2017/02/26

Saturday Lecture on 11th March 2017


Terzyan、N - Praggnanandhaa, R
World Cadets U12 2016 (1)
Black to move

【日時】 2017年3月11日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 A Typical Pawn Break Against e4
【テーマ詳細】

白の初手に関わらず、白のe4 にポーンが残る形では、どこかしらのタイミングで黒がe4 にブレイクを仕掛け、崩しにいくケースが多いでしょう。今回はそのブレイクにテーマを絞り、どのようなタイミングと狙い、その後の構想があるかを解説したいと思います。

【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満


2017/02/25

国内レイティング S111

一昨日、この2か月の国内公式戦の結果を反映した、新しい国内レイティングが公開されました。今期は12月の学生選手権、クリスマスオープン、1月の新年チェス大会、2月の千葉選手権などの結果が含まれています。変動のあったプレーヤーのトップは以下の通りです。

Tran Than Tu 2489 -3
小島慎也 2480 +4
馬場雅裕 2389 +10
小林厚彦 2203 +11
中村尚広 2186 +6


Tuさんは千葉の例会での結果、今回はわずかに下げてしまいました。他は新年チェス大会、千葉選手権、学生選手権で優勝した私、馬場さん、厚彦くんなどがレイティングを伸ばしています。私とおそらく馬場さんは、ベストレイティングを更新したのではないでしょうか。他のプレーヤーのレイティングは、いつものように松戸チェスクラブのHP で確認ができます。

そして今回のレイティングで、これから始まるその他の地方予選や、百傑戦などの試合が行われます。明日は特に浜松、長崎、神戸と3つの地方で予選が同時開催ですので、それぞれの結果を楽しみにしています。全日本選手権を目指す皆さん、頑張ってきてください! 私は次の大会は、3月半ばの百傑戦に参加するつもりです。

2017/02/15

Valentine's Day Chess Chocolate 2017


毎年バレンタインの時期には、どこも工夫を凝らしたチョコレートを販売していますが、今年は渋谷のセルリアンタワー40階のバー、ベロビストで面白いチョコレートが食べられると聞き、足を運んでみました。それがこちらのチョコで、チェス盤とチェスピース、葉巻などがモチーフになっています。見た目も楽しいこちらのチョコですが、キューブ型は中身が塩キャラメル、イチゴ、ピスタチオ、奥のバー型はオレンジピール、葉巻型は生チョコと、味のバリエーションにも工夫があって面白かったです。ちなみにバー自体も素敵な場所でしたので、次回は夜景が楽しめる夜の時間帯にお邪魔させていただこうと思います。

多くのバレンタインイベントは2/14 までであり、このベロビストのチェスチョコレートも今日で終わりです。もっと早く知っていたら、足を運んでいたのに! という人には紹介が遅くなり、申し訳ないです... 大阪のリーガロイヤルホテルが毎年出している、チェスピースのチョコレートは今年も健在で、来年以降も他にどのようなチェスチョコレートを見つけられるか、楽しみにしたいと思います。以上、いつもと少し雰囲気を変えた記事をお届けしました。

2017/02/12

Weekly Chess Puzzle Vol.34


Kojima, S - Kuwata, S
ACC Spring Training 2004 (3)
White to move


Kojima, S (FM, JPN, 2334) - Gilruth, P (KEN, 2202)
Khanty-Mansisk Olympiad 2010 (11)
White to move

今夜のパズルは2つともタクティクスです。1つ目は中学生最後の合宿での思い出深いもの。オープニングトラップとして有名な局面です。2つ目は、ロシアのオリンピアード最終戦から。このオリンピアードはなかなか苦戦しましたが、最終戦だけはしっかり指せたと思っています。答えの分かった方はいつも通り、コメント欄へどうぞ。

2017/02/11

Saturday Lecture on 25th February 2017


Matlakov, M - Eljanov, P / 2013
Black to move

【日時】 2017年2月25日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Sacrifice for An Attack
【テーマ詳細】

チェスは様々な勝ち方がありますが、鮮やかなサクリファイスで勝った試合は、いつの時代も見ごたえのあるものです。2月のレクチャーでは、駒を捨ててアタックを決めた試合を取り上げ、どういった読みをするか、どのような発想の出し方が求められるかを解説しようと思います。

【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

2017/02/10

My Memorable Endgame


Kojima, S (JPN, 2081) - Kuwata, S (JPN, 1806)
Master Tournament A Class 2005
White to move

エンドゲームは見た目の印象よりも、実際に指してみると複雑なことがしばしばあります。上記のポジションは一度、Weekly Chess Puzzle で出題していましたが、解答を発表していなかったため、きちんと解説の記事を書いてみようと思います。

