2015/06/30

Weekly Chess Puzzle Vol.9


Kojima, S (FM, JPN, 2368) - Lyell, M (FM, ENG, 2200)
First Saturday IM February 2013 (2)
White to move and win


Kojima, S (FM, JPN, 2361) - Kulkarni, B (WGM, IND, 2241)
Bangkok Chess Club Open 2014 (5)
White to move and draw

今週のパズルはこの2つです。上のタクティクスは、ちょっとしたアイディアに気づけば簡単なはず。エンドゲームも手が限られていますが、二択のどちらが正しいか、黒の応手を考えて、正確に読まなければいけません。

2015/06/27

トークイベント情報 - 盤上のポラリス単行本出版記念企画 -


盤上のポラリス第1巻 , Amazon より

今夜は来月のイベント情報をお伝えします。月刊少年マガジンで好評連載中の、盤上のポラリス第1巻が発売されたことを記念し、7/19(日) に池袋コミュニティ・カレッジにて、トークイベントが開催されます。以下、イベント情報詳細です。

<開催要項>
◆日時:7月19日(日) 14:00~15:30
◆会場:西武池袋本店 別館8階 池袋コミュニティ・カレッジ
◆講師:チェスプレイヤー 小島慎也 (聞き手:『盤上のポラリス』担当編集者 小田太郎)
◆料金:2,000円
◆お申し込みは電話またはネットで承ります。
電話: 03-5949-5488 (池袋コミュニティ・カレッジ)
ネット: http://cul.7cn.co.jp/programs/program_722840.html
◆お問い合わせ :池袋コミュニティ・カレッジ TEL.03-5949-5488

◆イベント後には同フロアにて、日本チェス協会公認インストラクター上原慎平による「チェス入門 ミニ体験会」を開催します。イベント参加の方は特別料金で参加いただけますので奮ってご参加下さい!
・料金:イベント参加の方1,000円(ミニ体験会のみ参加の場合1,500円)
・お申し込みはコチラから http://cul.7cn.co.jp/programs/program_722911.html


イベントのタイトルは、「『盤上のポラリス』を通して見るチェスの魅力~日本チェス界のトッププレーヤー小島慎也が解説します~」 となっています。私の名前が、こんなに堂々とイベント名に入るとは予想外で、少し恥ずかしいです(笑) ちなみにイベント名の通り、メインスピーカーは私、聞き手は盤上のポラリス担当編集者の小田さんが務めます。漫画の世界を通し、チェスについて1時間半語る、日本初のイベントでしょう。

当初、この企画が持ち込まれた際、「私がメインで喋るんですか?!」と驚くばかりで、正直なところ、今も自信があるわけではありません。それでも、お越し下さるチェスのファン、漫画のファン、今後どちらかになりうる人たちのために、しっかり頑張ってみようと思います。昨年の後半、企画やサブイベント関係で、羽生さんのトークイベントにも関わりを持てたことも、経験として生かしたいですね。

来場者には、サイン色紙やサイン入りチェスセット(私ではなく、漫画の作者のサインですw)などが当たる企画も行うようですので、こういったサービスも是非お楽しみに。7月19日に池袋で、皆さんのご来場をお待ちしています。以下、講談社のイベント告知ページも、ご参照ください。

7/19(日)イベント開催! 「『盤上のポラリス』を通して見るチェスの魅力~日本チェス界のトッププレーヤー小島慎也が解説します~」

2015/06/25

The Highest Level Training in Japan on 24th June


水曜日、今月2回目となる羽生さんとのトレーニングを行ってきました。先週末もIVL に参加していただいたように、羽生さんは現在、非常にチェスのやる気に溢れた期間になっているようです。いつも通り、午前と午後でラピッドを1局ずつ、そしてポジションの研究を行いました。

Kojima, S (IM, JPN, 2389) - Habu, Y (FM, JPN, 2398)
Training (1)

1. d4 Nf6 2. Nf3 g6 3. c4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nbd7 7. Nc3 e5 8. e4 exd4 9. Nxd4 Re8 10. h3 Nc5 11. Re1 Bd7!?



