2017/06/20

The Highest Level Training in Japan on 19th June 2017


昨日の月曜日は羽生さんとのトレーニングでした。4月には青嶋くんを交えて3人の形式も試していますが、今回はそれ以前の2人形式に戻っています。この日は先に私が白を持ち、久々の1. e4 を試してみることにします。

Kojima, S (IM, JPN, 2401) - Habu, Y (FM, JPN, 2399)
Training (1)

1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nc3 Nf6 4. e5 Nfd7 5. f4 c5 6. Nf3 Nc6 7. Be3 a6 8. Qd2 b5 9. a3 g5!?



French Defence は予想の範囲内でしたが、ここでg7-g5 と突く珍しい変化は予想外です。黒はキングサイドを崩しても、白のセンターポーンを壊してアンバランスなポジションを目指します。

10. fxg5


私にとっては自然なリアクションです。1ポーンを取っても、黒マスビショップを失う10. Nxg5!? cxd4 11. Bxd4 Nxd4 12. Qxd4 Bc5 という流れは、好みではありません。

10... cxd4 11. Nxd4 Ncxe5 12. Be2 Be7!?



この手は見たことのないもので、試合中不思議に感じました。e5 のポーンを崩したのであれば、12... Bg7 と組んでh8-a1 のダイアゴナルを抑え、キャスリングした際のディフェンスとしてビショップを使うほうが自然なのではないかと思います。

13. O-O O-O 14. Rae1 Bb7 15. Bh5!


Kg1-Kh1 を入れておくかどうか迷いましたが、遅かれ早かれこの1手は指すつもりでした。fファイルが開いた以上、f7 を狙うのは自然な流れです。気になるのは当然c4 のマスの守りですが、ここはある程度読んで大丈夫だと判断しました。

15... Nc4?!


本譜の流れを見る限りこの手は機能せず、検討では15... Rc8 などとゆっくり準備をするのが良いのではないかという意見が出ました。ナイトが5段目の弱いマスに侵入する手は良さそうに見えますが、白のアタックをやや軽視しています。

16. Qf2 Nde5 17. Bf4! Ng6 18. Bxg6! hxg6 19. Nxe6!



羽生さんが見落としていたのはこの手で、白はピースを捨てても十分な代償を得られます。もう1つの候補はQf2-Qh4 ですが、これにはBe7-Bc5 の返し技があり、キングをh1 に寄せておかなかったことを白は後悔しそうです。

19... fxe6 20. Rxe6 Qd7


ここは様々な手があり、黒は選択に頭を悩ませます。20... Rf5 21. Rxg6+ Kf7 22. Rh6! Bxg5 23. Bxg5 Rxf2 24. Rxf2+ Kg7 25. Bxd8 Kxh6 26. Bb6+-, 20... Qe8 21. Rfe1! Rf7 22. Rxg6+ Rg7 23. Rxg7+ Kxg7 24. Qd4+ Kg6 25. Re6+ Kf7 26. Nxd5 Kxe6 27. Nc7++-, 20... d4 21. Qe2! Bf6 22. Rxf6 Rxf6 23. gxf6 dxc3 24. Qe6+ Kh8 25. Qh3+ Kg8 26. f7++- どの変化も難しいですが、白は駒取りかえすか決定的なアタックを仕掛けて勝ちとなります。

21. Rxg6+ Kf7 22. Rh6 Ke8 23. Re1 Kd8 24. Rh7?



あと一歩で白の勝勢がはっきりするという状況で、ひどいミスをしてしまいました。残り時間は3分半、最も自然に見える手を選んだつもりでしたが、黒の反撃を見通しています。代わりに24. Rhe6! Bd6 25. Rxd6! Nxd6 26. Qb6+ Qc7 27. Qxd6+ Qxd6 28. Bxd6 Re8 29. Rd1+- と進め、3ポーンエクスチェンジのマテリアルにすれば、黒には白のパスポーンを止めるすべがなく、白の分かりやすい勝ちでした。

24... Rxf4!


