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2022/09/20

Japan Team Chess Championship 2022 Tournament Report Day2

入賞した8x8 Blunders、Osaka Club Senior、Aichi Champions のメンバーたち

1日遅れましたが、チーム選手権2日目のレポートです。私たちTabiya Chess Club のチームは最終戦でトップボードまで上がり、5連勝中だった8x8 Blunders との直接対決に挑みましたが、2.5-1.5 の僅差で敗れ、最終順位は7位に終わりました。8x8 Blunders は24試合して1敗しかしない強さを誇り、チームマッチは6連勝で完全優勝を決めました。優勝チームには一歩及ばなかったものの、入賞を果たしたOsaka Club Senior と、Aichi Champions のメンバーの皆さんもおめでとうございます!

Japan Team Chess Championship 2022 Final Standings

私は4R でTuさんに敗れたものの、残り試合を全て勝って個人では5勝1敗でした。ゲームは僅差の勝ちも多かったですが、内容にはある程度満足しています。最終戦で久々の日本公式戦復帰を果たした南條くんと対戦できましたので、そちらを今夜はご紹介します。

Kojima, S - Nanjo, R
Japan Team Chess Championship 2022 (6)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. d3 Bc5 5. O-O O-O 6. h3 h6 7. Nbd2 d6 8. c3 a6 9. Bb3 Be6 10. Bc2 Ba7

オープニングは全日本選手権で東野さんと指したItalian Old Line (白がa2-a4 とせず、Bc4-Bb3 と退くライン) になりました。黒の10手目はビショップが退く手がポピュラーですがd6-d5, Rf8-Re8, Bc5-Bf8 と組み替えるアイディアも面白く、あえてビショップをc5 に残しておくてもありえるかもしれません。

11. Re1 Ne7?!


私の経験上、e6 に配置したビショップと、Nc6-Ne7-Ng6 のアイディアはマッチしません。Bc8-Be6 と組み合わせるのであれば、東野さんが指したようにd6-d5 のセンターブレイクを使うべきだと思います。ナイトの組み替えとビショップをe6 に上げるアイディアが良くない組み合わせるである理由はすぐに分かります。

12. Nf1 Ng6 13. Ng3 Qd7 14. d4 Rad8 15. Be3

白はd3-d4 とポーンを突きなおし、d4-d5 とさらに押し込んだ際にe6 のビショップを攻撃するスレットを作れるようにします。白のセンターポーンの突き直しが早く、e6 のビショップがターゲットになりやすいのが黒のセットアップの弱点です。しかし、白もh3 へのサクリファイスを見越して、d4-d5 のタイミングは慎重に見極めなければいけません。15. d5? Bxh3! 16. gxh3 Qxh3 と進んだ場合、a7 のビショップの利きを通してしまっているため、次のQxg3 がスレットになっているのが困ります。本譜ではe3 に先にビショップを置くことで、d4-d5 と今度こそスレットにしています。

15... Qc8 16. Qd2 d5?


黒はd4-d5 を受けるためにクイーンを少し妙な位置に下げるしかなく、そのうえで今度は白のBe3-Bxh6 のスレットに備えなければいけません。私はキングがh7 に上がるしかないと思っていましたが、これもc2 にいるビショップのダイアゴナルに入る位置であるため、指しづらいのも理解できます。16... Kh7 17. a4+/- それでも黒はこれで耐えるしかなく、本譜はすぐに駒損になってしまいます。

17. Nxe5


d6-d5 のポーンブレイクは、私も黒番で準備が万端なら仕掛けたいですが、ここではe5 のポーンの守りが薄くなるのが難点です。白はこれを利用してポーンアップしますが、もう1つキングに強襲を仕掛けるのも良いアイディアでした。17. Bxh6! dxe4 18. Bxe4! Nxe4 19. Rxe4 Bd5 20. Bxg7!+- g7 まで取り込むアイディアは、先日のトレーニングで平尾くんに負けたこともあり、実戦的なアイディアとして知っていました。しかし、その前の分岐が細かいため、チーム戦で難解なピースサクリファイスをするよりも、堅実なポーンアップを選ぶべきとこの時は判断しました。

17... Nxe5 18. dxe5 Nxe4 19. Nxe4 dxe4 20. Qe2 Bxe3 21. Qxe3 Bf5 22. Bxe4 Bxe4 23. Qxe4+/-

ここまでほぼ一本道で、白はe4 を回収してポーンアップになります。しかし、このエンドゲームを勝ち切るのは一苦労です。

23... Rd2 24. Re2 Rfd8 25. Rae1 c6 26. Rxd2


すぐにヘビーピースを捌くのではなく、26. f4 として様子を見るのもありえました。

26... Rxd2 27. Re2 Qd7 28. Kh2 Qd3 29. Qxd3 Rxd3

クイーンを交換し、ルークエンディングになりました。黒キングが上がるのはかなり早く、ここからどう局面を進展させるのか、あまり自信が持てませんでした。

30. f4?!


f2 のポーンをターゲットにされることなくe5 を支え、g7-g5 も防げればよいかと思いましたが、f4 のマスにキングを運べなくなることを失念していました。30. f3! Kf8 31. h4 Ke7 32. h5 Ke6 33. Kg3+/= こうしてゆっくりキングのポジションを改善していくというのが、コンピュータの示すアイディアです。

30... Kf8 31. Re4


本譜はルークの侵入を許すことは分かっていましたが、31. Kg1 Ke7 32. Kf2 Ke6 でも局面を進展させられないため、思い切ってbポーンを狙うプランに切り替えます。

31... Rd2 32. Rb4 b5 33. a4 Ke7 34. axb5 axb5 35. Kg3 g6 36. Kf3 h5 37. c4 bxc4 38. Rxc4 Rxb2 39. Rxc6 Ra2

