています。

ラスベガスも3日目を迎え、折り返しと後半戦を迎えます。私は2日目同様、午前のラウンドは中国のプレーヤーとドロー。午後のラウンドでまたもやアメリカのジュニアと対戦します。上位に挑むためには、ここを勝って3つ勝ち越しにするしかありません。

Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Zhu, J Q (USA, 2288)
North American Open 2016(6)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 dxc4 4. e3 Bg4!?



以前にも指されたことがありますが、何が白のベストかわかりづらいQDA の一変化です。

5. Bxc4 e6 6. O-O Nbd7 7. Nc3 Bd6 8. h3 Bh5 9. Be2 c5 10. Nb5!?


何かしら仕掛けてみようと早めに動きます。c3 のナイトをd4 に切り替え、何かしらのチャンスを待つことにします。

10... Be7 11. dxc5 O-O 12. b3 a6 13. Nbd4 Bxc5 14. Bb2 Qe7 15. Rc1 Rfd8 16. Ne1



ここはどうするか迷いましたが、白マスビショップの交換を狙い、クイーンを危険なdファイルから逃がすことを優先します。

16... Bg6 17. Bd3 Ba3 18. Qc2 e5!?


ビショップをg6 で交換する前にe6-e5 と仕掛けることは、f5 にマスを作るので危険だと考えていました。実際にはf5 のナイトは負担にもなるため、ここは難しい判断です。

19. Nf5 Qf8 20. Bxa3 Qxa3 21. Nf3!



一度へ退いたナイトを戻し、ルークをつなげることに成功します。2つのナイトがアクティブなマスに到達できれば、白は少し苦しかった序盤を乗り切り、流れをつかむことができるでしょう。

21... Re8 22. Nd2 Nb6 23. Ne4 Nbd5?!


検討戦で私は、同じNd5-Nb4 を狙うにしても、23... Nfd5 のほうが良いだろうと指摘しました。彼はb6 のナイトがプレーに使えていないことを気にしたようですが、f6 でナイトを交換をしてポーンストラクチャーを乱してしまうことのほうが問題です。

24. Rfd1! Nb4?



ここはこのナイトの跳び込みを誘いました。d3 のビショップを失うと、白は厳しいようにも見えますが、きちんと対応を考えてあります。代わりに24... Bxf5 25. Nxf6+ Nxf6 26. Bxf5 g6 27. Be4 Nxe4 28. Qxe4 Qxa2 29. Qxb7= と進めば、ドローにしかならなかったでしょう。

25. Nxf6+ gxf6 26. Qc5!


クイーンがこのマスに逃げるのがポイントで、黒はb4 のナイトがピンのためにビショップを取ることができません。黒はピンを外そうとしますが、f5 に刺さったナイトがここで力を発揮します。

26... b6 27. Qd6 e4??



期待した通りの悪手を相手は指してきました。一見するとこれでf5 のナイトの守りが消え、白はピースを失ってしまうようにも思えます。ところがこれは白の罠で、黒は一気に望みのないポジションに陥ってしまいます。正しくは、27... Re6 28. Qd7 Nxd3 29. Qxd3 Qxa2 (29... Bxf5 30. Qxf5 b5 31. Qg4+ Kh8 32. Rc7 Re7 33. Rc8+ Re8 34. Rxa8 Rxa8 35. Qf3+-) 30. Ra1 Qb2 31. Rxa6 Rf8 32. Rb1+/- と指すべきでしたが、これでも白の優位は揺るぎありません。

28. Bxe4!


ここは28. Qxf6!? Bxf5 29. Rc7 Bg6 30. Bc4 Rf8 31. Rdd7+- という変化もあったようですが、本譜のほうが分かりやすいでしょう。

28... Rxe4 29. Qxf6 Bxf5 30. Qxf5+-



こうしてみると黒はピースアップですが、キングが危ないうえにナイトとクイーンがプレーに参加できません。ここからキングとルークを守り切ることは不可能です。

30... Re7


30... Rae8 31. Rc7 R4e7 32. Rxe7 Rxe7 33. Rd8+ Kg7 34. Qg5#

31. Rc4 Re6 32. Rd7 1-0



最後は32... Rf8 33. Rc8!+= でf7 の受けがなく、白の勝ちとなります。少し苦しい序盤を乗り切り、大きな白星を掴むことができました!

Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Feng, M (WCM, USA, 2120) 1-0
Kumar, N (FM, USA, 2251) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Zhang, P (CHN, 2278) 1/2-1/2
Mousseri, D (FM, USA, 2161) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1
Chen, P (CHN, 2297) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Zhu, J Q (USA, 2288) 1-0

ここまでの試合結果はこのようになっています。残りの3試合、悔いのないようにしっかりと指して上位を狙えればと思います!

2015/01/05

Chess in Kecskemet 2015 New Year GM 10th round


長く滞在したケチケメートでの、最終日がやってきました。この日は久々にハンガリーの揚げパン、ランゴーシュを食べることに。ブダペストの友人たちには、油がくどくて苦手だともっぱら評判は良くないですが、私はこれが好きで、かつてはよく食べていました。このランゴーシュを知ったのは、2年半以上前に初めて訪れた、ここケチケメートのマーケットでした。そんなことも、今では懐かしく思い返します。

さて、最終戦の相手はフランスのIM Payen です。彼はここまで1勝1敗7ドローという安定した戦績を残しており、レイティング最下位のプレーヤーとは、とても思えません。IM のタイトルも持っていますし、かつては2400 のレイティングがありましたからね。強敵を相手に、長かったハンガリー遠征の最終戦を戦います。

Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Payen, A (IM, FRA, 2333)
Chess in Kesckemet 2015 New Year GM (10)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 dxc4 4. e3 e6 5. Bxc4 c5 6. O-O Nc6!?



オープニングは久々のQueen's Gambit Accepted です。私もかつて黒で研究したことがありますが、IQP ポジションへの理解と、エンドゲームの知識が要求される、見た目よりも難解なオープニングです。この試合では、私はIQP を受け入れることにします。

7. Nc3 cxd4 8. exd4 Be7 9. Bg5 O-O 10. Re1 b6


シンプルなIQP ポジションは、Sicilian Alapin, Caro-Kann Panov Botvinnik などで経験済みです。この試合では、典型的なd5 のコントロールがお互いがチャンスを掴むカギとなります。

11. a3 Bb7 12. Qd3 h6 13. Bh4 Nh5!?



私もこのアイディアが好きで、黒で使います。ピースの基本的な展開が終わった黒は、黒マスビショップを捌き、Nc6-Ne7 と組んで、がっちりとd5 のアウトポストを抑えてしまおうとします。

14. Bg3!


そこで私は、ビショップナイトの交換になっても、黒マスビショップを退きます。f6 のナイトは、d5 のアウトポストを抑える重要なピースですので、これが消えれば白はd4-d5 もやりやすくなり、ビショップを失っても満足に戦えるでしょう。

14... Bf6 15. Rad1 Nxg3 16. hxg3 Ne7 17. Ba2 g6 18. Ne5 Kh7 19. Qb5



直前の黒のキングが上がる手は怪しげに見えますが、私はすぐにキングサイドを狙うのではなく、クイーンサイドでも揺さぶりをかけることにします。まずは20. Nd7 がスレットになっています。

19... a6 20. Qa4 Bg7 21. Bb1 Nd5 22. Qc2 f5!?