このディフェンスの1手を見ていなかったのは、深く反省すべきです。これでも白は駒を取りかえせますが、上記の変化に比べて形勢判断はとても難しいポジションになります。

25. Rh8+ Kc7!



25... Rf8 26. Rxf8+ Bxf8 27. Qxf8+ Kc7 28. Qc5+ Kd8 29. g6 Qd6 30. Qxd6+ Nxd6 31. h4+/- ならば、白はまだピースを捨てた状態ですが、黒は白の2コネクテッドパスポーンを止めるのが難しそうです。

26. Qxf4+ Bd6 27. Qd4 Rxh8 28. Qxh8 d4?!


2ビショップをキープしたまま、黒はキングを逃がした窮地を脱しました。ところが、これでもまだ白のgポーンをストップしながらカウンタープレーを作らなければいけないという課題が残ります。d5-d4 から白マスビショップのラインを開くのは良さそうなアイディアに見えますが、白ナイトにe4 の好位置を与えてしまうことになります。まずは28... Qg4! と指してg5 を狙いつつ、d5-d4 のチャンスを伺えば形勢不明でした。

29. Ne4 Ne3?



ディフェンスしなければいけないこちらはひやひやですが、黒マスビショップを消させてくれるのはありがたいと感じました。29... Bxe4 30. Rxe4 Qf5 31. Qg7+ Kc6 32. Re1 ならば、まだどちらも指せる状況です。

30. Nxd6 Qxd6 31. Qh7+ Kb8 32. g6


こうしてパスポーンが6段目に到達できれば、いよいよプロモーションが現実味を帯び、勝ちが近づいてきます。しかしまだまだミスがお互いに出ます。

32... Qd5 33. Re2?



33. Qh3! Qg5 34. Qg3+! ならば、黒の反撃はこれ以上なく、完全に白の勝勢でした。

33... Qe4?


読み切るのは少し難しいですが、ここはパペチュアルチェックのチャンスでした。33... d3! 34. cxd3 Qxd3 35. Qh8+ Ka7 36. Kf2 Nd1+ 37. Ke1 Ne3 38. g7 Nxg2+ 39. Rxg2 Bxg2 40. g8=Q Qe3+ 41. Kd1 Bf3+ 42. Kc2 Be4+ 43. Kd1 Bf3+= と進み、白はクイーンを作ったにもかかわらず、キングがチェックから逃げきれずにドローとなります。

34. Qh8+ Ka7 35. g7 Qf4 36. Qf8 1-0



難解なポジションが続き、お互いに反撃やディフェンスにミスが出ましたが、それでも通して振り返ると面白いゲームだったと思います。それにしても最後までハラハラしました(笑)


お昼は近くで和風パスタを頂きました。食事の席での話題はいつも通り多岐にわたりましたが、囲碁界とAI の話は個人的に興味深かったです。そしていつも通り、チェスや囲碁など、他の業界の最新情報にも詳しい羽生さんに驚きです。


Habu, Y (FM, JPN, 2399) - Kojima, S (IM, JPN, 2401)
Training (2)
Position After 29... Kf8

午後のゲームは簡単にエンドゲームだけを振り返ろうと思います。イコールで全てのポーンが同じファイルにいるため、順当にいけばドローになりそうですが、白キングのみセンターに出てこられないため、どちらかと言えば黒が指しやすく、続けるべきだと考えました。

30. f4?


この手ははっきり悪く、黒に狙われる弱点を作ってしまいます。検討ではh4-h5 を白から突くべきだという意見も出ましたが、コンピュータはもっと明快なドローの筋を示します。30. Bc5+! Bxc5 31. dxc5 b4 32. Ba4 Ke7 33. Kg2= 私たちは2人とも、黒マスビショップを交換してイコールであることに、試合後も気づいていませんでした。c5 のポーンは落ちると思い込んでいましたが、Bd1-Ba4 からa4-e8 のラインを抑えてしまえば、黒キングはポーンに近づけないのですね。勉強になります。

30... Be1! 31. Bc5+ Ke8 32. Kg2 h5!



このタイミングであれば、g3、h4 をターゲットとして固定しておく効果が分かりやすく、白は自分からh4-h5 を突かなかったことを後悔します。これで白キングはg3 の守りに縛られることになり、黒キングのみがポジションを自由に改善するチャンスとなります。

33. Bc2 Kd7 34. e4


このポーン突きはどこかでブレイクしないとジリ貧である白にとって当然かもしれませんが、私は白マスビショップの交換から有利なエンドゲームを迎えられると感じました。白ポーンを黒マスにすべて固定し、黒マスビショップだけを残せば黒に勝ちのチャンスがある、その判断自体は間違いではないのですが...

