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2012/11/05

Practical Pawn Ending

昨日は試合がなかったため、先月のCAISSA のゲームを振り返り、面白かったポジションを振り返ろうと思います。ハンガリーに来て一番良かったことは、自身でたくさんゲームをこなして経験を積めることですが、周りでハイレベルなゲームが常に行われており、それを見て勉強できるのも、私にとって大きなプラスです。


FM Arjun, B (2293) - IM Kislik, E (2413)
Caissa IM October 2012
Position After 59. Rc8

Kislik が序盤で早々にエクスチェンジアップし、黒勝ちになるだろうと思って見ていましたが、なぜか気がつくとこのような形に。Arjun のパスポーンはプロモーション直前で、黒がパスポーンを止めるためにルークを切れば、順当に白勝ちになると私は考えました。本譜は59... h5 からその通りの展開になったのですが、私は試合中、ポーンエンディングにするとどうなるのかを読んでいました。結論から言えばこちらもダメなのですが、考えてみる価値はもちろんあります。

59... Rxd7+ 60. Kxd7 Rxe6 61. Kxe6 Kxc8 62. g5!



白が勝つためのオンリームーブです。gポーン1つで、黒のキングサイドの2ポーンを抑え込みます。ポーンエンディングでは、ポーンの数はもちろんですが、それ以上にポーンとキングの位置が重要だということを示す、お手本のようなポジションになりました。ポーンを突かずにキングが寄る手はダメで、逆に黒勝ちになってしまいます。62. Kf6?? h5 63. gxh5 gxh5 64. Kg5 Kd7 65. Kxh5 Ke6 66. Kg4 Ke5-+

62... a5 63. Kf6 Kd7 64. b4 axb4 65. axb4 Kd6 66. Kg7 Ke6



ポーンレースにしても、黒は間に合いません。66... Kd5 67. Kxh7 Kc4 68. Kxg6 Kxb4 69. Kf5 Kc3 70. g6 b4 71. g7 b3 72. g8=Q b2 73. Qa2 Kc2 74. Ke4-+

67. Kxh7 Kf7 68. Kh6 Kf8 69. Kxg6 Kg8 70. Kh6 Kh8 71. g6-+



最後はクイーンサイドにキングを寄せるまでもなく白勝ちです。Arjun がここまでをきちんと読んで59. Rc8! を指したのであれば、彼のエンドゲームの技術は大したものだと思います。そして黒のポーンがh7 ではなくh6 にいれば、59...Rxd7+! が成立したことを考えると、なかなか面白いポジションなのではないでしょうか。(ポーンがh7とh6 にある場合で何が違うか、エンドゲームトレーニングのテーマなどにすると良さそうです。)

2012/04/25

Check Mate Lounge Game Review Vol.2


すでにいくつかのサイトでは、羽生さんの棋譜も公開されていますが、私も自分なりにこのゲームを振り返ってみようと思います。

GM Nigel Short - FM Yoshiharu Habu
Check Mate Lounge

1. e4 e5!?


Nigel の1.e4 に対して、羽生さんがこの初手を指すことを知っていたのは、事前に本人から聞いていた私と塩見さんのみだと思います。とは言え、私も実際に目撃するまで半分疑っていました。羽生さんはこれまで、フレンチとシシリアンが黒番のメインです。

2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Be7 6. Re1 b5 7. Bb3 O-O 8. d4



この10年でMarshall Gambit の研究が進み、それに合わせてAnti-Marshall も進化してきました。8.d4 は8.h3 と並び、代表的なAnti-Marshall の形です。

8...d6 9. c3 Bg4


8.c3 d6 9.d4 Bg4 でも同型で、私も白で持って何試合か指した経験があります。白は早くセンターにポーンを並べましたが、f3 のナイトがピンにされているので、それをすぐに崩さなくてはいけません。

10. a4!?


かなり珍しい手だと思います。10.d5 か 10.Be3 が、普通は指されます。(10.Be3 Nxe4?? 11.Bd5+- は有名なトラップ。)

10...Qc8!?



羽生さんも彼らしい独創的な手で応戦します。一手渡して白の出方を伺う、といったところでしょうか。気になるのは10... Bxf3 11. gxf3 (11. Qxf3 exd4 12. Qd1 dxc3 13. Nxc3 これが1ポーンの代償があるかの判断は大変難しい。) と進んだ形です。当然、白はKh1-Rg1 と組むと思いますが、個人的にはあまり好きな形ではありません。

11. axb5 axb5 12. Rxa8 Qxa8 13. d5 Na5 14. Ba2!



黒が将来的にc7-c6 と突いてくることを見越した手です。a2-g8 のダイアゴナルが再び開くのであれば、ビショップはc4 のマスを抑えつつ、a2 にいるべきです。

14...c6 15. h3 Bh5 16. Na3!


14.Ba2 に引き続き、なるほどと思わせる手です。現在、ゲームはd5 のマスを中心に駒のにらみが行われているため、ナイトをd2 に置いてクイーンの縦利きを消すのはやや不自然です。a3 のナイトはd5 が捌けた後、b5 のポーンを狙いつつ、Na3-Nc2-Nb4 と組み変えられる絶好の位置となります。

16...cxd5 17. Bxd5 Nxd5 18. Qxd5 Bxf3 19. Qxa8?!


白はクイーン交換をd5 で行うべきだったと思います。19. gxf3 Qxd5 20. exd5 Rb8 21.b4 Nc4 22.Nxc4 bxc4+=


と進めば、堅いパスポーンのある白にちゃんがあると判断できるでしょう。

19... Rxa8 20. gxf3 Nb3!