クイーンサイドのポーンを全て捌き、キングサイドに4vs.3 のポーンが残るルークエンディングになりました。残っているピースがナイトであれば白は実戦的に勝負にいけることを最近学んでいましたが、ルークの場合、多くはドローになります。それでも白は負ける危険が無いのであれば、ドローで早々に終わらせる理由もなく、とことん続けることにします。またこの辺りで他のボードでの決着がつき、チームの負けが決まってしまったことも関係します。自分が勝ってもチームの負けは覆らないため、ドローにしても良さそうです。しかし逆に考えれば、ここから私がリスクをとって万が一負けたとしても、チームの結果に影響がないということでもあります。

40. Rf6 Ra3+ 41. Kf2 Ra2+ 42. Kg1 Ra5 43. h4 Ra4 44. Kh2 Ra5 45. Kh3 Ra3+ 46. Kh2 Ra4 47. Kg3 Ra3+ 48. Kf2 Ra2+ 49. Kf3 Ra3+ 50. Ke2 Ra2+ 51. Kf1 Ra1+ 52. Kf2 Ra2+ 53. Kg1 Ra5 54. Rd6 Ra4 55. g3


かなり遠回りしましたが、このポーンストラクチャーにするしかないという結論に落ち着きました。ここから白が勝負をするのであれば、f4-f5 のブレイクしかありません。

55... Ra1+ 56. Kg2 Ra2+ 57. Kf3 Ra3+ 58. Kf2 Ra2+ 59. Ke3 Ra3+ 60. Rd3 Ra4 61. Kf3 Rb4 62. f5

先述の作戦を実行できました。一時的にポーンを捨てますが、ルークでf5 かh5 は回収できます。たとえマテリアルをイコールにしても、パスポーンを作って勝ちのチャンスがわずかにでもできるのであれば、試合を続けるべきです。

62... gxf5 63. Rd6 f4!?


こうしてポーンを返す手は考えてなかったの驚きました。黒は最善を尽くせばどれでもドローですが、実戦的に間違えにくく、ドローに持ち込みやすい形がどれかと言われると判断に悩むところです。63... Re4 64. Rh6 Rxe5 65. Rxh5 Kf6= として、hポーンをキングで抑える形もドローは分かりやすいかもしれません。

64. gxf4 Rb3+ 65. Ke4 Rh3 66. Rh6 Rxh4 67. Kf5 Rh1 68. Rh7 Re1 69. Rxh5

7段目のピンを利用することでe5-e6 を見せ、再度ポーンアップ状態に戻ることができました。しかし、ここまできても普通に最後のポーンを捌けばフィリドールポジションになるだけなので、白は黒キングをなんとかポーン近辺から追い出し、ルセナポジションに持ち込むアイディアを探さなければいけません。

69... Rg1 70. Rh8 Ra1 71. Rh6 Ra2 72. Rd6 Ra1 73. Rb6 Ra4 74. Kg5 Ra5 75. Kh6 Ra1 76. Rb7+ Ke8 77. f5


勝負するためにはどこかで突かなければいけないポーンですが、一度進むと戻れないというポーンの性質上、かなり慎重になりました。77. Kg7 Rg1+ 78. Kf6 Rg6+ 79. Kf5 Rg1= でも進展がないことを読み、fポーン突きを実行しました。

77... Rg1 78. Rb6 Rg2 79. Kh5 Re2??

膨大な実戦経験と知識を持つ南條くんらしからぬ1つのミスで、長かったイコールの形勢が大きく傾きました。f4-f5 の気がかりな点はe5 の守りが無くなることなのですが、黒ルークはこれをアタックすることよりも、キングをカットオフしてfポーンに近づかせないことに徹するべきでした。79... Rg1 ならば白は勝つプランがありません。

80. Kg5! Rxe5 81. Kf6+-


この形は少し前でイメージしていましたが、こうして実際に局面に現れると白はここまで粘った甲斐があったと感無量です。白はe5-e6 のようにポーンを単にぶつけて捌いた際と違い、理想的に白キングを寄せたうえで、黒キングを遠ざけてポーンを取ることができます。

81... Ra5 82. Rb8+ Kd7 83. Rf8 Ra1

本譜は黒キングをeファイルに寄せさせることなくポーンが回収できるため、白として勝ちが楽になったと感じました。実際にはf5 へのアタックを残していても、83... Rb5 84. Rxf7+ Ke8 85. Kg7 Rc5 86. Rf8+ Kd7 87. f6+- として勝勢であることに変わりありませんでした。

84. Kxf7 Ra5 85. f6 Rf5 86. Ra8 Rf1 87. Ra2


後はルークを退き、スタンダードなルセナポジションのアイディアを使うだけです。

87... Kd6 88. Rd2+ Kc7

こうして一度チェックをして黒キングを1ファイル離すのが最初のポイントです。88... Ke5 89. Ke7 Rxf6 90. Re2+ Kf5 91. Rf2++- ならばルークを取って白の勝ちです。

89. Ke7 Re1+ 90. Kf8 Rf1 91. f7 Kc6 92. Rd8 Kc7 93. Rd4!


こうして4段目にルークを配置するのが、ルセナポジションで勝つために重要なアイディアで、Building a Bridge(橋を架ける) と呼ばれます。このルークは5段目だと黒キングにすぐ狙われて追いやられ、3段目だと自分のキングから遠すぎるため、4段目である必要があります。

93... Rf2 94. Kg7 Rg2+ 95. Kf6 Rf2+ 96. Kg6 Rg2+ 97. Kf5 Rf2+ 98. Rf4 1-0

こうしてルークの後ろからのチェックをカットしてしまうのが、4段目のルークの役割です。こうして長いゲームを制したことで、マッチで敗れたものの、優勝した8x8 Blunders に一矢報いることができました。

今回、160名を超える参加者が集まった日本最大級の大会を運営してくださったスタッフの皆さんには、心からお礼を申し上げます。今回、初の大会参加となったプレーヤーたちも、また違う大会で会える機会を楽しみにしてます。
Tabiya Chess Club チームのメンバーとは、今後も交流を持ってさらにパワーアップしたいと思います!

