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2022/07/30

Chennai Olympiad R1 Djibouti - Japan

この日の午前中、シャツやロゴ入りチェスセットなど、記念品をたくさんいただきました。

オープニングセレモニーが行われた28日から一夜明け、オリンピアード初戦を迎えました。オープンチームはジブチ、女子チームはスペインと、私の知る限りそれぞれ初めての顔合わせです。ジブチは2000未満のレイティングを持つプレーヤーが3人、URが2人という国ですので、日本はポイントを落とすわけにはいきません。ボードオーダーの提出が上手くいかなかったのか、試合直前で3Bのプレーヤーが入れ替わるというハプニングもありましたが、定刻の15時を少し過ぎたころ、ゲームは始まりました。

Kojima, S (IM, JPN, 2346) - Abudallah Hossein, A (DJI, UR)
Chennai Olympiad (1)

1. e4 e5 2. Nf3 Nf6 3. d4

Petrov に対してはModern Variation を用意していました。

3... Nxe4 4. Bd3 d5 5. Nxe5 Bd6 6. O-O Be6?!


この手は初めて見ましたが、この位置のビショップは将来的にターゲットになる可能性があり、あまりよくは思えません。6... 0-0 7. c4 Bxe5 8. dxe5 Nc6 がメインラインです。

7. Nd2 Nf6 8. Re1 Nbd7 9. f4!

Tuさんからはもう少し早いタイミングでどうかと提案されましたが、私は黒のNb8-Nd7 を見て、e6 のビショップが行き場をなくしたところでf4-f5 を狙うのが良いタイミングだと考えました。

9... g6 10. Ndf3 c6? 11. Nxf7!


元々このタクティクスを見越していたわけではなく、f4-f5 を見せることでg7-g6 を誘い、黒マスが弱くなればNd2-Nf3-Ng5 が指しやすいだろうくらいの認識でした。黒はこのタクティクスを食らわないために10... 0-0 と指すべきですが、それでも11. Ng5 と潜り込み、白はキングサイドに攻撃のチャンスを求めて大きく優勢です。

11... Kxf7 12. Ng5+ Kg8 13. Nxe6 Qb6 14. c3

白は1ポーンアップのうえ、黒キングをかなり悪い位置に押し込んで勝勢です。d4 への反撃は少し気になるところですが、ここは本譜でも14. c4! でも良かったでしょう。

14... c5 15. dxc5! Nxc5 16. Be3!


a7-g1ダイアゴナルを開くのは少し危険にも見えますが、遅れていた黒マスビショップでがっちりとガードします。c5 にきたナイトをピンすることで、b2-b4 からさらなる駒得のチャンスも狙っています。

16... Re8 17. Bd4! Nfe4 18. Bxe4

18. Rxe4!? dxe4 19. Bc4 の可能性は試合中に気づいていませんでした。本譜でも2ポーンアップに駒得を拡大したうえ、次にNe6-Nc5 がスレットになっているため、黒は困っています。

18... dxe4 19. Rxe4 Qc6 20. Nxc5 Rd8 21. Qb3+ 1-0


他のチームメイトも問題ない勝利で、オープンチームは初戦、ジブチを4-0で下しています。久々のオリンピアードで良いスタートを切れて一安心です。

Open R1 Djibouti - Japan 0-4

Ali Djama, Mohamed (DJI, 1629) - Tran, Thanh Tu (CM, JPN, 2376) 0-1
Abdallah Houssein, Ali (DJI) - Kojima, Shinya (IM, JPN, 2346) 0-1
Mohamed, Ali Dima (DJI, 1582) - Bibby, Simon (FM, JPN, 2147) 0-1
Omar, Aden Omar (DJI) - Kobayashi, Atsuhiko (JPN, 2156) 0-1

Women R10 Japan - Spain 4-0

Sakai, Azumi (WCM, JPN, 1759) - Vega Gutierrez, Sabrina (IM, ESP, 2366) 1-0
Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782) - Matnadze, Ana (IM, ESP, 2406) 1-0
Misawa, Yuki (JPN, 1587) - Calzetta Ruiz, Monica (WGM, ESP, 2230) 1-0
Arai, Yuki (JPN, 1495) - Eizaguerri Floris, Maria (FM, ESP, 2176) 1-0


女子は4-0でスペインに敗れましたが、ポイントを取れそうなゲームもありました。2Rはポイントを取れそうなチームとの対戦ですので、期待できると思います。今日はオープンチームが5人中4人GM のリトアニア、女子がミャンマーとの対戦です。


それでは今日の2Rも頑張ってきます! ライブはchess24 がエラーで見づらかったようなので、chess.com に切り替えておこうと思います。NCSでの実況中継と併せてご覧いただけると嬉しいです。本日も応援をよろしくお願いいたします。


毎日昼食には、チェスをモチーフとしたケーキが登場しています。

2016/12/17

London Chess Classic 2016 Vol.2

Classic セクションが終了する前に、参加資格なしのOpen セクションが終了しました。9R を終えて単独優勝を果たしたのは、フランスのトップGM Bacrot です。8R でトップを走っていた、インドのAravindh を下しての逆転優勝でした。ゲームの紹介は、7R のBogner 戦にします。

