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2023/06/21

Instructive Endgames in Blitz Games Vol.8


ブログ自体とこのシリーズ、どちらも更新は久々です。書きたい内容は色々とあるのですが、なかなか時間が取れません。今回はポーンエンディングからご紹介します。
imsk (2502) - melksham (2448)
lichess blitz
Position after 36. Kxg2

序盤、中盤かなりまずいところのあるゲームでしたが、なんとかこのポーンエンディングに持ち込みました。この時点では黒もキングサイドに2コネクテッドパスポーンができるため、それをキングで止め合ってドローだと思っていました。しかし、よほどひどい間違いをしなければ白が負けることはないので続けることにします。

36... Kf6 37. Kf3 Ke5 38. b5


38. c5と突く手もありますが、この場合は黒キングが抑えるべきマスがc6,d5の2つであるため、白キングの前進を本譜よりも妨害しやすくなります。チャンスを作るのであれば、より遠いパスポーンを前進させておきます。

38... Kd6 39. Ke4 Kc5 40. Ke5 f5??

試合中、このfポーン突きがブランダーであることはすぐには分かりませんでした。優先して突くべきは、より外側のg,hポーンです。40... h6! (40... g5 もOK) 41. Kf6 g5 42. Kf5 Kb6! 43. Ke5 Kc5! 44. Kf6 Kb6!=
Analysis Diagram

これが黒の正しいディフェンスで、f7にポーンを残しておき、これを取られた際にh6-h5,g5-g4でパスポーンを作れるようにしておきます。すると白はキングサイドでアクションを起こせないので、クイーンサイドにキングを寄せる手を混ぜたいのですが、黒キングは上手いタイミングでc5に戻ることでそれを許しません。。白はこの黒のキングの妨害をかいくぐってクイーンサイドに近づくことができないため、ドローとなります。それではfポーンを先に進めてしまった本譜はどうなるでしょうか。

41. h4 Kb6

黒キングがc5から離れてくれれば、白キングはcポーン前進のサポートのためにd5に寄ることができます。これを避けるのであればhポーンを突く手しかありませんが、いずれにせよ白の勝ちになります。41... h6 42. h5! g5 43. Kxf5 Kb6 44. Ke4 Kc5 45. Ke5 Kb6 46. Kd5 Kc7 47. c5 Kb7 48. Kd6+- 少し時間がかかりますが、fポーンを落としてしまう変化は分かりやすいでしょう。41... h5 42. Kf4 Kb6 43. Ke3 Kc5 44. Kd3! Kb6 45. Kd4+- 黒キングはc5,b6のマスしか待つ場所がなく、これを往復するしかありませんが、白キングはその間にe5-f4-e3-d3と移動でき、黒に手番を渡してd4のマスに到達できます。

42. Kd5 h6 43. c5+ Kxb5


43... Kc7 44. b6+ Kb7 45. c6+ Kxb6 46. Kd6+- 黒キングが下がって粘ろうとする手にも、bポーンを捨ててcポーンを進めるアイディアで勝勢です。

44. c6 1-0

プロモーションが止まらず、白の勝勢です。どこのポーンから突くかという、ポーンエンディングの難しさが垣間見える例でした。

2022/03/05

Instructive Endgames in Blitz Games Vol.7

thekinglear(2511) - imsk(2556)
lichess blitz
Position after 20. Nxe2

thekinglearさんとは、これが23回目の対戦です。黒はポーンダウンのうえ、a2 もすぐに取られてしまいそうですが、ルークを敵陣に侵入させるチャンスで十分な代償があると試合中は考えていました。

20... Bxf3 21. gxf3 Rd2 22. Nc3 Rxc2 23. Rxa2 Bb4!


これが渋い好手で、c3 のナイト取りをシンプルなスレットにしつつ、白がbポーンを突くことを防いでa2 のルークを働かせないようにします。白がルークをゲームに使うにはRa2-Ra1 と戻すくらいしかなさそうですが、その際はb2ポーンをいただいてしまえば黒十分です。

24. Ne4 Nxe4 25. fxe4 Re8 26. Rd1 h5!

バックランクメイトを防ぐのにどこのポーンを突くか少し迷いましたが、ここは思い切ってhポーンを2つ伸ばすのが良い手です。状況によってh5-h4 とさらに伸びて、ビショップをアタックしテンポを得ることを見据えています。

27. Rd4?


ここで単純にビショップを退かせてもえらえたのはラッキーでした。27. Rd5 Rxe4 28. Rxh5 Bxc5 とするべきですが、これでも黒はf2、b2 をアタックすることで白のピースをディフェンスに縛り、満足な局面です。

27... Bc5 28. Rd5 Rxe4 29. Rxh5 g6!

