2016/02/27

Saturday Lecture on March 12th 2016


Fischer, R - Rossetto, H
Mar del Plata 1959
White to move

2月のレクチャーは今日終わったばかりですが、3月は2週間後の土曜日にすぐ開催であるため、今夜のブログで内容を告知いたします。皆さんのご参加をお待ちしています。

【日時】 2016年3月12日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Zugzwang
【テーマ詳細】

ルール上パスが許されておらず、必ず白黒が交互に指さなければいけないチェスには、パスしたいにもかかわらず、それができないために悪くなってしまうポジションが存在します。そのようなポジションはドイツ語でツークツワンクと呼ばれ、エンドゲームを勉強する際に、しばしば登場します。ところが、エンドゲームでばかり発生すると思われがちなツークツワンクも、ミドルゲームでもときどき見かけることができるのです。3月のレクチャーでは、簡単なものから少し変わったものまで、ツークツワンクのポジションとその考え方を見ていこうと思います。

【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満


今日はアメリカのGM Seirawan のゲームをいくつか紹介させていただきました。Photo by Kawanaka

2016/02/25

新国内レイティング S105


今年度も盛況だった、年末の学生選手権

昨日、新しい国内レイティング、S105 が公開されました。今回計算されたのは、昨年末のクリスマスオープンと学生選手権、年が明けてからの新年チェス大会、時期の早い地方予選、そしてその他の例会などです。試合が少ない時期かと思っていましたが、意外とそうでもなかったですね。大きい大会はなかったため、日本のトップ勢はあまり試合をしていませんが、それでも変動のあったプレーヤーは少なくないでしょう。試合をしたプレーヤーの上位は、以下のようになっています。

小島慎也 2471 +8
Tran Than Tu 2445 +5
青嶋未来 2345 -21
Seytnazarov Timur 2315 +4
小林厚彦 2220 -7
入江有樹 2196 +30


私は新年チェス大会、池上、北千住で7試合をして全勝。レイティングを8伸ばして、ベストを更新しました。千葉チェスクラブで、いまだに全勝を続けるTu さんや、広島の地方予選に参加したTimur さんも、レイティングを多少戻しています。ご自分のレイティングが気になる方は、JCA か松戸チェスクラブのHP をご覧ください。

これから残りの地方予選、そして来月の百傑戦を終えれば、今年もまた全日本選手権の時期がやってきます。次回、4月末更新のレイティングで全日本のリストも決まりますので、今後もプレーヤーの増減は気になるところです。各地の地方予選の結果と併せて、引き続きチェックしていきたいと思います。

2016/02/24

Weekly Chess Puzzle Vo.20


Kojima, S (FM, JPN, 2307) - Szeberenyi, A (IM, HUN, 2365)
First Saturday IM October 2012(2)
White to move


Kojima, S - Inoue, S
Hongo Training 2006
White to move

今日は2題のタクティクスを出題します。下のポジションは私にとって思い出深いもので、レクチャーでも時々使わせてもらっています。昨年の夏合宿に参加した麻布の後輩たちも、頭を悩ませていました。答えの分かった方は、いつも通りコメント欄にどうぞ。

2016/02/21

Capplle la Grande 2016 Tournament Report


昨日の日本時間夜遅く、フランスの伝統的なトーナメント、カペル大会が終了しました。年末に私がブログで告知した通り、今年も日本に4名分の招待状が届き、大学生を中心としたメンバーが、カペルへと足を伸ばしてきました。カペルのトーナメントは、名のあるGM たちから地元の子供たちまで、幅広いレベルのプレーヤーが集まり、500名以上がクラス分けなく(ハンディ付きの加速スイスではありますが) 戦う、世界最大規模のオープン大会です。対戦相手とのレイティング差が大きいため、下手をすると上位のプレーヤーに負け、下位のプレーヤーに勝ちを続け、何事もなく9R が終わることもあります。そんなカペルですが、今年は日本のプレーヤーが前半から、上位を相手にポイントを取るラウンドが続きました。

Shinoda, T (JPN, 1941) - Uhoda, P (BEL, 2122)
Cappelle la Grande Open 2016(1)

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. e4 d6 5. Nf3 O-O 6. Be2 e5 7. O-O Nc6 8. d5 Ne7 9. Ne1 Nd7 10. Be3 f5 11. f3 f4 12. Bf2 g5 13. Rc1 Ng6 14. Nb5 b6 15. b4 a6
16. Nc3 Rf7 17. Na4 Bf8 18. c5 b5 19. cxd6 cxd6 20. Nc3 Nf6 21. a4 bxa4 22. Nxa4 Rb8 23. Nb6 Rxb6 24. Rxc8 Qxc8 25. Bxb6 g4 26. Qd3 Nh4 27. fxg4 Rg7 28. h3 Qb8 29. Bf2 Ng6 30. Nc2 Be7 31. Ra1!



