2023/06/24

Sicilian Najdorf Oppocensky Variation


少しブログ更新欲と余裕が戻ってきました。今夜は昨晩オンラインで指したゲームをご紹介します。1.e4 は今年の東京チェス選手権で2敗してがっくりでしたが、新しいオープニングも研究し、オンラインでは面白いゲームが指せています。

imsk (2528) - qzrchess77 (2501)
lichess Blitz

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6 6. Be2!?

Sicilianに対してはMoscow、Rossolimo等のアンチラインを指してきましたが、最近はメインラインでも良いのではないかと思っています。6. Be2のOppocensky Variationは大学時代に指していましたが、先週調べ直していて面白い変化を見つけたので、そちらを試してみることにします。

6... e5 7. Nb3 Be7 8. O-O O-O 9. Re1!?


様々な手順がありますが、e1にルークを配置するセットアップにしてみます。f2-f4のアイディアを完全に諦める代わりに、将来的にNb3-Nd2-Nf1-Ng3というマヌーバリングを見据えます。

9... Be6 10. Bf3 Nbd7 11. a4 Rc8 12. a5 h6 13. Be3 Qc7 14. h3 Rfd8 15. Nd2

クイーンサイドを抑え込んだら、先述のマヌーバリングを実行します。黒はd5,f5のマスを弱めているため、ビショップを上手いタイミングで切り替え、e3にナイトを運ぶ構想も面白いでしょう。

15... Nc5 16. Nf1 d5?!


このポーンストラクチャーでは、一時的にポーンを捨ててもd6-d5のブレイクを仕掛けるラインもありますが、ここではe1に白がルークを配置していることもあり、上手くいきません。黒は自分からポーンストラクチャーを動かすことなく、もう少し我慢してピースの位置を改善すべきです。しかし、私の対応も不正確でした。

17. Nxd5?

早めにナイトを捌いておいたほうが分かりやすいと思ったのが失敗で、基本通り弱い駒であるポーンから取るべきでした。17. exd5! e4 18. Bxc5 Bxc5 (まだナイトを捌いていないため、ここで18... Rxd5が成立しないのがポイントです。) 19. Nxe4 Nxd5 20. Nxc5 Qxc5 21. Re5+/- 白はd5を返しますが、新しくeポーンを頂いているので1ポーンアップが続きます。黒マスビショップも消えるならば、黒の代償は不十分でしょう。

17... Bxd5 18. exd5 e4 19. Bxc5 Qxc5?


黒のミスに助けられました。ここで19... Rxd5!というIntermediate Moveでクイーンをアタックしつつポーンを回収しておくことができ、ほぼ互角でゲームを続けられます。

20. Bxe4 Nxe4 21. Rxe4 Rxd5 22. Qe2+/-

今度は白がe7のビショップをターゲットにするテンポがあるため、黒はc2を取ることができません。1ポーンアップのうえ、eファイルのコントロールが強く、Nf1-Ne3も安定したナイトの位置として見えていれば白は大満足です。

22... Bd8?! 23. Re8+ Kh7 24. Qe4+ f5?


24... g6 25. Ne3+-も白の勝勢は揺るぎませんが、本譜よりも粘れたでしょう。

25. Qe6 h5 26. Ne3 1-0

キングが不安定であるうえ、f5も落ちる黒は勝負を続けることができません。Najdorfに対しては他にも試してみたいアイディアがあるので、公式戦で出番があるか楽しみにしています。

2023/06/22

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第20回予告

6月のOPENREC の講座案内です。今月は今週末の日曜日、6/25 20時からスタートです。

6月のOPENREC の講座テーマは『Balance and Imbalance』 です。チェスの局面は様々な要素によって成り立っており、良いポイント、悪いポイントが白黒互いにあってバランスをとっています。どのような要素があるかを説明しつつ、いかに均衡を崩してチャンスを作ろうとするか、またはどんなマテリアルのバランスが考えられるかなどにも触れていこうと思います。また今回がOpenrecでの講座の最終回となり、7月からは放送の場をYoutubeに移します。私の講座の形式は大きく変える予定はありませんが、Openrecでの最後の講座にお付き合いいただければ幸いです。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第20回『Balance and Imbalance』| 2023.06.25
OPENREC.tv公式チャンネルの終了およびYouTubeメンバーシップ開設のお知らせ

2023/06/21

Instructive Endgames in Blitz Games Vol.8


ブログ自体とこのシリーズ、どちらも更新は久々です。書きたい内容は色々とあるのですが、なかなか時間が取れません。今回はポーンエンディングからご紹介します。
imsk (2502) - melksham (2448)
lichess blitz
Position after 36. Kxg2

序盤、中盤かなりまずいところのあるゲームでしたが、なんとかこのポーンエンディングに持ち込みました。この時点では黒もキングサイドに2コネクテッドパスポーンができるため、それをキングで止め合ってドローだと思っていました。しかし、よほどひどい間違いをしなければ白が負けることはないので続けることにします。

36... Kf6 37. Kf3 Ke5 38. b5


38. c5と突く手もありますが、この場合は黒キングが抑えるべきマスがc6,d5の2つであるため、白キングの前進を本譜よりも妨害しやすくなります。チャンスを作るのであれば、より遠いパスポーンを前進させておきます。

38... Kd6 39. Ke4 Kc5 40. Ke5 f5??

試合中、このfポーン突きがブランダーであることはすぐには分かりませんでした。優先して突くべきは、より外側のg,hポーンです。40... h6! (40... g5 もOK) 41. Kf6 g5 42. Kf5 Kb6! 43. Ke5 Kc5! 44. Kf6 Kb6!=
Analysis Diagram

これが黒の正しいディフェンスで、f7にポーンを残しておき、これを取られた際にh6-h5,g5-g4でパスポーンを作れるようにしておきます。すると白はキングサイドでアクションを起こせないので、クイーンサイドにキングを寄せる手を混ぜたいのですが、黒キングは上手いタイミングでc5に戻ることでそれを許しません。。白はこの黒のキングの妨害をかいくぐってクイーンサイドに近づくことができないため、ドローとなります。それではfポーンを先に進めてしまった本譜はどうなるでしょうか。

41. h4 Kb6

黒キングがc5から離れてくれれば、白キングはcポーン前進のサポートのためにd5に寄ることができます。これを避けるのであればhポーンを突く手しかありませんが、いずれにせよ白の勝ちになります。41... h6 42. h5! g5 43. Kxf5 Kb6 44. Ke4 Kc5 45. Ke5 Kb6 46. Kd5 Kc7 47. c5 Kb7 48. Kd6+- 少し時間がかかりますが、fポーンを落としてしまう変化は分かりやすいでしょう。41... h5 42. Kf4 Kb6 43. Ke3 Kc5 44. Kd3! Kb6 45. Kd4+- 黒キングはc5,b6のマスしか待つ場所がなく、これを往復するしかありませんが、白キングはその間にe5-f4-e3-d3と移動でき、黒に手番を渡してd4のマスに到達できます。

42. Kd5 h6 43. c5+ Kxb5


43... Kc7 44. b6+ Kb7 45. c6+ Kxb6 46. Kd6+- 黒キングが下がって粘ろうとする手にも、bポーンを捨ててcポーンを進めるアイディアで勝勢です。

44. c6 1-0

プロモーションが止まらず、白の勝勢です。どこのポーンから突くかという、ポーンエンディングの難しさが垣間見える例でした。
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