2013/01/31

My Schedule On February

今日で1月最終日となり、いよいよ私がハンガリーで過ごす最後の月(になるかもしれない)、2月を迎えます。2月は驚く程、チェスの試合とイベントを詰め込んだスケジュールとなっており、ほぼ毎日なにかしらのイベントがあります。

2/01 日本人学校でのチェス教室
2/02 First Saturday IM R1
2/03 Rest Day (予定)
2/04 First Saturday IM R2
2/05 First Saturday IM R3
2/06 First Saturday IM R4
2/07 First Saturday IM R5
2/08 First Saturday IM R6
2/09 First Saturday IM R7
2/10 First Saturday IM R8
2/11 First Saturday IM R9
2/12 First Saturday IM R10 (もし9R になれば、Rest Day がどこかで1日増えます。)
2/13 日本人学校でのチェス教室
2/14 CAISSA IM R1
2/15 CAISSA IM R2、日本人学校でのチェス教室
2/16 CAISSA IM R3
2/17 CAISSA IM R4、R5 (どこで1日2試合にするかは未定です。)
2/18 CAISSA IM R6
2/19 CAISSA IM R7
2/20 CAISSA IM R8
2/21 CAISSA IM R9
2/22 ブダペストからパリ、パリからダンケルクへ移動
2/23 Cappelle la Grande R1
2/24 Cappelle la Grande R2
2/25 Cappelle la Grande R3、R4
2/26 Cappelle la Grande R5
2/27 Cappelle la Grande R6
2/28 Cappelle la Grande R7

3/01 Cappelle la Grande R8
3/02 Cappelle la Grande R9
3/03 ダンケルクからブリュッセル、ブリュッセルからブダペストへ
(この時点で最後のノームを獲得していた場合、ブリュッセルに数日滞在した後、日本に帰国します。ダンケルクからの移動先が、ブリュッセルからパリに変更になる可能性もあります。)

2月は28日間で、合計26試合ですか(笑)さらに2月中にIM ノームが取れなければ、3月4日には次のFirst Saturday で試合をしています。これはちょっと無茶なスケジュールかもしれませんね...

本当はカペル前のCAISSA はキャンセルしたかったのですが、オーガナイザーがどうしてもということで、参加することになりました。ちなみにこちらも少し迷いましたが、FS ともにIM クラスでのエントリーです。是が非でもここで最後のIM ノームを獲得し、3月頭には日本に帰国したいと思います。

2013/01/29

CAISSA IM January 9th and 10th round - The First First -


1月のCAISSA は、昨日と今日、IM Farkas との連戦を2つとも制し、6勝2敗2ドローという好成績で無事に終えることができました。IM ノームの基準である8P には一歩及びませんでしたが、ハンガリーに来て初めての大会優勝です。今大会の戦績により、レイティングは+6 となり、今月頭の負け分を取り戻すことになりました。それでは最後の2試合をまとめてどうそ。

Farkas, T (IM, SRB, 2246) - Kojima, S (FM, JPN, 2349)
CAISSA IM January(9)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 c5 4. dxc5 Nc6 5. Nf3 Bg4 6. Bb5 Qa5+ 7. Nc3 e6 8. Be3 Nge7 9. a3 O-O-O 10. b4 Bxf3 11. gxf3 Qc7 12. Bxc6 Nxc6 13. Bf4 a6 14. Bg3 g5 15. Qe2 h5 16. h4 Bg7 17. hxg5?!



16手目までは、一昨年の全日本でのAmgalanbaatar 戦と全く同じ流れです。17手目で白からポーンを取ってきましたが、g5 のポーンにさほど働きはなく、逆に黒にhファイルのパスポーンを与えてしまうため、良い手ではないでしょう。

17... h4 18. Bf4 Bxe5 19. Bxe5 Nxe5 20. Rd1 h3!


パスポーンは突け!という格言に従い、hポーンを伸ばしていきます。白はこのパスポーンをブロックしていなければいけないという負担が増え、黒はルークを活用できるマスが増えます。

21. Kf1 Rh4!



h4-h3、Rh8-Rh3 からf3 のポーンを狙う手も考えましたが、ここは白のRd1-Rd4 を止め、f4 のマスを抑えるためにルークを4段目に運びます。あとはh2 までパスポーンを進めるかどうか、h1 のブロックをどう外すかが、黒の考えるべきポイントとなります。

22. Re1 Ng6 23. Qd2 h2 24. Ne2 e5!


ルークを4段目にあげた後に思い付いたのが、Qc7-Qd7-Qh3(or Qb5)というクイーンのマヌーバリングです。これにより不安定なf1 のキングを狙いつつ、h1 のルークのブロックを外しにいきます。e6-e5 は当然、h3-c8 のダイアゴナルを開く準備となります。

25. f4 Qd7 26. Qd3 Rh3 27. Qd1?