このFianchetto King's Indian の変化は、前回のトレーニングの最後に羽生さんから見せてもらったもので、a7-a5 を遅らせることで、Nd4-Nb5 と白に跳ばせず、逆に黒からは、h7-h6, Nf6-Nh7-Ng5 と跳ぶような狙いを持つようです。

12. Rb1 h6 13. b4 Ne6 14. Nb3


こうしてbポーンを進めた後で、ナイトを退く形は別の変化で見た記憶がありました。将来的には、c4-c5 と仕掛けるチャンスを狙えます。白がこうしてb2-b4 と仕掛けなければ、黒はa7-a5 と突き、ナイトをc5 にキープするでしょう。

14... Ng5 15. Kh2 Qc8 16. Bxg5 hxg5 17. Qd2 g4 18. h4



白はh3 を守るために、黒マスビショップとナイトを交換しましたが、その代わりに素早くルークを連携しています。

18... Be6 19. c5 Bxb3!?


すぐにビショップを返してくれるのは計算外でしたが、すぐにc5 の孤立ポーンを狙ってくる気だと理解できました。しかしこれには、私も返し技があります。

20. Rxb3 dxc5 21. e5!?



この手は羽生さんが軽視していたものです。白はポーンをすぐに取り返すのではなく、e4-e5-e6 とさらに突き捨てることにより、黒キングの前のポーンストラクチャーを弱体化させるとともに、白マスビショップのダイアゴナルを開き、b7 をアタックします。

21... Nd7 22. e6 fxe6


22... Rxe6 23. Rxe6 fxe6 24. bxc5 Nxc5 25. Rb5 は本譜に似た形ですが、ルークを交換しないほうが、e6 をすぐに取り返されるようなスレットを作られづらく、黒にとって良いのではないかというのが、私たちの共通見解です。

23. bxc5



私はこの時点でほとんど残り時間がなく、確信のないラインに跳びこみます。代わりに23. Qd3! と指す手も良さそうで、自然に見えるナイトが跳ぶ手には、強力なエクスチェンジサクリファイスが待っています。23... Ne5? 24. Rxe5! Bxe5 25. Qxg6+ Kf8 26. Qxg4+/- こうしてg4 のポーンまで消しておけば、次のNc3-Ne4, Rb3-Rf3 が強力で、白が勝ちそうに見えます。

23... Nxc5 24. Rb5 Qd7!


24... Rd8 25. Qg5! ならば、白はポーンを捨てて黒キングを弱体化させた甲斐があり、攻勢を続けられそうです。そのため、このクイーンをぶつける手が一番嫌だと、試合中に考えていました。

25. Qxd7 Nxd7 26. Ne2!



冷静に考えれば当たり前の1手ですが、残り数秒でよく指せたと思います。白は2ポーンダウンでクイーンも消してしまいましたが、b7 は必ず取れますし、Ne2-Nf4 から、黒のバラバラのポーンを攻撃することもできるため、まだ勝負はここからです。

26... Rab8 27. Bxb7 Ne5 28. Reb1 c6 29. R5b3


この手を指した直後、ナイトフォークで終わりかと思いましたが、丁寧に考えればそんな簡単ではないことも見えてきます。このポジションで羽生さんも相当時間を使って考え、結果として間違えてしまいました。

29... Nf3+?!



私が試合後に指摘したのは、29... Red8! と指してルークを7段目に突入させるアイディアです。白はこれに対してうまいディフェンスが無く、白マスビショップもb7 から良い位置に移動できないために、苦しい展開が続いたでしょう。

30. Kg2 Nd2?


ここも30... Ne5 と戻るべきですが、それならばならそもそも、f3 への侵入もしないでしょう。

31. Bxc6



ナイトフォークを無視してビショップでポーンを取り、白もエクスチェンジ取りをスレットにします。これで白の駒損は消え、逆にポーンストラクチャーにの良さから、白が優勢に立ちます。

31... Nxb1 32. Bxe8 Rxe8 33. Rxb1 Be5 34. Rb4!


こうなった以上、白は勝ちを目指して戦います。まずは黒のバラバラのポーンを攻撃し、駒得を狙います。

34... Rc8 35. Rxg4 Rc2 36. Re4 Bc7 37. Rxe6 Kf7 38. Re4?



