2017/09/30

Isle of Man International 2017 R7


昨日は、去年通い詰めたTea Junction へ。

正念場の7R は、インド注目のユースプレーヤーNihal Sarin との対戦です。現在、最年少GM 記録更新が期待されるPraggnanandhaa と並び、Nihal もあと少しでGM のタイトルに手が届きそうなところまできています。

Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Nihal, S (IM, IND, 2483)
Isle of Man International 2017 (7)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6



Nihal は今年になって対1. d4 のメインレパートリーをQGD Vienna にしていましたが、勝ちを狙うこのラウンドは去年まで頻繁に指していたKID にしてきました。

3. d4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nc6 7. Nc3 a6 8. d5 Na5 9. b3!?


6... Nc6 のPanno Variation に何を指すか、長年悩んできましたが、今年のJapan League からはこの変化を試しています。黒がクラシカルなプランでc7-c5 と突くようであれば、これをとってEnglish のポーンストラクチャーにしてしまいます。

9... c5 10. dxc6 Nxc6 11. Bb2 Ne4 12. Qc1 Nxc3 13. Bxc3 Bxc3 14. Qxc3



ひとまずここまでの流れは白満足です。Nc3-Nd5 と飛び込むアイディアは消えましたが、c4-c5Qc3-Qd2(or Oe3)-Qh6、Nf3-Ng5 の組み合わせはどちらも効果的なアイディアで、黒は気を付けなければいけません。

14... Bd7 15. Rfd1 Rc8 16. Rac1 Qc7 17. Qd2!?


指してから思ったのは、17. c5! dxc5 18. Qxc5 Rfd8 19. Nd4+/= と指していれば、白は手堅く有利なエンドゲーム持ち込めるということです。私はc4-c5 のアイディアとして、d7 のビショップを狙うことをメインに考えていましたが、普通に取りかえしてcファイルの圧力を活かしてもOKでした。本譜ではもう少し駒を残し、Qd2-Qh6 を見せることにします。

17... Bg4



ここはc4-c5 に備え、ビショップをどこに逃がしてくるだろうかと思いましたが、Nihal の判断はf3 のナイトを交換するというものでした。これならば白はビショップナイト交換を受け入れ、やや優勢で試合を進められそうです。

18. h3 Bxf3 19. Bxf3 Rfd8 20. h4 Ne5 21. Bg2 h5 22. Qf4 Qb6 23. Qe4 Rd7 24. Bh3 e6


細かく揺さぶりを入れながら、黒にe7-e6 を突かせ、d6 のポーンを弱くしました。Bh3-Bxe6 のサクリファイスも考慮しつつ、さらなる進め方を考えます。

25. Rc2 Qb4 26. Kg2 Qc5 27. Rcd2 b5 28. f4



キングの守りを弱めるために不安もありますが、c4 を崩されないようにするためには仕方がありません。ここでビショップとナイトを交換し、ポジションを単純化します。

28... Ng4 29. Bxg4 hxg4 30. Rd4 Rcd8 31. Qd3 bxc4?!


Nihal は先に時間切迫になっており、残り時間は10分を切っていました。私としてはクイーンサイドは白から取るよりも、黒から取らせたほうが良いとの判断でルークを4段目に上げたため、こうして早々に交換してくれるのはありがたかったです。31... d5 32. Qd2= ならば、お互いにテンションを保って難しい形勢でしょう。

32. Rxc4 Qb6 33. Rdc1 a5 34. Rc6 Qb7 35. Kh2 a4 36. h5!?



a5-a4 を許し、少ししまったと思いました。このポーンを取るか、それともキングサイドで思い切って仕掛けるかを残り3分まで悩み、後者を実行することにします。36. bxa4 Qa7 37. Kg2 Qxa4 38. h5 Qa8= でも形勢は互角のようです。

36... gxh5 37. f5 axb3 38. axb3 Re8??


ここはいくつかの変化があったようですが、38... Qa7 39. fxe6 Qf2+ 40. Kh1 fxe6 41. Qg6+ Kh8= (41... Kf8?? 42. R6c4! e5 43. Qg5+-) とするのが黒にとって安全策で、ドローに落ち着いたでしょう。時間切迫でNihal が指した手を見て、私も狙いだったf5-f6 押し込みからのメインティングアタックを決行します。

39. f6! Qa7 40. Rf1?



時間の増える40手目、私はメイトになる決定打を見落としました。40. R6c5!! dxc5 41. Qe3!+- ならばメイト受け無しで白の勝ちです。ショックだったのは、試合後にその場ですぐにNihal がこの手を指摘したことです。彼としては時間切迫の中、38手目がブランダーで、白の必勝局面であることに気付いていたのでしょう。私は彼よりも多少時間を残しつつも、勝ちの手を見つけられなかったことに落ち込みました。

40... Qa5


私も当然この手を考えての40. Rf1 でしたが、続く変化の中でQa5-Qg5 があることを見通していました。

41. Qe3


私はメイトもパぺチュアルチェックもなくなったことを悟り、落ち着いてベストの手を探そうとしましたが、黒キングを8段目に置いたままd6 を取るのが良いのか、6段目まで上げさせてから取るのが良いのか、判断ができませんでした。41. Rxd6 Rxd6 42. Qxd6 Rd8=/+ 実際にはこれでも黒がやや優勢ですが、本譜よりは良かったでしょう。

