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2012/11/15

FS 2012 November 11th round and final results - A Mystic Move -


11月のFSもいよいよ最終戦。対戦するのはオーストリアのベテランマスター、IM Wittmannです。別の月にはGMクラスに参加していた実力者も、今大会は下位に沈んでおり、三連勝で波に乗る私としては勝って大会を締めくくりたいところです。

Wittmann, W (IM, AUT, 2245) - Kojima, S (FM, JPN, 2339)
First Saturday IM November (11)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nd2 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Bc4!?



Wittmann のCaro-Kannに対するレパートリーの一つ。私も指された経験はほとんどないですが、この試合のためにみっちり準備してきました。

7... e6 8. N1e2 Bd6 9. Nf4 Bxf4


Caro-Kann Classical では、黒が早々にダブルビショップを放棄するラインがいくつかありますが、どちらのビショップを残しておくべきかというのは難しいテーマです。ここでは黒マスビショップを消し、b1-h7 のダイアゴナルを抑える、強力な白マスビショップを残しておきます。

10. Bxf4 Nf6 11. Qd2 Nbd7 12. h5!?



メインラインと比較して、この手を入れておくべきかは一概には言えません。白はキングサイドのスペースを確保し、h4 にルークを上げる可能性を作りますが、h4 よりh5 にいるほうが、ポーンが狙われやすいのは間違いありません。私は試合前にGM Grospeter のアイディアをチェックしており、そこから考えるとh5 にポーンがいてくれたほうが、黒としてはありがたいと思いました。

12... Bh7 13. Bd3!


一般的にダブルビショップを持っている側は、自ら積極的に一組のビショップを交換しにいかないものです。しかしここでは、c2 を狙う黒のビショップが強力なため、c4 のビショップを下げてでも、ビショップ交換を行います。

13... Bxd3 14. Qxd3 Qa5+ 15. Bd2 Qd5 16. c4 Ne5!?



このタイミングでクイーン交換を行うのが、事前に調べたGrospeter のアイディアです。(その試合では、ポーンはh4 でしたが)先日手に入れたばかりのチェスソフト、フーディーニは16... Qxg2! を推しますが、このクイーンはすぐにゲームに戻ってこられないため、人間の感覚では指しづらいと思います。

このポジションまで、私はほぼ準備どおりで、ここまでくればWittmann に負けることはほぼないと思っていました。ところが完全に準備どおりだったのは、どうやら相手側だったようで、次の手をほぼノータイムで指されました。

17. Qh7!!



この手を指された瞬間の私の驚きを言葉で表現するのは、なかなか難しいと思います。分かりやすくイメージでお伝えすると、
オォォーーー!! w(゚ロ゚;w(゚ロ゚)w;゚ロ゚)w オォォーーー!! ←これの5倍くらいです。(私はあまり顔文字は使いませんが、ここでは他にお伝えする方法が分かりません。)少し考えてみて、この手のアイディアが分からない方には、後ほどご説明します。チェスの奥深さや魅力を、改めて知ることができるような一手でした。

17... Nxh7 18. cxd5 Nd3+ 19. Ke2 Nxb2 20. dxc6!?


20. dxe6 Nc4! ならば、黒はポーンストラクチャーの良さで、ややチャンスのあるエンドゲームを迎えることができます。

20... bxc6 21. Rhc1 Na4!



ここは気付きにくいですが、白のメインの狙いはc6 を取ることではなく、22. a4! からb2 のナイトをトラップすることにあります。c4 に退くことのできなくなったナイトは、a4 経由でd5 のアウトポストを目指します。

22. Rxc6 Nf6!?


この地味そうなポジションが、黒のプランを決める分岐点となります。私は白のナイトがe4 に来ることを防ぐ、本譜の手が最も良いと試合中は判断しましたが、h8 のルークを活用するほうが優先度が高いと考えれば、キャスリングもありえる手です。22... O-O 23. Ne4 Rfd8 24. Rac1 Nb6=

そしてもうお気づきかもしれませんが、17. Qh7!! を入れないで17. cxd5?! ならば、この本譜のポジションで黒番となります。ナイトを退かせ、一手稼ぐためのクイーン飛び込みでした。