この手はh5 のルークをアタックすることよりも、f5 のマスを抑えて白ルークをf5 に行かせないことを目的としています。h5 から移動しなければいけないルークがf2 のディフェンスに使えなければ、黒はf2 を早々に落とし、勝勢を確信できる局面になります。

30. Rd5 Ree2 31. Ra1 Bxf2+ 32. Bxf2 Rxf2-+


序盤で捨てたマテリアルを取り返し、ルークを理想的な7段目に2つ侵入させた形に持ち込みました。最後は白がクイーンサイドで作ろうとする反撃を抑え込むアイディアを見つけ、慌てずに進めるだけです。

33. b4 Rg2+ 34. Kf1 Rxh2 35. Rg5 Rh1+ 36. Rg1 Rh4 37. Rb1 Kg7!?

少し自信の無い手でしたが、コンピュータ評価も良い手でした。g6 を守ることでfポーンを進めやすくしておくと同時に、Rh4-Rh8 と状況によってルークを退けるようにもしておきます。そしてなにより、白に手を渡して様子を見る絶妙なwaiting move になっています。

38. Rg2 Rh1+ 39. Rg1 Rhh2 40. b5 axb5 41. axb5 Rb2!


なるべくダブルルークをキープして白キングを抑え込んでいましたが、1つルークを交換したルークエンディングが勝ちだと確信できれば喜んでルークをぶつけます。

42. Rxb2 Rxb2 43. Rg5 f5 0-1

最後にキングが上がっておいた効果が発揮されました。b5 が落ちては粘ることもできないため、白はここでリザインです。難解なエンドゲームではありませんでしたが、要所要所で上手く指せたことが気に入っています。

2022/02/05

Instructive Endgames in Blitz Games Vol.6


このシリーズもずいぶん久しぶりの更新ですね。昨晩指したゲームの中に面白いエンドゲームが登場したので、そちらを見ていこうと思います。

helmaks (2458) - imsk (2565)
lichess

1. c4 c6 2. g3 d5 3. b3 Nf6 4. Nf3 g6 5. Bg2 Bg7 6. O-O O-O 7. Bb2 Bg4 8. d3 Bxf3 9. Bxf3 e6 10. Nd2 Nbd7 11. Rc1 a5 12. a3 Ne8 13. Bxg7 Nxg7 14. cxd5 exd5 15. e4 dxe4 16. dxe4 Ne5 17. Nc4 Qxd1 18. Bxd1 Nxc4 19. Rxc4 Rfd8 20. Bc2 Ne6 21. Rd1 Rxd1+ 22. Bxd1 Rd8 23. Bc2 Rd2 24. Rc3 c5 25. Bd3 Ra2 26. a4 b6 27. Bc4 Nd4 28. Rd3 Kf8 29. h4 Ke7 30. Kg2 f6 31. g4 Rb2 32. g5 Rc2 33. Re3 Nc6 34. Kg3 Ne5 35. Bd5 Rd2 36. f4 Rd3 37. Rxd3 Nxd3 38. gxf6+ Kxf6

このゲームはここから始めます。途中は悪くなかったはずでしたが、ルークを捌いて純粋なビショップvs. ナイトの構図になり、白にパスポーンを作られてしまうといつの間にか苦しかったです。このまま何事もなく白に押し切られたのであれば、今夜紹介するようなゲームにはなりませんでしたが、ここから色々と事件が起こります。

39. h5? g5!


端ポーンを捌きたい気持ちは分かりますが、f4 からポーンをどかしてe5 のマスを確保すれば黒も粘れます。代わりに一度、39. Bc4! からナイトをどかしにいけば白勝勢でした。

40. e5+ Kf5 41. fxg5 Kxg5 42. e6 Kf6 43. h6 Ne5 44. Kf4 Ng6+?