41... Kh7 42. Qd3+ Kh6! 43. Rxd6



43. Qe3+ Qg5! が40手目の時点で見落としていた1手で、こうなれば明らかに黒が優勢です。私はポーンを取るほかないと思いましたが、この変化もダメでした。ポーンがバラバラなうえ、キングの守りが薄すぎます。

43... Rxd6 44. Qxd6 Rd8 45. Qe7 Kg6 46. Qb7 Qe5 47. Qg2 Rd2 48. Rf2 h4 49. b4 Rb2 50. b5 Rb3 0-1


今回負けた3試合のうち、最も分かりやすい決定機を逃してしまいました。悔しいですがこれも勉強だと思い、残りの2試合、思い切り指してこようと思います。

この日、私は敗れましたが、マイナーセクションでプレーしている妻のなつみが3勝目。ここまで3勝1敗1ドローで2位タイにつけています。5連勝でトップを走るGaspar Ioan-Dan は、実力が頭1つ飛びにけているように見えるので、彼の優勝はほぼ間違いないでしょう。一方で今日の試合で勝利をつかめれば、妻も入賞が見えてきます。

私は今日のラウンドでは、ドイツのWIM Osmanodja Filiz と対戦します。彼女は100近くレイティングを落としていますが、ベストは2370 と私とほぼ変わりません。これ以上ポイントを落としたくはないので、黒番ですがチャンスを作りにいきたいと思います。

2017/09/23 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Dahl, B (ENG, 1974) 1-0
2017/09/24 R2 Xiong, J (GM, USA, 2633) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1-0
2017/09/25 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Riazantsev, A (GM, RUS, 2666) 0-1
2017/09/26 R4 Birkisson, B (ISL, 2164) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
2017/09/27 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Oyama, A (ENG, 2198) 1/2-1/2
2017/09/28 R6 Heimisson, H (ISL, 2185) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1
2017/09/29 R7 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Nihal, S (IM, IND, 2483) 0-1
2017/09/30 R8 Osmanodja, F (WIM, GER, 2245) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)

Isle of Man International 2017 R8 Pairings
Isle of Man International 2017 Live Games

2017/09/29

Isle of Man International 2017 R6


この日は所用で試合前に外へ。研究でこもってばかりではダメですね。

後半戦、6R は4R と同じくアイスランドのジュニアプレーヤーとの対戦です。今大会、アイスランドからはベテランGM のOlafsson 以外には、有望な若手プレーヤーが多く参加しています。

Heimisson, H (ISL, 2185) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)
Isle of Man International 2017 (6)

1. d4 d5 2. Bf4



この試合、3. Bg5!? をメインで準備していましたが、まさかのLondon System でした。London 対策は以前から自信があったうえ、4R で指されるかもしれないと思って見直しておいたのがラッキーでした。

2... c5 3. e3 Nc6 4. c3 Nf6 5. Nd2 Bf5 6. Qb3 Qd7 7. Ngf3 c4 8. Qd1 h6 9. h3 e6 10. Ne5?!


このナイト交換はやや早いと思いますし、こうして飛び込むのであれば、h2-h3 は必要ないように感じます。

10... Nxe5 11. Bxe5 Be7 12. e4 Bh7



ここは12... Nxe4 13. Nxe4 Bxe4 14. Bxg7 Rg8 15. Bxh6 O-O-O=/+ と1ポーンを捨てるアイディアもありました。黒は確かに展開の早さとgファイルからのカウンターで、ポーンの代償がありそうに見えます。本譜では私は、もう少しゆっくりとした展開を望みました。

13. exd5 exd5 14. Be2 O-O 15. O-O b5 16. Qc1


白黒逆でも、このポーンストラクチャーであればしばしば見られる手です。白の狙いはBe2-Bd1-Bc2 とビショップを組み替え、黒のよく利いているビショップを消すことですので、これにどう応じるかを考えます。

16... a5 17. Bd1 Qf5!?



単純なアイディアですが、Bd1-Bc2 がすぐできないようストップしてしまいます。もし白がg2-g4 と突くようであれば、おとなしくクイーンを退き、白キングの前を崩したことで満足するつもりでした。

18. Re1 Rfe8 19. Nf1 Ne4 20. f3 Bh4!


ここは慎重に読み、この手が成立する思いました。白にはいくつかの応手がありますが、全て黒にとって嬉しい形になります。

21. Bc2?!



これはe4 のナイトを取りかえして2ピースルークになりそうな手ですが、正確に読んでいくと黒が有利になることが分かります。21. g3? Nxg3! 22. Bxg3 Rxe1 23. Bxh4 Rxf1+! 24. Kxf1 Qxh3+ 25. Kg1 Qxh4-+ は黒勝勢。21. Re2 Nc5! 22. Ng3 Bxg3 23. Bxg3 Nd3=/+ でも、理想的なアウトポストにナイトを指した黒が良いポジションです。

21... Rxe5!?


どちらから指すべきなのかが分かりませんでしたが、エクスチェンジサクリファイスからでもOKです。21... Bf2+ 22. Kh2 (22. Kh1 Bxe1 23. Qxe1 Nf2+ 24. Qxf2 Qxc2-+) 22... Bxe1 23. Qxe1 Rxe5 24. dxe5 Qf4+-/+ ならば、本譜と同じポジションです。

22. dxe5 Bf2+ 23. Kh2



23. Kh1 Bxe1 24. Qxe1 Ng3+ 25. Nxg3 Qxc2=/+ これでも黒がやや優勢ですが、上記のラインに比べてアドバンテージは小さいというのがコンピュータの評価です。

23... Bxe1 24. Qxe1 Qf4+!