白のbポーンをブロックしているため、単にb5 のポーンを守るよりもずっと良い手です。ちょっとしたトラップになっており、白はb5 を取ることができません。

21. Be3


21.Nxb5?? Ra1 22.Bd2 Ra5-+

21...Rb8 22. Rd1


ここは先述の通り、22. Nc2 からナイトを組み変えるプランもあったと思います。b5 のポーンをターゲットとして残すことを重視します。

22... f6


エンドゲームでは、キングはセンターへ。キングの道を作ります。

23. Rd5 b4 24. Rb5 Rxb5 25. Nxb5 bxc3 26. Nxc3



白は2対1のポーンを捌いてパスポーンを作りましたが、黒はそれをがっちりとブロックしています。駒も2ピースしか残っていないため、d6 もさほど負担にはならず、黒としては大きな問題はないでしょう。

26...Kf7 27. Kf1 Ke6 28. Ke2 f5 29. Kd3 f4!


ダブルポーンを解消するのではなく、あえてポーンを固めます。狙いはf2 へのカウンターです。

30. Bb6 Bh4 31. Nd5


ポーンストラクチャーとアウトポストのナイトだけを見れば白優勢ですが、そこに繋がるターゲットがありません。あとはbファイルのパスポーンさえ抑え込めれば、黒はドローに持ち込めます。

31...Kd7 32. Kc3 Nc5 33. Bxc5!



白が間違えれば黒勝ちのチャンスもありえます。33.b4? Ne6! となれば、黒はキングサイドのポーンを攻撃し、パスポーンを作ることができます。白のb ポーンはキングで抑えに行くことができ、さほど脅威ではありません。

33...dxc5 34. b4 cxb4+ 35. Nxb4 Bxf2


ぱっと隣を見るとこの局面になっていたので、かなり驚きました。あとは本譜のようにドローのポーンエンディングに一直線です。

36. Nd3 Bd4+ 37. Kc4 Ke6 38. Nxf4+ exf4 39. Kxd4 g5 40. e5 h5 41. Ke4 g4



確かこの辺りでドローオファーをしていたと記憶していますが、Short は観客に分かりやすいよう最後まで続けます。

42. fxg4 hxg4 43. hxg4 f3 44. Kxf3 Kxe5 45. Kg3 Kf6 46. Kf4 Kg6 47. g5 Kg7 48. Kf5 Kf7 49. g6+ Kg7 50. Kg5 Kg8 51. Kf6 Kf8 52. g7+ Kg8 53. Kg6 1/2-1/2


このゲームではお互い、派手な攻撃や駒の取り合いがなかったために、初心者の方にはレベルの高さが伝わりづらいと思います。それでも凝ったアイディアの好手が互いに飛び交い、ミスらしいミスが出なかったことを考えれば、大変貴重なゲームであると言えます。このようなゲームを日本で、そして目の前で見せてくれたNigelと羽生さんには、心から感謝しています。

Check Mate Lounge Game Review Vol.1


さて今夜は、先週末のCheck Mate Lounge のゲームを振り返ろうと思います。2試合分を一度に出すと分量が多くなりそうなので、羽生さんのゲームは明日に回し、まずは私のゲームからです。早い段階でミスをしたと思っていましたが、細かく見て行くとそう簡単でないことが分かってきます。

GM Nigel Short - FM Shinya Kojima
Check Mate Lounge

1. e4 c5 2. Ne2!?



Nigel はSicilian に対し、Open もClosed もバリバリ指せます。白はこの2手目で黒の様子を見て、今後の展開を決めて行きます。とはいえ、Nigel は試合後のインタビューで、細かい計算に頼るシャープなポジションは避け、戦略的に指すつもりだった、と述べているので、この時点でClosed のつもりだったのでしょう。

2...Nc6 3. Nbc3 Nf6


3...e5 と指すのも一つの選択肢ですが、私はこのようにアウトポストを作る形を好みません。

4. f4 d6 5. d3 g6 6. h3!?


通常のSicilian Closed (g3-Bg2-h3-g4) と比較し、一手早くgポーンを伸ばそうとしていることは明らかです。それをとがめに行くかどうかは迷いましたが、結局黒は通常のセットアップで対抗することに決めました。

6...Bg7 7. g4 b6


すぐにキングサイドにキャスリングをするのは少し怖い気がしたので、クイーンサイドで手を作りつつ様子を見ます。

8. Bg2 Bb7 9. O-O O-O 10. Be3 Nd7


本譜は黒マスビショップのダイアゴナルを通す狙いですが、ここは10...Qd7 と指す手もあったと思います。ルークを連結させてセンターに回せるようにし、さらに様子見をします。

11. Qd2 Nd4!?



ゲームが大きく動くきっかけとなった、問題の手です。指した直後、しまったと思いました。試合後の仲間内での簡単な検討でも、これはかなり悪いのではないかと指摘されました。(本譜の流れで、ポーンがすぐに落ちるため)しかし深く読んでいくと、そう単純に結論付けられるものでもないと思います。

12. Bxd4 cxd4 13. Nb5


これで黒は1ポーンを諦めなければいけません。その代わりに黒マスビショップをもらっているので、うまく黒マスの弱さを突くことができれば、ポーンの代償はある(きっとある、なきゃ困る!)と試合中考えていました。難しいのは、その具体的な方法を見つけることです。

13...e5!?


d4 を守り、代わりにd6 を差し出します。d6 のポーンを取ったナイトは、将来的にc4 で交換するぐらいしかなく、白のポーンストラクチャーは乱れます。それプラス黒マスの弱さが、1ポーンの代償になるのではないかと考えました。しかしコンピュータの推奨変化は全く別で、難解です。