しかし、ここは欲張りすぎです。44... Nd3+! 45. Ke3 Ne5= からドローで満足すべきでしたが、進みすぎたeポーンを落とせると考え、本譜を選んでしまいました。

45. Ke4 Nf8 46. Kd3?


46. Bc4! これがキングの侵入するルートを作る好手で、e6 を先に落としても黒はキングのポジションの差で苦しくなります。46... Nxe6 47. Kd5 Nd4 48. Kd6 Nf5+ 49. Kc7 Nxh6 50. Kxb6+- ここで白が勝ち手順を逃し、黒が生き延びることになりました。

46... Nxe6 47. Be4

ここは少し長い分岐を入れます。本譜でも白は問題ありませんが、すぐにビショップナイトを交換してポーンエンディングに持ち込む手もありました。47. Bxe6!? Kxe6 48. Kc4 Kd6! (48... Kf6? 49. Kb5 Kg6 50. Kxb6 Kxh6 51. Kxc5 Kg5 52. b4 axb4 53. Kxb4 h5 54. a5 h4 55. a6 h3 56. a7 h2 57. a8=Q+- これは1手差でh1 を抑えられ、白の勝ちです。) 49. Kb5 Kc7 50. Kc4 Kc6 51. Kc3 b5 52. axb5+ Kxb5 53. Kb2 Kb4 54. Kc2! (ここもキングの移動するマスが大切です。54. Ka2? a4! 55. bxa4 Kxa4 56. Kb2 Kb4 57. Kc2 Kc4 58. Kd2 Kb3 59. Kc1 Kc3 60. Kd1 Kb2-+) 54... a4 55. bxa4 Kxa4 56. Kc3 Kb5 57. Kb3 Kc6 58. Kc4=
Analysis Diagram

これは私もEndgame Manual で昔学んだポジションで、黒がチャンスを作るためにはcポーンを諦めてhポーンを取りに行くしかありません。もし互いのhポーンがh4、h5 でぶつかっていればぎりぎり黒勝ち、それより一歩でも白ポーンが進んでいれば、以下のようにドローになります。58... Kd6 59. Kc3 Ke5 60. Kc4 Kf5 61. Kxc5 Kg5 62. Kd4 Kxh6 63. Ke3 Kg5 64. Kf2=

47... Ng5 48. Bd5


コンピュータが出した面白いアイディアは、ビショップを捨ててドローに持ち込むものです。48. Bxh7! Nxh7 49. Kc4 Nf8 50. Kb5 Nd7 51. Kc6 c4 52. bxc4 Ne5+ 53. Kxb6 Nxc4+ 54. Kb5=

48... Ke5 49. Bg8 Kd6 50. Kc4 Kc6 51. Bd5+ Kc7 52. Bg2 Nf7 53. Be4?

このブランダーによって、この試合初めて黒に勝ちの目が出現しました。代わりに53. Ba8!? Nxh6 54. Be4= として、テンポをずらしてh7 を取りにいけば、クイーンサイドのポーンが3vs. 2 でも白はドローに持ち込めそうです。

53... Nd6+! 54. Kd5 Nxe4! 55. Kxe4 Kd6 56. Kf5


上記の変化と比べ、黒キングの位置が良いために黒勝ちポーンエンディングになっています。56. Kd3 Kd5 57. Kc3 c4!
Analysis Diagram

それでも、この一時的なポーン捨てを発見できなければ黒は勝てません。58. bxc4+ Kc5 59. Kd3 Kb4-+

56... b5!-+


このブレイクスルーで勝負は決まりです。相手のミスに何度も助けられながら、一瞬のチャンスをものにしての逆転でした。

57. Kf6 c4 58. Kg7 cxb3 59. Kxh7 b2 60. Kg7 b1=Q 61. h7 Qxh7+ 62. Kxh7 bxa4 0-1

途中、あまりにも形勢や指し方が分からなかったので解析してみたところ、面白い発見が多かったです。今後も、こうした学びの多いゲームを増やしていければと思います。

2021/09/27

Instructive Endgames in Blitz Games Vol.5


このエンドゲームシリーズも久々の更新です。昨晩指したゲームの中に面白いものがありました。lichess のブリッツは以前は3/0 の指し切りばかりでしたが、今は3/2 にしています。やはり1手2秒増加があるだけでだいぶ余裕が生まれますね。

thekinglear (2544) - imsk (2565)
lichess

1. Nf3 d5 2. g3 g6 3. c4 dxc4 4. Na3 Nc6 5. Nxc4 Bg7 6. Bg2 e5 7. O-O e4 8. Ne1 Be6 9. Ne3 Nf6 10. d3 O-O 11. dxe4 Qxd1 12. Nxd1 Rfd8 13. Nc3 Rd7 14. Nd3 Bc4 15. Nc5 Re7 16. Nxb7 Rb8 17. Nc5 Nd4 18. Bg5 Nxe2+ 19. Nxe2 Bxe2 20. Rfe1 Rxb2 21. Na4 Rc2 22. Rac1 Rxc1 23. Rxc1 h6 24. Bf4 Nxe4 25. Rxc7 Rxc7 26. Bxc7 Nc3 27. Nxc3 Bxc3 28. Bd5 h5 29. h4 Bd4 30. Kg2 Bc5 31. Bf4 Kf8 32. Be3 Bxe3 33. fxe3 Ke7 34. Kf2 Bg4 35. e4 Be6 36. Ke3 Bxd5 37. exd5 f6