Bacrot, E (GM, FRA, 2689) - Bogner, S (GM, SUI, 2564)
London Chess Classic FIDE Open (7)

1. e4 e5 2. Nf3 Nf6 3. Nxe5 d6 4. Nf3 Nxe4 5. d4 d5 6. Bd3 Bd6 7. c4 c6 8. O-O O-O 9. Nc3 Nxc3 10. bxc3 dxc4 11. Bxc4 Bf5 12. Re1



Petrov Defence に対してどのラインで勝ちを目指すかは、1. e4 プレーヤーの悩みどころです。私も3. d4 のModern Variarion や、5. Nc3 も試してきましたが、Bacrot はメインラインで勝負します。10手目のナイト交換により、ポーンストラクチャーを非対称になり、互いに主張するポイントができました。

12... Nd7 13. Bg5 Qa5 14. Qd2 Nb6 15. Bb3 Nd5 16. Bxd5!?


Bacrot はビショップナイトの交換をしても、eファイルを抑えることで主導権を握ろうとします。

16... cxd5 17. Be7! Bxe7 18. Rxe7 b6 19. Rae1 Rac8 20. Nh4!



ここからの攻防がこのゲームの一番面白いポイントです。白はc3 のポーンが弱点になっていますが、それを守らずにナイトで仕掛けます。黒はビショップをどこに逃がすか迷うところでしょう。

20... Be4


20... Be6 21. R1xe6! fxe6 22. Qg5 Rf7 23. Nf5! exf5 24. Rxf7 Kxf7 25. Qxf5+ Ke7 26. Qxc8 と進めば、白に少しアドバンテージがあるでしょう。

21. f3 Qa3 22. Re5 f6 23. Rh5 g6 24. fxe4!



Bacrot は勝負をかけ、エクスチェンジサクリファイスを決行します。fファイルが開き、f5 にナイトの侵入を許すようであれば、黒キングは非常に危なくなるでしょう。

24... gxh5 25. Re3!


c3 を守りつつ、3段目を移動して黒キングを狙うルークは非常に強力です。

25... dxe4?



25... Kh8! 26. exd5 でも白は十分にエクスチェンジを捨てた代償がありそうですが、黒キングへの決定的なアタックはすぐにありません。

26. Rg3+ Kf7 27. Nf5 Ke8 28. c4!


3段目を開き、クイーンをアタックすることで、黒クイーンをa3-f8 のダイアゴナルから外し、Nf5-Nd6 を実現し、黒キングを攻撃します。

28... Qa5 29. Nd6+ Kd7 30. Rg7+ Kc6 31. Qe3 Rce8 32. Nb5 1-0



白がRg7-Rc7 のメイトスレットを作れば、黒はどうすることもできません。鮮やかな勝利でした。

そして、Bacrot と並んで7.5/9 でフィニッシュとなったのは、同じくフランスのGM Maze です。彼は3,4R で2400台にドロー、負けとなり、この大会は完全に沈んだものと思っていましたが、そこから驚異の5連勝で上位まで戻ってきました。フランスGM の1,2 フィニッシュでOpen セクションは幕を閉じ、現在はGM からUR までが入り混じる、Super RapidPlay がスタートしています。参加者には是非最後まで、このロンドンのイベントを楽しんでもらいたいですね。

2014/03/05

Cappelle la Grande 2014 5th round - Nanjo. R vs. Lalic. B -


昨日の予告通り、5R の南條 - Lalic戦の棋譜を公開しておきます。昨日の記事の最後に追記しようかとも思っていましたが、せっかくなので今夜の記事のメインで扱います。南條くんは白を持ち、クロアチアのベテランGM Lalic Bogdan に挑みます。

Nanjo, R (CM, JPN, 2307) - Lalic, B (GM, CRO, 2491)
Cappelle la Grande 2014 (5)

1. e4 e5 2. Nf3 Nf6!?



Petrov Defence は黒が1. e4 に対して、丁寧にイコアライズを目指すオープニングとして、トップGM たちにも好まれます。もし、このオープニングでドローを確保することができるのであれば、黒は1. e4 をあまり恐れなくても良いでしょう。しかし、格下相手に勝ちにいこうとした場合、適切なチョイスであるかはやや疑問です。

3. Nxe5 d6 4. Nf3 Nxe4 5. Nc3


私も1. e4 を指していた時代、Petrov に対してどうアドバンテージを取りにいくかには、多少頭を悩ませました。5. d4 d5 5. Bd3 Be7 と進むメインラインは、ポーンが対称形であるために、白がアドバンテージを築くには多少の工夫が必要です。そこで近年は、この5. Nc3 からナイトを交換しにいき、ダブルポーンを作ってもポーンストラクチャーを非対称にする変化が、白で勝ちにいくには良いチョイスだと考えられています。(もちろん、メインラインはメインラインで勉強になることが多いため、1. e4 プレーヤーは一度は調べてみるべきだと思います。)