この手は素直すぎで、すぐに黒勝勢になります。正しくは27. c6! Qg4 28. Ng3 Nxf4 29. Qf5+ Qxf5 30. Nxf5 e4=/+ と指すべきで、クイーン交換をすれば白は生き延びることができます。

27... e4-+


狙いはRh3-Rd3 からh3 のマスを空けて、28... Qh3#

28. Ng3 Nxf4 29. Re3 d4! 30. Rxe4 Rxg3!



このタクティクスで決まりです。f4 のナイトを取られた場合は、Qd7-Qb5 が決定打となります。

31. fxg3 Qh3+ 32. Ke1 Qxg3+ 33. Kd2 Qg2+ 0-1


ここまで負け越していたFarkas に完勝で、3つ勝ち越しのトップタイに戻りました。続いて今日の最終戦へ。

Kojima, S (FM, JPN, 2349) - Farkas, T (IM, SRB, 2246)
CAISSA IM January(10)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. g3 Bg7 4. Bg2 O-O 5. O-O d6 6. d4 Nbd7 7. Nc3 a6 8. e4 c5!?



前回の対戦では6... c5 と早くcポーンを突くYugoslav Variation でしたが、今回はナイトの展開を絡めたうえで、c7-c5 からセンターを崩しに来ました。オーソドックスなe7-e5 に比べれば、このポジションを勉強したことはさほどありませんが、結局はSicilian ストラクチャーになるので、考え方に大きな問題はないでしょう。

9. h3 cxd4 10. Nxd4 Nc5 11. Be3 Bd7 12. Qd2 e5?!


この手は少し驚きました。黒マスビショップのダイアゴナルを閉じたうえに、d6 をバックワードポーンに、d5 をアウトポストにしてまで指す価値があるのかを考えましたが、少し考えた末に大した脅威ではないと結論付けました。

13. Nb3! Qe7?



前日に引き続き、Farkas の手にはキレがありません。2ピースルークになる変化をしっかりと読み切ったうえで、次の手を実行します。

14. Rfd1! Bc6 15. Qxd6 Qxd6 16. Rxd6 Ncxe4 17. Rxc6! Nxc3 18. Rxf6!


Farkas は試合後、この手を見落としていたと私に教えてくれましたが、アイディアとしてはさほど難しくないでしょう。彼ほどのベテランが、なぜこの読み合いを間違えたのかは疑問です。

18... Bxf6 19. bxc3+-



2ピースルークというマテリアルに加え、残ったクイーンサイドのポーンを狙う白のダブルビショップは、十分にゲームを終わらせるだけの力を持っています。

19... Rac8 20. Bc5! Rfd8 21. Bxb7 Rc7 22. Bxa6 Rd3 23. Bb6!?


c3 を守る堅実な手もありえると思いますが、相手のカウンタープレーは脅威ではないため、駒を消してでも早めに勝ちが明らかなポジションへと導こうとします。

23... Rc6 24. c5 Rxc3 25. Bb7 Rxb6 26. cxb6 Bd8 27. Rc1!



ルークを交換すれば、白の勝利は間近です。aポーンさえなければ、まだ黒は粘ってもよいと思いますが...

27... Rxc1+ 28. Nxc1 Bxb6 29. Nb3 Kf8 30. a4 Ke7 31. a5 Ba7 32. a6 Kd6 33. Na5 1-0


IM ノームを逃したことは残念ですが、こうして連勝でトーナメントを締めくくれたことには大きな喜びを感じています。4日後からすぐにスタートするFirst Saturday では、今度こそ最後のノームを獲得し、3月頭の帰国を目指すつもりです。私のハンガリー生活も、いよいよ終わりが近づいています!


