2012/04/30

Japan Championship 2012 Day1


今日から全日本選手権が始まりました。私は竹本さんと福田さんに勝ちで、良いスタートを切っています。しかし、油断は禁物です。去年は三連勝以降、全く星が伸ばせず苦しんだのですから・・・

Kojima, S (JCA 2395, FIDE 2264)- Takemoto, H (JCA 2109, FIDE 2092)
Japan Championship 2012 (1)

1. Nf3 d5 2. d4 c6 3. c4 Nf6 4. Nc3 e6 5. e3 a6 6. b3 b5 7. Bd3 bxc4 8. bxc4 Bb4 9. Bd2 dxc4 10. Bxc4 O-O 11. O-O c5 12. a3 Bxc3 13. Bxc3 Ne4 14. Bb2 Bb7 15. Qb3 Qe7 16. Rfd1 Nc6 17. Qc2 Na5 18. Bd3 f5 19. Qa4 Qc7 20. Rac1 Bc6 21. Qc2 Qb7 22. Ne5 Bd5 23. dxc5 Nxc5 24. Qxc5 Qxb2 25. Nd7 Qb7 26. Qxa5 Qxd7 27. Rc7 Qd8 28. Rdc1 Rf7 29. h3 Rxc7 30. Rxc7 Bxg2??



残り時間が互いに2分を切る中、痛すぎるブランダー。白良しですが、まだ黒も十分戦えるポジションです。
30... Qg5 31. Bf1 h5 32. Qc3 Kh7 33. h4 Qg6 34. Qe5+/=

31. Qe5 Qg5 32. Qxe6+ 1-0


Fukuda, T (JCA 1816, FIDE 1982) - Kojima, S (JCA 2395, FIDE 2264)
Japan Championship 2012 (2)

1. e4 c6 2. d3 d5 3. Nd2 e5 4. Ngf3 Bd6 5. g3 Nf6 6. Bg2 O-O 7. O-O Nbd7 8. Re1 Re8 9. exd5 cxd5 10. c4 Nc5 11. Nb3 Nxd3


11... e4! 12. dxe4 dxe4 13. Nxc5 exf3 14. Rxe8+ Qxe8 15. Qxd6 Qe1+ 16. Bf1 Bh3 17. Qd3 Ng4 18. Ne4 Ne5 19. Bf4 Qxa1 20. Bxe5 Bxf1 21. Qxf1 Qxf1+ 22. Kxf1 Re8-+


g2 のビショップを取らない変化は少し読みましたが、Ng4-Ne5 が見えず、断念。11...e4! から22手目の局面まで完璧に読み切れたならば、IM ノームも問題なく取れそうです。

12. Qxd3 e4 13. Qc2 exf3 14. Rxe8+ Qxe8 15. Bxf3 Qe1+ 16. Kg2 Qe6 17. cxd5 Qh3+ 18. Kg1 Ng4 19. Bxg4 Bxg4 20. Qd3 Re8 21. Be3 Bf3 22. Qf1 Qh5 23. Re1 Bxd5 24. Nd2 Bc6 25. a3 Qd5 26. f3 Rxe3 27. Rxe3 Qxd2 28. Re2 Qd5 0-1


今日はリスト1-5のうち、私以外の全員がポイントを落としました。南條くんは篠田君と、暁さんは木下さんとドローで、連勝したのは、私、野口さん、桑田くん、岩崎さん、龍二さん、権田さんの6人だけです。そして明日の1番ボードは、小島-桑田との情報が入っています。



ところでトップの写真、あれは私ですかね?(ちなみに右ですよ、念のため。)自分の顔なのに一瞬分かりませんでした・・・

2012/04/29

1st Anniversary


気付くと毎年GWに開催される、全日本選手権の前日です。明日からは6日間に渡る、熱い戦いが蒲田で繰り広げられます。私は5月4日にハンガリーに発つため、最後の3Rをbye にして、8R までの参加となります。昨年のリベンジで王座を奪回したいところですが、-2P のハンデ付きなので、少し厳しそうですね。それでも、昨年のように上位が団子になれば、入賞はありえると思います。

そして全日本前日=このブログを含むHPを開設して、丸一年ということになります。もう何年もブログで記事を書いている気がしますが、やっと一年目が終わったところなんですね。五年、十年と自分のブログを続けている人は、本当にすごいと実感します。この一年、私としては色々と工夫をして記事を書いてきたつもりですが、これからはより一層、読者の皆さんが楽しめるような情報をお届けしていきたいと思います。

ちなみに私のブログですが、この一年での訪問者数は97000程でした。これが多いのか少ないのか、自分では判断しかねますが、これからもっと多くの人にご覧いただきたいと思っています。それでは読者の皆さん、今後ともよろしくお願い致します。

2012/04/28

Check Mate Lounge - Behind the Scene -


今日はCheck Mate Lounge の振り返りということで、少し裏話もしていこうと思います。次号のチェス通信の記事とも少し被ります。

・Check Mate Lounge の運営に関して

主催者が私、プロデューサーが兄の穣二と公開されていますが、もちろん二人で全ての作業こなしてきた訳ではありません。主に7~8人のグループで、企画案の作成、web の立ち上げ、画像、映像の作製、メディアとの交渉などを行ってきました。各分野でプロの手を借りることができたのは、成功への大きな要因となりました。当たり前のことですが、チェス界の人間だけでイベントをやろうとしないで正解でした。

・Short の招待費に関して

具体的な数字は伏せますが、これは皆さんが想像しているよりも、相当安いと思います。彼が一人で来たうえ、東京の友人宅に滞在してくれたことは、招待費の面から言えばとてもありがたいことでした。私は航空券の手配なども考えて、昨年秋にはHIS に相談をしたりしましたが、結局のところ、航空券、滞在費、謝礼を含めていくら渡す、という形式に落ち着きました。この形が運営側としては最も楽でしょうね。

・electronic Board の使用に関して

会場にいらっしゃったチェスファンの皆さんはお気づきだと思いますが、Check Mate Lounge の試合には、DGT 社のelectronic Board を使用しました。これはセンサーが埋め込まれたチェスボードで、駒を動かすと接続したパソコンに指した手の情報が送られます。会場のスクリーンや、iPad の局面は、これを使用して表示していました。本当は公式HP でライブ中継もしたかったのですが、そこまでは叶いませんでした。ちなみに、e-Board は松戸チェスクラブからお借りした物で、日本のチェスイベントでこれを使用したのは初めてだと思われます。