黒は予想通り、ルークを7段目に侵入させて、aポーンとfポーンを狙ってきましたが、これに対するベストのディフェンスを見つけることができませんでした。黒がaファイルにパスポーンを得れば、白は1ポーンアップと言えども、勝つのが簡単ではなくなることは明らかです。それをしっかり意識していれば、a2 のポーンを38. a4! というアイディアで守れたことを見つけられたはずです。白のルークはキングにアタックされていますが、もしこれを取られても、Ne2-Nd4 のナイトフォークで取り返すことができるため、白の勝勢です。

38... Rxa2 39. Nc3 Rc2 40. Nd5 Bd6 41. Ne3 Ra2 42. Nc4


時間の無い中、このようなナイトvs. ビショップをどのように考えてゲームを進めれば良いのか、さっぱり分かりませんでした。私たちは検討戦で、38. a4 のアイディアを見つけられなかったため、このゲームの検討戦の最大のポイントは、このエンドゲームになりました。どこかでg3-g4-g5 と進め、g6 を固定したうえで、f6 のマスを奪うアイディアは白にとって有効そうです。

42... Bc5 43. Ne5+ Kg7 44. Nd3 Bb6 45. Rf4?!



私はルークディフェンスからアタックに切り替え、g6 を狙うことにしましたが、本譜を見ても分かる通り、黒のaポーンのスピードに全く間に合っていません。

45... a5 46. Ne5?


ここも46. Rc4 から、浮いたビショップを狙うべきでした。aポーンの前進をここまで許してしまえば、逆に白が窮地に立たされます。

46... a4 47. Rf7+ Kg8 48. Rf6 Bd4! 49. Rxg6+ Kh7 50. Rg5 Rxf2+ 51. Kh3 a3-+



a2 をルーク、a1 をビショップで抑えられているため、すでにプロモーションを防ぐことはできません。

52. Nd3 a2 53. Ra5 Rd2 0-1


中盤で面白いポジションにし、良いエンドゲームにも持ち込めたにも関わらず、こうして敗れてしまうのは悔しいものです。それでも全体を通して、大変勉強になるゲームで会ったことは間違いありません。38. a4 を逃した後のエンドゲームをどのように戦うか(例えばパッシヴでも、ゆっくりとaポーンを止めにいく等)については、もう少し他のプレーヤーの意見も聞いてみたいと思います。


お昼は近くのカレーうどん専門店へ。つけカレーうどんは、人生初体験です。いつものように将棋とチェスの話をたくさん聞くことができました。

そして午後のゲームも、評価の難しいポジションから敗れました。ゲームの内容自体は、前回に比べてぐっと良くなっていますが、結果がついてこないときはあるようです。もちろん、技術不足もあるのでその点は反省しますが、あまり結果だけを見てネガティブにならずに、丁寧にトレーニングを続けていこうと思います。


White to move

さらに午後は、羽生さんからはこのエンドゲームを見せてもらい、一緒にアイディアを出し合いました。すぐにポーンエンディングからクイーンエンディングになり、新たなプロモーションを巡る戦いが始まります。私も今年は全日本で2回、羽生さんとのトレーニングで1回、クイーンエンディングが出現しています。様々なクイーンエンディングで、どのようにオフェンス側がパペチュアルチェックを避けつつ、パスポーンを進めていくものなのか、きちんと勉強する機会をこれから設けようと思います。

羽生さんも本業の将棋で忙しい中、こうしてチェスのトレーニングの時間を割いてくださっていること、いつも感謝しています。来月もお互いのスケジュールが合えば、こうしてトレーニングを続けていきたいと思います。

2015/06/23

国内レイティング S101


快速選手権で優勝した青嶋くん(右)

今夜の話題は、タイムリーなこちらにしようと思います。本日、更新されたばかりの国内レイティングが公開されました。計算された主な試合は、5月の全日本選手権とゴールデンオープン、6月の快速選手権、東海オープンなど。加えて、各地の例会の結果も反映されているでしょう。レイティング変動のあった上位プレーヤーのランキングは、以下の通りです。

小島慎也 2449 (-8)
青嶋未来 2407 (+456)
馬場雅裕 2312 (+26)
Seytnazarov Timur 2311 (-154)
Alex Averbukh 2269 (-16)
上杉晋作 2244 (+14)
桑田晋 2236 (-1)
塩見亮 2221 (+7)
松尾朋彦 2208 (-15)
山田弘平 2200 (-29)