thekinglearさんがどこの誰かは分かりませんが、このゲーム前まで8勝7敗2ドローとほぼ互角の戦績です。この試合も途中は完全にドロー模様でしたが、少し気になるポーンエンディングを迎えたのでそこからご紹介します。黒はf7-f6 から機会を見てg6-g5 とキングサイドのポーンを伸ばし、キングサイドのアクションに期待しています。

38. Kd4 Kd6 39. a4?


このポーン突きで白が悪くなるのは、かなり判断が難しいと思います。代わりに白は単純にキングで待つ手が安全策でした。39. Kc4 g5 40. Kd4 g4 41. Kc4 f5 42. Kd4 a5 (42... a6 43. a3!=) 43. a4 f4 44. gxf4 g3 45. Ke3 Kxd5 46. Kf3 Kd4 47. Kxg3 Ke4 48. f5 Kxf5 49. Kf3= こうしてオポジションを取れればドローは明らかです。

39... a5?


しかし、私もキングサイドでのアクションを遅らせたのは間違いでした。39... g5 40. Ke4 g4!
Analysis Diagram 1

こうしてgポーンを突きこす形は、実は試合中あまり考えていなかったので覚えておこうと思います。 41. Kf5 (41. Kd4 f5 42. a5 a6 43. Ke3 Kxd5 44. Kf4 Ke6 45. Kg5 Ke5 46. Kxh5 Kf6!-+) 41... Kxd5 42. a5 Kd4 43. Kg6 Ke4 44. Kxh5 f5 45. Kg6 f4 46. h5 fxg3 47. h6 g2 48. h7 g1=Q 49. h8=Q Qe3-+ こうして1ポーンアップしつつ、ポーンレースで先にクイーンを作っておけば、黒に大きな勝ちのチャンスが残ります。

40. Kc4 g5 41. Kd4 gxh4 42. gxh4 f5 43. Kc4 f4

43... Ke5?? 44. Kc5 f4 45. d6 f3 46. d7 f2 47. d8=Q f1=Q 48. Qe7+ Kf4 49. Qf6++- は先にクイーンを作られたうえ、チェックから取られてしまうので黒は大失敗です。

44. Kd4 f3 45. Ke3 Kxd5 46. Kxf3 Kc4 47. Kf4??


私も試合中気づいていませんでしたが、白キングが向かうべき方向を間違えたことで決着がつきました。aポーンを取られるとしても、白キングは黒キングと同じ方向に向かうのが正解です。47. Ke4! Kb4 48. Kd4 Kxa4 49. Kc4!
Analysis Diagram 2

こうして黒キングと4段目でオポジションを取ってしまえばドローです。黒は勝負するのにはaポーンを見捨ててキングサイドに向かう必要がありますが、白は1手差でディフェンスが間に合います。49... Ka3 50. Kc3 a4 51. Kc2 Kb4 52. Kb2 Kc4 53. Ka3 Kd4 54. Kxa4 Ke4 55. Kb3 Kf4 56. Kc2 Kg4 57. Kd1 Kxh4 58. Ke1 Kg3 59. Kf1 Kh2 60. Kf2= 今度は黒キングをhファイルに閉じ込めてドローです。

47... Kb4 48. Kg5 Kxa4 49. Kxh5 Kb3 50. Kg6 a4 51. h5 a3 52. h6 a2 53. Kg7 a1=Q+

白キングは1手間に合っていません。端ポーンvs. クイーンはドローであることが知られていますが、それでは白キングがg8 に到達したうえ、ポーンがh7 まで進んでいた場合の話です。

54. Kg8 Qg1+ 55. Kh8 Qd4+ 56. Kg8 Qg4+ 57. Kh8 Qc8+ 58. Kg7 Qd7+ 59. Kh8 Qe8+ 60. Kg7 Qe7+ 61. Kh8 Qf6+ 62. Kh7 Kc4 0-1



最後はシンプルにクイーンを寄せてポーンを取ってしまえば黒勝ちです。ポーンエンディングは1手差で勝ちがドローになったり、ドローが負けになったりするので奥が深いですね。