・ニコニコ生放送に関して

ニコニコ動画での生放送が大成功だったのは、私としては嬉しい誤算でした。正直に言えば、視聴者は50000人に届くかどうかだと予想していたので、10万にという数字には大満足です。ニコニコ動画を運営するドワンゴさんとの打ち合わせには、私も出席しましたが、彼らがここまで協力してくれたことには心から感謝しています。

・次回のゲストに関して

Check Mate Lounge は私がハンガリーとトルコから帰国する今年秋に、第2回の開催を目指します。次回のゲストも海外からのGM にしたいのですが、Short があまりに大物だったため、誰にするか少し悩むところです。一応、候補は出ているので、これから交渉してみようと思います。

2012/04/25

Check Mate Lounge Game Review Vol.2


すでにいくつかのサイトでは、羽生さんの棋譜も公開されていますが、私も自分なりにこのゲームを振り返ってみようと思います。

GM Nigel Short - FM Yoshiharu Habu
Check Mate Lounge

1. e4 e5!?


Nigel の1.e4 に対して、羽生さんがこの初手を指すことを知っていたのは、事前に本人から聞いていた私と塩見さんのみだと思います。とは言え、私も実際に目撃するまで半分疑っていました。羽生さんはこれまで、フレンチとシシリアンが黒番のメインです。

2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Be7 6. Re1 b5 7. Bb3 O-O 8. d4



この10年でMarshall Gambit の研究が進み、それに合わせてAnti-Marshall も進化してきました。8.d4 は8.h3 と並び、代表的なAnti-Marshall の形です。

8...d6 9. c3 Bg4


8.c3 d6 9.d4 Bg4 でも同型で、私も白で持って何試合か指した経験があります。白は早くセンターにポーンを並べましたが、f3 のナイトがピンにされているので、それをすぐに崩さなくてはいけません。

10. a4!?


かなり珍しい手だと思います。10.d510.Be3 が、普通は指されます。(10.Be3 Nxe4?? 11.Bd5+- は有名なトラップ。)

10...Qc8!?



羽生さんも彼らしい独創的な手で応戦します。一手渡して白の出方を伺う、といったところでしょうか。気になるのは10... Bxf3 11. gxf3 (11. Qxf3 exd4 12. Qd1 dxc3 13. Nxc3 これが1ポーンの代償があるかの判断は大変難しい。) と進んだ形です。当然、白はKh1-Rg1 と組むと思いますが、個人的にはあまり好きな形ではありません。

11. axb5 axb5 12. Rxa8 Qxa8 13. d5 Na5 14. Ba2!



黒が将来的にc7-c6 と突いてくることを見越した手です。a2-g8 のダイアゴナルが再び開くのであれば、ビショップはc4 のマスを抑えつつ、a2 にいるべきです。

14...c6 15. h3 Bh5 16. Na3!


14.Ba2 に引き続き、なるほどと思わせる手です。現在、ゲームはd5 のマスを中心に駒のにらみが行われているため、ナイトをd2 に置いてクイーンの縦利きを消すのはやや不自然です。a3 のナイトはd5 が捌けた後、b5 のポーンを狙いつつ、Na3-Nc2-Nb4 と組み変えられる絶好の位置となります。

16...cxd5 17. Bxd5 Nxd5 18. Qxd5 Bxf3 19. Qxa8?!


白はクイーン交換をd5 で行うべきだったと思います。19. gxf3 Qxd5 20. exd5 Rb8 21.b4 Nc4 22.Nxc4 bxc4+=


と進めば、堅いパスポーンのある白にちゃんがあると判断できるでしょう。

19... Rxa8 20. gxf3 Nb3!



白のbポーンをブロックしているため、単にb5 のポーンを守るよりもずっと良い手です。ちょっとしたトラップになっており、白はb5 を取ることができません。

21. Be3


21.Nxb5?? Ra1 22.Bd2 Ra5-+

21...Rb8 22. Rd1


ここは先述の通り、22. Nc2 からナイトを組み変えるプランもあったと思います。b5 のポーンをターゲットとして残すことを重視します。

22... f6


エンドゲームでは、キングはセンターへ。キングの道を作ります。

23. Rd5 b4 24. Rb5 Rxb5 25. Nxb5 bxc3 26. Nxc3



白は2対1のポーンを捌いてパスポーンを作りましたが、黒はそれをがっちりとブロックしています。駒も2ピースしか残っていないため、d6 もさほど負担にはならず、黒としては大きな問題はないでしょう。

26...Kf7 27. Kf1 Ke6 28. Ke2 f5 29. Kd3 f4!


ダブルポーンを解消するのではなく、あえてポーンを固めます。狙いはf2 へのカウンターです。

30. Bb6 Bh4 31. Nd5


ポーンストラクチャーとアウトポストのナイトだけを見れば白優勢ですが、そこに繋がるターゲットがありません。あとはbファイルのパスポーンさえ抑え込めれば、黒はドローに持ち込めます。

31...Kd7 32. Kc3 Nc5 33. Bxc5!