一人、おかしな上げ幅のプレーヤーがいます(笑) ゴールデンオープンで4位、快速選手権で1位を獲得したプロ棋士の青嶋くんは、大幅にレイティングを上げて、一気に2400台に躍り出ました。試合をしていない南條くんが2440、羽生さんが2415 ですので、このメンバーにもかなり近づいています。本人からは、実力に見合わない数字だという謙虚なコメントが届いていますが、快速の結果を見れば、そんなこともないでしょう。今後のトーナメントでも、青嶋くんには頑張ってもらいたいですね。

全日本で優勝した馬場さんは、初めて2300台に到達。実力を考えれば、遅すぎたくらいです。FIDE レイティングも早く、2300に乗せてほしいと思います。上杉くんが久々の国内大会参戦&優勝したことも、印象的だった出来事です。

他には、全日本選手権で活躍したジュニア勢、Garry くん、逢阪くん、大多和くんたちも、当然のことながらレイティングを伸ばしています。大きく数字を伸ばしたことで、これから対戦する相手には警戒されるでしょう。来月は全日本ジュニア選手権や、小学生選手権など、子供たちが主役のトーナメントも開催されますので、引き続き良いプレーを期待しています。

私は来月の新潟やサマーオープンは参加しませんので、次回の大会は8月のジャパンリーグとなります。それまではトレーニングやIVL でのプレーを地道に続けていくつもりです。夏は大会の多いシーズンでもありますので、各地で皆さんが活躍することを期待しています。参加しない大会にも、顔だけは出すかもしれませんので、またそちらでお会いしましょう。

2015/06/22

15th IVL Tournament Report


15th IVL の様子 Photo by Hasegawa

昨日、表参道で15回目となるIVL が開催されました。今回は昨年の10月に開催した10th IVL 以来、8か月ぶりに羽生さんに参加していただきました。羽生さん同様、久々の参加となる南條くん、そして私の日本トップ3が揃うトーナメントは、実に1年ぶりです。11人でのラピッド5R の結果は、以下の通りです。

1st Place Habu Yoshiharu (FM, JPN, 2398) 5/5
2nd Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2330) 4/5
3rd Place Shioguchi Tatsuya (JPN, 1957) 3/5



過去2回のIVL では、私、南條くん、弘平くん、汐口くんらにポイントを削られて、入賞を果たせなかった羽生さんですが、今回は見事に全勝優勝でした! だいたいの試合に目を通していましたが、ほとんど危なげない試合運びで、現在の好調ぶりが窺えました。次回、羽生さんが参加するIVL では、優勝にストップをかけられるように、きちんと仕事をしたいと思います。

Yamada, K (CM, JPN, 2088) - Habu, Y (FM, JPN, 2398)
15th IVL (4)

1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nc3 c6 4. Nf3 Nf6 5. Bg5 dxc4 6. e4 b5 7. e5 h6 8. Bh4 g5 9. Nxg5 hxg5 10. Bxg5 Nbd7 11. exf6 Qa5 12. Qd2 Bb7 13. Be2 O-O-O 14. O-O c5 15. a4 b4 16. Nb5 a6 17. Bxc4 axb5 18. axb5 Qc7 19. h4 Ne5!-+



aファイルを開くために、思い切ってナイトを捨てた弘平くんですが、この手を食らってしまっては勝負ありです。黒はナイトとルークの両方をアクティブにして、白キングに攻撃を仕掛けます。

20. Be2 Rxd4 21. Qe3 Re4 22. Qd2 Ng4 23. Bxg4 Rxg4 24. f3 Rd4 25. Qf2 Bd6 26. b6 Qxb6 27. Rfc1 Kb8 28. Be3 Rdxh4 0-1


ユニークなBotvinnik のラインを使い、羽生さんの完勝でした。このライン、私も少し調べてみようと思います。


おそらくハワイ以来の試合となる南條くんも、羽生さんに負け、1bye 以外は3試合をきっちりと勝ち、2位入賞を果たしています。今年から社会人となり、チェスをする機会が減っている南條くんも、今後どのようにトレーニングと試合を続けていくか、課題になるでしょう。


リストは下から3番目ながら、汐口くんも3位と健闘しました。優勝、準優勝の2人に敗れた以外、3人を破っています。彼にとって、IVL でのベスト順位でしょう。今回、私に代わって当日に運営のほとんどを引き受けてくれたことも、非常に感謝しています。