2021/06/07

Instructive Endgames in Blitz Games Vol.4


このシリーズも久しぶりの更新です。昨晩、lichess で指したゲームに面白いエンドゲームがありましたので、そちらをご紹介させていただきます。まずは序盤中盤を飛ばして、エンドゲームの入り口までいきましょう。

monty8 (2515) - imsk (2516)
lichess

1. e4 c5 2. Nc3 e6 3. d3 d5 4. g3 Nf6 5. Bg2 Nc6 6. Nge2 dxe4 7. Nxe4 Nxe4 8. Bxe4 Be7 9. O-O O-O 10. Be3 Nd4 11. c3 Nf5 12. Bf4 Nd6 13. Bg2 Bd7 14. d4 cxd4 15. Nxd4 Qb6 16. Qb3 Nb5 17. Nxb5 Bxb5 18. c4 Bc6 19. Qxb6 axb6 20. Be5 Rfc8 21. b3 Bxg2 22. Kxg2 b5 23. cxb5 Rc5 24. Bd4 Rxb5 25. Rfc1 Bf6!?

形勢は互角ですが、ここからどういった構想を見せるか、アイディアの練りどころです。私はポーンストラクチャーを崩してもビショップを交換し、素早くキングが上がれるようにするのが良いと考えました。

26. Bxf6 gxf6 27. Rc2 Ra3


ここは指した直後にb3 を取るタクティクスを見落としたかと思いましたが、本譜のようにゆっくりa2 にプレッシャーをかけるアイディアでOKです。27... Rxb3 28. axb3 Rxa1 29. Rc8+ Kg7 30. Rb8 ならば、黒はb7 を見捨てなければならず、駒得はキープできません。それならば、本譜のようにダブルルークを残すほうがチャンスを作れるでしょう。

28. Rac1 Rba5 29. Rc7 Rxa2 30. Rxb7 Rf5 31. Rf1 Rb2

f2 をアタックすることで白の1つのルークをディフェンスに縛らせ、少し指しやすくなったと感じました。白のパスポーンは後ろからルークで止めれば、怖い存在ではありません。しかし、ここからどう局面を改善するためにはひと工夫必要です。

32. b4 Kg7 33. Rb8 h5 34. h4


黒からのh5-h4 は黒の孤立ポーンを捌かせてしまうため、白からh2-h4 と止めるのが自然に見えます。一方でこれによりg3 のポーンが弱まったため、黒からはf5-f4-fxg3 という構想が生まれます。

34... Rd5 35. Rb7 f5 36. Kf3 Rd4 37. b5 Kf6 38. Rb8 Rd3+ 39. Kg2 f4!

一時的にポーンを捨てても、白のポーンストラクチャーをバラバラにしたうえで、黒キングが上がれるマスを作っておきます。

40. gxf4 Kf5 41. Rg8 f6!


Rg7-Rg5 を止めておき、h5 のポーンを取られないようにする大事なアイディアです。

42. Rh8 Kg4 43. Rg8+ Kxf4 44. Rh8 Rxb5?!

このポーンを取ってh5 を守り、1ポーンアップを確定させるのは悪くないはずだと思いました。しかし、f2 へのアタックを外してしまうことでf1 のルークが動けるようになり、反撃を許してしまうことになります。44... Rg3+! 45. Kh2 e5 46. Rxh5 Rg4-/+ として黒が大きく優勢というのは、コンピュータの評価です。1ポーンアップでも反撃を許してしまう本譜よりも、1ポーンダウンでもf1 ルーク、h2 キングの動きを縛るほうが、黒にとって優位に立てるというのは難しい判断だと思います。

45. Re1 Rd6 46. Rh6 Rf5 47. Re3 Kg4 48. Rg6+ Kf4 49. Rf3+ Ke4 50. Re3+ Kd4 51. Rh6 e5 52. Ra3


ルークを横に振って広く使うのも悪くはないですが、分かりやすいのは52. Rf3! としてルーク交換を迫る手です。f5 のルークが消されてしまうと、h5 を守り切ることはできません。1ポーンアップしたときは有利になってたと思っていましたが、こうした変化があることを見るとやはりf1 ルークを自由にさせるべきではなかったことが分かります。

52... Kd5 53. Ra5+ Ke6 54. Ra7 Rd4 55. Kg3?