13...Nc5! 14. Nbxd4 e5 15. fxe5 dxe5 16. Nf3 Ne6


これで1ポーンの代償が十分にあり!というのが、コンピュータの指摘です。ポイントはf4,d4 の弱さとc,d ファイルからのカウンターです。白がポーンをc3 に進めれば、代わりにd3 のポーンが弱くなります。このように言われれば、半信半疑ながら多少は納得できそうです。しかし、これが黒にとってベストだと正確に判断し、短い思考時間で選択するのは、ハイレベルな理解力が必要とされます。ただ、ここまで書いておきながら、本譜もさほど黒が悪くなりません。

14. Nxd6 Ba6 15. Nc4?!


私もこの手を見て、チャンスが到来したと感じました。14...e5 の前に予測した、黒マスの弱さに突け込みやすい形になります。私が一番恐れていたのは、15.b3! で、これならばc4 のナイトをbポーンで取り返すことができます。そのポーンストラクチャーでは1ポーンの代償が明らかではなく、黒は他のポイントを模索しなければいけなかったでしょう。

15...Bxc4 16. dxc4 Nc5


この後の展開を見ると、16...Qe7(△17...Rad8)が最も正確な手順でしょう。

17. Rad1 Rc8 18. b3 Qe7 19. Kh1?!


さらに白の緩手が入ります。19. fxe5 Rcd8 20. Nxd4 Qxe5 21. c3 Ne6 22. Kh1 Nxd4 23. cxd4 Rxd4 24. Qxd4 Qxd4 25. Rxd4 Bxd4 26. Rd1+/= ならば、白は安全に勝ちを目指せます。もちろん黒は、異色ビショップで粘るしかありません。

19...Rcd8 20. Nc1 exf4 21. Qxf4 Be5



この辺りで、黒は十分盛り返しているのではないかと感じていました。白の黒マスはスカスカで、白マスビショップは自身のポーンの内側に閉じ込められています。さらに黒マスを利用することができれば、黒からは十分な反撃が作れそうです。

22. Qf2 Ne6! 23. Nd3 f6!



試合後に仲間内で、23...Bb8 と退くほうが良いのではないか(狙いは...Qc7 からh2 のメイト)と指摘されましたが、それは間違いだと断言できます。白はクイーンの横利きで容易にh2 を守れるので、黒が優先すべきはe5 のマスをブロックして、白の白マスビショップの働きを抑えることです。

24. a4!


当然ですが、ビショップを取りません。24.Nxe5? fxe5 の形は黒がf4 のマスを完璧にコントロールし、白の白マスビショップは永久に籠の中です。そして24.a4 は黒の地味な狙い、...Qa3-Qxa2 を防いでいます。

24...g5?!



19手目以降はほぼ完璧な指し回しをしていた黒ですが、時間切迫からここでミスが出ます。もし白が誤ってe5 のビショップを取るようならば(Nigel がそのようなミスをすることはあり得ませんが)、g5 のポーンはf4 をサポートするためによく働きます。しかし、白がそうしない場合、この手は単にf5 を弱める不必要な存在です。

25. Qd2 Nf4 26. a5 Bb8


ビショップをe5 で取らせて問題ないことは十分理解していましたが、何を指して良いか分からず、ついビショップを下げてしまいました。この辺り、どうもプランが一貫していません。クイーンを重ねてh2 のメイトを狙うという単調なアイディアが、どうしても頭から消し去れなかったせいもあります。

27. axb6 axb6 28. Qb4 Bd6 29. Qxb6!


ビショップをb8 に退いた時点では、このポーンが取れるとは思っていませんでした。それはクイーンが二段目から離れれば、今度こそh2 のメイト狙いが出現すると読んでいたからです。しかしNigel はキングセンターに逃げてOK との判断を下しました。

29...Ne2?



残り時間5秒ほどまで考えた手が、全くの勘違いでした。私がこの試合で完全にダメな手と評価するのは、唯一この一手です。b6 のポーンが落ちて、白に2コネクテッドパスポーンができた以上、黒は待つのではなく、ダイレクトなアタックによる反撃を仕掛けるほかありません。しかし本譜の手は一瞬で攻めが止まり、何事もなく白が勝ちます。

黒が続けるとすれば、やはりh2 に飛び込む一手でした。29... Nxd3! 30. Rxd3 Qe5 31. Kg1 Qh2+ 32. Kf2 Qf4+ 33. Ke2 (33. Rf3 Qd2+ 34. Kg1 Bf4+/=) 33... Qh2 34. Rf2 Bg3 35. Rxd4 Bxf2 36. Kxf2+/=



白はルークを切り、3ポーンエクスチェンジにします。白にチャンスがありそうですが、キングの不安定さから、形勢が一二転する可能性も十分に考えられる局面です。

30. Rf2


なぜかこのような、単純な手が見えていませんでした。白のキングには攻めは届かず、黒のチャンスが完全に消滅します。残りは流して良いでしょう。

30...Ng3+ 31. Kg1 Bc7 32. Qc5 Bd6 33. Qc6 Rfe8 34. c5 Bf4 35. Nxf4 gxf4 36. b4 Qe5 37. Bf3 Re6 38. Qb5 1-0



最後はノーチャンスなので、リザインする代わりに時間が0になるのを待ちました。黒マスを利用する作戦は良かったはずですが、時間がなくなってから冷静になれず、プランをごちゃごちゃと混ぜてしまったのが敗因です。