手羽先のバタートマト煮込みには、今回大変お世話になりました。


よく通ったレストランでは、たまにはデザートも。安いティラミスですが、大変おいしかったです。


2013/01/27

CAISSA IM January 7th and 8th round - Long Fight -


久々にモールのアイス。思い切って一番高いやつを注文してみました。

大会8日目は再び午前の試合だったため、昨日今日の2試合はまとめて、結果とゲームをお伝えします。まずは、昨日のKiss Pal とのゲームから。勝利を求めて戦った結果、今年最長のゲームとなりました。

Kiss, P (IM, HUN, 2349) - Kojima, S (FM, JPN, 2349)
CAISSA IM January(7)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. e3!?



6月以来となるQueen's Gambit Semi-Tarrasch Variation です。得意のIQP ポジションを目指そうとしますが...

4... c5 5. a3 cxd4 6. exd4 Be7 7. Nc3 O-O 8. c5!?


このようにポーンを突き越すアイディアは知っていましたが、黒で指すのは初めてです。クイーンサイドでスペースを取られた黒が、どのように反撃するか、そして白マスビショップを活用するかがポイントとなります。

8... Ne4 9. Qc2 Nxc3!?



あまりStonewall は馴染みがないのですが、ここでは 9... f5 10. b4 Bf6 11. Bd3 Nc6 12. Ne2 と指すのがより一般的なようです。

10. Qxc3 Bf6 11. Bd3 Nc6 12. O-O a5!?


どうしても白のb2-b4 を嫌い、多少クイーンサイドで抵抗してみることにしました。この後はうまい具合にd4 にプレッシャーをかけるか、e6-e5 のブレイクで、白マスビショップが活用できるようになれば十分だと考えていましたが、少し目論見が甘かったことを直後に思い知ります。

13. Bf4 Nxd4 14. Nxd4 e5 15. Be3 a4!?



センターを開いてみたものの、黒はd5 にポーンが残るので、少し指しづらそうです。そして、白マスビショップが残るミドルゲームで(さらには将来的なエンドゲームで)、a4 のポーンは明確なターゲットとなりそうですが、どうしてもb2-b4 からクイーンサイドでパスポーンを作られるのが我慢できず、リスクを承知でポーンを進めてみることにしました。

16. Qb4


この手は少しラッキーだと感じました。黒からピース交換を促す狙いですが、あまり効果的だとは思いません。私が考えていたのは、Bd3-Be2-Bf3 というマヌーバリングと、Bd3-Bc2 からa4 を狙う手です。どちらでも白はやや優勢に試合を進められるでしょう。

16... exd4 17. Bxd4 Bd7!



黒のディフェンスのキーとなる一手です。e6 ではなく、c6 にビショップを配置することで、d5 だけでなくa4 にも守りを付けておきます。

18. Rfe1 Bc6 19. Re3 Bxd4 20. Qxd4 Re8 21. Rae1 Qd7


ここまで来ればだいぶ楽になりました。白のeファイルのコントロールはさほど脅威ではなく、ポジションはイコールに近いでしょう。ここから相手の時間切迫を利用して手を作りにいきますが、逆転して優勢を築くのは容易ではありません。

22. f3 g6 23. Kf2 Rac8 24. Rxe8+ Rxe8 25. Rxe8+ Qxe8 26. Qe3 Qf8



白マスにポーンが散った同色ビショップエンディングは明らかに不利なため、クイーンは当然盤上に残してプレーを続けます。ここからは長く、大きなミスに気を付ける我慢の展開が続きます。

27. Qd4 Qh6 28. Bc2 Qc1 29. Bd1 h5 30. h4 Kh7 31. Kg3 Qb1 32. Kh2 Qc1 33. Kg3 Qb1 34. Kh2 Qf5 35. Kg3 Qe6 36. Kf2 Qe7 37. Bc2 Bb5 38. Bd1 Kg8 39. g3 Qe6 40. g4!?


ここまでポジションの特徴に大きな変化はありませんでしたが、時間の増える40手目に白はキングサイドのポーンを伸ばしてきました。キングの守りが薄くなるので、何かつけ込む隙はないかと思いましたが、相手もミスはしてきません。

40... hxg4 41. fxg4 Qe7 42. g5 Bc4 43. Bg4 Bb3 44. Bf3 Qc7 45. Kg2 Qd7 46. Bg4 Qb5 47. h5!?



g5 が弱くなるので、まさか突いてこないだろうと思っていましたが、相手は果敢に指してきます。再びクイーンをキングサイドに戻し、ポーンをかすめ取るチャンスを伺いします。

47... gxh5 48. Bxh5 Qe8 49. Bf3! Qe7 50. g6!?