白が間違えれば黒勝ちのチャンスもありえます。33.b4? Ne6! となれば、黒はキングサイドのポーンを攻撃し、パスポーンを作ることができます。白のb ポーンはキングで抑えに行くことができ、さほど脅威ではありません。

33...dxc5 34. b4 cxb4+ 35. Nxb4 Bxf2


ぱっと隣を見るとこの局面になっていたので、かなり驚きました。あとは本譜のようにドローのポーンエンディングに一直線です。

36. Nd3 Bd4+ 37. Kc4 Ke6 38. Nxf4+ exf4 39. Kxd4 g5 40. e5 h5 41. Ke4 g4



確かこの辺りでドローオファーをしていたと記憶していますが、Short は観客に分かりやすいよう最後まで続けます。

42. fxg4 hxg4 43. hxg4 f3 44. Kxf3 Kxe5 45. Kg3 Kf6 46. Kf4 Kg6 47. g5 Kg7 48. Kf5 Kf7 49. g6+ Kg7 50. Kg5 Kg8 51. Kf6 Kf8 52. g7+ Kg8 53. Kg6 1/2-1/2


このゲームではお互い、派手な攻撃や駒の取り合いがなかったために、初心者の方にはレベルの高さが伝わりづらいと思います。それでも凝ったアイディアの好手が互いに飛び交い、ミスらしいミスが出なかったことを考えれば、大変貴重なゲームであると言えます。このようなゲームを日本で、そして目の前で見せてくれたNigelと羽生さんには、心から感謝しています。

Check Mate Lounge Game Review Vol.1


さて今夜は、先週末のCheck Mate Lounge のゲームを振り返ろうと思います。2試合分を一度に出すと分量が多くなりそうなので、羽生さんのゲームは明日に回し、まずは私のゲームからです。早い段階でミスをしたと思っていましたが、細かく見て行くとそう簡単でないことが分かってきます。

GM Nigel Short - FM Shinya Kojima
Check Mate Lounge

1. e4 c5 2. Ne2!?



Nigel はSicilian に対し、Open もClosed もバリバリ指せます。白はこの2手目で黒の様子を見て、今後の展開を決めて行きます。とはいえ、Nigel は試合後のインタビューで、細かい計算に頼るシャープなポジションは避け、戦略的に指すつもりだった、と述べているので、この時点でClosed のつもりだったのでしょう。

2...Nc6 3. Nbc3 Nf6


3...e5 と指すのも一つの選択肢ですが、私はこのようにアウトポストを作る形を好みません。

4. f4 d6 5. d3 g6 6. h3!?


通常のSicilian Closed (g3-Bg2-h3-g4) と比較し、一手早くgポーンを伸ばそうとしていることは明らかです。それをとがめに行くかどうかは迷いましたが、結局黒は通常のセットアップで対抗することに決めました。

6...Bg7 7. g4 b6


すぐにキングサイドにキャスリングをするのは少し怖い気がしたので、クイーンサイドで手を作りつつ様子を見ます。

8. Bg2 Bb7 9. O-O O-O 10. Be3 Nd7


本譜は黒マスビショップのダイアゴナルを通す狙いですが、ここは10...Qd7 と指す手もあったと思います。ルークを連結させてセンターに回せるようにし、さらに様子見をします。

11. Qd2 Nd4!?



ゲームが大きく動くきっかけとなった、問題の手です。指した直後、しまったと思いました。試合後の仲間内での簡単な検討でも、これはかなり悪いのではないかと指摘されました。(本譜の流れで、ポーンがすぐに落ちるため)しかし深く読んでいくと、そう単純に結論付けられるものでもないと思います。

12. Bxd4 cxd4 13. Nb5


これで黒は1ポーンを諦めなければいけません。その代わりに黒マスビショップをもらっているので、うまく黒マスの弱さを突くことができれば、ポーンの代償はある(きっとある、なきゃ困る!)と試合中考えていました。難しいのは、その具体的な方法を見つけることです。

13...e5!?


d4 を守り、代わりにd6 を差し出します。d6 のポーンを取ったナイトは、将来的にc4 で交換するぐらいしかなく、白のポーンストラクチャーは乱れます。それプラス黒マスの弱さが、1ポーンの代償になるのではないかと考えました。しかしコンピュータの推奨変化は全く別で、難解です。

13...Nc5! 14. Nbxd4 e5 15. fxe5 dxe5 16. Nf3 Ne6


これで1ポーンの代償が十分にあり!というのが、コンピュータの指摘です。ポイントはf4,d4 の弱さとc,d ファイルからのカウンターです。白がポーンをc3 に進めれば、代わりにd3 のポーンが弱くなります。このように言われれば、半信半疑ながら多少は納得できそうです。しかし、これが黒にとってベストだと正確に判断し、短い思考時間で選択するのは、ハイレベルな理解力が必要とされます。ただ、ここまで書いておきながら、本譜もさほど黒が悪くなりません。

14. Nxd6 Ba6 15. Nc4?!


私もこの手を見て、チャンスが到来したと感じました。14...e5 の前に予測した、黒マスの弱さに突け込みやすい形になります。私が一番恐れていたのは、15.b3! で、これならばc4 のナイトをbポーンで取り返すことができます。そのポーンストラクチャーでは1ポーンの代償が明らかではなく、黒は他のポイントを模索しなければいけなかったでしょう。

15...Bxc4 16. dxc4 Nc5


この後の展開を見ると、16...Qe7(△17...Rad8)が最も正確な手順でしょう。

17. Rad1 Rc8 18. b3 Qe7 19. Kh1?!


さらに白の緩手が入ります。19. fxe5 Rcd8 20. Nxd4 Qxe5 21. c3 Ne6 22. Kh1 Nxd4 23. cxd4 Rxd4 24. Qxd4 Qxd4 25. Rxd4 Bxd4 26. Rd1+/= ならば、白は安全に勝ちを目指せます。もちろん黒は、異色ビショップで粘るしかありません。

19...Rcd8 20. Nc1 exf4 21. Qxf4 Be5



この辺りで、黒は十分盛り返しているのではないかと感じていました。白の黒マスはスカスカで、白マスビショップは自身のポーンの内側に閉じ込められています。さらに黒マスを利用することができれば、黒からは十分な反撃が作れそうです。

22. Qf2 Ne6! 23. Nd3 f6!



試合後に仲間内で、23...Bb8 と退くほうが良いのではないか(狙いは...Qc7 からh2 のメイト)と指摘されましたが、それは間違いだと断言できます。白はクイーンの横利きで容易にh2 を守れるので、黒が優先すべきはe5 のマスをブロックして、白の白マスビショップの働きを抑えることです。

24. a4!


当然ですが、ビショップを取りません。24.Nxe5? fxe5 の形は黒がf4 のマスを完璧にコントロールし、白の白マスビショップは永久に籠の中です。そして24.a4 は黒の地味な狙い、...Qa3-Qxa2 を防いでいます。

24...g5?!