私が試合を見ていて、最も感心したのはこの1手です。黒のキングサイドからの仕掛けは不十分で、すでに白に大きなアドバンテージがあります。しかし、King's Indian では、ちょっとした油断からキングサイドを食い破られ、白のディフェンスが崩壊することもありえます。白がクイーンサイドからのアタックをさらに強めるためには、単にクイーンでa6 を取るよりも、ルークをプレーに参加させるのが良いでしょう。

31... Ne8 32. Rxa6 Bh4 33. Qb5 Bxf2+ 34. Kxf2 Qd8 35. Rb6 Rc7 36. Bd3 f3 37. Rb8 Qh4+ 38. g3 Qxh3 39. Qxe8+ Kg7 40. Ne3 Qh2+ 41. Kxf3 Rf7+ 42. Nf5+ Rxf5+ 43. gxf5 Qh1+ 44. Ke2 Qg2+ 45. Kd1 Qg1+ 46. Kc2 Qf2+ 47. Kb3 Qxg3 48. Rb7+ Kh6 49. Rxh7+ 1-0


篠田くんは続く2R でも、GM Eremeevich からもドローで、GM からの初ポイントとなりました。200以上上と当たりやすいカペルで、格上から1.5P を取るというのは、素晴らしい戦績だと言えるでしょう。篠田くんはこの後のラウンド、上に負け、下に勝ちを繰り返しましたが、トータルでは4.5/9 で、レイティングを20以上稼いでいます。


Photo by Matsumura

そして、大会前から注目を集めていたのは、チェスを初めて1年半弱で日本のトップクラスまで実力をつけてきた、プロ棋士の青嶋くんです。海外大会初参戦となる彼は、昨年夏に参加したジャパンリーグで、2167 というレイティングがついたばかり。この数字は彼の実力からすれば低いものですし、試合数も少ないために係数がまだ40です。そのため、今大会で青嶋くんがどれほどレイティングを稼ぐのかというのは、私だけでなく、多くのチェスファンが気にしていたことだと思います。

実際、青嶋くんはGM と4戦、IM と1戦し、2敗3ドロー。下相手には4戦全勝と好成績を残しました。この戦績で青嶋くんは、レイティングを61上げることとなります。カペルの結果報告が早ければ、来月頭のレイティング更新で2228 となり、日本のアクティブプレーヤーランキングで、5位につけます。(計算が間違っていたらすみません) 現在の実力を考えれば、30試合をこなすころには、2300 にも到達するでしょう。青嶋くんが次回参加するFIDE 公式戦も楽しみですね。

さらに、青嶋くん同様にカペル初参戦となる平尾くんは、格上相手に3勝を挙げる大活躍です! 私が知る限り、カペルで上から3勝した日本のプレーヤーは、これまでいなかったでしょう。250以上高いパフォーマンスを残し、レイティングも60近くアップしました。小林くんのみは本来の実力を発揮できず、レイティングを下げてしまいましたが、それでも今回のカペル遠征で、日本のプレーヤーたちは過去最高戦績を残したと言えると思います。

皆さん、1週間お疲れ様でした。日本へも、気をつけて帰ってきてください。また日本国内の大会でも、活躍を期待しています。

2016/02/18

Greatest 365 Puzzles


今夜は久々に本の紹介です。先日、Naiditsch から羽生さんに、そして羽生さんから私へと渡された本で、一昨日から少しずつ読み始めました。(羽生さんはすでにお持ちだったため、譲っていただきました。)この本を出しているのは、Naiditsch らGM が運営するChess Evolution という新しい会社です。私もハンガリーにいた頃、Complete Slav という本を見かけ、この会社の存在を知りました。Chess Evolution には、アゼルバイジャンのNaiditsch、ポーランドのMiton、ハンガリーのBalogh といった、名のあるGM が所属しています。

こちらのGreatest 365 Puzzles は、2012年の実戦で現れた様々なポジションから、勝ちの手筋を見つけよという出題がされています。ハンガリーのGM Balogh Csaba によって編集されており、非常に勉強になるタクティクスが詰まっています。最初、ちらっと見た際は、Easy のレベルでも答えが分かりませんでした(笑)