私は羽生さんと南條くんに当たることもなく、2勝3敗で10位に終わりました。敗れた弘平くん、桑田くんとの試合は優勢だったので、時間切迫でも慌てず、丁寧に指せるようにしなければいけませんね。そして今回、急な呼びかけにもかかわらず参加してくださった東芝さんと蒔田くん、ありがとうございました! また次回以降も、ゲストを招いての開催を目指していこうと思います。また来月、よろしくお願い致します。

2015/06/18

Saturday Lecture on June 27th 2015


Capablanca - Adams / Washington 1909

【日時】 2015年6月27日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Combination of Attack and Defence
【テーマ詳細】

チェスには相手の駒を取ったり、スレットを作ったりする攻撃の手と、狙われた駒を守ったり、相手からのスレットを外す防御の手があります。そして私は、基本的に攻撃の手のほうが、守りの手よりも強いと考えています。ところが、単なる攻撃の手よりも、攻撃と防御の役割を兼ねた手は、さらに強いと言えるでしょう。そうした攻防一体の手とはどういったものか、今月のレクチャーでは考えてみようと思います。

【参加費】 一律1200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

2015/06/16

Weekly Chess Puzzle Vol.8


Kojima,S - Lu, S
Niigata 2014 (3) Analysis
White to move and win


Kojima, S (FM, JPN, 2364) - Bartos, J (FM, CZE, 2259)
Pilsen Open 2013 (6) Analysis
Black to move and draw

今週のタクティクスは、未公開だった去年の新潟のゲームから。GM Lu Shanlei を相手にかなり良いポジションにしたはずが、最後に間違えてしまいました。今年の新潟、私は不参加ですが、今年も日本と中国代表で、熱い試合が繰り広げられることを期待しています。

エンドゲームはすでに公開済みの、一昨年のチェコのゲームから。教科書的なポジションですが、覚えておくべき異色ビショップエンディングでのテクニックです。私は試合後に、ロシアのIM Chudinovskikh から指摘されて、初めて知りました。答えが分かった方は、コメント欄にお気軽にどうぞ。

2015/06/13

The Highest Level Training in Japan on 12th June


ハワイ直前に行った3月のトレーニングから3か月が空き、久々に羽生さんと指す機会が訪れました。名人位を防衛されたその夜に、私にトレーニングの誘いがきたことは、素直に驚きです。午前の白のゲームは、私のひどいミスであまり内容なく負けてしまったため、午後の黒番のゲームを振り返りましょう。

Habu, Y (FM, JPN, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2389)
Training (2)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. exd5 cxd5 4. c4 Nf6 5. Nc3 Nc6 6. Bg5 Ne4 7. Nxe4 dxe4 8. d5 Ne5 9. Qd4 f6 10. Be3!?



羽生さんはラピッドでは初となる、Panov Botvinnik を採用してきました。これに対して私が指した6... Ne4!? の変化を羽生さんは全く知らなかったそうですが、それでも満足に白でゲームを進めてきます。

10... e6 11. O-O-O exd5 12. cxd5 Bd6 13. Ne2 O-O


羽生さんはe4 のポーンを取るのは、将来的にBc8-Bf5, Ra8-Rc8 といったコンビネーションが危険だと判断しました。これは人間の感覚では、非常に自然だと思います。

14. Nc3 f5 15. Nb5 f4 16. Bd2 Bf5



黒はダブルビショップを諦めますが、d5 のポーンはしっかりとブロックし、白マスビショップも展開して黒キングにプレッシャーをかけているので、この時点では満足でしょう。ここからが勝負です。

17. Bc3


私は試合後に、f4 のポーンを取りにいってはどうかと指摘しました。17. Nxd6 Qxd6 18. Bxf4!? Nd3+! 19. Bxd3! (19. Qxd3? Rac8+! 20. Kb1 exd3! 21. Bxd6 d2+ 22. Bd3 Bxd3+ 23. Ka1 Rxf2-+ この変化が黒勝ちであることは、検討戦で見つけています。) 19... Qxf4+ 20. Kb1 (ここでクイーンの横利きがあり、d3 のビショップを取ることができないことは、お互いの見落としでした。) 20... Bg6 21. Bc2 Qxf2+/= このポジションはやや白が良いですが、黒も指すことはできそうです。