これはポーンタダ落ちなのではないかと思いましたが、相手の計算は私のだいぶ上をいっていた(もちろん、完璧に読み切っていたかは分かりませんが)ようです。

50... Qg5+ 51. Qg4 Qxg6 52. Kf2! Kf8 53. Qxg6 fxg6 54. Bg4=



白は一時的に1ポーンを捨ててクイーンを交換することに成功しました。この後、b7 のポーンは守ることができませんが、ビショップを端に追い詰めることで何かしらのチャンスを得られないかと工夫を凝らします。

54... Ke7 55. Bc8 Kd8 56. Bxb7 Kc7 57. Ba8 Bc4 58. Kf3 Bb5!?


一瞬、ビショップを交換すれば勝ちのポーンエンディングだと考えましたが、そんなことはありませんでした。また、ポーンを単純に突く手でも、黒は勝つことができません。58... d4 59. Ke4 d3 60. Ke3 g5 61. Bf3 Ba6 62. Kd4 Bb5 63. Ke3= 黒にはポジション改善の方法がありません!

59. Bxd5 Bc6 60. Ke4 g5 61. Bxc6 Kxc6 62. Kf5 Kxc5 63. Kxg5



この位置ならば、白キングは一手の差でディフェンスに間に合うので、このポーンエンディングはドローです。結果は分かり切っていますが、最後まで続けることにしました。

62... Kc4 64. Kf4 Kb3 65. Ke3 Kxb2 66. Kd2 Kxa3 67. Kc2 Ka2 68. Kc1 a3 69. Kc2 Ka1 70. Kc1 a2 71. Kc2 1/2-1/2


不思議なオープニングでしたが、色々と勉強になりました。ハンガリーに来て以来、同じ相手との3連続ドローは初めてかもしれませんね。また次にKiss Pal と対戦できる機会を楽しみにしています。続いて今日行われた、スロバキアのMolnar 少年とのゲームへ。

Kojima, S (FM, JPN, 2349) - Monlar, E (SVK, 1940)
CAISSA IM January(8)

1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 c6 5. e3 Nbd7 6. Qc2 Bd6 7. Bd3 dxc4 8. Bxc4 b5 9. Bd3 Bb7 10. O-O



ハンガリーではお馴染みのSemi-Slav Anti-Meran です。昨年頭から研究していますが、最近は勝率も良く、ようやく呑み込めてきたような気がします。このポジションでは本譜の代わりに10. Ne4!? も調べていましたが、以前と同様にノーマルにキャスリングすることにしました。

10... O-O 11. Rd1 Rc8!? 12. a3 a6?!


この手はやや不用意な一手です。c6-c5 が突ければ黒に不満はありませんが、当然白は次の手でそれを防ぎます。

13. b4! Qe7 14. Ng5!



タイミングこそ様々あれど、この1ポーンサクリファイスこそ、Bc4-Bd3 と退くラインの真骨頂だと私は考えています。最近になって良く指されていますが、少し古いゲームでは90年代にロシアのGM Zvagintsev が使っています。

14... Bxh2+


14... h6 15. Nge4 でも白はc5 のマスを抑えることで、アドバンテージがあると断言できます。

15. Kxh2 Ng4+ 16. Kg1 Qxg5 17. f3 Ngf6 18. e4 Qh4 19. Be3



さて、このラインでオーソドックスな形となりましたが、黒はQd8-Qe7-Qxg5 と1テンポをロスしており、その間に白は理想的な手(a3-b4-Rd1)をいくつも挟んでいます。1ポーンダウンながら、ダブルビショップと厚いセンターを持つ白に、十分な代償のあるポジションですが、次の黒のミスでゲームは一気に終幕へと向かいます。

19... g6? 20. Qd2!


黒マスの弱さを突いて黒クイーンを狙い、ゲームオーバーです。

20... Nh5 21. Bg5 Qg3 22. e5! Nxe5 23. dxe5 Qxe5 24. Ne4+-



クイーンを救うためにナイトを捨てざるを得なかった黒は、さらに白のピースの配置の良さに押され、もろくも崩れていきます。

24... f6 25. Bh6 Rfd8 26. Nc5 Rc7 27. Re1 Qd4+ 28. Qf2 Qxf2+ 29. Kxf2 Bc8 30. Rad1 e5 31. Bc4+ 1-0


Molnar 少年は、私を含めた3人のマスターに白でも黒でも負け、このクラスに挑むのは少し早かったようですね。明日からの2試合は、ここまで負け越しているセルビアの宿敵、IM Farkas との対戦です!