23. Rac1 Nb6!


黒は早々にキャスリングしたいところですが、Rc6-Ra6、Rc1-Rc7 からa7 のポーンが受からなくなるため、ここはナイトを退く一手です。

24. Bb4 Nbd5 25. Ba3 a5!



また面白いポジションになりました。白は黒のキャスリングを妨害し、ルークもアクティブですが、私はb4 のマスにナイトを置けばキャスリングが可能になり、その後はポーンストラクチャーの良さで、黒にチャンスがあるだろうと思っていました。ところが、私のこの試合最大のミスとして、すぐにb4 にナイトが置けると勘違いしていました。

26. R1c2 Nb4?


振り返ってみると時間切迫でもないのに、なぜこんな読み落としをしたのか分かりません。しかし一方で、代わりに黒が指すべき手を見つけるのは簡単ではありません。コンピュータは26... Kd7!? 27. Rd6+ Ke8= との評価... キャスリングができなくなっても、白からはアクティブなプランが作りにくいということでしょう。人間的には非常に指しづらい手です。

27. Rc8+ Kd7 28. R2c7+!



c7 への利きがなくなったので、当然の一手です。これでポーンが落ち、苦しい展開になることを覚悟しました。

28... Kd6 29. Rc6+ Kd7 30. R6c7+ Kd6 31. Rxh8 Rxh8 32. Ra7?!


この手を見て、助かるチャンスが出てきたと思いました。32. Rxf7! Rc8 33. Ra7 Rc2+ 34. Kd1 Rc4 35. Ne2+/- ならば、何の問題もなく白が勝つでしょう。

32... Rc8! 33. Rxa5 Rc2+ 34. Kf3



34. Kd1 Rc4 35. Ne2 Kc6! 36. Ra7 Nd3!? ならば、白やや優勢であることは間違いありませんが、きっちり勝ちきるのはそう簡単ではありません。Wittmann は勝負にくる気はなかったようで、ここで早々にドローを決めました。

34... Rc3+ 35. Ke2 Rc2+ 36. Kf3 Rc3+ 1/2-1/2


ひどい勘違いからブランダーを出したものの、相手から恵んでもらうような形でドローになりました。どうもWittmann は17. Qh7!! を指せただけで、もう満足だったようです。チェスプレーヤーとしてそれで良いのか?という気もしますが、私にとっては勉強にもなりつつ、ラッキーな一局でした。


最終戦は意外にも半分のボードで決着がつきました。11歳のAryan Chopra はHou Qiang をRuy Lopez で撃破。私も含めて皆で2日後にはケチケメートに行くため、またこの組み合わせがどういったゲームになるか楽しみです。


そして最後にリストトップの意地を見せたのは、この日25歳の誕生日を迎えたKislik Erik Andrew(右手前) です。単独2位を走るMassoni を白番で破り、なんとか勝ち越しグループに入ってのフィニッシュとなりました。今大会不調だったとは言え、やはり2400クラスの実力を持つプレーヤーです。

Massoni も最終戦に敗れたとはいえ、8/11でIMノームのスコアをクリア。試合後に話をしたところ、今回で3つ目のノーム獲得だそうです。次回どこかで会うときは(早くてカペルかな?)、彼はIM になっているでしょう。


GMクラスではハンガリーのU14チャンピオン、Gledura Benjamin が早々にドローにし、6.5/12でIMノームを獲得しました。GMクラスは終わってみれば、6人の参加者中、Benjamin のみがレイティングがプラスになるという、まさに一人勝ち状態でした。ハンガリーに来て最初のFS で対戦した彼とも、再戦の機会を楽しみにしています。

私は最終的に5勝2敗4ドローで、レイティングはプラス8.4、単独3位でのフィニッシュとなりました。悪い数字ではないですが、連勝スタートでIMノームへの期待も高かったため、中盤で失速したのは残念でした。また、3つ勝ち越しでレイティングがたったの8しか上がらないというのも、自身のレイティングが伸びてきたことの影響を感じます。今後はさらに、レイティングを稼ぐのが難しくなってくるでしょう。今後は一層頑張らなければいけませんね。

そしてコメント欄やFacebook を見てご存じの方も多いかと思いますが、私は今日で24歳になりました。チェスを始めたのが12歳なので、今後はチェス歴が人生の半分以上になってきます。ちょっとしたきっかけで始めたチェスが、ここまで自分の人生を左右するものになるとは、自分自身でも予想できなかったことです。チェス関係者の皆さんも、それ以外の友人の皆さんも、今後ともよろしくお願い致します。