2022/08/06

Chennai Olympiad R7 Japan - Nepal

ホテルと会場を往復するバスもオリンピアードの特別仕様です。

休憩日明けの7R はオープンがネパール、女子がエチオピアとの対戦となりました。ネパールはこれまでオリンピアード、アジア大会などいくつかの海外大会で対戦しています。私はヨーロッパのIMトーナメントにも参加している若いプレーヤーとの試合になりました。

Thing, B (CM, NEP, 2260) - Kojima, S (IM, JPN, 2346)
Chennai Olympiad (7)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. d3 Bc5 5. c3 d6 6. a4 a5 7. O-O h6 8. Nbd2 O-O 9. h3 Ba7 10. Re1 Be6 11. Bb3 Re8 12. Bc2 Qd7 13. Nf1 Rad8 14. Ng3 d5

Italian の変化ですが、基本的にa2-a4、a7-a5 と付き合う形は黒が良いと思っています。私も白番でこのフォーメーションを指しますが、a2-a4 は突かず、1手得をした形にします。

15. Qe2 Bc5!?


少し違う形ですが、Topalov の試合で黒のビショップがBa7-Bc5-Bf8 を見たことがあったので、それを試してみようと思いました。しかし、相手の次の手を見てまた違った試みをします。

16. Nh4 Bxh3!? 17. exd5 Nxd5?

思い切ってビショップを切りましたが、メインの読みはドローでした。17. gxh3 Qxh3 18. Nhf5 Ng4 19. Ne3 Bxe3 20. Bxe3 Qh2+ 21. Kf1 Qh3+= からパペチュアルチェックです。本譜のd5 を先に取る手はすっかり読み抜かしており、ここで対応を誤りました。17... Ne7! とかわせば良かったのですが、本譜は白キングへのアタックを過信しています。

18. gxh3 Nf4 19. Bxf4?


19. Qf3 Nxh3+ 20. Kg2 Nxf2 21. Nhf5+/- と進んだ形は黒にこれ以上期待できるアタックがなく、3ポーンピースでも白が大きく有利なポジションです。本譜はピースを返してくれて勝負できるようになりました。

19... exf4 20. Qf3 fxg3 21. Qxg3 Bd6 22. Qg4 Ne5 23. Qxd7 Nxd7 24. d4 Nf6

駒数はイコールでクイーンを捌き、一気にエンドゲームに入ります。白のポーンはバラバラであるため、チャンスはあると考えていました。

25. Nf5 Bf8 26. Ne3 c5 27. dxc5 Bxc5 28. Nc4 b6 29. Kf1 g6 30. Rxe8+ Rxe8 31. Re1 Rxe1+ 32. Kxe1 Nd5


狙いはNd5-Nf4 でh3 のポーンを狙い、白のピースをディフェンスに縛らせることです。

33. Bd3 Nf4 34. Bf1 f6 35. f3 Kf7 36. Kd1 Nd5 37. Nd2 f5 38. Bc4 Ke6 39. Ke2 Ke5 40. Bxd5 Kxd5

ビショップナイトの交換になり、ナイトよりも働いているビショップ+アクティブなキングを得ました。少し黒が有利な局面で、どう進めるかを考えます。

41. f4 Bd6 42. Kf3 g5 43. fxg5 hxg5 44. b3 Be5 45. Nb1 Kc5 46. Ke3 Bf4+ 47. Kd3 Bc1 48. Kc2 Be3 49. Kd3 Bf4 50. Na3 g4


Na3-Nb5 の動きでc3 を守られることが分かり、おそらく勝つことはできないと分かりました。チームの勝ちはこの時点ですでに決まっていたため、ドロー模様でもとことんやることにします。

51. hxg4 fxg4 52. Nc2 g3 53. Ne1 Kd5 54. Ng2 Bg5 55. Ne1 Ke5 56. Ng2 Kf5 57. b4 Kg4 58. bxa5 Kf3??

残り時間数秒まで考え、実行した1つのブランダーで試合を崩してしまいました。58... bxa5 59. Ke4= でドローです。

59. a6!


指されてみると当然の1手なのですが、59. axb6 しか見えていませんでした。

59... Kxg2 60. a7 Kf2 61. a8=Q g2 62. Qb8 Be3

一瞬、白はクイーンの位置を間違えてドローに持ち込めるのではないかと思いました。ビショップはb6 ポーンを守ると同時に、g1 のプロモーションをサポートする好位置です。

63. Qh2 Bc5 64. Kc4 Kf1


試合後にビショップが戻ればドローだったのではないかと考えました。実際には64... Be3 65. Kd5 Kf1 66. Qh3 Kf2 67. Ke4!+- が白の勝ちを決める手で、g1 は確保しているものの、ビショップ取りとf3 でのクイーンチェックを同時に狙われて黒の負けになります。しかし、白が残り少ない持ち時間でこれを見つけていたかは定かではありません。

65. a5 g1=Q 66. Qxg1+ Bxg1 67. a6 b5+ 68. Kxb5 Ke2 69. c4 1-0

6R と違い、自分がずっと優勢で押す側だったため、1つのブランダーで形勢がひっくり返ってしまう悔しい敗戦でした。気を取り直して次の試合に向かいます。

Open R7 Japan - Nepal 2.5-1.5

Tran, Thanh Tu (CM, JPN, 2376) - Chaulagain, Purushottam (NEP, 1975) 1-0
Kojima, Shinya (IM, JPN, 2346) - Thing, Bibek (CM, NEP, 2260) 0-1
Averbukh, Alex (CM, JPN, 2155) - Bhandari, Kshitiz (FM, NEP, 2071) 1-0
Kobayashi, Atsuhiko (JPN, 2156) - Jaiswal, Rupesh (FM, NEP, 2083) 1/2-1/2