たまには外で食事しよう思ったところ、苦手のレバーを引きましたorz やはり自分で作るほうが安全か...

2013/01/26

CAISSA IM January 6th round - Perpetual Check Again! -


CAISSA の後半戦は、6月に試合なしでドローにしたIM Kiss Pal とのゲームでスタートです。序盤から構想が大成功し、土俵際まで追い詰めたはずでしたが、Bele Perenyi Memorial と同様のミスで、相手にドローチャンスを与えてしまいました...

Kojima, S (FM, JPN, 2349) - Kiss, P (IM, HUN, 2349)
CAISSA IM January(6)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5 6. e3 e6 7. Bxc4 Bb4 8. O-O O-O 9. Nh4!?



Anatoly Karpov いわく、白が唯一アドバンテージを取りにいける手とのことなので(1970年代の研究ですが)、再びこの手にトライです。

9... Nbd7 10. h3 a5 11. Nxf5 exf5 12. Qf3 Nb6


12. g6 13. g4!? がメインの研究筋だったので、リスクを承知のうえで、それを応用して指すことにします。

13. Bb3 Qd7 14. Bc2 g6 15. g4!?



白はキングを多少危険にさらしても、f5 のポーンを取り除いて、将来的に白マスビショップが働けるようにします。

15... Nfd5 16. gxf5!


ここはポーンアップよりも、e4 のマスを手に入れ、なるべくダブルビショップが生きる開いたポジションを目指します。

16... Nxc3 17. bxc3 Bxc3 18. Rb1 Nc4 19. Rd1! b5 20. d5!?



黒がクイーンサイドのポーンマジョリティを生かそうとするのに対し、白はセンターを開いて勝負です!20. e4 Bxd4 21. Be3 c5 22. Rxb5+/= もありえる選択肢でした。

20... Ne5?


e5 のマスを利用するのは自然なプランに思えますが、f2-f4 から追い返せる以上、e5 のナイトはc6 の守りになりません。20... b4 21. dxc6 Qe7 と指すのが正解だったでしょう。

21. Qg2! b4 22. f4 Nc4 23. dxc6 Qe8 24. fxg6 hxg6 25. Bb3!



白マスビショップが黒キングを狙う強力なダイアゴナルに戻り、勝負あったと思いました。これでかなり黒は苦しいのですが、まさかのここから詰めを誤ります。

25... Nxe3 26. Qxg6+ Kh8 27. Qh5+ Kg8 28. Qg5+ Kh8 29. Qh4+ Kg8 30. Qg3+ Kh8 31. Qh4+!?


ここまでクイーンを退いてきたので、このままe3 のナイトを取って勝てそうですが、万が一、黒からのカウンタープレーが成功した場合のリスクを考えました。もちろん本譜のように指してもOK ですが、実際には31. Qxe3 Qxc6 32. Qf2 Qg6+ 33. Kh2 Qxb1 34. Bc2+- こう進めば、白勝ちです。

31... Kg8 32. Qg5+ Kh8 33. Qh5+ Kg8 34. Rd3 Nf5 35. Qxf5??



まさかの今月2回目となるパペチュアルチェック読みぬけ...今回は持ち時間も30分近く残っており、言い訳は全くできません。35. Bb2! Qe4 36. Bxc3 bxc3 37. Rbd1 Ng7 38. Qg5+-

35... Qe1+ 36. Kg2 Qe2+ 37. Kg1


ここで37. Kg3 と逃げられるものだと完全に勘違いしていました。もちろんそれには、ビショップのチェックでメイトです。

37... Qe1+ 38. Kg2 1/2-1/2



昨日は完全に反省の一日でした。IM ノームは来月以降に持ち越しとなり、日本人初のIM 誕生はもう少し先になりそうです。とは言え試合はまだ続くので、残り4試合でなるべく勝って、ブダペストに戻ろうと思います。


今月はほぼ全て自炊です。こちらは骨付き鶏もも肉のトマト煮込み。

2013/01/24

CAISSA IM January 5th round - Weak King -

前日に引き続き、IM Meszaros との色を変えた2戦目です。ここまでの勢いを考えれば、ここも勝っておきたい相手でしたが...