ところでこのゲーム、d4 が落ちたところと結果だけしかチェックしないと、何事もなく私が負けたように見えます。しかし、ここまでの解説を読めば、実際は難解なポジションが多く、簡単に結論付けられないゲームだと思えます。そのことを局後に私に指摘したのは、解説の塩見さんぐらいでしょう。

私もd4 が落ちた際はまずいと思いましたが、本当にそうなのか、簡単に結論を出さずに疑ってかかるべきではないのか、という思考は、実は羽生さんとのこれまでの対局や、対話の中で学んできたことです。持ち時間の少ない状況で、正確に指せなかった未熟さは反省すべきですが、それでも面白いポジションがいくつもあり、勉強になったゲームでした。それでは、明日は羽生さんのゲームを、私なりに解説しようと思います。

2012/04/03

百傑戦 Games and Analysis Vol.4

4.5/5 で迎えた百傑の最終戦。相手はもちろん羽生さんでした。2010年からお付き合いがありますが、公式戦での対局は初めてです。

Habu, Y - Kojima, S
Hyakketsu (6)

1. d4 e6 2. c4 Nf6 3. Nf3 d5 4. g3 Bb4+ 5. Bd2 Bd6!?



5...Be7 と比較すると珍しい変化ですが、2009年頃からトッププレーヤーの間でも指され始めました。5...Be7 同様、黒は堅い形を築くことができます。

6. Bg2 c6 7. b3 Nbd7 8. Nc3 O-O 9. O-O b6 10. Qc2 Ba6?



早くも勝負の分かれ目が訪れました。10...Bb7 ならば白が面白い展開だと考え、局面を複雑にしようとしたのが裏目に出ました。10... Bb7 11. Rad1 Qe7 12. e4 Nxe4 13. Nxe4 dxe4 14. Qxe4 Nf6 15. Qh4 c5= と進めば黒は満足できます。

11. e4 dxc4?!


10...Ba6 と指した時点で2ピースルークにするつもりだったので、ここで方針転換は難しいですが、まだ以下の変化のほうがベターです。
11... Nxe4 12. Nxe4 dxe4 13. Qxe4 Bb7 14. Rad1+/=

12. e5 cxb3 13. axb3 Bxf1 14. Rxf1 Be7 15. exf6 Bxf6 16. Ne4!+/-



私が見落としていたのは、d6 の弱さです。c6 のポーンはすばやく...c5 を突くことで解消できると考えていましたが、d6 がセットでは弱点を解消しきれません。

16...Rc8 17. Nd6 Rc7 18. Bf4 Nb8


18... g5 19. Be3 Be7 20. Ne4 h6+/- とポーンを守る手ももちろん考えましたが、キングの守りを薄くしているため、本譜とどちらが良いかの比較は難しいところです。

19.Ne4 Rc8 20. Nxf6+ Qxf6 21. Bxb8 Rxb8 22. Ne5 c5



c6 のポーンをただで取られるより、3ポーンピースのほうがチャンスがあると考え、エクスチェンジを捨てます。しかし、この後の羽生さんの指し方は実に正確でした。

23. Nd7 Qxd4 24. Rd1!


エクスチェンジを取るより先にルークをセンターに回すことで、f6 にクイーンを下がらせません。

24...Qb4 25. Nxb8 Rxb8 26. Rd7


基本通り、センターに回ったルークは7段目に突入します。

26...a5 27. h4 h5


27...g6 28. h5 ではキングの上がるマスを作った意味があまりなく、ジリ貧で負けてしまいます。

28. Be4!



ここでビショップも攻めに参加させます。次にBh7+ - Bg6!がスレットになっていることにようやく気がつき、f7 を守りにいきます。

28...Qe1+ 29. Kg2 Qa1 30. Bh7+! Kf8 31. Qd3


ビショップでキングをセンターにいぶり出した後は、クイーンでとどめを刺しにいきます。

31...Qe5 32. f4 Qf6 33. Qd6+ Ke8 34. Bg8! 1-0



最後はキュートな手で終わりました。観戦者には白熱した戦いに見えたかもしれませんが、正直なところ一方的な負けです。また腕を磨き直して再戦の機会を心待ちにします。

2012/04/02

百傑戦 Games and Analysis Vol.3

百傑戦の5Rは、8年ぶりに公式戦に戻ってきた外尾さんとの試合でした。私とは中学3年生のジュニアで対戦しています。直前には尚広君を破っているので、レイティングは900下ですが、全く安心できません。

Kojima, S - Hokao, K
Hyakketsu (5)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 d5 4. d4 c6 5. e3 Nbd7 6. Qc2 Bd6 7. Bd3



昨年の全日本では7.b3 を試してみましたが、今回はメインのAnti-Meran でいきます。黒では高校生の頃から何度も経験がありますが、白で指すのは実は初めてです。

7...O-O 8. O-O dxc4 9. Bxc4 e5


黒は早めに白マスビショップのアイアゴナルを開きにいきます。ただし白の白マスビショップの利きも通るようになるので、その点は気をつけなければいけません。

10. Rd1


センターにルークを回すこの手が自然だと考え、あまり時間をかけずに指しました。試合後に調べたところ、おそらく白が最もアドバンテージを取れるのは、10. h3 Qe7 11. Bb3! (...Nb6 を先にかわしておくことで、...e4 を防ぎます。)というセットアップでしょう。

10... Qe7 11. h3 e4!