評価の難しい手です。黒はe5 のマスとe6 のポーンを弱めますが、その代わりにb1-h7 のダイアゴナルを守り、e4 のマスを得ます。

23. Qd3 Nxc3 24. bxc3 Qd5 25. Nf3?!



この手は少し弱気でした。ナイトを退くほうがe6 のポーンをアタックしやすくなるかと思いましたが、e5 にいるナイトは強力で、黒は自陣への跳びこみを警戒していなければいけないため、やはり残しておくべきでした。

25... b5! 26. Qe2 Rfe8 27. Ba2 Qd6 28. Qb2 Bd5 29. Ne5


ここでナイトを戻すかはかなり考えました。白はc3 のポーンを守りながら、e6 をアタックしにいっても良かったでしょう。29. Re3!? Bf8 30. Rde1 Bxa2 31. Qxa2 Qxa3 32. Qc2=

29... Rac8 30. Rd3 Be4



これは最初、コンピュータの評価も良く、白はピースを捌かれてしまうのがまずいように見えますが、進めてみるときちんと耐えていることが分かります。

31. Rde3 Bxe5 32. dxe5 Qc6 33. f3 Bd5 34. Rd3!


こうして白は先にdファイルを抑えることで、ポーンが乱れている代償を取ります。

34... Bxa2 35. Qxa2 Rcd8 36. Red1 Rxd3 37. Rxd3 Re7 38. f4 Rd7 39. Qd2 Rxd3 40. Qxd3 g5!



こうしてクイーンだけになり、d6 とf6 のマスを利用しやすく、e6 のポーンを攻撃しやすい白にチャンスが出てきたかと思いましたが、相手のディフェンスは正確でした。

41. Qd6 Qc4 42. Qe7+


42. Qxa6 gxf4 43. gxf4 Qxf4 44. Qxe6 Qc1+ 45. Kf2 Qd2+= これではパペチュアルチェックにし必ず、ドローであることは明らかです。

42... Kg6 43. Qf6+ Kh5!



少し考えていましたが、こうしてキングが上がるんですね... 43... Kh7 44. Qf7+ Kh8 45. Qg6 はh6 のポーンが落ち、白にチャンスが出てくるのが明らかとは言え、キングが5段目に上がる手は、メイトの危険が一見ありそうですので、勇気のいる決断です。

44. Kh2 gxf4 45. Qf7+ Kg5 46. Qg7+ Kh5 47. Qf7+ 1/2-1/2


結論としては、黒キングを追い詰める方法はなく、こうしてドローにするしかありません。これで最終結果は2勝3敗5ドローとなり、ハンガリーでの最終トーナメントを終えています。1つ負け越しでも、レイティングは+6で、2月の更新で私のレイティングは、2403 になる予定です!

12/27 15:30 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Fominyh, A (GM, RUS, 2438) 0-1
12/28 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Eggleston, D (IM, ENG, 2416) 1-0
12/29 15:00 Groszpeter, A (GM, HUN, 2456) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
12/30 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Ilincic, Z (GM, SRB, 2434) 1-0
12/31 15:00 Payen, A (IM, FRA, 2333) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
01/01 15:00 Fominyh, A (GM, RUS, 2438) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1-0
01/02 15:00 Eggleston, D (IM, ENG, 2416) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1-0
01/03 10:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2434) - Kojima, S (FM, JPN, 2356) 1/2-1/2
01/03 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Groszpeter, A (GM, HUN, 2456) 1/2-1/2
01/04 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Payen, A (IM, FRA, 2333) 1/2-1/2

+2 Fominyh,
+1 Groszpeter
0 Payen
-1 Ilincic, Eggleston, Kojima


最終戦、Groszpeter - Eggleston の試合は、難しいエンドゲームを白が勝ち切りました。やはりGM たちは強いですね。ファイティングスタイルで大暴れしたEggleston は、最終的に4勝5敗1ドローで、綺麗に他全員から1つずつの黒星を貰っています。


そして私は試合後、クリスマスの雰囲気がまだ残るブダペストに戻ってきました。4回に渡るハンガリー遠征と、IM タイトル獲得については、また後日の記事でまとめたいと思います。この1ヶ月応援してくださった皆さん、ありがとうございました!

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