19手目以降はほぼ完璧な指し回しをしていた黒ですが、時間切迫からここでミスが出ます。もし白が誤ってe5 のビショップを取るようならば(Nigel がそのようなミスをすることはあり得ませんが)、g5 のポーンはf4 をサポートするためによく働きます。しかし、白がそうしない場合、この手は単にf5 を弱める不必要な存在です。

25. Qd2 Nf4 26. a5 Bb8


ビショップをe5 で取らせて問題ないことは十分理解していましたが、何を指して良いか分からず、ついビショップを下げてしまいました。この辺り、どうもプランが一貫していません。クイーンを重ねてh2 のメイトを狙うという単調なアイディアが、どうしても頭から消し去れなかったせいもあります。

27. axb6 axb6 28. Qb4 Bd6 29. Qxb6!


ビショップをb8 に退いた時点では、このポーンが取れるとは思っていませんでした。それはクイーンが二段目から離れれば、今度こそh2 のメイト狙いが出現すると読んでいたからです。しかしNigel はキングセンターに逃げてOK との判断を下しました。

29...Ne2?



残り時間5秒ほどまで考えた手が、全くの勘違いでした。私がこの試合で完全にダメな手と評価するのは、唯一この一手です。b6 のポーンが落ちて、白に2コネクテッドパスポーンができた以上、黒は待つのではなく、ダイレクトなアタックによる反撃を仕掛けるほかありません。しかし本譜の手は一瞬で攻めが止まり、何事もなく白が勝ちます。

黒が続けるとすれば、やはりh2 に飛び込む一手でした。29... Nxd3! 30. Rxd3 Qe5 31. Kg1 Qh2+ 32. Kf2 Qf4+ 33. Ke2 (33. Rf3 Qd2+ 34. Kg1 Bf4+/=) 33... Qh2 34. Rf2 Bg3 35. Rxd4 Bxf2 36. Kxf2+/=



白はルークを切り、3ポーンエクスチェンジにします。白にチャンスがありそうですが、キングの不安定さから、形勢が一二転する可能性も十分に考えられる局面です。

30. Rf2


なぜかこのような、単純な手が見えていませんでした。白のキングには攻めは届かず、黒のチャンスが完全に消滅します。残りは流して良いでしょう。

30...Ng3+ 31. Kg1 Bc7 32. Qc5 Bd6 33. Qc6 Rfe8 34. c5 Bf4 35. Nxf4 gxf4 36. b4 Qe5 37. Bf3 Re6 38. Qb5 1-0



最後はノーチャンスなので、リザインする代わりに時間が0になるのを待ちました。黒マスを利用する作戦は良かったはずですが、時間がなくなってから冷静になれず、プランをごちゃごちゃと混ぜてしまったのが敗因です。

ところでこのゲーム、d4 が落ちたところと結果だけしかチェックしないと、何事もなく私が負けたように見えます。しかし、ここまでの解説を読めば、実際は難解なポジションが多く、簡単に結論付けられないゲームだと思えます。そのことを局後に私に指摘したのは、解説の塩見さんぐらいでしょう。

私もd4 が落ちた際はまずいと思いましたが、本当にそうなのか、簡単に結論を出さずに疑ってかかるべきではないのか、という思考は、実は羽生さんとのこれまでの対局や、対話の中で学んできたことです。持ち時間の少ない状況で、正確に指せなかった未熟さは反省すべきですが、それでも面白いポジションがいくつもあり、勉強になったゲームでした。それでは、明日は羽生さんのゲームを、私なりに解説しようと思います。

2012/04/23

GM Nigel Short 30 boards simul at Kitasenju


Check Mate Lounge 翌日の昨日は、北千住でNigel Short 氏による、30面同時対局が開催されました。参加者の皆さん、運営スタッフの皆さん、お疲れさまでした。事前受付した30人の席は1か月ほどで埋まり、当日のドタキャンや大きなトラブルもなく、無事にイベントを終えられたことは、私にとって大変喜ばしいことです。

ただ一点、私の読みが甘かったために終了予定時刻をオーバーし、ベストゲーム解説ができなかったことは、参加者と見学者の皆さんに対し、申し訳なく思っています。Nigel はカナダでも30面指しに6時間ほどかかったそうで、今後はそれぐらいの時間をみて、スケジュールを組ませていただきます。

さて、今回の同時対局の結果ですが、Nigel の26勝4ドローでした。30面指しとは言え、Nigel クラスのGM からポイントを取るのは、容易ではありません。ドローを取った4名の皆さん、おめでとうございます!以下に4名の棋譜を公開しておきます。

Short, N - Kitano, T
Nigel Short Simul

1. d4 d5 2. c4 dxc4 3. e3 Be6 4. Na3 Nf6 5. Nf3 Bd5 6. Bxc4 e6 7. Qb3 b6 8. O-O Be7 9. Bd2 O-O 10. Rac1 Nbd7 11. Bxd5 exd5 12. Rfd1 Re8 13. Nb5 c5 14. dxc5 Nxc5 15. Qc2 Qd7 16. Nbd4 Rac8 17. Qf5 Qxf5 18. Nxf5 Bf8 19. Bc3 Nce4 20. Bd4 Ng4 21. Rxc8 Rxc8 22. Bxg7 Ngxf2 23. Rf1 Nd3 24. Bd4 Bc5 25. Nh6+ Kf8 26. Nxf7 Bxd4 27. Nxd4 Ke7 28. Nh6 Ne5 29. g4 Nd2 30. Rf5 Rc1+ 31. Kg2 Nec4 32. Rf7+ Ke8 33. Ndf5 Ne4 34. Ng7+ Kd8 35. Ne6+ Kc8 36. Nf5 Ne5 37. Rxa7 Rc2+ 38. Kh3 Nf3 39. g5 Rxh2+ 40. Kg4 Ne5+ 41. Kf4 Ng6+ 42. Kg4 1/2-1/2