センターを閉じ、ダイアゴナルの開いたダブルビショップで白のキングを狙います。

12. Nd2?!


おそらくこれが黒のチャンスを与える一つ目のミスだったと思います。12. Ng5 Nb6 13. Bb3 Bf5 14. f3 Nbd5 15. Ncxe4 Nxe4 16. Nxe4 Rae8= ならば、白に特に良いところはありませんが、本譜のような抑え込まれる展開は避けられたはずです。

12...Nb6 13. Bf1 Re8



恥ずかしながらここまで来て初めて、すでに白が間違いを犯していることに気がつきました。h2をダイレクトに狙う本譜のセットアップに対し、どう対抗するか考えなければいけません。

14. b3!? h5!?


私が黒で好みそうな手です(笑)Bb8(or Bc7)-Qd6 のメイト狙いに対し、白はg3 を突くしかないため、それを崩す準備となります。

15. Nc4 Nxc4 16. bxc4 Bb8 17. Bd2 h4 18. Be1 Qd6 19. g3


ビショップをe1 まで持っていき、g3 を守るのが14.b3 以降の私の構想でした。ダイレクトなメイトは防いでいますが、依然黒が流れを掴んでいます。

19...hxg3 20. fxg3 Qe6 21. Qg2 Nh7!



白のキングにさらにプレッシャーをかける好手です。20手目でこれを指していても良いと思います。

22. g4 f5 23. gxf5?


すでに時間切迫でしたが、それは言い訳にできません。ここがゲームのポイントだと分かっていながら、正解を選べませんでした。
23. g5! f4 24. exf4 Bxf4 25. h4 ならば、黒のeポーンが少し気味の悪い存在ですが、白としてはすぐに潰されません。

23... Qxf5 24. h4 Kh8?!


試合中、これは良い手だと感じましたが、(...g5 からルークをgファイルに回す狙い)黒にはもっと早くルークを活用する手がありました。
24... Re6! 25. Qf2 Rg6+ 26. Kh1 Qh5-+ ならばほぼ決まっています。

25. d5!?


次の25...g5 に対抗するためには、どこからか仕掛けなければいけないと考え、センターポーンを伸ばしました。e3,e5 が弱くなりますが、黒が間違えれば途端に白にチャンスが訪れます。

25...g5?


外尾さんの見落としは、g5 を突けば自身のキングも弱まることでした。焦らずに25...Be5!? ぐらいならば、黒がまだ指しやすいでしょう。

26. d6! +/=



黒マスビショップを閉じ込めることで攻めを緩和させ、Be1-Bc3 に対する黒のディフェンスを消します。

26...Bd7


26...gxh4? 27.Nxe4! では当然ダメです。

27. Ne2!? gxh4 28. Bc3+ Nf6 29. Qf2


コンピュータは29.Kh1 を推奨しますが、私はクイーンを交換してしまったほうが白にとって安全だと考えます。hファイルのパスポーンはさほど危険ではなく、必要に応じて回収に行けます。

29... Qxf2+ 30. Kxf2 Kg7



これで白の危機は去り、1ポーンアップでも黒マスビショップの閉じ込められた黒が、指しづらい展開となります。
30... Kh7 31. Nf4 Ng4+ 32. Ke2+/=

31. Nf4!


f4 はナイトにとって完璧なポジションです。

31...Kf7 32. c5 Ng4+ 33. Ke2 b6 34. Bh3! Nf6?!


すでに黒はかなり苦しいですが、この手は白の勝ちを早めてしまいます。34... Rg8 35. Rg1 bxc5 36. Rad1+/-

35. Bxd7 Nxd7 36. Rg1! Re5



36... Rg8 37. Rxg8 Kxg8 38. Rg1+ Kf8 39. Rg7 Nxc5 40. Re7+-

37. Bxe5 Nxe5 38. Rg5


白はエクスチェンジアップとなり、gファイルを起点にダブルルークを自由に使えます。すでに勝利は時間の問題です。

38...Kf6 39. Rag1 bxc5 40. Rg8 a5 41. Rh8 Bxd6 42. Rxa8 c4 43. Rh8 Nf7 44. Rxh4 c3 45. Rg6+ Ke7 46. Rh7 Bb4 47. Rxc6 1-0


2012/03/30

Chernin - Kojima Game Analysis


何名かから要望が届いたので、先日のChernin さんとのゲームを解説しようと思います。自分としてはポイントとなる局面でベストの手がさせたので、満足なゲームでした。

Chernin, A - Kojima, S
GM Chernin's Simul

1. d4 e6


最近はNizo-Inadian + QGD Ragozin の組みあわせにチャレンジしています。本譜のムーブオーダーにこだわる必要はないのですが、Trompowsky を外すのを一応の狙いとしています。もちろんFrencn にされても大丈夫なよう、用意もしています。

2. g3 Nf6 3. Bg2 d5 4. c4


Slav Defence からNimzo-Indian にレパートリーを変えた際、準備が必要になるのがCatalan 対策です。大学時代は私も白で指していましたが、黒で指すのも面白いと思います。Kramnik, Aronian, Gelfand らの研究により、Catalan もこの10年でだいぶ進化しました。

4...dxc4


百傑の最終ラウンド、羽生さんとの試合ではBb4+ - Bd6 を試して失敗に終わったので、(もちろん負けたのは定跡のせいではありませんが)違うラインを試してみることにします。日本ではQGD のように堅くセンターをキープしようとするプレーヤーが多いですが、私としてはどこかで、...dxc4 とポーンを取る変化のほうが、黒としては勝負にいきやすいと考えています。

5. Qa4+!?



白はすぐにポーンを取り返しにいきます。この変化はUlf Undersson いわく、黒にとって特に危険はありません。私のメインの準備は浜松で見せたように、5.Nf3 Bb4+ 6.Bd2 a5 でした。ちなみに5...a6!? も試してみたいと考えてます。

5...c6 6. Qxc4 b5!