Women R6 Ethiopia - Japan 2-2

Haile, Lidet Abate (ETH, 1624) - Sakai, Azumi (WCM, JPN, 1759) 1-0
Bantiwalu, Aster Melake (ETH, 1425) - Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1782) 1-0
Abera, Mekdes Demssie (ETH, 1342) - Misawa, Yuki (JPN, 1587) 0-1
Ayele, Hana Mulugeta (ETH, 1437) - Mitsuyama, Rikka (JPN, 1157) 0-1


オープンチームは私こそ負けたものの、マッチには勝てて一安心です。これでチームは4勝3敗と1つ勝ち越し、再び上位の国にチャレンジすることになります。女子チームは6R のフィジー戦と逆で、上位2つのボードが負けたものの、下位2つが勝ってタイになりました。今日こそチームとして勝つことを願っています。


今日の組み合わせはオープンがモンゴル、女子がキプロスです。私の対戦相手であるGM Gundavaa とは、互いに高校生だった2006年のドーハアジア大会からの付き合いです。今回が初対戦となるので、良いゲームができるよう頑張ってきます。

2022/05/03

Japan Chess Championship 2022 Day4


全日本選手権4日目は前日に引き続き連勝で、ようやくトップグループに戻ってきました。この大事な4日目に連勝した私、青嶋くん、Alexさんの3人が6/7 で並び、大混戦のまま最終日を迎えます。今夜は6R の東野さんとの試合をご紹介しようと思います。

Kojima, S (IM, JPN, 2356) - Higashino, T (JPN, 2104)
Japan Chess Championship 2022 (6)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. d3 Bc5 5. c3 d6 6. O-O a6 7. Bb3 Ba7 8. Nbd2 O-O 9. h3 h6 10. Re1 Re8 11. Nf1 Be6 12. Bc2 d5 13. exd5 Nxd5!?

弘平くんがアジア大会選考で弘平くんが指したa2-a4 を突く近年のラインと違い、Bc4-Bb3 と下がる変化はItalian old line と呼ばれています。私は実はこちらの変化のほうが好きで、黒番でも色々と研究をしてアイディアを探ってきました。黒の13手目はナイト、ビショップ、クイーンのどの駒でd5 を取り返すのもありますが、私は13... Bxd5 とビショップで取る変化を黒側で研究しました。

14. Ng3


14. Nxe5? Nxe5 15. Rxe5 Bxf2+!-/+ はよくあるトリックで、次にQd8-Qf6 がe5 のルーク取りになります。

14... Qd6 15. Nh4 Nf4?

一見するとd6-d5 ブレイクで白のセンターポーンを消し、ピースをセンターに置けた黒は良さそうに思えるかもしれませんが、そんなに簡単ではありません。白はe4 のポーンが消えた代わりに、e5 のポーンを攻撃する、e4 のマスを使うなどのアイディアが考えられます。本譜のナイト跳び込みは明らかに早すぎで、e5 のポーンを崩して白が優勢になります。15... Qe7 16. Qh5 が私の準備で、これならばまだ形勢は互角です。

16. d4! exd4!?


取れないと思っていたポーンを取られてかなり焦りました。d3-d4 を仕掛ける前は、b1-h7 ダイアゴナルを開けたことと相まってナイトをf5 に跳ばすつもりでした。しかし、丁寧に読み直してみると17. Nhf5 Bxf5 18. Nxf5 Rxe1+ 19. Qxe1 Qd7 20. Bxf4 d3 21. Nxh6+ gxh6 22. Qd2 Rd8 23. Bb3+- は黒キングの前を開いて優勢ながら、d3 に刺さったポーンが少し気味の悪い存在です。そこで本譜ではもう1つのアイディアを試します。

17. Bxf4! Qxf4 18. Qd3 Kf8

ダイレクトにb1-h7 からのメイティングアタックは意外と黒は受け方に悩むものです。本譜はキングの早逃げでしたが、他の変化も面白いアイディアで白勝ちになります。18... f5 19. Ngxf5 Bxf5 20. Qc4+! Kh8 21. Rxe8+ Rxe8 22. Qf7!+- 私はQd3-Qc4+ を試合中気づいておらず、f7-f5 が黒のベストディフェンスだと試合中は考えていました。) (18... g6 19. Nxg6! fxg6 20. Qxg6+ Kf8 21. Nf5+-) (18... Ne7 19. Qh7+ Kf8 20. Nh5! Qg5 21. Qh8+ Ng8 22. Ng6+!+-)

19. Qh7 Ke7 20. Qxg7


20. Nhf5+ Kd7 21. Nxg7 Re7 22. N7h5! Qg5 23. h4! Qxh4 24. Qxh6+- こちらはコンピュータの示す変化ですが、g7 を取るほうが次のNh4-Ng6 をスレットにすることが分かりやすく、人間にとっては選びやすいと思います。

20... Kd7 21. Bf5!