2012/11/14

FS 2012 November 10th round - Endgame Technique -


ハンガリーで初めての三連勝がかかった10Rは、インドの11歳、Aryan Chopra との対戦。このIM クラスに来るのは少し早いかと思っていましたが、9Rまでで1勝1敗7ドローと実に立派な戦績です。レイティングをプラスにしてトーナメントを終えるためには、ここで勝っておかなければいけません。

Kojima, S (FM, JPN, 2339) - Aryan, C (IND, 2051)
First Saturday IM November (10)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. e3!? e6 5. b3



この日は白番で久々に、4. e3 の変化を試します。彼のSemi-Slav の研究がどういったものか分からなかったため、自分の経験豊富なポジションで勝負することに決めました。しばらくは研究手順が続きます。

5... Nbd7 6. Bb2 Bd6 7. Bd3 O-O 8. O-O b6 9. Nbd2 Bb7 10. Ne5 c5 11. cxd5 exd5 12. f4 Qe7 13. Rf3 Ne4



このポジションは3年前のベトナムのゾーン選手権で、IM Nolte 相手に持ったことがあります。その試合では、私がわずかなアドバンテージを生かし切れずにドローにしてしまったので、それを改良したラインをここでは使います。

14. Rh3!N f5


黒もStonewall 風にf7-f5 とポーンを進めて、e4 のナイトを強化しようとします。互いにアウトポストのナイトで主張しあっても良いのですが、私はピースを交換し、ポジションをシンプルにすることにしました。

15. Nxd7!? Qxd7 16. Nxe4 fxe4 17. Qh5



ここまでが私の準備です。黒がh7 を守るには本譜のクイーン交換か、a1-h8 のダイアゴナルを弱める手しかありません。

17... Qf5


17... g6 18. Bb5 Qf7 19. Qh6 ならば、白には多少のイニシアチブがあるでしょう。黒のキングはやや守りが薄く、Ra1-Rf1、f4-f5 といったアタックのチャンスも残っています。

18. Qxf5 Rxf5 19. Be2+/=



私はこのポジションで、ひとまず満足することにしました。互いのダブルビショップの働きは、やや白が良いと判断できます。

19... cxd4?!


これはやや注意不足な一手。白のビショップの組み直しを見落としていたか、軽視してていたのでしょう。代わりに黒は19... Rf7 と先にルークを退いておくべきだったと思います。これならば、黒もBb7-Bc8-Be6 などとビショップを組み替えるチャンスがあります。

20. Bg4! Rff8 21. Be6+ Kh8 22. Bxd4 Rae8 23. Bg4!?



ここは散々迷ってやめた手がベターでした。23. Rg3! Re7 (23... Rxe6 24. Rxg7 Bc8 (24... Bc5 25. Rxb7+ Bxd4 26. exd4 Rxf4 27. Rc1+/= (27. Rf1!? を試合中は考えていました。)) 25. Rg5+ Ref6 26. Rxd5 Kg8 27. Bxf6 Rxf6 28. Rad1+/= この変化が読み切れず、本譜をチョイスしました。) 24. Rc1+/= 白はcファイルを抑えることで、明らかなポジショナルアドバンテージを得ます。

23... Bc5!?


こう指さなければ、白はRa1-Rc1 から間違いなくアドバンテージを得られるので、指される前は私もこれが自然だと思っていました。しかし、実際に進めてみると白にチャンスのあるエンドゲームに突入するため、何が黒にとってベストだったかは、判断の難しいところです。

24. Bxc5!



最初はg7 へのプレッシャーを残すため、e5 にビショップを置くつもりでしたが、24. Be5 d4!? 25.exd4? Rxe5! という変化が見えたために断念。本譜の手順で白優勢のエンドゲームになることを読み切ったため、そちらをチョイスします。

24... bxc5 25. Rc1 d4


25... Bc8!? 26. Bxc8 Rxc8 27. Rh5 Rfd8 28. Re5+/= この変化でも、次に29. Rd1 と指すことで、白はポーンアップになります。

26. Rxc5 d3!?



ポーンを交換するほうをメインに読んでいましたが、26... dxe3 27. f5+/- ならば、確かに黒は苦しい展開です。本譜では黒のプロテクテッドパスポーンが不気味ですが、cファイルとd1 のマスを抑えている以上、キングが寄っていけばさほど危険はないと考えました。

27. Kf2 Bc8?!


c8 のマスを取り返したい気持ちは分かりますが、白マスビショップを交換してしまうと、e4 のポーンが攻撃されやすくなってしまいます。ここはじっくり27... Re7 から耐えるべきでした。