これでピンを外せば、e4 のナイトを助けることができます。g2-g3 にf3 のポーンを取れることを、最初は見通していました。もちろん、24... Qxe5+? 25. Kh1 Re8 26. fxe4 Bxe4 27. Bxe4 dxe4+/- はピースダウンで黒はダメでしょう。

25. Kh1 Nc5!-/+



上記のラインでも見たように、ナイトはd3 のマスを目指すのがベストです。20... Bh4! からの一連の流れの結果、黒には決定的なアタックや駒得はありませんでしたが、d3 にナイトを置くことができれば満足です。

26. Qf2 Rc8! 27. Re1 Bxc2 28. Qxc2 Nd3 29. Re3 Re8!


ナイトはd3 にどっしりと居座ったままが良いので、e5 のポーンを回収するのはルークの役目です。これで黒の駒得が決まり、後はどうゆっくりと局面を進展させていくかを考えます。

30. g3 Qf5 31. f4 Qxh3+ 32. Kg1 Qd7 33. Rxd3



こう指して厄介なナイトを取り除いてしまいたくなる気持ちは分かりますが、このエクスチェンジアップであれば黒は楽に勝てそうです。

33... cxd3 34. Qxd3 d4!


シンプルなのはルークのためのオープンファイルを作りつつ、クイーンを交換してしまうことでしょう。ルークとナイトではスピードが違い、勝負になりません。

35. cxd4 Rd8 36. Kf2 Qxd4+ 37. Qxd4 Rxd4 38. Ke3 Rd1 39. Nd2 Ra1 40. a3 Ra2 41. Nb3 a4 0-1



ようやく待望の2勝目です。本当に嬉しい! 20手目で思い切ってビショップを跳び込めたのが良かったですね。これで戦績は2勝2敗2ドローのイーブンに戻りました。

7R はインド注目の13歳、Nihal Sarin との対戦です。すでにGM ノームを1つ持ち、レイティングも2500手前強豪です。今回の調子はまぁまぁといったところですので、白番でチャンスを作りたいですね。

2017/09/23 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Dahl, B (ENG, 1974) 1-0
2017/09/24 R2 Xiong, J (GM, USA, 2633) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1-0
2017/09/25 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Riazantsev, A (GM, RUS, 2666) 0-1
2017/09/26 R4 Birkisson, B (ISL, 2164) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
2017/09/27 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Oyama, A (ENG, 2198) 1/2-1/2
2017/09/28 R6 Heimisson, H (ISL, 2185) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1
2017/09/29 R7 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Nihal, S (IM, IND, 2483)

Isle of Man International 2017 R7 Pairings
Isle of Man International 2017 Live Games


久々に試合で勝てたので、アイスクリームをゲット。2 Scoop の注文が、6 Scoop くらいあってコーンが割れてます(笑)

2017/09/28

Isle of Man International 2017 R5


会場の天井にはたくさん風船が引っかかっており、試合中にしぼんで落ちてこないかハラハラします。

つい先日始まったばかりだと思っていたトーナメントも、気付けば中間の5R を迎えます。この日は5年前から交流のある、大山くんとの対戦です。彼はイングランド籍のプレーヤーとしてずっとこちらでプレーしており、2日目には一緒に食事もして、イングランドでの近況や、進路について色々と話をしてきたばかりです。

Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Oyama, A (ENG, 2198)
Isle of Man Internationlal 2017 (5)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. Qc2 O-O 5. a3 Bxc3 6. Qxc3 b6 7. b4 Bb7 8. Bb2 c5 9. e3 d6 10. Be2 Nbd7 11. O-O Rc8 12. Rfd1 Qe7 13. d4 cxd4?!



3R とは違い、好きな形のAnti-Nimzo-Inaidn になりました。黒はここでセンタポーンを交換する手が少しおかしく、d6 のポーンが負担になってしまいます。

14. Qxd4 Bxf3 15. gxf3


悪い手ではないですが、割と早い段階でビショップで取り返しておくべきだったと後悔しました。15. Bxf3 Ne5 16. Be2 Rfd8 17. Rac1+/= ならば、ダブルビショップとd6 へのプレッシャーで、疑いようのないアドバンテージがあります。私は開いたgファイルを過信していたうえ、薄くなった白キングへの黒のカウンターを過小評価しいていました。

15... Ne8 16. Kh1 Ne5 17. Rac1 Ng6 18. Rd2 f5 19. Rg1?!



この手前でも良いですが、どこかで19. f4! と突いておくべきだったと思います。指される前は、e6-e5, f7-f5 とされても、黒の弱点も多少増えるため問題ないと思っていましたが、g6 のナイトのせいで白からf3-f4 と仕掛けるチャンスがないことを見落としていました。

19... e5! 20. Qd5+ Kh8 21. a4 Rc7 22. Bf1


本譜は少し弱気だったかもしれません。22. a5 と積極的にクイーンサイドで仕掛けるポイントを作っておくほうが良かったでしょう。いずれにせよ黒は同じキングサイドアタックをすると思いますが、クイーンサイドに守らなければいけないポイントができると、アタックに集中しづらくなるでしょう。

22... Qh4 23. Qd3 Qh5 24. Be2?!