これは明らかなブランダーで、白のポーンがぽろぽろと落ちていきます。55. Ra6+ Rd6 と戻してから考え直すつもりでした。

55... Rg4+! 56. Kh3 Rf3+ 57. Kh2 Rxf2+ 58. Kh3 Rf3+ 59. Kh2 Rxh4+


立て続けに2つのポーンを取り、ここから確実に勝つ方法を考えます。こうした局面では駒得のキープにこだわりすぎず、駒を多少返しても駒交換を進めるほうが勝ちやすいものです。

60. Kg2 Rff4!? 61. Ra6+ Kd5! 62. Rhxf6 Rxf6 63. Rxf6 Rf4!

1ポーンを返しても、fファイルでカットオフしてしまい、eポーンをキングでサポートしながらプロモーションを目指せば十分に黒が勝てるポジションです。しかし、まだミスの起こりうる局面です。

64. Rh6 h4 65. Ra6 Ke4 66. Kh3 Kf5 67. Ra5 Rb4 68. Ra8 Kf4 69. Kxh4 e4?


相手キングは十分に抑え込んでいるので、ポーンを進めるくらいで十分だと思っていました。正しい手は69... Rb1! からメイトスレットを作っておき、70. Kh3 Rg1! とカットオフをし直せば簡単でした。それでは、本譜では白にどんな反撃の手段が生まれるでしょうか。

70. Rf8+ Ke3 71. Kg3 Rb7 72. Kg2 Ke2 73. Ra8?

試合後の解析で気づきましたが、76. Rf2+! Kd3 Ra2! がドローに持ち込む唯一の方法でした。黒はfファイルでカットオフをやり直したいところでしたが、それにはaファイルを上下するルークの横からチェックが十分な反撃となります。ロングサイドからのルークの横チェックは相手の頭にあったのだと思いますが、aファイルにすぐルークを回す手では、本譜のように白キングが引き離されてしまい、横チェックの反撃が有効ではなくなってしまいます。

73... Rg7+ 74. Kh2 e3


こうして白キングをhファイルに押し込んでしまえば、シンプルなルセナポジションとなって黒の勝ちです。

75. Ra2+ Kf3 76. Ra8 e2 77. Rf8+ Ke3 78. Re8+ Kf2 79. Rf8+ Ke1 80. Re8 Rg5 81. Kh3 Kd2 0-1

最後はルークを5段目に置いて、Building a Bridge と呼ばれるアイディアを使います。続けるとしても、82. Rd7+ Ke3 83. Re7+ Kd3 84. Rd7+ Ke4 85. Re7+ Re5-+ とルークをぶつけてしまい、プロモーションを決めて黒の勝ちとなります。ルークエンディングの難しさを再認識するようなゲームでした。

2021/05/02

Instructive Endgames in Blitz Games Vol.3


この連載も久々です。最近はオンラインのブリッツの頻度も多少落ちていますが、昨日指したゲームの中に面白いエンドゲームがありましたので、そちらをご紹介します。
imsk (2426) - houdinick (2418)
Lichess 2021.05.01
Position after 30. cxb3

序盤うまく指していたつもりが、中盤でミスをして形の崩れた劣勢のエンドゲームに入ってしまいました。d4 のアウトポストに入れる黒のナイトは、明らかに白のビショップよりもパワフルです。しかし、実際に指してみると自分で思っていたよりも難しかったようです。

31... Nd4 32. Bg2 Nxb3?


ただで取れるポーンを貰っておくのは自然に見えますが、これで白にチャンスが生まれました。32... Qc5!? くらいでh1-a8 のダイアゴナルからクイーンをかわしておき、e5 のポーンを守っておくほうが良かったでしょう。

33. Qe3! Qc5

e5, g5, b3 をフォークするアイディアには、黒はこうしてクイーン交換に持ち込めますが、b7, a6 のポーンが白マスで固定されていることが痛手となります。

34. Qxc5+ Nxc5 35. f4!


白マスビショップの利きを開き、b7 を落としにいくことでチャンスを作りにいきます。これに対し、c5 のナイトがぴったりb7 を守っているため、黒は問題なく勝てると思ったかもしれません。

35... exf4 36. gxf4 gxf4 37. b4 Nd3 38. b5!