早めに白マスビショップの道を閉ざしているCatalan では、黒はb7 にどこかでビショップを配置しにいきます。

7. Qc2


7.Bxc6+?! は直感的にあまり白が良くならないと判断しました。7...Nxc6 8.Qxc6+ Bd7 と進めば、黒は展開のアドバンテージを得たうえ、白の白マスの弱さを突くことができます。

7...Bb7 8. Nf3 Nbd7



このポジションはCatalan ではなく、Slav の一変化として研究していました。1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Qc2 (or 4.Qb3) 4...e6 5. g3 dxc4 6. Qxc4 b5 7. Qc2 Bb7 8. Bg2 Nbd7 という手順で同じポジションになります。

9. O-O c5!=


ビショップのダイアゴナルを早めに開きます。センターを捌いた後に白マスビショップを開いたり、c ファイルをオープンにするのは黒として望む展開です。

10. Bg5!?


f6 取りを見せることで、c5 のコントロールを弱め、c1 を将来的にルークのマスとして空けておきます。少し理解が難しい場合は、単純に黒マスビショップを他に展開する良いマスがないから、と考えてもOK です。

10...Rc8!


すぐにセンターを捌く手も考えましたが、ここはルークで裸のクイーンを狙いにいくほうが素直です。

11. Bxf6?!N



この手はすぐに意味が理解できませんでした。ルークをすでにc ファイルに回しているため、c5 のコントロールはサポートしてあるので、このタイミングでビショップとナイトを交換しにいくメリットが白にはありません。ビショップを諦めるのは、どこかで...h6 と突かれてからで良いと思います。

11...Nxf6 12. dxc5 Bxc5 13. Qb3 a6 14. Ne5 Bxg2 15. Kxg2 O-O


黒のダブルビショップを解消にいくのは自然な判断です。Ne5-Nd3 と組み直したナイトは強力だとCatalan では言われますが、それはc7 にポーンが残っており、d3 のナイトがc7-c5 を止めている場合の話です。この局面では黒マスビショップが白のナイトに働きで劣るということは、全くありません。

16. Nc3?!


この手は黒の優位を明らかにしてしまいます。16.a4 からクイーンサイドでアクションを起こすのが、白として正しい方針だと思います。

16...Bd4!



ビショップをキープすることよりも、ポーンストラクチャーを乱すほうが黒の優位がはっきりすると私は考えます!

17. Nf3 Bxc3 18. bxc3 Ne4!


早速、弱点であるc3 のポーンを狙いにいきます。f2 も狙っている点が18...Nd5 との違いです。

19. Rfc1?!


どこかでa4 を突くためにf ファイルのルークを回したのだと思いますが、代わりにキングの周辺が弱くなります。

19...Qb6! 20. e3 Qb7!-/+



この手で勝ちを引き寄せたことを確信しました。e3 にポーンを進めさせることでナイトを浮かせ、それを遠くからクイーンで狙います。ポーンの動きによって弱くなったマス、あるいは駒を狙うのは、基本でありつつ私の得意なプレーです。

21. Kg1


何らかの手でポーンを諦めるのは、仕方のない判断です。21. a4 Rfd8 22. axb5 Ng5-+, 21. c4 Nd2 22. Qd1 Nxc4 -/+

21...Rfd8!


試合後に、なぜ21...Nxg3 ですぐにポーン取らなかったのか尋ねられましたが、22...Nc5 がスレットになり、オープンファイルをルークで試合はするこちらの手が私のは魅力的に見えました。また21...Nxg3 22.hxg3 Qxf3 23.a4! の後、確実に黒勝ちかは試合中読めませんでした。

22. Qb2 Nxg3 23. hxg3 Qxf3 0-1



最後はRd5-Rh5 がスレットになっており、それを防ぐためにはc3 のポーンを諦めるしかありません。それにより絶望的なルークエンディングになるため、Chernin さんはここでリザインを決意しました。

2012/03/22

百傑戦 Games and Analysis Vol.2

後半の試合は長くなりそうなので、一試合ずつ記事にします。

Game4

Misaka, S - Kojima, S
Hyakketsu (4)

1. Nf3 d5 2. c4 e6 3. g3 Nf6 4. Bg2 Be7 5. b3 O-O 6. Bb2 b6 7. O-O Bb7 8. e3 c5 9. Qe2 Nc6 10. Nc3 Rc8 11. Rfd1 d4!?



初めてSlav set up を外したところ、メインのCatalan ではなく、b3 と組んできました。この形はGrandmaster Chess Strategy のゲームでいくつか見た記憶があります。白にd4 を突かれるとわずかに白が指しやすいと判断した私は、早めに仕掛けることにしました。

12. exd4 cxd4 13. Ne4?!