24. Rg3 f4 25. Rh3 Nh4 26. Rd1 Qg5+/= コンピュータはまだこれで白が少し良いと判断しますが、h3 に行ったルークはg3 に戻れないため、トラップされないかという不安がありました。

24... f4! 25. e4 Nh4


こうして見ると黒の攻撃は、hファイルにヘビーピースを重ねてh2 のメイトを狙う明快さがあり、白はディフェンスが難しそうです。

26. Rc2?


26. Rg4! Rf6 27. Qb1! Rh6 28. Qg1= ならば、白は何とか守れています。d6 のポーンを攻撃しているため、すぐにはNe8-Nf6 ができないとはいえ、g4 にルークを早めに運んで大丈夫なのか自信が持てませんでした。しかし、gファイルにルークとクイーンが重なれば、Rg4-Rg5 ができるため、ルークの逃げ場ができるのは盲点でした。

26... Rf6 27. Rg4 Rh6 28. Kg1 Ng6 29. Rg2 Nh4 30. Rg4 Ng6 31. Rg2 Qh3!



白は待つしかありませんが、黒は同一局面を蹴って勝負にいけます! クイーンがh3 に潜り込んでからのNg6-Nh4 であれば、次にルークをgファイルでぶつけ、ルーク交換の後にg2 でのメイトを狙うことができます。

32. Rc3 Nh4 33. Rg4 Ng6?!


検討ではd6 を捨て、もう1つのナイトをプレーに戻すアイディアが出ました。33... Nf6! 34. Qxd6 Rc8 35. Qe6 Rg8!-+ ならば黒は危ないところがなく、白はg4 のルークもh2 のポーンも危なくて敗勢です。

34. Rg2 Nh4 35. Rg4 Ng6 1/2-1/2



大山くんが勝ち筋に自信を持てず、ドローにしてくれたのは完全にラッキーでした。ポイントこそ拾ったものの、この5試合で初めて構想からおかしく、悪いポジションにしてしまったことを反省して、また次のラウンドに臨もうと思います。

次の相手は再びアイスランドのジュニアです。上からも2人ポイントを取っており、全く侮れない相手です。私もそろそろ初戦以来の白星を掴みたいですね。今日も頑張ってきます!

2017/09/23 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Dahl, B (ENG, 1974) 1-0
2017/09/24 R2 Xiong, J (GM, USA, 2633) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1-0
2017/09/25 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Riazantsev, A (GM, RUS, 2666) 0-1
2017/09/26 R4 Birkisson, B (ISL, 2164) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
2017/09/27 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Oyama, A (ENG, 2198) 1/2-1/2
2017/09/28 R6 Heimisson, H (ISL, 2185) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)

Isle of Man International 2017 R6 Pairings
Isle of Man International 2017 Live Games


Carlsen はこの日、ペルーのGranda に勝ち。4.5/5 で去年の優勝者、Eljanov を迎え撃ちます。

2017/09/27

Isle of Man International 2017 R4


快晴の日は会場前の海も綺麗で、海岸を散歩する人の姿も多く見られます。

4R はアイスランドのジュニアプレーヤーとの対戦です。実はこの子、双子のチェスプレーヤーで、片割れも同じマスターセクションで試合をしています。もう1人も頻繁に試合中に局面を見に来るのですが、2人とも席を立っていると対戦相手がどちらか分かりません(笑) そんな珍しい双子プレーヤーとの対戦は、今大会で最長手数のタフなゲームになりました。

Birkisson, B (ISL, 2164) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)
Isle of Man International 2017 (4)

1. Nf3 d5 2. c4 c6 3. g3 Nf6 4. Bg2 g6 5. b3 Bg7 6. Bb2 O-O 7. O-O Bg4 8. d3 Bxf3 9. Bxf3 e6 10. Qc2 Nbd7 11. Nd2 Qe7 12. d4!?



全日本から採用しているセットアップですが、d2-d4 の突き直しをしてきたのは彼が初めてです。白のブレイクとしては、e2-e4 が考えられますが、すでに1マイナーピースを交換している状態ではさほど恐れなくとも大丈夫です。

12... Rfd8 13. Rfe1 Rac8 14. e4?!


指したい気持ちは分かりますが、14. Rad1 などもう少し準備をしてから仕掛けるのが良いでしょう。黒はe2-e4 のブレイクを待つくらいで、自分からあまり仕掛けようはないので、白は時間をかけてOKです。

14... dxe4 15. Nxe4 Nxe4 16. Bxe4 Nf6



昨年のマン島でのWang Hoa 戦でもこのポーンストラクチャーになりました。黒はすでに2ピースを交換しているため、きちんと指せば、白のスペースとダブルビショップのアドバンテージを抑え込んで戦えるはずです。逆にd4 のポーンをターゲットにする面白みもあるため、黒は満足なはずです。本譜ではNf6-Ne8-Nd6-Nf5 のマヌーバリングをすでに意識していますが、16... b5!? としても良かったでしょう。c4 のポーンを捌くことができれば、黒はd5 のマスをナイトのためのアウトポストとして活用できます。