Short, N - Umayabara, G
Nigel Short Simul

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. e3 c5 5. Nge2 d5 6. a3 Bxc3+ 7. Nxc3 b6 8. cxd5 exd5 9. Bb5+ Bd7 10. Bd3 O-O 11. O-O Nc6 12. Bc2 Ne7 13. b3 Rc8 14. dxc5 bxc5 15. Bb2 Bf5 16. Ne2 Ne4 17. Rc1 Qb6 18. Re1 c4 19. Bd4 Qa6 20. bxc4 dxc4 21. f3 Nc5 22. e4 Be6 23. Bxc5 Rxc5 24. Nf4 Ng6 25. Nxe6 Qxe6 26. Qd4 Rg5 27. Qe3 Ra5 28. Bd1 Ne5 29. Be2 Rc8 30. Rc3 h6 31. f4 Nd7 32. Rec1 Nb6 33. Qd4 Rac5 34. g3 Qe7 35. Kf2 Rd8 36. Qe3 Ra5 37. h4 Re8 38. Bf3 Qc7 39. Qd4 Rd8 40. Qe3 Re8 41. Qd4 1/2-1/2


Short, N - Sano, T
Nigel Short Simul

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. Ng5 d5 5. exd5 Na5 6. Bb5+ c6 7. dxc6 bxc6 8. Qf3 h6 9. Ne4 Nd5 10. Ba4 Be7 11. d3 Qc7 12. O-O O-O 13. Nbc3 Be6 14. Bd2 Nb7 15. Bb3 Rad8 16. Rae1 Kh7 17. Qh5 Kg8 18. Ng3 f5 19. Bxh6 Bf7 20. Qxf5 gxh6 21. Nxd5 cxd5 22. Rxe5 Rd6 23. d4 Na5 24. f4 Nxb3 25. axb3 Bf6 26. c3 Qc8 27. Qd3 Bxe5 28. dxe5 Rb6 29. f5 Rxb3 30. Qe3 Qc7 31. Kh1 Qb6 32. Qe1 Rxb2 33. h3 Rb8 34. e6 Rb1 35. exf7+ Kxf7 36. Qe2 Rxf1+ 37. Nxf1 Qd6 38. Qd3 Re8 39. Ne3 a5 40. f6 Qxf6 41. Qxd5+ Qe6 42. Qf3+ Qf6 43. Nf5 Re1+ 44. Kh2 Qe5+ 45. Ng3+ Kg6 46. Qd3+ Kf7 47. Qd7+ Kf8 1/2-1/2


Short, N - Baba, M
Nigel Short Simul

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6 6. Qf3 e6 7. Be2 Be7 8. Qg3 b5 9. Bf3 b4 10. Nce2 e5 11. Qxg7 Rg8 12. Qh6 exd4 13. e5 dxe5 14. Bxa8 Bf5 15. Ng3 Bxc2 16. O-O Nbd7 17. Qd2 Bg6 18. Bc6 Qc7 19. Ba4 h5 20. f4 Ne4 21. Qe1 Nxg3 22. hxg3 Bd3 23. fxe5 Bxf1 24. Kxf1 Kd8 25. Bf4 Qc4+ 26. Kg1 d3 27. Rc1 Qd4+ 28. Be3 Qxb2 29. Bxd7 Kxd7 30. Qf1 Qxe5 31. Qxd3+ Qd6 32. Qf5+ Qe6 33. Qf3 Rb8 34. Rd1+ Ke8 35. Bf2 Qg6 36. Rd5 Qg4 37. Rxh5 Qxf3 38. gxf3 Bd8 39. Bd4 1/2-1/2



馬場さんのゲームは唯一、会場スクリーンで表示させていただきました。会場の皆さんにゲームをチェックされるというプレッシャーの中、大変素晴らしいゲームを見せていただけたと思います。ご協力、ありがとうございます!

さて、この週末の二日間で、GM Nigel Short 氏を招いたイベントは終了となります。今回のイベントが、日本のチェスにどのような影響を与えるかはまだ分かりませんが、きっと良い方向に大きく働くと信じています。また今後も、GM を招いたイベントを企画していこうと思いますので、どういった内容のイベントを見たいか、そして参加したいか、自由なご意見をお待ちしています。


2012/04/22

Check Mate Lounge - unexampled chess event in Japan -


本日、南青山のクラブ、Velours で日本初のビッグチェスイベント、Check Mate Lounge が開催されました。本イベントのメインである、GM Nigel Short の2面指しの結果は、私が負け、羽生さんがドローでした。羽生さんは相変わらずお強いですね!申し訳ないですが、棋譜は後日の公開と致します。

2面指しの個人的な結果は残念でしたが、イベント全体としては大成功だったと言えるでしょう。一般来場客とNigel、羽生さんのブリッツ対決、その後のパーティーには、会場に足を運んでくださったお客様の多くが、満足してくださったと思っています。そしてその全ての様子を中継したニコニコ生放送は、10万人を超える視聴者が集まり、かつてない規模でチェスイベントのアピールができました。本イベントに協力してくださった、ゲストのGM Nigel Short, 羽生善治さんのお二人、Check Mate Lounge 実行委員会のメンバーの皆さん、解説役を引き受けてくださった塩見さん、来場者とニコ生視聴者の皆さん、その他多くの方々に心より感謝致します。次回はさらに皆さんにご満足していただける企画を、検討していこうと思います。

明日は(もう今日ですが)北千住での、30面同時対局イベントです。それが終わった後、また細かい振り返りをしようと思います。皆さん、今日はお疲れ様でした!

2012/04/20

夜明け前


とうとうCheck Mate Lounge 前日となりました。昨年の秋にイベントの構想が持ち上がって以来、ここまであっという間だったように感じます。今日はNigel を無事に滞在先まで送り届け、会場での準備も最終調整を残すのみとなりました。明日のCheck Mate Lounge が無事に成功すれば、過去日本で行われたチェスイベントの中でも、最大級の物となるでしょう。一人でも多くの方に、日本での新しい形のチェスイベント、というアピールができれば良いと思います。もっと色々と語りたいのですが、それはイベント終了後にします。

それでは皆さん、明日はCheck Mate Lounge を楽しみましょう!夕方以降のNHK ニュースで扱われる可能性もあるので、パソコンだけでなく、テレビでもこのイベントをチェックしてみてください。

2012/04/19

Short wins BCC Open

The Week In Chess より

タイの首都、バンコクでBangkok Chess Club Open に出場していたShort は、最終戦をドローで締め、8/9 という素晴らしい戦績での単独優勝です。ライバルであった2人の2600GM 相手に白を引き、両方勝ったことでトーナメントの行方を決めました。特にGibraltar で共に競り合ったHow Yifan を下したことは、彼にとっても感慨深いものだったのではないかと予想します。