白はポーンアップですが、ここから勝つためにはしっかりとプランを立てなければいけません。黒のキングとビショップでの反撃をうまく抑え込みつつ、ポジションを改善するためにはどうすれば良いでしょうか。

52. Ng6+ Kf7 53. Nf4


白はまず様子見でナイトを動かします。これでeポーンを進めることができるようになりましたが、果たしてパスポーンを進めれば勝てるでしょうか。まずはこのパスポーンを進めることが、白にとってプラスになるかどうかを考えてみます。

白のeポーンは落とされることなく、e6 までは進めるでしょう。ポーンをe6、ナイトをg6 に配置し、黒キングをe8 のマスに縛れば、黒はポーンにもナイトにも手出しができません。この状態のまま、白はh4 のポーンを取って2ポーンアップになれば勝てそうですが、e1-g3 のダイアゴナルでビショップに待たれた場合、h4 を取るのはナイトからになります。そしてNg6-Nxh4 と取った際、Ke8-Ke7 と上がられると、白はeポーンを助けることができません。このように考えた場合、e6 までポーンを進め、eポーンとhポーンの距離を離すことは、あまりメリットがないように感じられます。

もう1つの考え方として、ポーンはいつでも進めることができますが、戻ることは決してできません。それならば黒からカウンタープレーがない以上、白はポーンを進めるとしても、なるべくナイトとキングの位置を良くしたうえで進めるべきです。

53... Be1 54. Nd3 Bg3 55. Ne5+ Ke7 56. Ng4!



この辺りでナイトの目指すゴールとなるマスが見えてきました。ナイトはh4 をアタックしつつ、g3 のマスを抑えるf5 がベストの位置です。さらに最近この試合を振り返って気付いたのは、ナイトのゴールがf5 だと最初から見当をつけられれば、遠回りをせずに52. Ng4! でも十分です。

56... Be1 57. Ne3 Bf2


57... Kf7 58. Kg4 Ke6 59. Nf5 Ke5 60. Kf3 Ke6 61. Ke2+- このような手順でも本譜と同じです。

58. Kf4 Bg3+ 59. Kg4 Kf6 60. Nf5! Bf2



黒はg3 でピース交換をするわけにはいかないので、ビショップが逃げる1手です。ここでのポイントは、60... Be1 61. Nxh4! Ke5 62. Nf3++- と進み、白がナイトフォークでビショップを取れれば白の勝ちになるということです。このようにh4 のポーンを取れることが、eポーンを4段目にキープしておき、eポーンとhポーンの距離を離さなかった利点となっています。

61. Kf3! Be1 62. Ke2!


こうして逃げたビショップをキングで追い、完全にe1-g3 のダイアゴナルから追い出してからh4 を取れば、白の勝勢です。間違って61. Nxh4? Ke5! ならば、黒はe4 のポーンを取ってドローに持ち込むことができるでしょう。

62... Ba5 63. Nxh4 Ke5



白はh4 のポーンを取って明らかにポジションを改善しました。それではこれがそう簡単に勝ちかと言えば、そんなこともありません。白はe、hポーンを取られずに進めるために、もう一工夫必要です。63... Kg5 64. Ng2 Bc7 65. Kd3 Be5 66. Kc4 Kf6 67. Kd5 Bb8 68. h4 Bg3 69. Kd4 Kg6 70. Kc4 Kg7 71. Ne3 Kg6 72. Nf5 Bf2 73. Kd5 Be1 74. Ke5 Bf2 75. Kf4 Be1 76. e5+- こうしてf4 までキングを回してからeポーンを進めれば、今度こそ完全に白の勝ちです。

64. Kf3 1-0


ちなみにこのエンドゲームには、もう一つ語るべきストーリーがあります。それはこのエンドゲームが封じ手の末に指されたものであるということです。封じ手というのは、試合が長引いた際にいったん中断し、手番の側が対戦相手にも周囲にも分からなうよう紙に自分の指す手を記して、試合再開時にその手からスタートするというものです。封じた側は手を変更することができず、封じられた側は相手が選んだ手を知ることができないという点で、公平性を保つのです。将棋や囲碁の世界では現在でも残る封じ手の制度ですが、チェスの世界ではコンピュータが進歩して解析が容易になりすぎたため、封じ手の制度はほとんど残っていません。

私と桑田くんは封じ手から再開までの間、互いに10年以上前のコンピュータで解析をして、このエンドゲームが複雑であることを理解していました。現在でもありえることですが、コンピュータは白の勝勢と評価し、それに応じた指し手も示していても、実際にその通り進めるとどこかで同じ手を繰り返し、白勝ちにならないのです。そこで私はコンピュータの解析と人間らしい発想を織り交ぜ、長い時間をかけてナイトがf5 にいくアイディアを発見しました。こうした経緯もあり、このエンドゲームが10年以上たっても思い出深いものになっているのです。

The Modern Italian

最近様々なオープニングをチェックしていて、面白いと思ったItalia の変化を今夜はご紹介します。

Anand, V (GM, IND, 2762) - Aronian, L (GM, ARM, 2786)
FIDE Candidates 2016 (9)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4!?