Motylev, A - (GM, RUS, 2677) - Vocaturo, D (GM, ITA, 2545)
Wijk aan Zee
White to move

最初のEasy セクションに出ている問題を一つ出しておきます。確かに実戦で出てきそうな手筋です。こうしたポジションで正解をしっかり見つけ、試合で勝てると嬉しいですね。

Greatest 365 Puzzles はPart1、Part2 の2冊が出ており、さらにTactics, Tactics, Tactics! というシリーズに続くようです。私の手元にはPart2 までがありますので、なるべく早めに全部に目を通したいと思います。


おまけ。GM Balogh と、ブダペストのPolgar Chess Festival にて。

2016/02/15

GM Arkadij Naiditsch Simultaneous Event Report


Photo by Hasegawa

建国記念の日である2/11、アゼルバイジャンのGM Arkadij Naiditsch をゲストに招き、東京大学の駒場キャンパスで同時対局イベントを開催してきました。Naiditsch の来日が突如決まり、告知からイベント当日までが2週間しかないという急なスケジュールでしたが、30名の同時対局の枠はすべて埋まりました。参加してくださった皆さん、ありがとうございました。


スタート時には、挨拶だけでなく同時対局のルール説明を行います。

当日は大きなトラブルもなく、予定通りの13時半からスタートすることができました。30面を快調に回っていたように見えたNaiditsch ですが、15手ほど進むと怪しげな形勢のボードも出てきます。私がこれは... と真っ先に思ったのは、田尻くんのゲームです。


Naiditsch, A - Tajiri, M
GM Arkadij Naiditsch Simultaneous Event
Position After 15. g4

白がg2-g4 と仕掛けたポジションですが、a1 のルークを使う準備ができていない段階では、少し時期尚早にも思えます。白はb6-b5 が気になるものの、15. 0-0-0 から、キングサイドで仕掛けるタイミングを計るのが良かったでしょう。

15... Ne5! 16. Qg2 hxg4 17. Bxe5 dxe5 18. h5 gxh5 19. Nd5 Rxd5!?


これはベストではないかもしれませんが、実戦的には白にとって嫌なエクスチェンジサクリファイスです。黒はc2 をクイーンで取るテンポを得て、センターに残った白キングを問題とします。

20. Bxd5 gxf3 21. Qxf3 Nxd5 22. exd5 Qxc2 23. Rg1 Qxb2 24. Rd1 Rc8 25. Rg3 Qb4+ 26. Kf1 Rc4 27. Qxh5 Qxa4 28. Kg1 Rh4 29. Qe2 Re4 30. Qh5 Rh4 31. Qe2 Re4 32. Qh5 Rh4 1/2-1/2



最後は3回同一局面ではゲームを終わらせましたが、32... Kf8 などと指してゲームを続ければ、黒には十分に勝つチャンスがあるでしょう。田尻くんとしては、GM からの貴重な白星を挙げる機会だったかもしれませんが、それはまた次回のお楽しみですね。

他にも得意のAlekhine Defence で安定した指しまわしを見せ、ルークとナイトとエンドゲームまで持っていった阿部くんと、2ポーンアップまで行ったものの、クイーンエンディングで惜しくも勝ちを逃した大塚さんの3人が、Naiditsch から1/2 ポイントを挙げました。他にも参加者側が優勢なボードがちらほらありましたが、残念ながら逆転を許し、最終的には黒星となりました。最終結果はNaiditsch の、27勝3ドローというスコアです。Nigel Short の同時対局でもそうでしたが、休憩なしで5時間かけて30面を指し、1つも負けを喫しないのが、2700 クラスのGM の実力です!


今回の会場は、駒場キャンパスのKomcee West 地下ホールを使わせていただきました。1階からはこのように、対局している様子を見下ろすことができます。


運営の羽生さんと私、そして会場に足を運んでくださった強豪たちは、終わった参加者の検討戦を手伝うこともあります。自分の試合でなくとも、羽生さんが検討に臨む姿勢とまなざしは真剣そのものですね。


静かで厳かだった同時対局会場とはうってかわり、打ち上げは和やかな雰囲気に包まれました。駒場の居酒屋には、Naiditsch 夫妻、参加者、見学者、運営のメンバーが集まり、25名を超える大所帯となりました。Naiditsch 夫妻には、日本の飲み会を楽しんでいただけたと思っています。今回の来日をきっかけに、彼らと日本のチェスメンバーの交流が今後も続いていくと良いですね。