17... Re8


私はこの1手しかないと思っていましたが、試合後に羽生さんに指摘されたのは、Ra8-Rc8 からエクスチェンジを捨てるアイディアです。17... Rc8!? 18. Kb1 e3+ 19. Ka1 Rxc3! 20. bxc3 Ng4 (c3 のビショップさえ消してしまえば、g7 へのメイトスレットが無くなるため、ナイトを素晴らしいマスに運ぶことができます。) 21. Nxd6 Qxd6 22. fxe3 Nxe3 23. Bd3= 試合後の検討では、17... Re8 が悪手で、この変化を指すべきだったのではないかとの結論でしたが、この先も互いに見落としていた手があり、実際にはまだまだ試合は難しい展開です。

18. Nxd6 Qxd6 19. Bb5 Re7?



私はこの試合、駒損しないように自然な手を指すことを心がけていましたが、少し凝ったアイディアを指さなければ、黒があっという間に悪くなります。19... Rec8! 20. Kb1 a6! 確かにこのように白マスビショップを追い返しておけば、黒は本譜のように突き進んでくるパスポーンに悩まされることはなかったでしょう。振り返ってみて、惜しまれる判断ミスです。

20. Bb4 Rc7+ 21. Kb1 Qf6 22. d6 Rcc8 23. Bc3 Ng4 24. Qd5+ Qf7 25. d7 e3+ 26. Ka1 Rd8 27. Qxb7!?


a8 のルークを取るという嫌なスレットを作る手です。他の候補手としては、27. Bc4! Qxd5 28. Rxd5! Be6 29. Rg5!+- も挙げられ、いずれも白勝勢です。

27... h6 28. fxe3 Nxe3 29. Rd2 Rab8 30. Qc7 Nc2+ 31. Rxc2 Bxc2 32. Bc4 1-0



最後は焦ってエクスチェンジを取りにいったため、あえなくクイーンが落ちるという結末でしたが、いずれにしろ白の駒得と、d7 のポーンに対抗する方法はありません。前回のトレーニングでは私が連勝でしたが、今回は連敗。羽生さんとは今年も、良いライバル、トレーニング相手としてお付き合いが続きそうです。


お昼は最近、羽生さんが気に入っているという沖縄料理へ。これから始まる夏の国内トーナメントのことや、年末の海外トーナメントのことについて話をしました。

午後のゲームの後は、私が先月のIVL で野口さんと指したルークエンディングの分岐をいくつも検討してみたり(トップの写真です)、Caro-Kann Advanced Variation やKing's Indian Fiancetto Variation のポジションを互いに持ち寄って、アイディアを出し合ったりしていました。毎回、多忙なスケジュールをぬってチェスのトレーニングに時間を割く羽生さんには頭が下がります。羽生さんとは今月、さらにチェスをする機会がありますので、そちらでも勉強させてもらうつもりです。

2015/06/08

Weekly Chess Puzzle Vol.7


Kojima, S (FM, JPN, 2368) - Meszaros, A (IM, HUN, 2243)
CAISSA IM February 2012(5) Analysis
White to move and win


Kojima, S (FM, JPN, 2368) - Meszaros, A (IM, HUN, 2243)
CAISSA IM February 2012 (5) Analysis
White to move and win

2013年、2回目のハンガリー滞在最後のトーナメントから。今回は初の2題、同じゲームからの出題です。上のポジションで簡単な勝ちを逃さなければ、下の図のようなエンドゲームにはならなかったのですが、それもまた勉強です。答えを思いついた方は、コメント欄にどうぞ。

2015/06/05

月刊少年マガジン創刊40周年 & 盤上のポラリス第6話


以前の記事でも紹介したチェスコミック、盤上のポラリスが掲載されている、月刊少年マガジン7月号が本日発売となりました。盤上のポラリスは6話まで進み、主人公の椿一兵と、ジュニアチャンピオンの灰堂レンが公式戦で初対決、その決着がつくところまでが本誌で描かれています。5話からに渡る2人の対局の棋譜は私が作製しましたが、こうして実際に雑誌に掲載されたものを見ると感無量です。原作の木口さん、作画の若松さん、素敵な描写にしてくださって、ありがとうございました! 皆さんも是非、お手に取って内容を確認してみてください。


もう1つ、本誌には月刊少年マガジン創刊40周年を記念したコメントが、週間、月刊少年マガジンで活躍した(している)漫画家や、各界の著名人から寄せられています。そんな中、私からのコメントも、僭越ながら掲載させていただきました。本誌の表紙になっている修羅の門は、月刊少年マガジンの看板マンガ家である川原正敏さんの代表作で、私が小学1年生の頃から親しんできた漫画です。今号で連載が終了してしまうのは残念ですが、次回作にも期待しています。


ざっと寄せられたコメントを見ていて、気になったのはこちら、将棋棋士の渡辺明さんからのコメントです。アニメ化もされた大ヒット作、四月は君の嘘について言及するコメントは多く、渡辺さんと奥さんもそのカテゴリに入っていました。しかしそれだけでなく、渡辺さんは盤上のポラリスについても触れられています。こうして将棋関係者からも注目される作品にしていけるよう、私も微力ながら協力していきたいですね。来月発売の8月号では、ちょっとした発表もある予定ですので、そちらもお楽しみに!