Short, Nigel D (ENG,2697) - Hou, Yifan (CHN,2639)
12th BCC Open (7)

1. d4 Nf6 2. Nf3 e6 3. c4 b6 4. e3 Bb7 5. Bd3 d5 6. O-O Bd6 7. b3 O-O 8. Bb2 Nbd7 9. Nc3 a6 10. Qc2 dxc4 11. bxc4 Bxf3 12. gxf3 c5 13. d5 exd5 14. cxd5 b5 15. Be2 c4 16. Ne4 Nxe4 17. fxe4 Qe7 18. f4 f6 19. Rad1 Rac8 20. Bd4 Nc5 21. Bxc5 Bxc5 22. Bg4 Bxe3+ 23. Kh1 f5 24. Bxf5 Rcd8 25. e5 Kh8 26. Qe4 Qc5 27. Bxh7 c3 28. Bg6 c2 29. Qg2 Bxf4 30. Bxc2 Qe7 31. d6 Qe6 32. Rde1 g5 33. Rf3 g4 34. Rf2 Qh6 35. Qxg4 Bxe5 36. Rxe5 Rxf2 37. Rh5 Rxd6 38. Rxh6+ Rxh6 39. Qc8+ Kg7 40. Qc7+ Rf7 41. Qg3+ Kf8 42. h4 Rhf6 43. Bb3 Rf1+ 44. Kg2 R7f6 45. h5 1-0


Queen's Indian 4.e3!? の変化とは驚きです。4.g3 と比較すれば、トップレベルではほとんど指されません。これは日本でも何を指してくるか、全く予想できないですね。

そして本人のFacebook の書き込みによれば、(当然ですが)この大会で自身のレイティングを2700台に戻したとのことです。久々の2700復帰に加え、今年中に自身のベストレイティングである、2712 を突破する可能性もあります。

これほどのレベルのプレーヤーが日本に来てくれることは、大変幸運だと感じます。Short は明日来日し、明後日に表参道で私と羽生さんとの対戦です!私とShort との出会いなどは、時間があればニコニコ生放送の中で語ろうと思いますので、お楽しみに!

12th BCC Open Final Standing

2012/04/17

Chess-playing Japanese Shogi champions


Chess-playing Japanese Shogi champions

すでにご存じの方も追いかと思いますが、日本に関係する記事がChessbase のニュースに掲載されました。昨年秋のフランスで行われた、国際将棋フェスティバルに関してです。もちろん羽生さんと森内さんが、フランスチャンピオンのVachier-Lagrave と同時対局したことにも触れられています。

この記事の中で面白いのは、オランダチャンピオンのAnish Giri や、Vachier-Lagrave が将棋に興じる様子が描かれていたり、将棋の棋譜が掲載されている点です。私は将棋はさほど詳しくないのですが、フランスのWGM Almira さんが(2枚落ちとは言え)森内さんに勝った棋譜は面白かったです。最後の詰みも何とか読めました。

今週末に迫ったCheck Mate Lounge もそうですが、チェスプレーヤーと将棋棋士の交流により、多くの人がこれらのゲームに興味を持ってくれると嬉しいですね。昨年の国際将棋フェスティバルの記事がChessbase に出たことは、日本人にとって大きなメリットになると思います。

2012/04/16

Check Mate Lounge web site updated


Check Mate Lounge の公式HP が更新されました。トップ画像は今までの黒ベースの物から、白ベースの物へとチェンジされ、がらっと雰囲気を変えています。

今回、追加された情報も多くあります。、ニコニコ生放送の解説は元日本チャンピオンの塩見さんにお願いしており、まだ名前は伏されていますが、女性MC とのトークが期待されます。試合が終わり次第、私も解説ブースへと移動しますので、当日どんな雰囲気で生放送が進むか、大変楽しみにしています。

そしてなんといっても、今回の更新の目玉は、プレーする私たち3名の代表的なゲームが3試合ずつ公開されたことです。ゲームのヴュワーは完全オリジナルの物で、当日もこのデザインでゲームをライブ中継する予定です。ニコニコ生放送と併せ、こちらもご覧いただければ嬉しいです。

Check Mate Lounge 開催まであと5日です。本日、いくつかのニュースサイトでも取り上げられ、ますます注目を集めています。是非、どなたもこのビッグイベントをお見逃しなく!

Check Mate Lounge Official HP
Yahoo! News
livedoor News

2012/04/14

Bangkok Chess Club Open 2012


Bangkok Chess Club Open 2012

今年も灼熱の国、タイで国際トーナメントが開催されています。私はこれまで四年連続で参加してきましたが、今年はCheck Mate Lounge の準備のため、参加を断念しました。今年は私以外にも、日本人参加者はいないようです。

昨年はイングランドのShort, ドイツのGustafsson, スペインのVallajo Pons ら強豪GM がこぞって参加したため、大きな注目を集めましたが、今年も負けない面子です。Vallajo Pons の名前は消えましたが、代わりに女子世界チャンピオン Hou Yifan が入りました! 今日で前半3R が終わり、彼女を含めた数名が三連勝でトップを走っています。

Short は3R で下相手に0.5P 落としましたが、Hou Yifan を追う展開は2月のGibraltar と同じです。 是非、優勝して良い気分のまま日本に来て下さい!

2012/04/13

CML new infomation

from J-WAVE

昨日はJ-WAVE のTOKYO MORNING RADIO に兄と出演し、Check Mate Lounge の宣伝をしてきました。写真は兄の穣二と、DJの別所さんとの一枚です。事前のお知らせしてた方からも、そうでない方からも、放送後に色々とメッセージをいただきました。ありがとうございます!もう一度、ラジオ番組への出演機会をいただけるようであれば、もう少し緊張せずにしゃべれるよう頑張ります(笑)

そしてこの番組内で初公開した情報ですが、Check Mate Lounge はイベントの模様をニコニコ生放送で完全中継します。本日、ニコニコ動画に配信用のページが公開されたので、そちらのリンクも貼っておきます。アカウントをお持ちでない方は、新規登録したうえでログインしてください。

ニコニコ生放送 - Check Mate Lounge -

e+ でのチケットはまだわずかに残っているので、イベントを直接ご覧になりたい方にはチケットをご購入していただき、遠方の方やスケジュールが合わない方には、ニコニコ動画で会場の様子やゲームの中継を楽しんでいただきたいと思います。Check Mate Lounge 本番まであと8日です!