17. Bf3 Qc7 18. Rad1 Rd7 19. Rd3 Rcd8 20. Red1 h5 21. h4 Ne8 22. Bc3 b5!?


黒が勝ちにいくのであれば、なるべく白からd4-d5 と突き、ポジションを単純化することを許すべきではないと思います。22... Nd6 23. d5 cxd5 24. Bxg7 Kxg7 25. Qb2+ f6 26. cxd5 e5= ならば形勢互角ですが、こうせずにじっくりとd4 を狙うチャンスを残そうと考えました。

23. Kg2 Rc8 24. Qd2 Nd6!?



ここはポーンを交換を挟んでからナイトを跳ぶかどうか迷いましたが、bファイルを開くことは、わずかに白にとってメリットが大きいように感じ、ポーンはそのままにしてナイトを跳ぶことにします。24... bxc4 25. bxc4 Nd6 26. c5 Nf5 27. Rb1+/=

25. Bb4


ここは白もどう指すか迷うところです。私がメインで考えていたのは、25. Ba5 Qb8 26. d5 cxd5 27. cxd5 e5 という形で、これならばe5-e4 を狙って黒に面白い実があると思っていました。本譜ではこれよりも白はポジションの単純化を目指します。

25... bxc4 26. Bxd6 Rxd6 27. bxc4 Rcd8 28. Qe3 c5!



この手以外は一切チャンスはないと思い、ルークを捌いても局面を改善します。

29. dxc5?!


29. d5 Bd4 30. Qg5 Kg7= ならば形勢互角ですが、どちらもまだ注意の必要な局面です。

29... Rxd3 30. Rxd3 Rxd3 31. Qxd3 Qxc5



私が目指したポジションに到達しました。駒数はイコールで異色ビショップですが、黒のビショップはf2 をアタックするチャンスがあり、白のビショップよりも明らかにアクティブです。Aronian のゲームでこうしたクイーン+異色ビショップのエンドゲームを見たことがあったので、黒の理想形を思い描きながら試合を進めます。

32. Qd8+ Bf8 33. Qb8 Qd4 34. Qa8 Kg7 35. Qe4 Qa1 36. Qe2 Bc5 37. Qc2 Qd4


これでビショップとクイーンが両方f2 を狙えるようになりました。白はひたすら待つしかありませんので、黒はゆっくりとブレイクの方法を模索します。

38. Qe2 f5 39. Qc2 Kf6 40. Qe2 e5 41. Bd5 e4



私はe4-e3f5-f4 のどちらのブレイクもありえると思いましたが、e5 の位置からf5-f4 と仕掛けるのは妙に思え、ひとまずポーンをe4 まで進めることにします。ブレイクのチャンスを作るだけでなく、白マスビショップをキングから分断し、f3 のマスを弱める狙いもあります。

42. Bc6 Ke5 43. Be8 Kf6 44. Bc6 Qc3 45. Bd5 Bd4 46. Bc6 a5 47. a4 Qc1 48. Bd5 Qa3 49. Bc6 Qb3 50. Be8 Qb7 51. Kh2 Qb4 52. Bc6?


相手は基本的に早指しで、この手もさほど考えずにさっと指しました。こうしたひたすら待つだけのポジションでは、ディフェンス側に間違いが出やすいものですが、これは明らかにケアレスミスです。

52... Qc5



私はc4 の浮いたポーンも狙うほうが自然だと思いましたが、52... Qb6! 53. Qd2 Kg7! 54. Kh3 Bxf2 55. Qd6 Bc5 56. Qe5+ Kh7 57. Be8 e3-/+ のほうが正確で、f2 を取れれば黒の有利な相当大きそうです。

53. Qd2 Qxc4


指した直後にキングを先に動かすべきだったと後悔しましたが、結局相手のさらなるミスで同じになります。53... Kg7! 54. Be8! Qxc4 (54... Bxf2?! 55. Qd7+ Kh6 56. Qd8!= 先述のラインで51. Qb6! がベターなのは、このクイーンの侵入を防いでいるためです。) 55. Bb5 これで本譜と同じです。

54. Bb5?!


54. Qh6! Qxc6 55. Qh8+ Kf7 56. Qxd4= 白クイーンは来るとすればg5 のマスだと思い込んでおり、h6 のマスは見落としていました。これを防ぐのが、先にキングをg7 に退いておいたほうが良い理由です。

54... Qc5 55. Kg2 Kg7 56. Be8 Qd5 57. Kh2 Qe5 58. Bb5 Qc5 59. Kg2 Qa7



ひとまず1ポーンアップした黒は、ここからどう仕掛けるか迷うところですが、f2 へのアタックと、f3 でのチェックのチャンスを消してしまったため、意外とどう仕掛ければ良いのか分かりません。コンピュータは59... e3 60. fxe3 Bxe3 61. Qd7+ Kh6 62. Qc6 Qd4-/+ とする手筋を指摘しますが、これで勝てるのか自信がありませんでした。実際にやってみれば、白はg3 のポーンのディフェンスと、f5-f4 のブレイクに対する警戒が大変で、ミスが出やすいものだと思います。なにより他の変化ではチャンスを作ることはできないため、自信がなくともこの変化に跳び込むしかありませんでした。