28. Bxc8 Rxc8 29. Rhh5 g6 30. Rhe5 Rxc5 31. Rxc5 Rf6 32. Rc4!+/-



白は何の問題もなく、ポーンアップのルークエンディングに持ち込むことができました。あとは相手のパスポーンをブロックしつつ、クイーンサイドでパスポーンを作れば、勝勢です。しかし、黒にcファイルを取らせてしまうとカウンタープレーのチャンスを与えることになるため、その点だけは気をつけなければいけません。

32... Re6 33. Ke1 h5 34. a4 Kg7 35. b4


a7 のポーンを取りにいく判断もあると思いますが、先述の通り、cファイルからの余計なカウンタープレーを許さないためにも、ここは慎重にゲームを進めます。

35... Kf6 36. b5 g5 37. fxg5+ Kxg5 38. Rc7!



ようやく勝ちが見えてきました。ここまでa、bポーンを進めたうえでにaポーンを取れば、黒の反撃は遅すぎます。

38... a6 39. Rc6! Re5 40. b6?!


ところが、なぜか手間のかかるほうをチョイスしてしまいます。40. Rxa6+- とシンプルにポーンを取れば、即試合終了でした。

40... Re8 41. a5 Kg4 42. Rc4 Kf5



自分のミスに気が付き、改めて勝てるプランを探します。単にbポーンを進めてもRb8 と回られてしまうだけなので、それだけでは勝てません。クイーンサイド以外を少しいじりながら、bポーンを突く適切なタイミングを計ります。

43. Kd2 Rg8 44. g3 Re8 45. h3!


g3 を取らせても勝てると読み切り、ここで勝負にいきます!ポイントは黒のキングが6段目にいかざるを得ないことです。

45... Rg8 46. Rc5+ Ke6 47. Rxh5 Rxg3 48. b7! Rg8 49. Rh6+ Kd7 50. Rxa6



a6 を取って2コネクテッドパスポーンを作れば、プロモーションを止める方法は黒にはありません。

50... Kc7 51. Rb6 Kb8 52. a6 Rg2+ 53. Ke1 Rg1+ 54. Kf2 Ra1 55. Re6 Rb1 56. Re8+ Ka7 57. Ra8+ 1-0


中盤のわずかなアドバンテージを、チャンスのあるエンドゲームに繋げ、そしてそれを勝ちきることができました。前日のHou Qiang 戦のような派手さはありませんでしたが、こうした堅実な勝利も上にいくためには間違いなく必要です。

ゲーム後には、アンダンテのオーナーとブダ側のお寿司屋さんにいくことに。日本人の奥山さんが経営するこの店は、日本の味を求める旅行者や地元の人に支えられており、私は8月以来の来店となります。この日、店を訪れたのは、奥山さんから月に一回、店に招待すると言われていたことに加え、探し求めていた例のブツが見つかったと連絡を受けたからです。そのブツとは...


はい、これだけでは何か分かりませんね。実はこれ、元世界チャンピオン、Bobby Fischer のサインだそうです。1994年9月19日という日付以外は、全く読めませんが(笑)

奥山さんは90年代、ブダペストに潜伏していたFischer と交流があり、彼が奥山さんのお店に客として訪れた際に、このサインを貰ったそうです。紙ではなく、布にしてあるところが渋いですね。私が憧れていたハンガリーで、かつてFischer が生きており、その地でチェスの勉強をしながらFischer の知人と交流を持つというのは、なんとも不思議な縁を感じます。このサインはありがたく頂き、大切にさせていただきます。


夕飯はこちら。これにサーモンの切り身、ごはん、味噌汁などがつきました。

さて、おいしい日本食も頂いて気合も入ったので、今日の最終戦もきっちり戦ってこようと思います。ここで四連勝を決めれば、レイティングを2360に載せてのロンドン行きとなりそうです。未知のレベルに突入するために、あともうひと踏ん張りです!

2012/11/13

FS 2012 November 9th round - Play Like Kramnik -

先月からハンガリーで、共にIMノームを競い合っている中国のHou Qiang とは、すでに四度目の対戦となります。試合前にはオーガナイザーのLaszlo 氏から、「ここにはFriend だけで、Enemy はいない。握手を忘れないように」と冗談交じりに言われ、和やかにゲームがスタート。しかし、試合内容は和やかとは程遠いものでした。

Kojima, S (FM, JPN, 2339) - Hou, Q (FM, CHN, 2289)
First Saturday IM November (9)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. g3 Bg7 4. Bg2 O-O 5. O-O d6 6. d4 Nc6 7. Nc3 a6 8. h3!?