今回のイベントで協力してくださった皆さん、急な頼みにもかかわらず快く引き受けてくださり、ありがとうございました。Naiditsch 来日のきっかけ作りから、イベント運営までを行ってくださったは羽生さんにも、深く感謝致します。また次回のイベントでも、よろしくお願い致します。

2016/02/13

Saturday Lecture on February 27th 2016


Kouatly, B - Seirawan, Y
Luzern Olympiad 1982
Black to move

【日時】 2016年2月27日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Chess Lesson from Seirawan
【テーマ詳細】

シリアからアメリカに移籍し、アメリカのチャンピオンを4回獲得。1980年代から、アメリカ代表のプレーヤーとして活躍しているGM と言えば、Yasser Seirawan です。現在はプレーから遠ざかりつつありますが、コメンテーターとして頻繁にライブに登場し、その顔と喋りを記憶しているチェスファンも多いかと思います。そんな彼のプレーは昔から、シンプル、ロジカル、そして力強いものです。そこで2月のレクチャーでは、Seirawan のプレーから、どのようなことが学べるかをご紹介したいと思います。

【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

2016/02/06

北千住例会 on February 6th


Hori, S (JPN, 2084) - Kojima, S (IM, JPN, 2463)
Kitasenju (1)
Position After 25. Bc3

今日は北千住の例会へ。初戦の堀さんとの試合は、10手でエクスチェンジが落ちてどうなることかと思いましたが、なんとかd3 にナイトを刺すことに成功しました。これでc1 のマスを奪い、白のルークが使えるファイルを抑えてしまうことで、なんとか代償を得ます。

25... h5 26. Be1 g5 27. Kf1 f5 28. Bc3 f4?!


私のアイディアは、キングサイドを食い破ってルークをgファイルに回すことです。しかしここは、28... h4! 29. gxh4 gxh4 が正確で、これならば本譜の手はありませんでした。

29. gxf4 gxf4 30. Rxd3! exd3 31. exf4?



私たちが完全に見落としていたのは、31. e4+! という1手です。e7 のビショップが落ちてしまうので、黒はこのポーンを取ることができません。白はこうして、e4、d4 にポーンを並べてしまえば、タフなディフェンスができました。

31... Bd6 32. Rd1 Kc4 33. Re1 Bxf4 34. Rd1 Re8 0-1


最後は堀さんの時間がなく、一気に崩れてしまいました。私としては、黒でもこれほど簡単に駒損をしたのは久々だったため、かなり冷や冷やな展開でした。続いて三ツ矢さんとの試合へ。


Kojima, S (IM, JPN, 2463) - Mitsuya, N (JPN, 2140)
Kitasenju (2)
Position After 17... c5

私は直前の17... c5 を見て、白が有利になったと思ったのですが、進めてみると意外と難しいことに気づきます。

18. dxe5 Nxe5 19. Nxe5 Bxe5 20. Bxe5 Qxe5 21. f4


こうしてfポーンを伸ばし、e4-e5 の形までを作ってしまうのが私の狙いです。h7 を狙いつつ、e4 やd6 のマスを確保してしまえば、白にアドバンテージがあると考えました。それに対し、黒は黒マスを利用した、白キングへのダイレクトアタックで対抗します。

21... Qh5 22. Ng3 Qh6 23. e5 c4?



これはすぐに白の勝ちがはっきりするブランダーでした。代わりに23... Ng4! 24. h3 Qxf4 25. Bxh7+ Kh8 26. Bf5 Rcd8 27. Bxg4 Qxg3 28. Qf2= ならば、白にアドバンテージはなかったでしょう。f4 を取られることまでは読んでいましたが、それにはNg3-Nh5 と、ナイトが跳ぶアイディアで大丈夫だと勘違いしていました。(当然、Qf4-Qh2+ と入られて黒勝ちです。)三ツ矢さんは、22... Qh4 ではなく、22... Qh6 と指した時点で、Nf6-Ng4, c5-c4, Qh6-Qb6 のコンビネーションを考えていたようですが、それにこだわりすぎたことがあだとなってしまいました。