60. Bc4 Kh7 61. Bb5 Qc5 62. Be8 Bg7?!


結局間違ったプランを選択してしまいました。私のアイディアはビショップを7段目に退いてチェックを防ぎ、クイーンを3段目にもどいてf3 のマスでのチェック狙いを復活させることでしたが、白のg6 への反撃が十分であることを読み切れませんでした。代わりにもう一度、62... Qd5 から白マスビショップを追い返し、e4-e3 を仕掛けるべきだったでしょう。

63. Qd7! Qc3 64. Qe6! Qf3+ 65. Kg1 Qg4



g6 を守ったは良いものの、f5-f4、e4-e3 のどちらも仕掛けられなければ、ポジションを進展させることはできません。

66. Kg2 Kh6 67. Qd6 Kh7 68. Qe6 Qf3+ 69. Kg1 Qd1+ 70. Kg2 Qg4 71. Kg1 Kh6 72. Qd6 f4


この異色ビショップエンディングがドローであることはもちろん承知しています。しかし、他にやることはありません。

73. Qxf4+ Qxf4 74. gxf4 Bf6 75. Bc6 Bxh4 76. Bxe4 Be7 77. Kg2 Kg7 78. Kf3 Kf6 79. Bb1 Bc5 80. Bd3 h4 81. Kg4 Bxf2 82. Bc2 Bg3 83. Bb1 Kg7 84. Bd3 Kh6 85. Bc2 Bf2 86. Bd3 Be3 87. Kxh4 Bxf4 88. Kg4 Bd2 89. Bb5 Kg7 1/2-1/2



ルークやクイーンが残っていて、勝ちのチャンスを作れる異色ビショップエンディングは、また帰国後に研究をしてみようと思います。

さて、マン島のトーナメントも早くも折り返しになりました。5R ではイングランドの元U14,U17 のチャンピオン、大山くんとの対戦が決まりました。レイティングを考えると、もしかすると当たるかもしれないと予感はありました。去年のジャパンリーグでは私が勝ちましたが、あれから約1年、4NCL などの大会で揉まれ、どのように成長しているかを楽しみに試合をしてこようと思います。

2017/09/23 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Dahl, B (ENG, 1974) 1-0
2017/09/24 R2 Xiong, J (GM, USA, 2633) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1-0
2017/09/25 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Riazantsev, A (GM, RUS, 2666) 0-1
2017/09/26 R4 Birkisson, B (ISL, 2164) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
2017/09/27 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Oyama, A (ENG, 2198)

Isle of Man International 2017 R5 Pairings
Isle of Man International 2017 Live Games


昨夜はホテル近くのインド料理へ。隣のGM の注文を参考にしたら、頼みすぎました(笑)

2017/09/26

Isle of Man International 2017 R3


マン島の3R は、ロシアのGM Riazantsev との対戦です。世界トップクラス層の厚さを持つロシアでも、かなり上の実力を持つRiazantsev 相手に、自分の力がどこまで通じるか、とても楽しみでした。

Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Riazantsev, A (GM, RUS, 2666)
Isle of Man International 2017 (3)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 b6 4. g3 Bb7 5. Bg2 Bb4



Japan League の前に、3. d4 から3. Nc3 に戻すと決め、Anti-Nimzo-Indian を勉強しなおしました。しかし、青嶋くんとの試合で指したように、私の最も好む駒組は、e2-e3, Bf1-Be2 です。この手順から入る場合、その形にできないことがわかりましたが、一応簡単にこのセットアップのゲームもチェックしていました。

6. Qc2 O-O 7. a3 Bxc3 8. Qxc3 c5 9. O-O d5 10. d3


私にしては珍しく、ポーンを低く組みます。アイディアはb2 にビショップを置き、Reversed Sicilian Kanの形にすることです。

10... Nbd7 11. e3 a5 12. b3 Re8 13. Bb2 e5 14. cxd5 Nxd5 15. Qc2



黒からe6-e5 とスペースを取るのは自然なので、ひとまずは狙い通りになりました。ここからはSicilian のオーソドックスなアイディアとして、b3-b4 を狙うか、d3-d4 を狙うか、それとも全く違う場所から手を作るか、黒の出方を見ながら決めるつもりでした。

15... Rc8 16. Rac1 Rc7 17. Rfd1 Qa8 18. e4!


黒がa8-h1 のダイアゴナルを強めてきた時点で、ポーンを伸ばしてこのラインを閉じることにします。ポジショナルプレーを好む私としては、d3、d4 を弱めるこのような手は本来指しませんが、この局面であれば効果的です。

18... N5f6 19. Nh4!



f5 にマスを作り、そこにナイトを侵入させるアイディアまでが、e3-e4 とのセットです。黒は黒マスビショップを失っていることを考えれば、g7-g6 として黒マスを弱めたくはないでしょう。

19... b5


こうしたディフェンスの作り方は参考になります。6段目を開き、a8 のクイーンの活用を図ります。

20. Qd2 Qa6 21. Nf5 h6 22. f4


やりたかったこの手は、タイミングが難しいと考えました。e5 のポーンを取り除いてしまえば、b2 の黒マスビショップの力が活き、黒キングにプレッシャーをかけることができます。

22.... Rc6 23. Rf1 c4?!



指された際に目を疑いました。ルークがfファイルに避けたことで、dファイルを開いても大丈夫だという判断なのでしょうが、それでも早いように思えます。慎重に考えて、取って勝負します!