21. Rxe6!? Kxe6 22. Ngf5 d3 23. Bb3+ Kd7 24. Qxf7+ Kd8 25. Nf3+- も白勝勢だとは思いながら、難しいエクスチェンジサクリファイスをする必要は全くないので、本譜のビショップ跳び込みを選びました。次にf7 取りがスレットになります。

21... Re7 22. Ng6! fxg6 23. Bxe6+ Kd6


23... Kd8 24. Qxg6+- 黒キングは下がるほうが安全ですが、a8 のルークを使う方法がなく、黒が苦しいのは明白です。

24. Qxg6 Kc5 25. cxd4+ Kb6 26. d5 Rf8 27. dxc6 Qxf2+ 28. Kh2 1-0

最後まで丁寧に指せて良かったです。16手目で黒からポーンを取ってくる手をもう少し読んでからポーンをぶつけるべきでしたが、そこ以外は自分のプレーに満点をあげたいと思います! 続く7R は小林くん相手に丁寧に指した序盤から、1つ雑な判断で不利なエンドゲームに入ってしまい、大苦戦でした。最終的に相手のミスに助けられてなんとか勝ちを拾いましたが、残り2試合はそういったことがないよう、気を引き締めて試合に臨もうと思います。5日間の全日本選手権も、明日が最終日です。

Japan Chess Championship 2022 R8 Pairings
【日本最強決定戦】全日本チェス選手権2022 第8ラウンド | 2022.05.04

7P で並んだ3人ですが、トップボードは私と青嶋くんのペアリングになりました。ここまで8試合、当たらなかったのが不思議です。この大一番でまた良いプレーをお届けできるよう頑張ります!

2022/03/26

Japan Qualifying Tournament for Asian Games 2022 Day1

東京チェス選手権が終わったばかりですが、私は今日から2日間、9月に開催されるアジア大会の選考会に参加します。日本のチェス団体がNCSになってから試合は大井町がほとんどだったため、今回会場となる池上会館に来るのは随分と久しぶりです。池上駅は改装されて綺麗になっていたので、明日はそちらの写真も撮ってこようと思います。

5人ダブルラウンドロビン形式の今大会は、自分以外の4人と白黒を変えて8試合し、毎ラウンド1人抜け番となります。初戦で抜けた私は2Rから参戦で、小川さん、塩見さんに勝ち、小林くんとドローになりました。3連勝している弘平くんとは、この日最後の試合で当たります。

Yamada, K - Kojima, S
Japan Qualifying Tournament for Asian Games 2022 (5)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. d3 Bc5 5. c3 a6!?

この大会ではソリッドにいこうと、d7-d5 とは違うラインを準備していました。ナイトやポーンに狙われぬようにビショップをa7 に退くアイディアは、Italian においてとてもポピュラーです。

6. O-O d6 7. a4 Ba7 8. Re1 O-O 9. h3 h6 10. Nbd2 Re8 11. b4 Be6 12. Bxe6 Rxe6 13. Bb2!?


この手はあまり知りませんでした。a1のルークを守ることでb4-b5 を早めに実現したり、d3-d4 をサポートすることが狙いであることは分かりますが、f4 のマスが少し気になります。Nc6-Ne7-Ng6 とゆっくり組む手もあるようですが、この日はすぐにf4 のナイトを目指しました。

13... Nh5!? 14. Nf1 Rg6 15. Bc1 Qf6 16. N1h2 Nf4 17. Ng4?

白マスビショップを交換しているため、g4 のマスは白が確保できているように見えますが、この間違いでほぼ勝負はありました。代わりに17. Bxf4 ならば長い試合になりそうです。黒はビショップを貰って満足ではありますが、手数をかけたナイトを消されており、残りの駒で押し切ることは簡単ではありません。

17... Nxh3+! 18. gxh3 h5


このタクティクスがあり、黒はナイトを取り返せます。キング前が開いてしまった白は、とたんに厳しい状況です。ちなみにここまで実戦がありました。

19. Bg5 Rxg5 20. Nxg5 Qxg5 21. Qf3 hxg4 22. hxg4 Re8!

これも予想していた流れで、白は2ピースvs. ルークの駒割りにしてキングを守りました。しかし、黒のルークの参戦は早く、f2 やg4 を守るのはまだ大変です。

23. Ra2 Re6 24. Qf5 Rg6!?


コンピュータはクイーンを残して攻めていくアイディアを示しますが、私はクイーンを交換して白のカウンタープレーを消し、g4 を取るだけでも満足だと判断しました。24... Qh4 25. Kg2 Rg6 26. Qc8+ Nd8 27. Rh1 Rxg4+ 28. Kf3 Rf4+ 29. Kg2 Rxf2+ 30. Rxf2 Qxf2+ 31. Kh3 Qf3+ 32. Kh2 Qe2+ 33. Kh3 Qxd3+ 34. Kh2 Qe2+ 35. Kh3 Qh5+ 36. Kg2 Qg5+-+

25. Qxg5 Rxg5 26. Kf1 Rxg4 27. b5 Nd8 28. bxa6 bxa6 29. Rb1 a5

b5,b6,b7,b8 の全てのマスをカバーしているので、a6ポーンはそのままで29... g5!? とする手もありました。

30. Rb5 Bb6 31. Rc2


少し気にしたのはエクスチェンジを捨てて抵抗する手ですが、黒は丁寧に指せば大丈夫です。31. Rab2 Ne6 32. Rxb6 cxb6 33. Rxb6 Rh4 34. Ra6 Nf4!-+ 持ち時間の短いゲームであることを踏まえれば、黒のミスを信じてb6 でのサクリファイスを決行しても良かったと思います。また黒もこのサクリファイスのチャンスを与えないために、a6-a5,Ba7-Bb6 をあえてやらない選択肢もありました。

31... Ne6 0-1

この白星で3勝1ドローとなり、トップに立ちました。弘平くんは3勝1敗、小林くんが2勝1敗1ドローと続いています。明日の2日目は今日の当たりを色を入れ替え、同じ順番で行います。上位2名に入ればアジア大会の代表となる今大会では、2位3位争いが最も熾烈になると思われます。私は半歩リードしていますが、油断せずに明日の試合に臨むつもりです。

Japan Qualifying Tournament for Asian Games 2022 Standings after R5

池上会館近くでは桜が開花していました。今週は東京で雪の日もありましたが、こうして大会の時期と桜か被って嬉しいです。
すぐさま花より団子(笑) 池上の燕楽は知る人ぞ知るとんかつの名店です。

2022/03/02

Giuoco Pianissimo a7-a5 line


先日は私が黒で1. e4 e5 を指し、Italian になったゲームを紹介しましたが、今回は私が白です。1. e4 e5 にはItalian とRuy Lopez を併用していますが、両者の違いから様々な作戦が作れるように工夫したいと思っています。

imsk (2545) - Gillamenace (2425)
lichess blitz

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. d3 Bc5 5. c3 d6 6. Nbd2 a5!?