2012/04/12

Japan Open 2, the 2nd stage


先程、Chess.com のトーナメント、Japan Open 2の第2ステージが開始されました。私はこの3カ月で汐口君にレイティングトップの座を譲ったので、第2グループへと転落。同グループのメンバーは元女子日本代表の内田さんや、東北大の戸川君らになりました。各グループとも5名でのダブルラウンドロビン、上位2名が次ステージに進出します。

主催者兼、TDである汐口君の事前の予想では、私と桑田君が同グループになるはずでしたが、桑田君は汐口君と同じ第1グループへ。第1ステージ同様、主催者は苦労しそうなペアリングです。また、第3グループも誰が勝ち抜けになるか予想できない、面白いメンバーです。

私はこれから数カ月、ハンガリーでのトレーニングの合間を縫って、次ステージ進出を目論もうと思います。それでは第1ステージを突破した皆さん、第2ステージもよろしくお願いします。

2012/04/11

Saturday Lecture in Apr - Mating Net -


今週土曜はチェスセンターでの、私の最後のレクチャーです。来月からのハンガリー修行に向け、国内の仕事をまとめるのは当然のことなのですが、やはり最終回となると寂しいものです。

さて、今回のテーマは、勝ちの基本でありながら難しい、チェックメイトについてです。実戦では、メイトのチャンスは実に思いがけないところから現れますが、私たちはそれをしばしば見逃してしまいます。メイトの網をどのように張り、相手キングを追い詰めていくかを考えましょう。

White to move

White to move

【日時】 2012年4月14日(土) AM 10:00~12:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 メイティングネット
【参加費】 1000円(午後のサタデートーナメントに参加する方は500円)
【参加資格】 なし

2012/04/10

TOKYO MORNING RADIO


突然ですが、ラジオ番組に出演することになりました。4/12(木)朝8:00過ぎから、J-WAVE のTOKYO MORNING RADIO に兄と出演です。Check Mate Lounge の宣伝を主にすることになると思いますが、詳しくは明日の打ち合わせで決まりそうです。ラジオ出演は実に5年ぶりなので緊張しますが、とても楽しみにしています。

J-WAVE

2012/04/08

First Saturday at Budapest


昨日からハンガリーのブダペストでは、4月のFirst Saturday Tournament が始まったはずです。私は来月からハンガリーに滞在し、四回連続の参加予定ですが、日本の皆さんはこの大会のシステムにあまり詳しくないようなので、改めてご説明しようと思います。まずはIMノームのシステム説明から。(面倒なのでGM ノームの説明は省きます)

IM ノームについて

・チェスのIM(International Master)というタイトルを獲得するには、IM ノームを三つ獲得したうえ、FIDE のレイティングを2400に乗せる必要があります。
・IM ノームは9試合のトーナメントでならば、3人以上のIM、5人以上のタイトルホルダーと対戦し、レイティングパフォーマンスが2450を超えると獲得できます。
(パフォーマンスの計算は複雑ですが、例えば9人の対戦相手の平均が2450で、4.5/9 ならば2450となります。)
・他にも細々とあるのですが、説明が長くなりすぎるのでFIDEのリンクを参照してください。→ FIDE Handbook

First Saturday について

・First Saturday とは毎月第一土曜から始まるトーナメントで、ブダペストで一月を除き、年に十一回開催されています。
・クラスは上から三つに分けられ、GM クラス、IM クラス、FM クラスと呼ばれます。全てFIDE 公式戦で、GM クラスではGM ノーム(+IM ノーム)、IM クラスではIM ノームを獲得できます。
・各クラスとも事前申し込みで参加者を募集し、ラウンドロビン(総当たり)、もしくはダブルラウンドロビン(同じ組み合わせで、白黒をそれぞれ1回ずつ持つ総当たり)で試合をします。
・試合数は参加者数によって、9-11ラウンドの間で変化します。
・GM クラス、IM クラスでは対戦相手の平均レイティングが事前に分かるため(総当たりなので)、始まる前から何ポイント取ればノーム獲得かが分かります。(そのようなトーナメントをGM トーナメント、IM トーナメントと呼びます。)
・必ずノームを取れるトーナメントにするために、主催者がタイトルホルダー数、平均レイティング等を調整してクラスを作ります。
・IM クラスで優勝しても、パフォーマンスが2450に届かなければ、(ノームに必要なポイントに届かなければ)当然IM ノームは獲得できません。

書こうと思えばいくらでも書けるのですが、とりあえずはこんなところでしょうか。かつて、私と馬場さんで2010年3月のFirst Saturday IM Class にチャレンジしましたが、そのときは色々と事件が起こり、私が1つ勝ち越し、馬場さんがハーフで、ノームには遠く及びませんでした。2年前の様子を知りたい方は、Behind the Scene をご覧ください。

IM を持っていないプレーヤーには、必ずIM ノームのチャンスがあるのが、IM クラスの(IM トーナメントの)特徴ですが、優勝してもノームに届かない可能性があるというのが落とし穴です。実際、今年の3月のIM クラスの内容をチェックしてみると、参加者11人のラウンドロビン(毎ラウンド1人bye)で、IMノームには7.5/10必要です!そして優勝者は7Pで、すでにIM を持っているプレーヤーでした。

First Saturday では楽にノームが取れると言う人もいますが、決してそんなことはなく、皆、苦労して戦っています。私もブダペストで四カ月過ごす中で、IM ノーム獲得を目指すのはもちろんのこと、たくさんのことを学んでこようと思います。

2012/04/06

Istanbul Chess Olympiad Official Website


Chessbase.com のニュースで本日見つけました。9月にトルコで開催されるチェスオリンピアードの公式サイトが公開されています。半年を切っているので、そろそろだと思っていました。