24. bxc4 bxc4 25. Rxc4 Rxc4 26. dxc4 Qb6+ 27. Qf2!


ルークに続いてクイーンまで交換してしまえば、d6 のマスのディフェンスが消え、ナイトが侵入することができます。これであればポーンを返してもさらにチャンスが続くだろうと予想していましたが、この先を正確に読むことができませんでした。

27... Bxe4 28. Qxb6 Nxb6 29. Nd6 Bxg2 30. Kxg2 Re6 31. fxe5 Nfd7 32. Bd4 Nxe5 33. Bxb6?



時間ぎりぎりまで考えながら、アドバンテージをキープする方法を見つけることができませんでした。取るべきはもう片方のナイトです! 33. Bxe5! Rxe5 34. Rb1! Nd7 35. Rb7 Nc5 36. Rb8+ Kh7 37. Rb5 Nd7 38. Nxf7+/- f7 のポーンへのアタックが頭から切り捨てられず、ルークのファイルを切り替えるアイディアが思い浮かびませんでした。本譜はもうドローでも構わないと思って指したのですが、思わぬ見落としがありました。

33... Rxd6 34. c5 Rd3 35. Bxa5?!


35. Bc7 Ng4 36. Rf3 Rd2+ 37. Kg1 Rc2 38.Bxa5 Rc1+ 39. Kg2 Rc2+ 40. Kg1= これで形勢互角だというコンピュータの評価ですが、かなり難しいです。実際にはクイーンサイドのポーンを取らせ、3対2のルークエンディングを耐えるのが、一番ありえそうです。

35... Nc4!



この予想外の手で完全に混乱してしまいました。ビショップを取らせるか、エクスチェンジを取らせるか、残り30秒で最後まで考えましたが、正しい手が見えませんでした。

36. Bb4?


36. Rc1! Nxa5 37. c6 Nxc6 (37... Rd8 38. Rc5! この手が見えず、ビショップを取らせるのはダメだと切り捨ててしまいました。 38... Nxc6 39. Rxc6 Ra8=) 38. Rxc6 Rxa3=/+ これならば先述の通り、3対2のルークエンディングになります。白はhポーンではなく、fポーンがない形なので、キングの位置が不安定ですが、それでもドローチャンスはあるでしょう。

36... Ne3+ 37. Kf2 Nxf1 38. Kxf1 Kf8-+



こうなってしまっては厳しいです。33手目でアドバンテージを残す方法と、36手目でビショップを取らせるしかなかったこと、この2つが見えなかったことが反省です。

39. Ke2 Rb3 40. Kd2 Ke8 41. Kc2 Rf3 42. a4 Kd7 43. Bc3 g5 44. Kb3 Kc6 45. Kc4 Rf2 46. h3 Rh2 47. Be5 Rxh3 48. Kd4 Rh1 49. Bd6 Re1 50. a5 f5 51. a6 Re4+ 0-1


2R に続き、2600 GM 相手に良い感じでゲームを作れています。しかし、それだけにポイントが取れないのは悔しいです。(もちろん、全然ダメなゲーム内容でも悔しいですが)次はアイスランドのジュニアが相手ですので、ここはきっちり勝ってまた上に上がりたいですね。

2017/09/23 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Dahl, B (ENG, 1974) 1-0
2017/09/24 R2 Xiong, J (GM, USA, 2633) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1-0
2017/09/25 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Riazantsev, A (GM, RUS, 2666) 0-1
2017/09/26 R4 Birkisson, B (ISL, 2164) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)

Isle of Man International 2017 R4 Pairings
Isle of Man International 2017 Live Games


宿泊しているDevonian は、かわいい動植物のイラストに溢れています。


この日のマン島はよく晴れていましたが、夕方からは濃い霧が。地上の丘と海上の靄の境が分かりません。

2017/09/25

Isle of Man International 2017 R2


会場に一歩入ると大会の旗がお出迎えです。

マン島2日目はアメリカのNo.1 ジュニアプレーヤー、Xiong Jeffery との対戦です。アメリカでも注目の成長株で、ここ数年、名前を聞く機会がぐんと増えました。試合中はHikaru やCaruana も局面をチェックしにやってくるので、いやでも気合が入ります。

Xiong, J (GM, USA, 2633) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)
Isle of Man International 2017 (2)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. e3 Bf5 5. Nc3 a6 6. Bd2 e6 7. Nh4 Bg4 8. Qb3 b5 9. cxd5 exd5 10. h3 Be6 11. Qc2 g6 12. Nf3 Nbd7 13. Bd3 c5 14. dxc5 Nxc5 15.
Nd4 Rc8



ここまではJapan League のXu Yinglun 戦と同じ流れで、黒は満足です。白はアウトポストを持ちますが、黒はピースがアクティブで、自分の弱点を十分にカバーできそうです。

16. Rd1 Bd6 17. a3 O-O 18. b4


この手は将来的にc4 のマスを弱めるため、少し不自然に感じました。ナイトビショップの交換をどうするか、選択肢をここまで残しておきましたが、こうなれば取って勝負です。

18... Nxd3+ 19. Qxd3 Rc4



私のプランは、弱めたc4 のマスを早く活用し、cファイルにルークをダブル、ないしはクイーンも入れてトリプルに重ね、オープンファイルをコントロールすることでした。これも良いプランですが、Xiong からは試合後、19... Nd7! からナイトをe5 経由でc4 に指すアイディアがあると指摘されました。確かにこれも良さそうです。