前回の対戦では、流行の最先端である8. Bf4!? を試して勝利を収めましたが、オープニングが満足なものであったかと聞かれると疑問なところです。そこで、試合当日の朝に発見したライン(8. h3 自体は以前から研究していました。)を試してみることに。

8... Rb8 9. e4 b5 10. cxb5 axb5 11. Re1!?



これがHou Qiang 戦のために用意した新ラインです。11. e5!? Nd7 12. Ng5 dxe5! と黒がピースを切るラインは、Panno Variation (6... Nc6) の中でも、最もシャープなものの一つです。こちらはベオグラードでMisha と散々検討をしましたが、Chess.com の実戦では、あまり良い感触が掴めませんでした。そこでセンターのテンションをキープし、シャープなラインを避けることにします。

11... b4 12. Nd5 Nxd5


ナイトを交換しない変化として、12... Nd7 13. Bg5 h6 14. Rc1!?+/= ブラジルのGM Leitao の今年のゲームを1つチェックしていました。d5 でナイト交換するラインはほぼノーチェックだったので、ここから考え始めます。白の武器は、早い展開と2つのオープンファイルです。

13. exd5 Na5 14. Bg5 Bf6!?



14... Re8 15. Rc1+/= が自然な流れに見えますが、Hou Qiang はビショップをぶつけてきました。少し考えましたが、黒のポーンストラクチャーを乱しておいて白に悪いことはないので、相手の狙いに乗ることにします。

15. Bxf6 exf6 16. Rc1 Bd7 17. b3 f5?!


このようなポーンストラクチャーでは、f6-f5 とポーンを突くのは自然な手ですが、この後の展開を考えれば、黒はルークを一枚交換しておくべきだったと思います。17... Re8 18. Rxe8+ Bxe8 19. Ne1+/= と進めば、白には明らかなポジショナルアドバンテージがありますが、本譜ほど強力かつ明確なプランはすぐに思い浮かびません。

18. Qd2 Kg7 19. Rc2!!



このゲームで私が最も気に入っている手です。cファイルにルークを重ねて、c7にプレッシャーをかけると同時に、黒からのルーク交換を避けます。そしてここからいくつかの段階を経て、白はアドバンテージを拡大していきます。

19... Rb7 20. Rec1 Re8 21. Ne1!


次に跳ぶマスのないナイトは、f3 よりベターなポジションを求めて旅立ちます。

21... Re7 22. Nd3 Qb8



このポジションを冷静に分析してみると、黒の伸びすぎたbポーンと、逆に出遅れたcポーンは明らかにターゲットになっており、黒はそのディフェンスに縛られていることが分かります。(両方とも落ちると致命的な痛手になることもポイント。)加えてa5 に跳んだナイトはどこにも行くことができず、すでに黒は身動きがほぼ取れない状態です。戦略的にはすでに白勝勢と言えるこの状況で、次にどこから手を作るかが、このゲームでのさらなるポイントとなります。

23. h4!+/-


白が次にアクションを起こすのはキングサイドです。忘れがちですが、盤全体でプレーすることは、チェスでは非常に重要なアイディアです。

23... Be8?


ここは次のh4-h5 を止めておくために、23... h6 が必須でした。それでも時間をかければ、白はキングサイドで決定的なチャンスを掴めるでしょう。

24. h5! h6 25. hxg6 fxg6 26. Nf4!



f3 のナイトは3手掛けてf4 に到達し、最終的なゴールであるe6 に跳び込みます。白がhポーンを進めて、f7 のポーンを消したことが、このナイトのマヌーバリングをさらに強力なものにしています。

26... Bf7 27. Ne6+! Bxe6


27... Kh7 28. Bf3 Ra7 29. Kg2 (次に30. Qxh6! がメイトスレットになっていることに注目!)29... Bxe6 30. dxe6 Rxe6 31. Rh1 Qf8 32. Qxb4+/- という変化も試合中考えていました。こちらであれば、白は強力な白マスビショップで、盤面を支配することになります。

28. dxe6 Ra7 29. d5+-



キングに迫ってきたナイトを排除したものの、黒のポジションは相当厳しいものです。e6 に突き刺さったプロテクテッドパスポーンは、黒のピースを身動きが取れない状態にし、a5 のナイトも未だゲームに参加することはできません。ここからはいよいよ、黒キングを仕留めるゲームの最終段階に入ります。

29... Qb6 30. Bf3!