この手は変だと試合中読んでいました。一直線の変化で黒が指しやすい局面になります。白は代わりに13. Nb5 と指すべきだったでしょう。

13... d3! 14. Qe1 Nb4! 15. Nxf6+ Bxf6 16. Bxf6 Qxf6 17. Qe5 Qxe5 18. Nxe5 Bxg2 19. Kxg2 f6 20. Nf3 Rfd8=/+



d3 に突き刺さった黒のポーンは、白のピースの動きを制限し、明らかに黒にチャンスを与えています。

21. Ne1 e5 22. Rac1 e4 23. Kf1 Rc5!?


ここは23... Kf7 として、ゆっくりキングの位置を改善して行く手もあったと思います。本譜では黒は大胆に、キングサイドにルークを振りにいきます。

24. a3 Nc6 25. b4 Rh5 26. h4 Nd4 27. Ng2 g5! 28. c5



白はどこかでカウンターを作らなければ黒に押しつぶされてしまいますが、c ファイルのパスポーンは強力な武器にはなりません。しっかりとブロックし、反撃を潰します。

28...gxh4 29. Nxh4 Nc2!


c ファイルを閉ざし、パスポーンを作らせません。

30. cxb6 axb6 31. Kg1 Ra8 32. Ng2?



これは悪い手だと分かっていながら、なぜか正しい応手を指せませんでした。

32...Rxa3?


32... Nd4! (狙いは33...Ne2+ のナイトフォークと、メイト) 33. Nf4 Nf3+ 34. Kg2 Rh2+ 35. Kf1 Nxd2+!-+
35手目が読めずに先にa3 を取っておいたのですが、よく考えれば決めてのタクティクスを見つけられなくとも、7段目にルークは突入させておくべきでした。がっくり。

33. Ne3 Ra2 34. Nxc2 dxc2 35. Re1 Rd5 36. Rxe4 Rxd2 37. Kg2 Rd1 38. Re1 Rxe1 39. Rxe1 Rb2 40. Re8+ Kf7 41. Rc8 Ke6



結局、このようなルークエンディングになりました。黒はa3 でポーンを取った分、1ポーンアップしていますが、白のルークはパスポーンを止めるベストの位置にいます。ここから黒に正確に勝つプランがあるか、現時点でもよく分かっていません。

42. Kf3 Kd5 43. Ke3 f5


黒はどこかでc ポーンを諦めなければいけないので、早めに白のb ポーンと交換し、新たにできたb ファイルのパスポーンで勝負すべきだ、と試合後に三阪さんに指摘されました。確かにそう考えると、f-h ポーンを前進させたのは、黒としては正確ではなかったと言えます。

44. Rc7 h5 45. b5 Ke5


f ポーンを伸ばしていったのは、45... f4+!? からパスポーンを作る筋があるかと思ったからですが、46. gxf4 Ke6 47. Ke4 で、あまりうまくいきません。

46. f4+ Kd5 47. Rc6 Rxb5 48. Rxc2 Rb3+ 49. Kf2 Kd4!?



f-h ポーンを捨てて、b ポーンを前進させる手も当然考えましたが、ルーク vs 2コネクテッドにされた時におそらく勝てないと判断しました。 49... b5 50. Re2 b4 51. Re5+ Kc4 52. Rxf5 Rc3 53. Rxh5 b3 54. Rh1 b2 55. Rb1 Kb3 56. g4 Rc1 57. Rxb2+ Kxb2 58. Kf3 Kc3 59. Ke4=

50. Rc6 b5 51. Rf6 Ke4 52. Re6+ Kd3 53. Re5 Rb2+ 54. Kf3 b4 55. Rxf5 Rh2


結局f ポーンを守りきることはできないので、このようにh ポーンだけを守ってb ポーンを進めようとしましたが、白にもパスポーンができているこの形は、明らかにドローです。

56. Rb5 Kc4 57. Rb8 b3 58. f5 Rh1 59. Kf4 Kc3 60. Rc8+ Kd3 61. Rb8 Kc2 62. Rc8+ Kb1 63. f6 b2 64. Kg5 Ka2??



優勢だったルークエンディングが途端に負けになる、すさまじいブランダーが飛び出しました。勝ちを求めて試行錯誤するのは当然ですが、このようなミスは絶対にしてはいけません。64... Rf1=

65. Ra8+ Kb3 66. Rb8+?


三阪さんにもミスが出ました。白は勝ちを逃しています。
66. f7 Rf1 67. f8=Q Rxf8 68. Rxf8 b1=Q 69. Rb8++-

66... Kc2 67. Rc8+ Kd3 68. f7 Rf1 69. Rb8 Kc2 70. Rc8+ Kd3 71. Rb8 Kc2 1/2-1/2


ここで勝って四連勝を決めていれば、トーナメントもまた違った様相になっていたでしょう。反省です。

2012/03/19

百傑戦 Games and Analysis Vol.1


昨日、一昨日の記事で百傑戦での私の棋譜は全て公開してありますが、それに詳しい解説を付けていこうと思います。今夜は前半3試合から。

Game1

Kojima, S - Osawa, T
Hyakketsu (1)

1. Nf3 d5 2. d4 c6 3. c4 e6 4. Qc2!



黒が早めにc6-d5-e6 のトライアングルを築く形は、Dutch にも Semi-Slav にも変化させることができ、黒としては柔軟な変化だと考えられます。昨年の秋には、森内さんとVachier-Lagrave 対策として共に研究しました。そこ中で黒マスビショップをポーンストラクチャーの外に出す可能性を残す、4.Qc2! が白として面白いことを発見しました。

4...f5?!


4.e3 f5!? ならばOK だと思いますが、白が5.Bf4 と指せる状況では、黒マスを弱めることは得策だと言えません。私であれば4...Nf6 と指してCatalan か、QGD の変化にトランスポーズさせます。

5. Bf4! Nf6 6. e3 Be7 7. h3 O-O 8. Nc3 Ne4 9. Bd3 Nd7 10. g4!



このアイディアはウクライナのGM Ivanchuk のゲームで学びました。白にとってはクイーンサイドキャスリングも、センターにキングを残す選択肢も悪くないので、キングサイドは攻撃のために開きます。

10...g5?!