これがシンプルなドローに持ち込むために重要なアイディアです。38. Bxb7 Nxb4 ではポーンの取り合いの際にa6 を守られてしまうため、まだ白にとって難しい展開です。

38... Nc5


38... axb5 39. Bxb7 Nc5 ならば本譜と手順前後です。白はbポーンをナイトではなく黒のaポーンに取らせることで、自身のaポーンをパスポーンにするのがポイントとなります。

39. Bxb7! axb5


39... Nxb7?? 40. bxa6+- は白のプロモーションが止まらずに大逆転です。b7 の位置からでは、ナイトをa8 に利かせるのは時間がかかることは覚えておきたいですね。

40. a6 Nxa6 41. Bxa6

黒の3ポーンはキングとビショップですべて止められるため、ここでドローが決まります。

41... b4 42. Bc4 f5 43. Kf2 Kg7 44. Kf3 Kf6 45. Kxf4 Kg6 46. Bb3 Kf6 47. Bc4 Kg6 48. Bd3 Kf6 49. Bxf5 b3 50. Bb1 b2 51. Ke4 Ke6 52. Kd3 Kd5 53. Kc3 Kc5 54. Kxb2 1/2-1/2


上手いプレーヤーほど劣勢の中でも崩れずに、ドローチャンスを模索するものです。私もこうしたブリッツのゲームの中から、粘るテクニックを磨いておきたいですね。

2021/02/18

Instructive Endgames in Blitz Games Vol.2

imsk (2446) - Modijihainna (2427)
Lichess 2021.02.17
Position after 28... f5


昨晩のブリッツのゲームで判断の難しいエンドゲームが現れました。

29. Ne5!? Nxe5 30. Qe2


白はさほどチャンスがないため、ここではナイトを交換して無難に進めることにします。

30... Qc4 31. Qxe5 Qc1+ 32. Kh2 Qf4+??

32... Qxa3 33. Qc5+ Ka8 36. Qc5+ からパペチュアルチェックでドローになると思っていたので、このチェックは意外でした。当然、クイーン交換をしたポーンエンディングがどうなるのかを読みます。

33. Kg1?


結論から言えば、f4 でのクイーン交換は黒にとって大失敗。白勝ちのポーンエンディングになります。33. Qxf4! gxf4 34. g4! fxg3+ (34... fxg4 35. hxg4 Kb6 36. Kh3 Kb5 37. Kh4 Ka4 38. Kh5 Kxa3 39. Kxh6 Kxb4 40. g5 a5 41. g6 a4 42. g7 a3 43. g8=Q+-) 35. Kxg3 Kb6 36. Kf4 Kb5 37. Kxf5 Ka4 38. Ke6 Kxa3 39. f4 Kxb4 40. f5 a5 41. f6 a4 42. f7 a3 43. f8=Q++-

上記のfポーン、hポーンどちらをプロモーションする変化も白が早くプロモーションします。考え方としては、35手目の黒からカウントし、黒は10手でプロモーション(Kb6, Kb5, Ka4, Kxa3, Kxb4, a5, a4, a3, a2, a1=Q)するのに対し、白は8手でプロモーション(Kh3, Kh4, Kh5, Kxh6, g5, g6, g7, g8=Q, もしくは、Kf4, Kxf5, Ke6, f4, f5, f6, f7, f8=Q)であるため、黒からスタートでも白だけクイーンができます。g2-g4 は当然考えたアイディアでしたが、残り時間がほとんどなく、2つの変化の正確なテンポ計算ができませんでした。

33... Qe4!?


33... Qc1+ 34. Kh2 Qxc1 ならば上記と同じドローです。

34. Qxe4 fxe4

試合中は分かっていませんでしたが、1つ決定的なチャンスを逃してこのポーンエンディングを迎えました。自分としてはこれは白が勝つのではないかと読んでe4 でのクイーン交換を実行しましたが、この読みには1つ間違いがありました。

35. Kf1 Kb6 36. Ke2 Kb5??


これ以降は読み通りに白勝ちになりますが、この手がブランダーであることは解析するまで全く気づいていませんでした。36... a5! 37. Ke3 axb4 38. axb4 Kb5 39. Kxe4 Kxb4 40. g3 Kc4 41. f4 b5 42. f5 b4 43. f6 b3 44. f7 b2 45. f8=Q b1=Q= こうすると本譜と違って黒キングがb4 から1マスずれているため、白クイーンのプロモーションがチェックにならず、白黒互いにクイーンができてドローです。

黒がa6-a5 を入れることでドローにできるというのは、完全に予想外でした。余計なポーン付きを1手入れる分、黒のプロモーションは遅くなると直感的に思いそうですが、b4 でポーン交換をすることで、黒は本譜のようにa3 までポーンを取りに行く手間が省け、テンポアップできるという理屈です。クラシカルで時間が豊富に残っていれば、a6-a5 を入れる手もきちんとテンポを計算しますが、残り時間が少なければこの手には意味が無いと切り捨て、本譜のキングが上がっていく手を中心に考えてしまうでしょう。

37. Ke3 Ka4 38. Kxe4 Kxa3 39. g3 Kxb4 40. f4 c5


f8 で先にできるクイーンが、ぴったりb4 のキングにチェックをかけることに気づいても後の祭りです!