Meszaros, A (IM, HUN, 2277) - Kojima, S (FM, JPN, 2349)
CAISSA IM January(5)

1. e4 c6 2. Nf3 d5 3. exd5 cxd5 4. c4 Nf6 5. cxd5 Nxd5 6. Bc4 Nc6 7. O-O e6 8. a3 Be7 9. Nc3 O-O 10. d4 Nxc3 11. bxc3 Qc7



少し変わった手順でしたが、Caro-Kann のIQP ポジションから、c3でナイトを交換した形となります。黒はキングサイドへのアタックに気を付けつつ、c3とa3のポーンを将来的に狙います。

12. Qd3 b6 13. Re1 Bb7 14. Bd2 Rac8 15. Ba2 Rfe8 16. Rad1 Bf6


もっと早い段階でNf3-Ng5 を仕掛けてくるかと思っていましたが、相手もなかなか慎重でした。次の手から駒交換が起こり、ポジションの特徴が多少変化します。

17. Ng5 Bxg5 18. Bxg5 Ne7



2010年のCappelle la Grande の初戦で、スウェーデンのGM Tikkanen と試合をした経験を生かします。黒はナイトをキングサイドのディフェンスに回し、センターとクイーンサイドで対抗します。

19. Bb1 Ng6 20. Bd2 Bd5!


黒の白マスビショップは白キングにプレッシャーをかけるだけでなく、c4 のマスを抑えることでクイーンサイドにも影響力を持ちます。

21. Rc1 Qc6 22. Qh3 f5!?



この手は少し前から構想にあったダブルエッジな手です。黒はキングを多少弱める代わり、b1-h7 のダイアゴナルとe4 のマスを抑え込みます。この試合でどうしても勝ちたかったので、Bb1-Bxg6 から異色ビショップにされるのを嫌ったのも、もう一つのアイディアでした。(もちろんその異色は、ビショップの働きの差から僅かに黒が良いですが)

23. Qg3 Nh8!? 24. h4 Nf7 25. h5 Qd6!


ここでクイーン交換とa3取りのダブルスレットを持ち出します。クイーンが消えれば、c3とa3 に弱点のある白がわずかに不利だと思っていましたが、ここからゲームは私が予想していなかった展開へと傾き始めます。

26. Bf4!? Qxa3 27. h6 g6 28. Qe3 Qf8?!



ポーンをかすめ取ったクイーンをキングのサポートに戻しましたが、白からはg7 へのメイトスレットをすぐに作れず、かと言ってh6 取りの狙いを作れるわけでもなかったので、この手は意味合いが薄かったように思えます。

29. Bd3! Nd6


29... Bc4 30. Bxc4 Rxc4 31. Ra1 Qe7 32. Ra6 と進めば、白はaポーンにプレッシャーを掛け続けることで、ポーンの代償を得られるでしょう。

30. Ba6! Rc6 31. Ra1 Ne4?



ここは残り時間が5分ほどだったと言え、お粗末なプランでした。黒のナイト飛び込みは何も働かず、a7 のポーンにプレッシャーをかけた白がチャンスを得ます。黒はクイーンかルークを7段目に運び、a7 を守っておくべきでした。

32. Rec1 Nd6 33. c4!+/-


私が読み落としていた非常に力強い一手です。ピースを捌いてでもa7 にルークを突入させることで、守りの薄い黒キングを一気に攻め立てます。

33... Nxc4 34. Bxc4 Bxc4 35. Rxa7 Re7 36. Rca1 Rc8 37. d5!+-



黒は以前1ポーンアップながら、黒マスが弱すぎることと、白のヘビーピースに自陣への侵入を許していることにより、キングの安全性を保てません。白はさらにクイーンを突入させることで勝負を決めます。

37... Bxd 38. Qxb6 e5 39. Rxe7 Qxe7 40. Ra7 Qe6 41. Rg7+ Kh8 42. Qxe6 Bxe6 43. Bxe5 Rc1+ 44. Kh2 Re1 45. Bf6 1-0


最後はクイーンを交換したものの、異色ビショップでメイトが受からない形となりました。27手目の時点ではさほど重要視していなかった、h6 に突き刺さったポーンにこれほど苦しめられるとは... それにしても最後の流れは鮮やかで、昨日の対戦相手とはまるで別人のようでした。


昨日は管理人の岡本くんの誕生日だったので、アンダンテに一時帰還。パプリカチキンをいただきました。


買ってきた誕生日ケーキ(?)