白は三番目のオープンファイルを活用して、黒キングへのアタックチャンスを作り出します。

30... Ra8 31. Kg2! Rf8 32. Rh1 g5 33. Rcc1! Rf6



b2 のマスを空けつつ、2つ目のルークもhファイルに回せるようにして、最後の攻撃準備が完了しました。後は引き金を引くだけです。

34. Rxh6! Kxh6 35. Rh1+ Kg6 36. Bh5+ Kh7 37. Bf7+ Rh6 38. Qxg5 1-0



ルークを捨てる手からのメイティングアタックが決まり、勝負あり。今年のベストゲームに挙げても良い鮮やかなフィニッシュでした。振り返ってみて、自分のチェスの技術が、以前よりはるかに高くなっていることを感じます。しかしその反面、なぜこのような指し回しが6R、7R で出来なかったのかと、空しく感じます(笑)

試合後には東北大学の三村くんと、このゲームを振り返りながら話をしました。そこで、将棋連盟米長会長の「自分にとっては消化試合だが、相手にとって重要な対局であれば、相手を全力で負かす」という、米長哲学なるものを教えてもらいました。レイティングも稼がなければいけない私にとって、このゲームは消化試合ではありません。それでもわずかなIM ノームのチャンスが、この敗北で消えたHou Qiang のことを考えれば、なかなか感慨深い言葉です。

さて、長かった今月のFirst Saturday も残りは2試合で、今日はインドの11歳、Aryan Chopra との対戦です。リスト最下位の彼ですが、ここまではイーブンの戦績とかなり健闘しており、レイティングは+40 近くとなっています。私もレイティングを献上する要因とならぬよう、ここはびしっと締めてこようと思います。


夕飯はオムライスを作る予定だったと聞いていますが、なぜか豚肉のトマト煮に。なぜ...?

2012/11/12

FS 2012 November 8th round - Spiritual Play -


上位陣に悔しい連敗を喫した後のラウンドは、17歳のイスラエル人との対戦です。レイティングは2000台ですが、ゲームを見ている限り内容は悪くありません。少ないデータから試合の準備を行い、勝負に臨みました。

Atnilov, M (ISR, 2099) - Kojima, S (FM, JPN, 2339)
First Saturday IM November (8)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. exd5 cxd5 4. c4 Nf6 5. Nc3 e6!?



Panov Botvinnik の5... e6 ラインを黒で指すのは初めてです。彼もおやっ?という顔をしたのが分かりました。5... Nc6 が今までのメインでしたが、IQP ポジションも私にとっては得意なスタイルです。

6. Nf3 Bb4 7. cxd5 Nxd5 8. Qc2 Qc7!?


8... Nc6 がメインですが、ここはサブのラインをチョイス。c3 でピースを交換し、白のポーンストラクチャーに弱点を作る戦法で戦います。

9. Bd2 Nd7 10. Rc1 Bxc3 11. bxc3 N5f6 12. Bd3 b6



どんなゲームがあったかは忘れてしまいましたが、ここまではひとまず満足です。黒はソリッドなポーンストラクチャーと、不満なピースがないことで、白のダブルビショップとのバランスを取ります。また、白はBb7-Bxf3 を避けたいので、多少ピースを捌かなければなりません。

13. O-O Bb7 14. Ng5 h6 15. Ne4 O-O!?


ここでピースを2枚捌いておけば、白のアタッキングチャンスは格段に減り、イコアライズまであと一歩であることは分かっていました。しかし、どうしても勝ちの欲しいこのラウンドでは、多少リスクを承知でもピースを残すことにします。15... Nxe4 16. Bxe4 Bxe4 17. Qxe4 O-O=

16. f3!?



私にとって非常に評価の難しい手です。e4 のマスを強めてb7-g2 の利きからキングを守りますが、その代わりにe3 のマスや、g1-a7 のダイアゴナルを弱めます。コンピュータはこの手がベストだと評価しますが、人間的には評価が分かれそうです。

16... e5!?


