6日間続いた全日本選手権も、とうとう最終日を迎えました。大事な5日目に連勝し、単独トップに立ったTuさんは、最終戦も勝って優勝を決めました。東京オープンや百傑戦のように、余裕の独走とはいきませんでしたが、それでもこのメンバーでの単独優勝は素晴らしく、とても勝ちのあるものだと思います。Tuさん、おめでとうございます!
1st Place Tran Thanh Tu (CM, VIE, 2290)
2nd Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2330)
3rd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2400)
4th Place Lewis Andrew (FM, ENG, 2267)
入賞したメンバーは私も含め、最終戦をきっちりと勝ちました。その他の入賞者の皆さんもお疲れ様です。私は昨年のチャンピオン、馬場さんに白を持ち、昨年のリベンジマッチとなりました。今年のベストゲームと言える内容です。
Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Baba, M (CM, JPN, 2232)
Japan Chess Championship 2016 (11)
1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 a6 5. g3!?
逆転優勝のため、黒でも勝つしかない馬場さんのチョイスは、十八番のGrunfeld ではなく、a6 Slav でした。いつもであればソリッドな変化を好む私ですが、馬場さん同様に勝ちが欲しい私は、思い切ってギャンビットラインを指してみることにします。
5... dxc4 6. Bg2 g6!?
実を言えば、今回はSemi-Slav に対して、
5. g3!? と指すラインを試してみようかと考えていました。この試合でもg3 セットアップを採用したのは、どこかで黒は
e7-e6 を指してきて、研究している形に手順前後すると思ったのです。そのため、このフィアンケットのセットアップは少し驚きであると同時に、Grunfeld プレーヤーの馬場さんらしいチョイスだと感じました。
7. O-O Bg7 8. h3!?N
私はこの試合、あくまでc4 は取り返しにいかず(少なくとも、早い段階では)、ギャンビットにこだわって指すつもりでした。そのため、メインの
8. a4 は頭から捨て、
e7-e6 のセットアップと何が違うかを考えます。1つのポイントとしては、黒の白マスビショップはg4 辺りに展開できるチャンスがあるため、まずはこれを防ごうとしました。
8... O-O 9. e4 b5 10. Qe2 Bb7 11. Bf4 Ne8
白はポーンをギャンビットした分、センタポーンの厚みで勝負します。それに対して黒は、ここでナイトを退いておかなければ、
e4-e5-e6 というポーンの押し込みを常に気にしていなければいけないでしょう。
12. Rad1 Qa5 13. a3
このような端ポーンの手に1手かけるのであれば、もっとアクティブな手を指すべきだろうという考え方もあるでしょうが、私は
b5-b4 を防いでおき、c3 にしばらくナイトが残れる状態のほうが、白が落ち着いてプランを立てやすいと考えました。
13... Nd7 14. Bg5!?
ここで白から細かく仕掛けてみることにします。e7 を守るうまい方法が無い黒は、
f7-f6 と突くしかありませんが、そのポーン突きはe6 のマスと、将来的なキングの守りを薄くします。
14... f6 15. Be3 e6 16. h4!
黒キングの守りを弱めたのであれば、さらにそれを利用しない手はありません。hポーンの前進からポーン交換を目指すことで、さらにキングの守りを弱体化させることを狙いつつ、
Bg2-Bh3 というビショップの切り替えもにらんでいます。
16... Nc7 17. Bh3 Rad8 18. h5 Rfe8 19. hxg6 hxg6 20. Nh4
ここは十分なのか少し早いか、しっかりとした判断はできませんでしたが、相手キングに仕掛けてみることにします。狙うはもちろん、g6 のポーンです。
20... Nf8 21. Qg4 e5?
ここで馬場さんが長い時間を使っていたので、
21... Kf7 以外の何を読んでいるのか、私にはよく分かっていませんでした。
21... Kf7 22. e5 f5 23. Qg5 と進めば、白は次の
g3-g4 も視野に入れ、攻勢でゲームを続けられそうです。
馬場さんが指してきた本譜は、b7 の使いづらいビショップをc8 に退き、白のクイーンとビショップを同時にアタックするというアイディアです。私は指された直後は、まずい手を許してしまったかと思いましたが、丁寧に丁寧に読んでいくうちに、非常に面白いアイディアが成立すことに気が付きました。
22. dxe5! Bc8 23. Qf3 Bxh3 24. exf6
黒は狙い通りにh3 のビショップを取りましたが、代わりにf6 に白ポーンの侵入を許したことで、g7 のビショップ取りと、
f6-f7 からのルーク取りが両方スレットになっています。どちらも同時に守ることはできないため、黒はf1 のルークを取りますが...
24... Bxf1 25. f7+ Kh7 26. Nxg6!!
この手を見つけることができたのはたまたまで、22手目の時点から読んでいたわけではありません。しかし、
25... Kh8 だった場合に、g6 を取ってからの
Qf3-Qh5 がメイトになることに気づき、もしかすると
25... Kh7 に対しても、同じことができるのではないかと考えたのです。
26... Kxg6 27. Qf5#、26... Nxg6 27. Qh5+ Bh6 28. Qxh6# どちらも簡単にメイトであるため、黒はg6 に跳びこんできたナイトを、すぐには取ることができません。
26... Be2 27. Nxf8+!
黒の
26... Be2 はなかなか嫌なアイディアで、
Qf3-Qh5+ を止めているのはもちろんのこと、クイーンをf5 への利きからそらしてしまえば、
Qf3-Qf5 も消せるのがポイントです。ここは少し迷いましたが、本譜のでストレートに勝ちまで読み切ることができました。
27... Bxf8 28. Qf5+ Kg7 29. fxe8=N+!
このチェックになるアンダープロモーションを見つけられたことで、勝ちを確信しました。
29... Rxe8
29... Nxe8 30. Qg5++- ルークを取れれば、完全に白の駒得ですし、黒キングは風前の灯火です。
30. Bd4+ Kh6 31. Qf6+ Kh7 32. Qf7+ 1-0
途中で連敗もあり、優勝こそ逃してしまいましたが、こうしたゲームで強敵、馬場さんに勝てたことは、次の大会やオリンピアードに向けての、良いステップになるでしょう。誰に見せても恥ずかしくないゲームだったと自負できます。
全日本選手権、およびゴールデンオープンに参加した皆さん、運営とアルゼンチン大使館の皆さん、本当にお疲れ様でした! 今年はフレッシュな顔ぶれも多く、盛り上がるペアリングとゲーム内容も豊富だったと思います。現段階では、まだ8,9R までの棋譜しか手に入れられていませんが、これらも明日から並べてみて、自分になりに今年の全日本選手権を振り返ってみようと思います。それでは皆さん、また次の大会でお会いしましょう!