リスキーなアイディアです。黒は自身のキング周辺を弱め、白の攻撃を呼び込んでしまいます。

11. Be5 fxg4 12. hxg4!


hファイルを開くことに成功した白は、ピースを捨てて黒のキングへ一直線に攻撃を仕掛けます。

12...Rxf3 13. Nxe4 dxe4 14. Bxe4 Nxe5 15. dxe5 Rf7 16. Bxh7+ Kf8 17. Bg6 +-



すでに白の勝勢は揺るぎないものになっています。マテリアルだけを見れば黒がリードしていますが、キングが危険なこととクイーンサイドのピースが使えていないことを合わせれば、黒にとっては苦しい状況です。

17...Bb4+


17... Qa5+ 18. Ke2 Qxe5 19. Bxf7 Kxf7 20. Rh7+ Kf8 21. Rah1+- でもゲームオーバーです。

18. Ke2 Rg7 19. Rh8+ Rg8 20. Rah1 Qe7 21. R1h7 Qc5 22. Rf7+ 1-0

Game2

Uchida, N - Kojima, S
Hyakketsu (2)

1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nc3 Bb4 4. e5 c5 5. a3 Bxc3+ 6. bxc3 Ne7 7. Qg4 Qc7!?


French Defence Poisoned Pawn Variation! 実戦投入は実に9年ぶりとなります。

8. Qxg7 Rg8 9. Qxh7 cxd4 10. Ne2 Nbc6 11. f4 dxc3 12. Qd3 d4!?



通常、黒はc3 のポーンを捨てて戦いますが、私はd ポーンを捨てる流行ラインを研究してきました。Moskalenko のThe Wonderful Winawer にもサイドラインとして載っています。

13. Nxd4 Nxd4 14. Qxd4 Bd7! 15. Qf2 Qc6 16. Rg1 Nf5 17. g4!?


内田さんはこの一手と決めていたそうですが、クイーンでのチェックを許すのは、なかなか勇気のいる決断です。
17.Bd3-Rb1-Rb3-Rxc3 とポーンを取りにいくのが、白にとって安全なプランです。

17...Qe4+ 18. Qe2 Qa4 19. Be3?


長考の末、黒に流れを引き渡してしまう疑問手。黒のアタックを過小評価しています。

19...Nd4!



19...Nxe3 と比較すると、クイーンの位置を改善でき、f4,g1 を狙えるのでベターです。

20. Bxd4 Qxd4 21. Qf2 Qe4+ 22. Kd1 Ba4 23. Kc1 Rd8 24. Bd3 Rxd3!



このエクスチェンジサクリファイスは、読みよりも感覚で行いました。黒のパスポーンと白マスビショップは、完全に白のキングの行き場を奪い、ルークの働きを抑え込みます。

25. cxd3 Qxd3 26. g5 Rh8!


黒は当然、残ったルークを攻めに参加させます。

27. Re1 Rh3 28. Qe2 Re3! 0-1



綺麗なフィニッシュとなりました。バックランク とc2 の両方でメイトスレットがあるため、白はここで降参です。

Game3

Kojima, S - Gonda, G
Hyakketsu (3)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Na6!?



Slav Defence のサイドライン、研究をしたことはありましたが、実戦で目にするのは初めてです。

6. e4 Bg4 7. Bxc4 e6 8. Be3 Bb4!?


a6 にナイトを出した以上、b4 のマスにはナイトを置くのが自然だと思いましたが、この手もあるようです。展開は早まりますが、a6 のナイトを将来的にどうするか、考える必要があります。

9. O-O O-O 10. Qd3 Bxf3 11. gxf3 Qa5 12. Kh1 Qh5



黒はアグレッシブに指しているように見えますが、白のキングはさほど危険ではなく、むしろ開いたgファイルは白の攻撃の起点となります。

13. Qe2 c5 14. Rg1 h6


15.Rg5 を嫌う手ですが、キングの前が弱まります。そこで私はセンターを無視しても、シンプルにgファイルにルークを重ねるプランが強力だと考えました。

15. Rg3 Rad8 16. Nb5!



ここはc5 を取るよりも、d4 を守っておきます。c3 のナイトをもはや、e4 を守る仕事をしなくても良いので、Nb5-Nd4 と組み変えて使います。

16...cxd4 17. Bxd4 Rxd4?


このエクスチェンジサクリファイスは全くの予想外でした。黒には十分な代償がありません。

18. Nxd4 Bd6 19. Rg2 Be5 20. Nb5 Qh3 21. f4!?


21...Nh5-Nf4 が厄介なので、ポーンを返してf4 のマスをビショップで埋めてしまいます。三段目を開いて最後のピースを活用させるところも、この手のポイントです。

21...Bxf4 22. Ra3! Qh5 23. Qxh5 Nxh5 24. Nxa7 Nc5 25. Be2 Nf6 26. f3 Rd8 27. b4 Ncd7 28. a5



クイーンを交換した後は、特に恐れるような黒からの狙いはありません。丁寧にクイーンサイドでパスポーンを作れば勝利です。

28...Ra8 29. Nb5 Nb8 30. Nd4 Be5 31. Nb3 Ne8 32. Bf1 Bd6 33. Ra4 Nc6 34. b5 Ne7 35. Rd2 Kf8 36. a6 bxa6 37. bxa6 Ra7 38. Bb5 Bf4 39. Rd8 1-0


この日は試合内容も良かったのですが、翌日はひどいものでした・・・後半の3ゲームの記事は、おそらく2日後になります。

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