2015/06/04

The First Sponsored Chess Player from Japan - Kohei Yamada -


10th IVL より、Photo by Hasegawa

数日遅れですが、今夜はこちらの話題です。IM になった私や南條くんを含め、1988年生まれの世代には、不思議と強豪プレーヤーが揃っています。今回、その中の1人である山田弘平くんが、6月1日より株式会社エーアイネット・テクノロジのバックアップを受け、サポンサードチェスプレーヤーになったことを発表しました。弘平くんは2008年、2009年に私や南條くんを抑えて学生チャンピオンとなり、2010年にはチームメイトとして、ロシアのハンティマンシスクオリンピアードや、広州アジア大会に一緒に参加しています。

企業がチェスプレーヤーのスポンサーにつくという話を聞くと、2006年のアジア大会に参加した際に、インド代表のGM Sasikiran がそうであったことや、マレーシアのIM Mas がマレーシア初のGM を期待されて、石油会社からのバックアップを受けていたことを思い出します。しかし、日本のようなチェス後進国にとっては、おそらく初めてのことで、弘平くんにとって大変素晴らしいことだと思います。弘平くんは今後、大会参加費や遠征費の補助を受けるようで、これからの活動の幅も広がることでしょう。弘平くん、おめでとう!

中学生の頃、北海道から遠征してきた弘平くんと知り合って、10年以上経ちました。そんな彼が、こうして現在でもチェスプレーヤーとして努力を続けていることは、私にとっても大変嬉しいことですし、今回の話題は、日本のチェス界にとっても明るいニュースでしょう。私もますます、プレーヤーとしてもトレーナーとしても、国内外での活動に精を出していこうと思います。

株式会社エーアイネット・テクノロジ スポンサー情報

2015/06/02

FIDE Rating in June 2015


6月に入り、FIDE レイティングが更新されました。日本のプレーヤーには言うまでもなく、GW に開催された全日本選手権の結果が反映されています。大会終了直後には計算を行っていましたが、実際の数字が発表されたので、今夜の記事ではそれをメインに取り上げようと思います。まずは全日本選手権での、レイティング増加トップ5 のプレーヤーからチェックしてみます。

Osaka Takuma + 142 (1731 → 1873)
Garry Lin +99 (1906 → 2005)
Otawa Yuto + 86 (1649 →1735)
Mitsuya Naoto +68 (2040 → 2108)
Fukuya Natsumi +64 (1606 → 1670)

この5名はいずれも係数が40で、通常の係数20のプレーヤーよりも、レイティングが倍上がるようになっています。(もちろん、負ければ倍下がるというリスクもあります。) 昨年から採用されている係数40 の制度は、公式戦30試合以下か、U18 で2300に達していないプレーヤーに採用されます。トップの3名はジュニアで、あと数年は係数40 のままですので、今後も遠慮なくレイティングを稼いでもらいたいですね。オリンピアードのチームメイトであり、初の全日本3位入賞を果たした三ツ矢さんが、2100台に乗ったことも、とても嬉しく思います。

Higashishiba Teruomi 2002
Seytnazarov Timur 1896
Yokoyama Yuichi 1848
Honda Yoshiki 1816
Koyama Nobuyuki 1775
Goto Susumu 1763
Yokoo Hideyuki 1691

続いて、新しくFIDE レイティングのついたプレーヤーです。今年の結果を見る限り、8試合をこなすと、FIDE レイティングが仮でつくのかもしれません。各プレーヤーとも、30試合をこなすまでは係数40のため、負ければ大暴落のリスクを負いますが、それでもレイティングがつくことはめでたいことです。7名のプレーヤーの皆さん、おめでとうございます! ベテランの東芝さんは遅すぎたくらいですね。若い大学生のプレーヤーには、海外大会も視野に入れ、積極的に試合をこなしてもらいたいと思います。