20. O-O Bb8 21. f4 Qc7 22. Nce2 Rc8 23. Bc1!


これはすっかり見通していた手で、考えてみれば黒マスビショップをa1-h8 のダイアゴナルで使いなおすのが自然です。g7-g6 と指したために弱くなっている黒マスをどうカバーするか、黒には工夫が必要になります。

23... Ne4 24. Bb2 Qd6 25. Ba1 Bc7 26. Nf3 Bb6



Bb8-Bc7-Bd8-Bf6 がオリジナルのアイディアでしたが、d4 のナイトが退いてa7-g1 のダイアゴナルが活用できそうであれば、ビショップをb6 に置いてe3 のポーンを狙ってみます。

27. Ne5 Rc2 28. Nd4 R2c7?!


この手に時間をかけすぎたのが、最後に時間切迫を生む要因になってしまいました。試合中に読み切れず切り捨ててしまった、28... Ra2! 29. Nef3 Qc7!-/+ ならば黒良しでした。私はa2 に潜り込んだルークが生きられるのか自信が持てず、このアイディアをあきらめてしまいましたが、クイーンをcファイルに置き、c4 でぶつけてしまえばa2 のルークがトラップされることはなさそうです。

29. f5!



Xiong はこの手をあまり時間をかけずに指してきました。私としては最も警戒していた手だっただけに、このタイミングで指してくるのは意外です。こうなればナイトを取って勝負するしかありません。

29... Qxe5 30. Nxb5?


Xiong は29... Qxe5 を過小評価していたようで、最も良いディスカバードアタックが何か、かなり悩み始めました。30. Nxe6? Rc3!-+ ならば、黒はエクスチェンジを捨て、e3 のポーンを取って勝ちとなります。正しくは30. fxe6! fxe6 31. Nxb5 Qg5 32. Nxc7 Bxe3+ 33. Kh2 Bf4+ 34. Kh1 Ng3+ 35. Kg1 Nxf1 36. Rxf1 Rxc7 37. Qxa6= これで形勢互角でした。Xiong は検討では、31... Qg5 で白に面白みがないと言っていましたが、それでもこの変化しかなかったようです。

30... Nc3?



しかし、私も正しい手を見つけることができませんでした。黒の正解はdポーンを押し進めてa1-h8 のダイアゴナルをブロックする30... d4! です。以下、31. Nxd4 (31. Bxd4 Qxb5 32. fxe6 Qxd3-+) (31. Nxc7 Bxc7-+ なんとQd6-Qh2 がメイトスレットのため、白はビショップを取ることができません!) 31... Bc4-+ でいずれも黒勝勢です。私はe3 のポーンへのアタックこそが黒のカギだと思い込んでしまっていたため、自分からビショップのダイアゴナルを閉じるアイディアを完全に頭から切り捨てていました。時間切迫もありましたが、落ち着いてすべての可能性を考慮しなければいけませんね。

31. Nxc3 Rxc3?


白の30手目が予想外だったことで動揺したか、悪手が続いて苦しくしてしまいます。31... Qxe3+ 32. Qxe3 Bxe3+ 33. Kh2 d4! 34. Nb5 Bb3 35. Nxc7 Bxd1 36. Rxd1 Rxc7 37. fxg6 hxg6= ならば、まだ形勢互角でゲームは続きます。おそらくここまでくればドローになるでしょう。

32. fxe6 fxe6?



頭の中では、32... Qxe3+ 33. Qxe3 Bxe3+ 34. Kh2 fxe6 35. Bxc3 Rxc3 36. Rf6+/- この形をイメージしており、黒は駒損ながら、センターの2コネクテッドパスポーンでなんとかできるかもしれないと読んでいました。ちなみに32... Rxd3? 33. exf7+ Kf8 34. Bxe5 Rxd1 35. Bd6+! Kg7 36. f8=Q+ Rxf8 37. Bxf8+ Kg8 38. Rxd1+- これは完全に白勝ちです。

33. Bxc3 Qxe3+ 34. Kh1!+-


これで上記の変化にならず、白の勝勢です。

34... Rxc3 35. Qxa6 1-0



a6 が落ちてメイトスレットを作られてしまうようでは、センターのパスポーンも働きません。30... d4! の勝ちの手が見えなかったのは残念ですが、2600台ともしっかり渡り合えると自信をもって、次のラウンドに臨みたいと思います。


試合後は2日遅れでマン島に到着した妻、私と同じマスターセクションに参加している大山くんと3人で、イタリアンレストランへ。大山くんはこの日、Naiditsch の奥さん、Yuliya さんとドローでした。今回、下が上からポイントを取るゲームも多く目にしていますので、まだまだ大会は荒れそうです。

私は3R、ロシアのGM Riazantsev を引き当てました。尊敬するCaro-Kann プレーヤーとして、たくさんの試合を勉強させてもらっています。なかなか大変なペアリングですが、胸を借りるつもりで、引き続き頑張ってきます。

2017/09/23 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Dahl, B (ENG, 1974) 1-0
2017/09/24 R2 Xiong, J (GM, USA, 2633) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1-0
2017/09/25 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Riazantsev, A (GM, RUS, 2666)

Isle of Man International 2017 R3 Pairings
Isle of Man International 2017 Live Games

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