センターポーンを捌いてc3 に孤立ポーンを残そうとするのは、Nimzo-Indian でもよく見られる指し方です。ここでは特に、Bd2-Be1-Bg3 とビショップを組み直されるのを嫌い、早めに仕掛けることにしました。

17. Nxf6+ Nxf6 18. dxe5 Qxe5 19. Rfe1 Qc7



思い描いていたポジションになりました。オープンなポジションのダブルビショップは怖いですが、孤立したcファイルのポーンがあるため、お互いにバランスはとれていると思います。黒が次の考えるべきことは、どのファイルにルークを回すかです。

20. c4 Rfe8 21. Bc3 Nd7


e4,d5 の両方を抑えられてしまったので、ナイトをf6 から組み変えます。Nf6-Nh5-Nf4 を狙う選択肢もあったでしょう。

22. Bh7+!? Kh8 23. Bf5



白は黒キングをh8 に移動させることで、g7 を取った際にチェックになる+h6取りがスレットになる、といったメリットを得ます。意外と白の攻撃がいやらしいので、ここから黒マスをブロックすることに。

23... Ne5 24. Qd2 f6 25. Bb1


c3-g7 をブロックしたのは良かったのですが、代わりにg6 のマスを中心に白マスを弱めてしまいます。b1-h7 のダイアゴナルにビショップとクイーンを重ねて、h7 のメイトを狙う白に対し、ここは丁寧かつ大胆なディフェンスを使います。

25... Qc5+! 26. Bd4 Rad8 27. Red1



黒はルークをセンターに回しつつ、白ルークをe1 から外させるのがポイント。もう一つのルークはもちろんダメです。27. Rcd1? Qxd4+! 28. Qxd4 Rxd4 29. Rxd4 Nxf3+ 30. Kf2 Nxe1 31. Bg6 Rc8 32. Kxe1 Bxg2-/+

27... Qf8!?


ゲーム中、このディフェンスしか見えなかったのですが、もう一つシンプルなアイディアがありました。27... Qa3! 28. Qc2 Kg8!= こういった冷静なディフェンスは、私の苦手とするところ。確かに黒もf3 取りからのメイトスレットのチャンスを見せているので、白としては対応が難しそうです。

28. Qc2 f5! 29. Kh1?



お互いを通してこの試合で初めて、悪手と呼べる悪手が跳び出しました。両者ともすでに相当持ち時間が少なく、ここからは気合の勝負です。29. Qxf5? Qxf5 30. Bxf5 Bxf3!=/+, 29. Bf2! Rxd1+ 30. Rxd1 Rd8 31. Rxd8 Qxd8 32. h4+/=

29... Nxf3! 30. gxf3 Bxf3+ 31. Kg1 Bxd1


何かキングに迫る手はないかとも考えましたが、ここは時間もないのでマテリアルを取ることに。実際、これで正解です。

32. Rxd1 Re4!-/+



センターに回したルークを最大限使うことで、さらにポーンを回収します。時間切迫の状況ではまだ安心できませんが、冷静になってみると黒のアドバンテージはかなり大きいことが分かります。

33. Bf2 Rg4+ 34. Kf1 Rxd1+ 35. Qxd1 Rxc4 36. Bd3 Rc7 37. Qf3 Rf7


2ピースを捨て、ルークと3ポーンを取ったところでディフェンスに戻ります。クイーン交換をするか、しっかりディフェンスを読んだうえでルークをアクティブに使えれば、黒勝ちのゴールが見えてきます。

38. Bd4 Qa3 39. Qa8+?


時間が増える寸前での痛いミス。a2 のポーンを取れれば、黒はさらに楽な展開になります。

39... Rf8 40. Qf3 Qxa2-+ 41. h4 Qf7 42. Qf4 Rd8 43. Qe5? Qd7 0-1



最後は相手の集中が切れたか、ピースが落ちてリザイン。時間切迫になってからは技術よりも、気持ちの勝負であったように感じました。そして、ようやく6試合ぶりの白星を迎え、なんとか勝ち越し状態に戻しました。残り3試合でなるべくレイティングをプラスにしたいところです。

トップ争いはどうなっているかと言えば、上位陣はこんな感じです。

Liu Guanchu 7/8 (残り、Stigar、Kislik、Battey に1/3以上でノーム確定)
Massoni Michael 6/8 (残り、Wittmann、Stigar、Kislik に2/3以上でノーム確定)
Hou Qiang 5.5/8(残り、Kojima、Szeberenyi、Aryan に2.5/3以上でノーム確定)