私はと言えば、-14 と大きく落としてしまいました。2400台という1人違うレイティングで戦いながら、日本国内でレイティングを上げることが大変だということは理解しています。それでも、この借りは8月のジャパンリーグで返したいと思います。9月には、マレーシアの大会に参加するメンバーたちが動き出していますので、これから夏に向けてFIDE 公式戦もまた盛り上がっていくでしょう。私の次の海外遠征も、決まり次第、またご報告させていただきます。

Japan Chess Championship 2015 FIDE

2015/06/01

14th IVL


5月最終日、いつものように表参道でIV League が開催されました。今回の発案者は、日本チャンピオンになったばかりの馬場さんです。普段、参加率の低い馬場さんからの呼びかけで、開催まで時間があまりないながらも、メンバー8人が参加してくれたことをとても嬉しく思います。大会結果は、以下のようになっています。

1st Place 小島慎也 (IM, JPN, 2403) 4.5/5
2nd Place 野口恒治 (JPN, 2082) 3.5/5
3rd Place 塩見亮 (JPN, 2138) 3/5



私は13th IVL に続いての連続優勝です。それでも、今回は勝てるか分からないゲームを、なんとか気力でものにしたり、野口さんに不利なエンドゲームを粘ってドローに持ち込んだりと、大苦戦の末の優勝でした。そうした難しい形勢のゲームでも、ポイントが取れるのも強さなのかもしれませんが、やはり安定したゲーム運びをしたいものです。最終戦、優勝を決めた馬場さんとのゲームを公開しておきます。

Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Baba, M (CM, JPN, 2251)
14th IVL (5)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. g3 Bg7 4. Bg2 O-O 5. O-O c6 6. d4 d5 7. Qb3!?



c6 Grunfeld は黒がとても堅く指すことができ、世界的には流行の兆しを見せていますが、実戦で指すのは2年前のチェコ以来です。研究していた7. Qb3!? を試してみますが、ここからオープニングは成功したとは言えません。

7... Qb6 8. Nc3 Bf5 9. Qxb6 axb6 10. cxd5 cxd5 11. Bf4 Nc6 12. Rac1 Rfc8 13. Rfd1 e6 14. Nh4 Ne4!


この手を軽視しており、一時的に1ポーンダウンになることに気づきます。しかし、bファイルのダブルポーンを利用すれば何とかなることが分かり、冷静さを取り戻してプレーすることができました。

15. Nxf5 gxf5 16. e3 Nxc3 17. Rxc3 Rxa2 18. Rb3 Na5 19. Rxb6 Rc2 20. Rb1 h6 21. Bf1 Nc4 22. Rxb7 Nd2?



これは致命的なミスです。黒は形が悪いながら、ポーンを大人しく取り戻しておくほかありませんでした。22... Raxb2 23. R1xb2 Rxb2 24. Rxb2 Nxb2 こうしておけば、ダブルビショップと崩れていないポーンストラクチャーを持つ白も、勝つのは容易ではなかったでしょう。

23. Bd3!


馬場さんはこの手を完全に見落としていました。これで白はbポーンを生かすことができ、勝勢です。

23... Rc6 24. Rd1 Ne4 25. Rb8+! Kh7 26. f3 Nf6 27. g4!



正直、こうしてポーンを取りにいくことができたのはラッキーでした。後は余計なカウンタープレーさえ許さなければ、白は勝つことができるでしょう。

27... Nd7 28. Rb7 Nf8 29. gxf5 Kg8 30. Kh1 exf5 31. Bxf5 Ng6 32. Rb8+ Kh7 33. Rg1 Rf6 34. Bb1 Raa6 35. h4 1-0


最後は黒の時間が落ちましたが、すでに黒は厳しい状況です、リザインしてもおかしくはないでしょう。全日本の悔しさを完全に拭い去ったわけではないですが、GW に敗れた弘平くんと馬場さんに勝ったことで、また少し自分のチェスを取り戻せそうです。

恒例の打ち上げには、所用で参加することができませんでしたので、それはまた次回を楽しみにしています。この時期になると、Pablo、羽生さん、池田くんをゲストに招いた昨年を思い出しますので、また今年もそうした試みをしたいですね。呼びたいゲストの候補は、すでに私の頭にあります。

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