41. f5 1-0

黒がcポーンを突いている分、白が早くプロモーションするので白勝ちとなります。a6-a5 は試合中に分からなかったので、重要なアイディアとして覚えておこうと思います。

2021/01/23

Instructive Endgames in Blitz Games Vol.1


新型コロナの影響で、昨年からオンラインチェスの機会が増えている人は多いと思いでしょう。かくいう私も例外ではありません。オンラインだと早指しゆえ、中盤のタクティクスで決着がつくことも頻繁にありますが、私は持ち時間が短くとも、丁寧にエンドゲームに持ち込んで勝負することを心がけています。Chess.com、Lichess の2つのサイトでブリッツをする中で、自分が気になったエンドゲームを振り返ろうと思います。

Nivid-19 (2436) - imsk (2469)
Lichess 2021.1.23

中盤でひどいミスをして苦しみましたが、なんとか粘ってこのエンドゲームに持ち込みました。b7 が落ちてマテリアルが互角になることは明らかですが、形勢はどう判断し、ゲームはどのように進んでいくものでしょうか。

40. f4??


白が負けを許すブランダーで、私もこの手ならば大丈夫だと思っていました。白は単にb7 を見捨て、クイーンサイドからキングを侵入させるべきですが、互いのキング、そしてポーンのスピード計算は簡単ではありません。40. Kd3 Kxb7 41. Kc4 Kc6 42. Kb4 Kd7 (リスクはありますが、黒が勝ちを目指すならば、キングをキングサイドに向けるしかありません。) 43. Kc5 Ke7 44. Kc6 Kf6 45. Kd6 h6 46. h4 h5 47. f3 g5 48. hxg5+ Kxg5 49. Kxe5 h4 50. f4+ Kg4 51. f5 exf5 52. exf5 h3 53. f6 h2 54. f7 h1=Q 55. f8=Q= こうして同時にクイーンを作り、ドローとなります。

40... Kxb7 41. fxe5 Kc6 42. Kf4 h6

当たり前ですが、この手を入れなければKf4-Kg5 と侵入を許して負けます。問題は白キングがセンターに戻った後です。

43. Ke3 Kc5 44. Kd3 g5 45. h3 h5 46. Kc3 g4?!


ポーンエンディングの典型的なアドバンテージとなる、アウトサイドパスポーンを作るのは当然の1手に思えました。もちろんこれでも勝ちですが、46... h4! 47. Kd3 g4! 48. Ke3 g3-+ ならばプロテクテッドパスポーンができるので、こちらのほうがシンプルです。

47. hxg4 hxg4 48. Kd3 Kb4?!

残り時間は相手に比べて多少多かったですが、正確な判断が瞬時にできませんでした。本譜でも後でこうなりますが、48... Kb5 49. Kd4 Kb4 50. Kd3 Kc5 51. Ke3 Kc4-+ ですぐに黒の勝ちです。とは言え、このポーンエンディングは黒がgポーンを間違ったタイミングで突き捨てたりしなければやり直しがきくため、多少余裕があると感じていました。

49. Kd4 Kb3 50. Kd3 Kb2 51. Kd2 Kb1 52. Kd1 Kb2 53. Kd2 Kb3 54. Kd3 Kb4 55. Kd4 Kb5!


ようやくこれで勝てることに気づきました。黒キングは白のeポーンを2つ回収した後、c3,d3,e3 のいずれかに侵入できれば勝ちとなります。

56. Kd3 Kc5 57. Ke3 Kc4 58. Kf4 Kd4 59. Kxg4 Kxe4-+

ポーンを2つ回収するためには、こちらのポーンから取る必要があります。これで4段目のオポジションを取って白キングをfファイルに戻させなければ、1手差で黒の勝ちです。

60. Kg3 Kxe5 61. Kf3 Kd4 62. Kf4 e5+ 63. Kf3 Kd3 0-1


エンドゲームを正確に読んで指すには持ち時間が多めに欲しいですが、こうした短い持ち時間のゲームでこそ、基礎的なエンドゲームの理解が試されるのではないかとも私は考えています。このブリッツでのエンドゲーム紹介はシリーズとして、今後も継続していければと思います。放置している他のシリーズも忘れているわけではないので、タイミングを見て続きを書いていくつもりです。
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