私も黒で指そうかと一時研究していたアイディアで、近年とても流行っています。従来のa7-a6 と違うメインのアイディアは、b2-b4 のように白がクイーンサイドでスペースを確保することを防ぎつつ、黒マスビショップはc5 の位置のままでも大丈夫なようにすることです。代わりにNc6-Na5 のアイディアは使えなくなるため、白も白マスビショップを急いでc4 からb3 に退かなくても問題ありません。

7. O-O O-O 8. h3 Ba7!?


上記の通り、c5 の位置のままでもビショップは問題ないので、これだとa7-a6 に近い戦い方になります。代わりの面白い黒のセットアップは8... h6 9. Re1 Be6 10. Bb5 Qb8! というもので、黒はクイーンをQd8-Qb8-Qa7 と切り替え、f2 を狙って戦います。

9. Re1 h6 10. Nf1 Ne7 11. Ng3 Ng6 12. Bb3!

白もNc6-Na5 の心配はなくとも、ビショップをこのタイミングで退いておくのが安心です。12. d4 exd4 13. cxd4 d5! は黒からセンターブレイクを許し、e4,d4 の理想的なポーン並びを崩さざるをえなくなります。早めにビショップをb3 に退いておけば、似た状況でもd6-d5 に対してe4-e5 と突き返すことができます。

12... Re8 13. d4 c6 14. Be3 Qc7 15. Qd2 Be6?


これはビショップを捌き、局面の単純化を狙う手ですが、このタイミングでは上手くいきません。15... exd4 16. cxd4!? (16. Bxd4 Bxd4 17. cxd4 a4!) 16... Nxe4 17. Nxe4 Rxe4 18. Bxh6 d5! ならば、本譜と同じようにh6 を取られても、それに付き合わずセンターで対抗して黒は勝負できそうです。

16. Bxh6!

このビショップサクリファイスは上手くいきます。私が研究していたのは2019年のLu Shanglei - Peng Xiongjianのゲームで、それでは黒のポーンはa5 ではなくa6 でしたが、状況はほぼ同じです。

16... gxh6


16... Bxb3 17. Bxg7!! この無理やりビショップを押し込むようなサクリファイスがポイントで、黒はディフェンスがありません。17... Nh7 (17... Kxg7 18. Nf5+ Kg8 19. Qh6+- これは本譜と同じ局面です。) 18. Qh6 Be6 19. Ng5! Nxg5 20. Bf6+- メイト受け無しです。

17. Qxh6 Bxb3 18. Nf5!+-

b3 の取られたビショップを無視してナイトがf5 に入るのが決め手で、黒はg7 を満足に守れません。17... Qe7 18. Bxe6! も絶好のタイミングでビショップを交換することで白勝ちです。黒はポーンで取ればg6 のナイトが落ち、クイーンで取ればQe7-Qf8 ができないので、Ng3-Nf5 を食らってしまいます。

18... Nh5 19. Qxh5 Be6 20. Qh6 Bxf5 21. exf5 Nf8 22. f6


f5 のナイトを消されても、代わりにe4 から移動してきたポーンで再度メイトスレットが作れます。

22... Ne6 23. Ng5 Rad8 24. Qh7+ Kf8 25. Qh8# 1-0

この試合ではあまり機能しませんでしたが、a7-a5 のアイディア自体は優秀なものだと思いますので、今後も白黒どちら側でも試して理解を深めていきたいと思います。

2022/01/30

Italian quick d7- d5 line


久々にlichess で指したゲームから、オープニング分析を含めて解説を書こうと思います。

mASLOVSKIy (2350) - imsk (2593)
lichess blitz

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. d3 Bc5 5. c3 O-O 6. O-O d5!?

黒から早くd7-d5 と仕掛ける変化は面白いと思います。しかし、6. Nbd2 のように待たれた場合、早いNd2-Ne4 からの反撃が厄介であるため、d7-d5 のセットアップはリスクがあり、d7-d6 も黒は勉強しておくべきです。白側でもこのd7-d5 を許すか、6. Nbd2 のような手で待って避けるかは、プレーヤーの好みが分かれそうです。

7. exd5 Nxd5 8. Re1 Bg4 9. a4!?


9. h3 Bh5 10. Nbd2 Nb6 11. Bb3!? Qxd3 12. Nxe5! が2018年に発見された変化で、今夜が最終戦のTata Steel 2022 でも、8R のEsipenko - Giri のゲームで登場しています。この試合は3ポーンvs. ビショップの勝負に持ち込み、3ポーンを持つ黒側が勝利を収めました。本譜のa2-a4 が入ると何が違うかよく分かっていませんでしたが、ひとまずビショップトラップを防ぐために黒もaポーンを伸ばしておきます。

9... a5 10. Nbd2 Bb6!?

b6 に退くのは上記のようにナイトであるべきか、それともビショップか、判断の難しいところです。d5 のナイトはアクティブな位置なので、わざわざb6 に退きたくないという考えもあるでしょうし、ターゲットになるならば早めに逃げてビショップに反撃という考えもあります。私は個人的に多少のリスクを承知で、ナイトをd5 に残しておくのが好みです。