24. Bf5!


当然の1手です。ビショップを逃がしつつ、c8 のルークをアタックし、f6 のナイトがg4 に跳ぶことも防いでいます。これで白は駒得が確定し、完全に勝勢です。

24... Nd5 25. Bxc8 Rxc8 26. Nf5 Qb6+ 27. Qf2 Qe6 28. Nd6 Rc7 29. f5 1-0



年明けから国内公式戦は7連勝ですので、このままいけばベストレイティングを更新できそうです。もう少し数字が上がると、2500 を意識するようになるかもしれませんね。

2016/02/05

Gibraltar Masters 2016


Hungarian IM Gledula Benjamin, Photo from Chess News

久々の更新です。毎年この時期に、イギリス領のジブラルタルで行われているチェストーナメントが終了しました。7/9 で8人が並ぶ混戦の中、最終戦をともに勝ったフランスの Maxim Vacier Lagrave と、アメリカのNakamura Hikaru がタイブレークを行い、Hikaru の優勝が決まりました。今年は、Tata Steel に参加しなかった多くの強豪がジブラルタルに流れ、非常に見ごたえのある試合が多く行われましたね。応援する選手のプレーを毎晩、ライブ中継で追っていたチェスファンも多かったと思います。

そんな今年のジブラルタルで注目を集めたのは、23年ぶりにオープントーナメントに参加した、前世界チャンピオンのAnand です。招待制のトーナメントばかり出場していたAnand は、久々のオープントーナメントで活躍を期待されていましたが、残念ながら2500台に2人負け。レイティングを大きく落とす結果となってしまいました。最終戦の結果次第では、絶好調のインドNo.2、Harikrishna とのランキングが逆転していたことでしょう。Carlsen とのリベンジマッチに敗れてもなお、Anand の王座復活を願うファンにとっては、冷や冷やの結果だったと思います。

Anand を破ったのは、フランスのGM Demuth Adrien と、ハンガリーのIM Gledula Benjamin です。16歳のBenjamin は、ハンガリーで現在、最も有望視されているジュニアプレーヤーでしょう。彼のゲームを棋譜だけ載せておきます。

Gledura, B (IM, HUN, 2515) - Anand, V (GM, IND, 2784)
Gibraltar Masters 2016 (7)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 e6 5. e3 Nbd7 6. Qc2 Bd6 7. Bd3 O-O 8. O-O e5 9. cxd5 cxd5 10. e4 exd4 11. Nxd5 Nxd5 12. exd5 h6 13. Nxd4 Qh4 14. Nf3 Qh5 15. Bh7+ Kh8 16. Qf5 Qxf5 17. Bxf5 Nf6 18. Bxc8 Rfxc8 19. Rd1 Rd8 20. Be3 Be7 21. d6 Rxd6 22. Rxd6 Bxd6 23. Rd1 Bc7 24. Kf1 a6 25. h3 Kg8 26. b3 Rd8 27. Rxd8+ Bxd8 28. Ke2 h5 29. Bg5 Kf8 30. Kd3 Ke8 31. Bxf6 Bxf6 32. Ke4 Bd8 33. Ne5 Ke7 34. Kd5 Bb6 35. Nd3 Kd7 36. Nc5+ Bxc5 37. Kxc5 Kc7 38. h4 Kd7 39. Kb6 Kc8 40. b4 Kb8 41. f3 Kc8 42. g4 hxg4 43. fxg4 Kb8 44. h5 f6 45. a4 Kc8 46. Ka7 Kc7 47. b5 a5 48. Ka8 1-0



これまでも使ったことのある、Semi-Slav Anti-Meran のソリッドな変化をチョイスしたAnand でしたが、ちょっとしたミスから多少悪いエンドゲームとなり、最終的には白勝ちのポーンエンディングとなりました。ハンガリーのJudit Polgar も、最終ポジションは綺麗なツークツワンクだと、Benjamin のプレーを称賛しています。ゲームの解説を細かく見たい方は、リンク先のChess News の記事をご覧ください。


4年前、12歳だったGledula Benjamin

Benjamin とは2012年にハンガリーに渡った頃、一度だけ対戦した経験があります。当時から力強いプレーでベテランを圧倒し、ハンガリーやヨーロッパのジュニアタイトルを取ってきた彼は、ハンガリーの同世代でも頭一つ抜けた存在でした。今回のジブラルタルでAnand を破ってさらに脚光を浴び、GM タイトルも間近となった彼を見ていると、また彼と対戦したい、そして私ももっと頑張らなければという思いに駆られます。ハンガリー代表はまだ少し気が早いですが、いつかオリンピアードの舞台でも再会できることを楽しみにしています。

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