2013/01/23

CAISSA IM January 3rd and 4th round - Consecutive Victories -


今日は試合が午前中だったため、3,4R のゲームをまとめてお届けします。まずは白で敗れたKeresztes との試合から。IM ノームの基準である10R で8P を目指す以上、黒でも勝ちにいかなければいけません。

Keresztes, R (FM, HUN, 2242) - Kojima, S (FM, JPN, 2349)
CAISSA IM January(3)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. f3!?



勝ちにいくオープニングとして、Slav ではなくNimzo-Indian をチョイス。そして相手は、データになかったSamisch Variation です。これに対して、夏にIM Galyas に一度敗れているので、以前、吉村先輩と研究していた別のラインを試してみることにします。

4... O-O 5. a3 Bxc3+ 6. bxc3 Ne8!?


白のBc1-Bg5 を避け、伸ばしてくるセンターポーンにプレッシャーをかけにいきます。

7. Nh3 b6 8. e4 Ba6 9. Bd3 Nc6 10. Qe2 Na5 11. e5 Qh4+!



ここは試合中、少し悩んだところ。単純にcポーンを固定しにいこうとすると大失敗です。11... c5? 12. Bxh7+! Kxh7 13. Ng5+ Kg8 14. Qe4 f5 15. Qh4+-

12. Nf2 c5 13. g3 Qh5 14. Be3 Rc8 15. g4 Qh4 16. d5 f6!?


16... exd5 17. cxd5 Bxd3 18. Qxd3 Qe7 19. f4 f6 20. O-O fxe5 21. Rae1 コンピュータはe5 のポーンを取りにいく変化を示しますが、ポジションを開きすぎるとダブルビショップが生きる展開になりうるため、ここは少し違ったアイディアで勝負します。

17. dxe6 dxe6 18. O-O f5!



fファイルを開くと見せかけて閉じるのが、私が考えたアイディアです。f5 にポーンを残すことでe4 のマスを抑え、Nf2-Ne4 と白がナイトをアクティブに使うことを防ぎます。

19. gxf5 exf5


このポーンは間違いなく黒にとってありがたいものです。e6 のマスが空けば、Ne8-Nc7-Ne6 とナイトが理想的なブロッカーとなるうえ、6段目を使った攻撃が可能になります。

20. f4?? Bb7?



アイディアはOK ですが、緩手です。直感的に白の手がおかしいのは分かっていましたが、最もシンプルかつダイレクトなアタックが見えていませんでした。20... Rc6! 21. Nh1 Rg6+ 22. Ng3 Rxg3+ 23. hxg3 Qxg3+ 24. Qg2 Qxe3+-+ ルークを6段目で振るだけで、あっという間の決着でした。

21. Nh1 Rc6 22. Qe1?


最後もあまりにお粗末なミス。クイーンをぶつけるマスが違っていれば、黒やや良しながらも、試合はまだまだ続きます。22. Qf2 Rg6+ 23. Ng3 Nc7=/+

22... Rg6+ 23. Ng3 Qh3 0-1



次のh7-h5-h4 からのナイト取りのスレットが受からず、白はリザイン。最後はあっけなかったですが、Nimzo-Indian を指してアンバランスなポジションを作る作戦が成功した結果とも言えるでしょう。続いて今日の試合へ。

Kojima, S (FM, JPN, 2349) - Meszaros, A (IM, HUN, 2277)
CAISSA IM January(4)

1. Nf3 Nf6 2. c4 Nc6!? 3. d4 e6



黒で研究して指したことはありましたが、白では初めてとなるTango です。もともとの準備としては4. g3 からBogo-Indian にするつもりでしたが、ハンガリーのマスターの多くはBogo-Indian を好んで指すため、私のあまり知らない領域になるのを嫌い、別のラインを指すことにします。

4. a3!? d5


私が以前研究したラインでは、黒は4... g6 から少し変わったKing's Indian にするのがメインです。黒はe7-e6-e5 とポーンを突き直しますが、白もa2-a3 が生きるのかが疑問ということで成立するラインです。これに対しては私もFianchetto するつもりでした。