11. Ne4 f5?


e4 のナイトは取られても、白がdxe4 と取り返すことでd5 のピンのナイトを落とすことができるので、f7-f5 はすぐスレットになっていません。それでもポーンを突いておくべきだと考えたのですが、11... Kh8!? 12. h3 Bf5 13. Ng3 Be6 14. Qb3 (14. Nxe5? Nxe5 15. Rxe5 Bxf2+!-+) 14... f6 15. d4?! Bg8! 16. dxe5 Nxe5 17. Nxe5 fxe5 18. Ne4 c6-/+ このように進めたほうが良かったようです。e5 のポーンは孤立して弱いですが、その代わりにfファイルからの反撃に期待でき、黒は十分なポジションです。では本譜は何がいけないでしょうか。

12. Ng3?


この手は黒の望む流れになることはゲーム中に気づいていましたが、他に厳しい手があることは分かりませんでした。12. Bg5! Qd7 13. Ned2!+- このビショップを展開してからナイトを退く手が絶妙で、f3 のナイトをサポートしてビショップナイト交換の際にナイトを入れ替える準備をするとともに、Qd1-Qb3 からピンのナイトを狙います。d5 のナイト、e5 のポーンを両方満足に受ける方法が黒には無く、予想していたよりも白の優勢が大きい局面でした。ちなみに上記の変化のようなQd1-Qb3 の際、黒からのNc6-Na5 を気にしなくて良いのが、互いにaポーンを付き合った白のメリットとして考えられそうです。

12... Kh8! 13. h3 Bxf3! 14. Qxf3 e4!

こうしてeポーンでの仕掛けができるならば、黒はビショップを諦めても十分にお釣りが来ます。黒はe4 でポーンを取られても、f2 を落とすことができて勝勢です。

15. Qe2 e3! 16. fxe3?


本譜のように素直にポーンを取る手は黒の手が分かりやすいですが、16. d4 f4! 17. Nh1 f3! 18. gxf3 Bxd4! と積極的に仕掛けても黒は優位に立てそうです。

16... f4!

一時的にポーンを捨てた黒ですが、ピンを利用してポーンを押し進め、白の陣形を崩します。

17. Nf1 Ne5


17... f3! 18. gxf3 Nf4! 19. Qh2 Ne5-+ も綺麗にナイトが2つ白に襲い掛かり、黒の勝勢です。

18. Bxd5 Qxd5 19. Nh2 Nxd3 0-1

最後は少し迷いましたが、Ra8-Rd8 もあるのでd3 ポーンを取り返すくらいで十分だと考えました。ここで白の時間が落ちてゲームは終わりましたが、続けていても白は形が悪く、厳しい状況です。Italian におけるd7-d5 の仕掛けはリスクもありますが、成功すれば展開の早さで白にプレッシャーをかけることができます。新しいアイディアもまだまだトップクラスの試合で出てきそうなので、今後も注目したい変化です。

2019/06/12

Asian Continental Chess Championships 2019 R6


少しこの写真でも見えづらいかもしれませんが、試合開催地は中国河北省の沙河と書かれています。事前の情報では、邢台市が開催地ということでしたが、さらにこの地区を沙河と呼ぶようですね。

後半戦6Rの相手はインドのIM Vignesh です。彼も私と同じ2/5 ですが、前半は上と当たってポイントを取っているため、残りの戦績次第ではGMノームのチャンスもあるプレーヤーです。

Vignesh, N R (IM, IND, 2459) - Kojima, S (IM, JPN, 2400)
Asian Continental 2019 (6)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. d3 Be7 5. O-O O-O 6. Re1 d6 7. a4 Na5 8. Ba2 c5 9. Nc3 Nc6 10. Nd5 Nxd5 11. Bxd5 Be6 12. c3 Qd7 13. a5!?



このラインの実戦投入は初めてです。a4-a5 と伸ばすアイディアは珍しく、a6 まできた際にどう捌くかがその後の展開を大きく左右しそうです。

13... Bd8 14. a6 Bxd5!?


14... b5!? のようにポーン交換を避ける手もありだと思いますが、私はaポーンが弱点になっても、bファイルからの反撃があれば十分だと考えました。ナイトがe7 に退けるようになったタイミングで、白マスビショップを交換しておきます。

15. exd5 Ne7 16. axb7 Qxb7 17. c4 a5



aポーンの扱いには悩みました。a7 に置いたままもありえそうですが、将来的にRa1-Ra6,Re1-Ra1 とされると、d6,a7 の両方を狙われてしまうので、思い切って伸ばしてみることにしました。この手自体は大丈夫ですが、b5 のマスが弱くなることを軽視していたのが最初の失敗でした。

18. Ng5 Qd7?!


もう一つ考えていたラインで、18... Nf5! 19. Ne4 Be7 20. Nc3 Rfb8 21. Nb5 Nd4 22. Nxd4 cxd4 ならば、黒は願った通りにナイトを捌いてd6 を守り、bファイルから反撃を作ることでaポーンの弱さを補えていました。こうした状況を見据えてaポーンを伸ばしたつもりでしたが、f5 に跳んだナイトが浮くことと、キングサイドが手薄なことから、Qd1-Qg4 のようなアイディアもあるかもしれないと、本譜は慎重になりすぎました。

19. Qa4! Qxa4?!



d7 にクイーンを動かす前、当然クイーンをぶつけてくる手もありえると予想していました。この交換のオファーに応じたのが大きなミスで、bファイルからの反撃は遅く、さらにd6 のポーンが守りづらくなってしまいます。白クイーンがg4,h5 に出られなくなったことに満足し、19... Qb7! と戻る手が正解でした。