5... Nxc3 6. dxc3 Be7 7. Be3 O-O 8. Bd3



南條くんの中にはPetrov 対策のレパートリーもあると思いますので、この手も研究済みなのでしょう。私であれば、8. Qd2 からまずはキャスリングを済ませておき、黒の駒組みを見て白マスビショップの位置を決めたいところです。

8... Nd7 9. Qe2 Nc5 10. Bxc5 dxc5 11. O-O-O Bd6 12. Rhe1 g6


黒は白マスビショップを展開したいところですが、Qe2-Qe4 が、b7 取りとh7 メイトのダブルスレットになるため、先にそれを防いでおきます。

13. Kb1 Bg4 14. h3 Bxf3 15. Qxf3 Rb8



この辺りで、私はLalic の考えが大体わかりました。彼はすでにドローで満足するつもりなのでしょう。Petrov というオープニングチョイス、そしてダブルビショップを消しても、異色ビショップを残すという判断で、すでにドロー狙いであることが分かります。早々にオファーをしないのは、カペルでは20手未満の合意ドローが禁止されているためです。(今年もそうですよね?)

16. h4?


南條くんは勝つためにシャープなポジションを求めるプレーヤーですので、このポーンサクリファイスをするのも理解できます。しかし、このポジションではやや焦りすぎで、センターに先にルークをまわしていること、白のビショップのほうが相手キングを狙いやすいことを利用して、丁寧にゲームを進めるべきでしょう。16. Bc4 Kg7 17. Re3+/= ぐらいで、まだ白にわずかなアドバンテージがあると考えられます。

16... Qxh4! 17. Re4 Qg5 18. Rh1 h5 19. Reh4 f5!=/+



g2-g4 からhファイルをこじ開けるアイディアさえ防げば、オープンになったhファイルからの攻撃はさほど怖くありません。単純ですが、Lalic の冷静な判断です。

20. a3 c6 21. Be2 Kg7 22. Qd3 Rbd8 23. g3 Be7 24. Qc4 Qd2 25. R4h2 b5 26. Qe6 Qd6 27. Qe3 Bf6 28. Bf3 Rfe8


10手少し前までは、ルークによってセンターのオープンファイルを支配していたのは白でしたが、今は完全に立場が逆転しています。白はルークをhファイルから戻すしかなく、1ポーン分の不足を補って戦うのは難しい状況です。

29. Qc1 b4 30. axb4 cxb4 31. Rd1 Qc5 32. cxb4 Qxb4 33. c3 Rxd1!?



Lalic はクイーンを交換したエンドゲームに持ち込めば、すでに勝ちだと踏んだのでしょう。確かに白はルークの位置が悪く、粘るのは難しそうに見えます。

34. cxb4 Rxc1+ 35. Kxc1 Rb8 36. Kc2


ここは、36. Bxc6 Rxb4 37. f3 (この2段目を開くアイディアで、黒の37... Rc4+ をうまく防いでいるように見えますが...) 37... Be5! 38. f4 Rc4+ 39. Rc2 Rxc2+ 40. Kxc2 Bd4! (狙いはBd4-Bf2 からg3, f4 のポーンを取ってしまうこと) と進めても、黒勝ちでしょう。

36... Rxb4 37. b3 c5 38. Bd5 a5-+



ルークが消えていればまだしも、この2ポーンダウンのエンドゲームは白にとって絶望的です。

39. Rh1 f4 40. gxf4 Rxf4 41. f3 Rd4 42. Be4 c4 43. Rb1 c3 44. Bd3 Rh4 45. Be4 Rh2+ 46. Kd3 h4 47. Ra1 Rd2+ 48. Ke3 h3 49. Rxa5 Bd4+ 50. Kf4 h2 51. Ra1 c2 0-1


GM たちを相手にドローを続けていた南條くんですが、4戦目で力尽きました。それでも不正確なポーンサクリファイスは、強気に勝負にいった結果であることを考えれば、さほど悪くはないかもしれませんね。南條くんは次になぜか1600台との試合ですので、ここをさっくり勝って、また上を相手に奮闘してほしいと思います。今夜の試合が終われば、カペルも2/3 を消化したことになります!

ちなみに昨日、日本勢の全敗をなんとか食い止めたのは小林くんです。フランスのIM に白で勝ち、上に連勝となりました! その小林くんが、南條先輩の敵を討つべく、今日はLalic に挑みます(笑) なぜ日本人と連続で当たるのかと首をかしげているであろうLalic から、ポイントを取ってきてほしいですね。

そしてこの大会中、Lalic のFacebook 投稿で知ったのが、Chess Microbase というサイトです。このサイトではアカウントを作れば、pgn を入力して棋譜のビュアーを表示することができます。無料アカウントは100ゲームまでしか入力できないようですが、それでも十分でしょう。私も今後、こちらのブログで公開した棋譜を、Chess Microbase でも見られるようにしておこうかと思います。今日解説を書いた南條 - Lalic 戦は、以下のリンクから見ることができます。


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