34... dxe4 35. Bxe4 Bd5?



ここはビショップ交換を焦りすぎました。本譜の流れを見ると、黒はg3、d4 だけがターゲットでは不十分で、白のbポーンも黒マスに固定しておく必要があることが分かります。そのため、黒はbポーンをb3 まで刺してから白マスビショップを交換するのが正解でした。35... b4 36. Kh2 b3 37. Bf3 Bd2 38. Ba3 Kc7 39. Kh3 (39. Kg2 Bd5 40. Bxd5 exd5 41. Kf3 Kc6 42. Ke2 Bc1 43. Kd3 Kd7 44. Ke2 Ke6 45. Kf2 Kf5 46. Kf3 f6-+) 39... Kb6 40. Bd1 Kc6 41. Bf3+ Kb5 42. Kh2 Be3 43. Bc5 Bd3-+ これでc4 のマスにキングを侵入させれば、d4 のポーンが落ちて黒の勝ちでした。

36. Bxd5 exd5 37. Kf3 Ke6 38. b3 Kf5 39. Bd6 Bc3


ここまで進めてみましたが、黒には決定打がありません。b2-b3 を許してしまったことで、c4 のマスを使えないことが上記の変化との違いです。

40. Bc5 Ke6 41. Ba7 Kd7 42. Bc5 Be1 43. Bf8 Bd2 44. Bc5 Kc6 45. Be7 f5 1/2-1/2



こうなってしまってはドローは仕方がありません。またビショップのエンドゲームは試合でも、本でも勉強しなおしてこようと思います。また次のトレーニングの機会も楽しみにしています。羽生さん、いつもありがとうございます!

2017/06/11

Saturday Lecture on 24th June 2017


Botvinnik, M - Yudovich, M
URS-ch08 1933
White to Play

【日時】 2017年6月24日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Combination of Positional Play and Tactical Play
【テーマ詳細】

チェスは99% がタクティクスだという名言がありますが、私はそれは少し違うと思っています。勝負の決定打はタクティクスであることも多いですが、そのタクティクスが成功するポジションに到達するためには、丁寧なポジショナルプレーが隠されているものです。目の行ってしまいがちな派手なタクティクスだけでなく、それを導くポジショナルプレーにスポットを当て、ゲームをご紹介させていただきます。

【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

2017/06/02

CHESS STRATEGY FOR CLUB PLAYERS


先日の名古屋の大会で、優勝の副賞としていただいた2冊の本のうちの1冊がこちらです。オランダのIM Herman Grooten 著のCHESS STRATEGY FOR CLUB PLAYERS The Road to Positional Advantage は、2009年に1st Edition、今年の頭に3rd Edition が出版されています。Material Advantage、Passed Pawn、The open file などのテーマに各章で分かれ、丁寧に解説が書かれている良書です。自分の勉強とレッスンとどちらにも使いやすく、早くも重宝しています。

この本を読んでいて嬉しかったのは、さほど有名ではなくとも、非常に勉強になると個人的に注目していたゲームが取り上げられていることです。古典の名局としてよく取り上げられる棋譜ならばともかく、よくこれを見つけてきたな、といった感じです(笑)

Fischer, Robert James - Gadia, Olicio
Mar del Plata 1960 (3)

1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 a6 6. Bc4 e6 7. Bb3 b5 8. O-O Bb7 9. f4 Nc6 10. Nxc6 Bxc6 11. f5 e5 12. Qd3 Be7 13. Bg5 Qb6+ 14. Kh1 O-O 15. Bxf6 Bxf6 16. Bd5 Rac8 17. Bxc6 Rxc6 18. Rad1 Rfc8 19. Nd5 Qd8 20. c3 Be7

21. Ra1! f6 22. a4 Rb8?? 23. Nxe7+ Qxe7 24. Qd5+ 1-0


まだ半分ほどざっと目を通しただけですので、私の知らない面白いゲームもこれから出てくると思います。それを楽しみにして、今後も読み進めてみようと思います。素晴らしい本を賞品として用意してくださった名古屋チェスクラブの堀江さんには、とても感謝しています!

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