私も函館で1試合指しましたが、Italian はRuy Lopez に劣らず、面白いオープニングだと思っています。近年、トップGM でもItalian を採用する機会が増えてきたのは、Ruy Lopez Berlin が優秀なオープニングとして、1. e4 に刺される頻度が高くなっていることが影響しているでしょう。

3... Bc5 4. O-O d6 5. d3 Nf6 6. c3 a6 7. a4!?


7... Bb3 と指してNc6-Na5 を指すのが最もポピュラーですが、クイーンサイドでスペースを取り、a2 のマスにビショップを下げる準備をしてくアイディアも有効です。この手自体はさほどユニークではないですが、次の白の手が面白いと感じました。

7... Ba7 8. Na3!?



この手は2015年頃から、爆発的に指される数が増えています。Italian やRuy Lopez では、b1 のナイトはNb1-Nd2-Nf1-Ng3(or Ne3) と出るのが一般的ですが、この変化ではa3 を経由してe3 を目指すことで、Rf1-Re1 を省くことができます。a2-a4 はa2 にマスを作るだけでなく、ルークでa3 のナイトを守る役割も果たしているわけです。

8... Ne7 9. Nc2 Ng6 10. Be3 O-O 11. Bxa7 Rxa7 12. Ne3 Ng4 13. Qd2 a5 14. d4 Ra8 15. dxe5 N4xe5 16. Nxe5 Nxe5 17. Bb3 Nd7 18. Bc2 Re8 19. f3 b6 20. Rfd1 Nc5 21. b4 Nd7 22. Bb3 Nf6 23. Qd4 Qe7 24. Nd5 Nxd5 25. Bxd5 Ra7 26. b5!


Re1-Rf1 を省いたからといって、白に大きなアドバンテージが突然できるわけではありません。白はゆっくりとクイーンサイドでスペースを拡大していき、b5 までポーンを伸ばすことでc7 を固定しました。これにより、エンドゲームでチャンスを掴みます。

26... Bb7 27. c4 Qe5 28. Rac1 Qxd4+ 29. Rxd4 Kf8 30. Kf2 Ke7 31. f4 f6 32. Rc3 Kd7 33. Rh3 h6 34. Rg3 Re7 35. Rg6 Bxd5 36. cxd5 Ra8



ダブルルークエンディングまで進み、c7 とg7 にプレッシャーをかけられる白が指しやすくなりました。

37. Kf3 Rae8 38. Kg4!


ここで白はe4 とg7 の交換で勝負に出ます。黒がe4 を取らなければ、Kg4-Kf5 とキングに前進され、黒は何もできなくなるでしょう。

38... Rxe4 39. Rxg7+ Kc8 40. Rd2!



白が勝ちを目指すためには、ルーク交換を避けるのが正しい判断です。黒がa4 を取ろうものなら、Rd2-Rc2 からc7 を狙い、白の勝勢です。

40... Kb8 41. Rc2 Rc8 42. Ra2 Rd4 43. Kf5 Rxd5+ 44. Kxf6


これまで以上に、白と黒でキングの働きにはっきり差ができました。黒は白のパスポーンを消しにいきますが、白は新たなパスポーンを作れるため、問題ありません。

44... Rf8+ 45. Rf7 Rxf7+ 46. Kxf7 Rf5+ 47. Kg6 Rxf4 48. g3 Rc4 49. Kxh6+-



キングにサポートされた2コネクテッドパスポーンを作り、勝負ありです。後は丁寧にこれを進めて白の勝ちとなります。

49... d5 50. Kh5 d4 51. g4 d3 52. h4 Rd4 53. Rd2 Kc8 54. g5 Kd7 55. Kg6 Rxh4 56. Rxd3+ Ke8 57. Ra3 Rc4 58. Kg7 Kd7 59. g6 c6 60. Kf6 cxb5 61. g7 Rg4 62. axb5 Rg1 63. Rd3+ Ke8 64. Re3+ Kd7 65. Re5 Rxg7 66. Rd5+ 1-0


結局はエンドゲーム勝負になった試合でしたが、序盤のピースの駒組みも面白いと思います。2017年も、このオープニングは1. e4 e5 のゲームで見ることになりそうです。

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.