上の2人はノームに手が届きそうですが、(Liu Guanchu はどう間違えても取るでしょう)問題はHou Qinag です。初戦負けた彼がここまでの追い上げを見せるとは、正直驚きました。今日、私がストップをかけられるか、彼にとっては大きな一戦です。


昨夜は中華丼。疲れ果てていたため、食後すぐに就寝となりました。

2012/11/11

FS 2012 November 7th round - Crash -


上位浮上のチャンスをかけた、フランスの新星、Massoni との試合は、まさかのここ最近で最短の負けゲームに。今月のIM ノームチャンスが消えるとともに、まだまだ自分の実力不足を感じました。

Kojima, S (FM, JPN, 2339) - Massoni, M (FM, FRA, 2382)
First Saturday IM November (7)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 d5 4. cxd5 Nxd5 5. g3 Bg7 6. Bg2 O-O 7. O-O Nb6 8. d3 Nc6 9. Be3 e5 10. Rc1!



先月のBattey 戦後、色々と調べてベストだと信じたプランを実行します。d4 に侵入してきたナイトは早めに排除し、c5 へナイトを運ぶ算段です。

10... Nd4 11. Ne4! Be6 12. Nxd4 exd4 13. Bg5 f6 14. Bd2!?


14. Bf4! Nd5?! 15. Nc5 Nxf4 16. gxf4 Bf7 17. Nxb7 Qe7+/- ポーンストラクチャーが乱れるのを嫌ってこの変化を避けましたが、b7 を取れるほうがメリットが大きいようです。

14... Bd5 15. a4 f5!



黒は白マスビショップを交換して白キングを弱体化させたうえで、ナイトをセンターに戻して戦うことで、クイーンサイドの弱さとのバランスを計ります。

16. Bg5 Qe8 17. Nc5 Qf7!


正直、この黒のプランを見落としていました。黒はfファイルにメジャーピースを重ねることで、将来的なf5-f4 からのアタックを強化し、g5 のビショップをトラップする狙いも見せておきます。私はクイーンをb3 のマスで使いたかったのですが、この黒の手を見て作戦を変更することに。

18. Qd2 Rae8!? 19. Rc2?



e2 をどう守るか迷った末に選んだこの手が、すでに大きな劣勢になる悪手だとは、試合後すぐには分かりませんでした。黒はb7 を守る必要があり、そこの手数がかかるので黒のキングサイドアタックはまだ決定的ではないと信じたのが、大きな間違いだったのです。19. Bxd5(白のキングはg1 にいたままのほうが安全でした。) 19... Qxd5 (19... Nxd5?! 20. Nxb7+/-) 20. Bf4 Rf7 21. b4=

19... Bxg2 20. Kxg2 Nd5!


黒はナイトをセンターに戻し、f5-f4 の準備を整えました。次にb7-b6 からナイトを追い返されたうえ、f5-f4 を食らうようでは勝負にならないと判断し、ポーンを取ってみることにしましたが...

21. Nxb7 f4 22. Nc5



22... Rxe2! 0-1


もう一つ別のアタックプランに対するディフェンスばかりを考えており、単純なタクティクスが全く見えていませんでした。なぜこうなったのか首をかしげつつ、リザインしか選択はありません。しかし2カ月続けて、白で同じラインを使い負けるとは...ラインが悪いはずはないので、私の実力不足です。

ひどい内容の試合でしたが、あまり大きく落ち込まずに済んでいるのは、アンダンテの皆さんの気遣いのおかげです。昨夜は私ともう一人の定連さんの合同誕生日パーティ(私は今月15日に24歳になります。)が企画され、ケーキやプレゼントのサプライズもありました。5月から様々なことがありましたが、やはりブダペストでは、アンダンテに滞在を続けて本当に良かったと思っています。


突然電気が消され、ケーキの登場。全く予期していない出来事でした。


プレゼントも何点か。ここではとても公開できないものも混じっています(笑)


最後は利きオレンジジュース。私が5種類のオレンジジュースの銘柄を全て当て、前回の利き水大会の屈辱を晴らしました。

さて大会のほうは、一昨日と昨日連敗で星をイーブンに戻してしまいました。ここまでかなりきつい戦いが続いていますが、驚くべきことにまだ4試合も残っています!今日の相手は1勝4敗で最下位に沈んでいるイスラエル人。なんとかここで2R 以来の白星を掴みたいところです。
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