5. Nc3 Be7 6. Bf4 O-O 7. e3 a6 8. Rc1 Re8 9. h3 h6 10. Qc2 dxc4



Queen's Gambit Rubinstein Variation の応用で(8年ほど前に三阪さんから教わりました。)、白は極力、Bf1-Bd3 を遅らせ、黒からdxc4 と取ってくるのを待ちます。ここまでは私にとって満足な流れで、黒がセンターを交換して来なければ、別のプランを採用するつもりでした。10... Bd6 11. Bxd6 Qxd6 12. cxd5 exd5 13. Bd3+/=

11. Bxc4 b5 12. Nxb5!?


7... a6 を見た時点では、12. Bd3 Bb7 13. Ne4+/= (黒はc5 のマスが弱点)で白良しだろうと予想を立てていましたが、実際に指された直後に、私の耳元で、このポーンを取ってしまえと悪魔が囁きました(笑)

12... axb5 13. Bxb5 Nb4?



分かりやすい駒損にするのは、黒としては面白くないでしょう。13... Na7 14. Bxc7 Qd5 15. Bxe8 Nxe8 16. Bb6 Ba6! ならば、3ポーン2ピースルークという珍しい駒割ですが、ダブルビショップを持って相手のキャスリングを妨害している黒に、十分なチャンスがありそうです。

14. axb4 Bxb4+ 15. Nd2 c6!?


普通に指しても勝負にならないため、ここはさらにポーンとエクスチェンジを捨てて、白マスビショップを生かすアイディアです。これに対して、安全にビショップを退く選択肢もありそうですが、敢えてここは相手の誘いに乗ることにします。

16. Bxc6 Ba6 17. Bxa8 Qxa8 18. f3! Nd5 19. Kf2 e5!?



単純にビショップを貰ってからd4 を取りに行く程度では、黒の攻撃は不十分だと考えたのでしょう。しかし、これも受け切れることが可能です。

20. Bxe5 f6 21. Bg3 Rxe3 22. Nc4 Qe8?! 23. Rhd1


次のアイディアは見えていたのですが、ナイトを取りにいくピースを勘違いしていたため、先にルークを回す次善手を指してしまいました。23. Be5! fxe5 24. Nxe3 Nxe3 25. Qb3+!(不思議なことに、他の様々なラインで読んでいたこの手を、Bg3-Be5! からのエクスチェンジ取りのラインでだけ、読み落としていました。) 25... Kh8 26. Qxe3-+

23... Bb5 24. Be5!



ここでいよいよ、鬼のエクスチェンジ取りスレットを敢行します!e3 のルークはどこにも逃げられず、これで白の勝利が決まります。

24... Ba4


24... fxe5 25. Nxe3 Nxe3 26. Qb3++- 先程示したラインとほぼ同様に、ビショップを取る手はさらにエクスチェンジを失う結果となります。

25. Qf5 g6


25... Bd7 26. Qb1+-

26. Nxe3!



ここでクイーンを捨て、シンプルなポジションにすることでゲームを収束へと向かわせます。

26... gxf5 27. Nxd5 Qb5 28. Nxf6+ Kf7 29. Rc7+ Kg6 30. Nd5!


メイトスレットがあるため、ナイトもルークも取ることができません!(自信のない方は、盤で並べて考えてみてください) このナイト退きからf4 を目指すことで、いよいよ黒キングを追い詰めます。

30... h5 31. Rg7+ Kh6 32. Ne3 h4 33. Nxf5+ Kh5 34. g4+ hxg3+ 35. Nxg3+ Kh6 36. Nf5+ Kh5 37. Rdg1



黒キングは完全に白のピースに包囲され、ゲームオーバー。残りは無駄なあがきです。

37... Be1+ 38. Rxe1 Qxb2+ 39. Re2 Qb1 40. Re4 1-0


2200台に連勝で、初戦の負け分は取り戻しました。明日はMolnar とMeszaros との1日2試合になりそうなので、そこをもし2試合とも勝てれば、残りの4試合でどう6つ勝ち越しを決めるか、真剣に考える段階に入ります。


午前中の試合を終え、雪残るケチケメートから一度ブダペストに戻ります。


列車までの時間がなかったので、お昼は簡単に。こういったチョコのパンが好きです。

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