Istanbul Chess Olympiad Official Website


公式サイトには色々と情報が出ていますが、一番気になるであろうスケジュールのみ、こちらではお伝えしようと思います。

08/27 Arrival, Captains's meeting, Opening
08/28 15.00 1st Round
08/29 15.00 2nd Round
08/30 15.00 3rd Round
08/31 15.00 4th Round
09/01 15.00 5th Round
09/02 Free Day
09/03 15.00 6th Round
09/04 15.00 7th Round
09/05 15.00 8th Round
09/06 15.00 9th Round
09/07 15.00 10th Round
09/08 Free Day
09/09 11.00 11th Round, Closing
09/10 Departure

全11ラウンドで、開始時間は最終戦以外15時と大変分かりやすいスケジュールです。休みが2日間というのもちょうど良いでしょう。私や菊池さんのように日本から直接飛ばないメンバーにとっては、このスケジュールが出たことで、安心して航空券が抑えられそうです。

イスタンブールオリンピアードの日本代表は、岩崎、小島、南條、渡辺、Alex の5人だと今のところ聞いています。(間違いであればすみません。)中国では現在、代表を決める試合がおこなれていますし、各国の代表もこれから続々と出そろうでしょう。7月頃にはChessdom 辺りで各国のメンバー発表がありそうなので、それを楽しみに待っていようと思います。

2012/04/05

Online Chess League - A New Closed Training -


Online Chess League


汐口君の企画で、ネット上での新しいトレーニングがスタートします。こちらのHPでは1月からChess.com でスタートした、Japan Open 2 の動向もチェックすることができます。JO2はそろそろ二次予選がスタートですね。

現在、新しいトレーニングの企画にも参加希望者が集まっており、来週にも試合がスタートするとの話です。ちなみに私は少し忙しくなりそうなので、この話は断ってしまいました。参加を希望される方は明日までに連絡を!とのことです。この企画が忙しい社会人や地方のプレーヤーにとって、良いトレーニングの場になることを願っています。

2012/04/04

Check Mate Lounge チケット販売情報


皆さん、ずいぶんとお待たせしてしまいましたが、本日Check Mate Lounge の詳細やチケット情報が公開されました。公式のトップページの構図から、私と羽生さんの対局だと思われた方もいらっしゃるようですが、正しくは私とNigel Short、羽生さんとNigel Short の2面同時対局(Clock Simul)がメインです。勘違いをさせてしまい、申し訳ないです。

当日の入場チケットのお買い求めは、以下のリンクからe+に跳んでお願い致します。チケットの販売日程は、2012/04/09~04/18 です。私に直接言ってもチケットは手に入りませんので、お気を付け下さい。

Check Mate Lounge チケット情報


Check Mate Lounge の公式HP もそろそろ更新が入ります。皆さんがあっと驚くであろう仕掛けも準備してありますので、更新をお楽しみに!

Check Mate Lounge 公式HP

2012/04/03

百傑戦 Games and Analysis Vol.4

4.5/5 で迎えた百傑の最終戦。相手はもちろん羽生さんでした。2010年からお付き合いがありますが、公式戦での対局は初めてです。

Habu, Y - Kojima, S
Hyakketsu (6)

1. d4 e6 2. c4 Nf6 3. Nf3 d5 4. g3 Bb4+ 5. Bd2 Bd6!?



5...Be7 と比較すると珍しい変化ですが、2009年頃からトッププレーヤーの間でも指され始めました。5...Be7 同様、黒は堅い形を築くことができます。

6. Bg2 c6 7. b3 Nbd7 8. Nc3 O-O 9. O-O b6 10. Qc2 Ba6?



早くも勝負の分かれ目が訪れました。10...Bb7 ならば白が面白い展開だと考え、局面を複雑にしようとしたのが裏目に出ました。10... Bb7 11. Rad1 Qe7 12. e4 Nxe4 13. Nxe4 dxe4 14. Qxe4 Nf6 15. Qh4 c5= と進めば黒は満足できます。

11. e4 dxc4?!


10...Ba6 と指した時点で2ピースルークにするつもりだったので、ここで方針転換は難しいですが、まだ以下の変化のほうがベターです。
11... Nxe4 12. Nxe4 dxe4 13. Qxe4 Bb7 14. Rad1+/=

12. e5 cxb3 13. axb3 Bxf1 14. Rxf1 Be7 15. exf6 Bxf6 16. Ne4!+/-



私が見落としていたのは、d6 の弱さです。c6 のポーンはすばやく...c5 を突くことで解消できると考えていましたが、d6 がセットでは弱点を解消しきれません。

16...Rc8 17. Nd6 Rc7 18. Bf4 Nb8


18... g5 19. Be3 Be7 20. Ne4 h6+/- とポーンを守る手ももちろん考えましたが、キングの守りを薄くしているため、本譜とどちらが良いかの比較は難しいところです。

19.Ne4 Rc8 20. Nxf6+ Qxf6 21. Bxb8 Rxb8 22. Ne5 c5



c6 のポーンをただで取られるより、3ポーンピースのほうがチャンスがあると考え、エクスチェンジを捨てます。しかし、この後の羽生さんの指し方は実に正確でした。

23. Nd7 Qxd4 24. Rd1!


エクスチェンジを取るより先にルークをセンターに回すことで、f6 にクイーンを下がらせません。

24...Qb4 25. Nxb8 Rxb8 26. Rd7


基本通り、センターに回ったルークは7段目に突入します。

26...a5 27. h4 h5


27...g6 28. h5 ではキングの上がるマスを作った意味があまりなく、ジリ貧で負けてしまいます。

28. Be4!



ここでビショップも攻めに参加させます。次にBh7+ - Bg6!がスレットになっていることにようやく気がつき、f7 を守りにいきます。

28...Qe1+ 29. Kg2 Qa1 30. Bh7+! Kf8 31. Qd3


ビショップでキングをセンターにいぶり出した後は、クイーンでとどめを刺しにいきます。

31...Qe5 32. f4 Qf6 33. Qd6+ Ke8 34. Bg8! 1-0



最後はキュートな手で終わりました。観戦者には白熱した戦いに見えたかもしれませんが、正直なところ一方的な負けです。また腕を磨き直して再戦の機会を心待ちにします。
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