20. Rxa4 Ng6?


さらにこの手はひどかったです。普通に考えれば、Ne7-Nf5-Nd4 と潜り込む手が最も自然です。私も当然それを考えていましたが、突如、f2-f4 を止めたほうが良いと勘違いしてしまいました。20... Nf5 21. Ne4 Bc7 22. f4 f6 23. fxe5 fxe5 24. Ng5?! Nd4! がe6 を受けていることを見落としていました。e6 もb5 も受けるという意味で、d4 へのナイト切り替えは黒にとって必要不可欠でした。

21. Ne4! Bc7 22. Nc3!



ここもBc1-Bd2 と先に上がってくるというのが大きな勘違いで、白は当然b5 にナイトを刺し、bファイルからの反撃を封じてからゆっくりa5 を攻めにきます。この時点で黒の作戦は完全に破綻したことが分かっていたので、仕方なくエクスチェンジを捨てた決死の抵抗を試みることにします。それにしても、20手付近ですでに苦しいエンドゲームに入ることが決まるのは、色々なゲームをしてきましたが、なかなか珍しい経験です。

22... Rfb8 23. Nb5 Rxb5 24. cxb5 Rb8 25. Bd2 Rxb5 26. Rea1 Rxb2 27. Bxa5 Bxa5 28. Rxa5 h5


伸ばしたhポーンが、後にルークのターゲットにもなりえますが、g2-g4 を止めて、f5 のマスをナイトのために確保しておきたいですし、ポーンをどう伸ばすかは悩むところです。

29. Ra6 Nf4 30. Rxd6 Rd2 31. Rc6 Nxd5 32. Rxc5 Rxd3 33. g3 e4?!



ここはどちらのポーンを突くか、とても悩みました。結論から言えば、どちらも負けの可能性が高いですが、おそらくディフェンスのチャンスがあるのは、fポーンだったでしょう。33... f6!? 34. Kf1 (私もfポーンを突くのが最初悩みでしたが、7段目が開き、g7 がターゲットになることを恐れました。34. Ra7 h4 35. Rb5 h3 36. f3! (試合中、恥ずかしことにキングが寄られて負けだと思っていました。36. Kf1?? Rd1+ 37. Ke2 Nc3+-+ は黒の大逆転です。 ) 36... Kh7 37. Rd7 Rd1+!? 38. Kf2 Rd2+ 39. Ke1 Rxh2 40. Rdxd5 Rg2 41. Kf1 Rxg3 42. Rd2 Rxf3+ 43. Kg1 この4ポーンvs. ルークをコンピュータは白勝ちと判断しますが、人間が指すとどうなるかまだ分からないでしょう。) 34... Kh7! 35. Ke2 Rd4 36. Rd1 Rxd1 37. Kxd1 Ne7+/- こうなると、黒はeポーンをしっかり守ったまま、ポーンが4vs.3で戦うことができます。これだとナイトでも守りきれる可能性があるでしょう。

34. Ra8+ Kh7 35. Re8!


e4-e3 を消すために、ポーンは横からではなく後ろから攻撃します。これでもe4 はぎりぎり守りきれると思っていましたが...

35... Nf6


35... e3 36. fxe3 Nxe3 37. Rxh5+ Kg6 38. Ra5 Ng4 39. Re2 こうしてポーン交換を進めておく手もあったでしょう。

36... Re7 Kg6 37. Rc6!+-



こうしてナイトがピンにされると、e4 を守りきることができません。ルークを4段目、もしくはe1 に潜り込ませて守ろうとすると、ルークを7段目に重ねられてf7 を取られ、やはり負けです。こうなるとe4 を諦めて戦うしかありませんが、ルーク交換も時間の問題ですので、黒には希望がありません。せめてe5 のまま伸ばさずに、ポーンを守りきれていたらと思いますが、先述の変化を読めなかったので仕方ないです。

37... Rd8 38. Rxe4 Rd7 39. Kg2 Ra7 40. Re5 Rb7 41. h3 Ra7 42. Rb5 Rd7 43. Ra6 Re7 44. Ra8 Kh7 45. Rba5 g6 46. R8a7 Rxa7 47. Rxa7 Kg7


h5-g6-f7 の形にはしたものの、白キングがゆっくりと上がってくる恐怖に待つしかない状況ですが。こうしたポジションでは、キングをe8 あたりまで潜り込ませて、f7 をアタックするのが原則だと知っていましたが、ナイトでの抵抗をどうかいくぐるのが知りたくて続けてみることにします。

48. Kf3 Ne8 49. Ke4 Nd6+ 50. Kd5 Nf5 51. Ke5 Nh6 52. Rb7 Ng8 53. Kd6 Nf6 54. Ke5 Ng8 55. Rb6 Ne7 56. g4!



通常はポーン交換は負けている側に嬉しいものですが、ここではg5 にポーンを刺し、ナイトの行き場を消すアイディアが黒にとって厳しいものになります。

56... hxg4 57. hxg4 Ng8 58. f3 Nh6 59. Rb7 Kf8 60. Rb8+ Kg7 61. Re8!


上手いですね。こうして手を待たれると、いよいよ黒はできることがありません。

61... g5


61... Ng8 62. g5! Kh7 63. Kd6 Kg7 64. Rc8 Kh7 65. f4 Kg7 66. Kd7 Kh7 67. Ke8 Kg7 68. Rc7 とキングに潜り込まれても、f7 を取られて負けです。

62. Ra8 f6+ 63. Ke6 Kg6 64. Rh8 1-0



ナイトvs.ルークのエンドゲーム、勉強させてもらいました。それにしても序盤が酷かった...

次はフィリピンの14歳、IM Quizon Daniel との対戦です。フィリピンの天才少年は今大会、大先輩のGM Torre を破るものの、格上4人に敗れて1.5/6 と苦しんでいます。互いにもう負けられない後半戦、最後まで気力を振り絞って戦います。

Asian Continental Chess Championships 2019 R7 Pairigs



沙河のマスコットキャラでしょうか。捻りがないですね(笑)

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