マン島で有名なものは何かと聞かれれば、真っ先に出てくるのが世界でも最も過酷なバイクレースです。100年以上の伝統を持つTTレースは、マン島全体を使ったバイクのレースで、今回の大会開催地のダグラス付近もコースに含まれています。そのためダグラスのお土産屋さんにも、タオルやポスター、本、カードなど、TTレース関連のお土産グッズが豊富に揃えられています。上の写真はエナジードリンク、モンスターとのコラボですね。
さて、マン島のトーナメントも終わりが見えてきました。7R はドイツのGM Schroeder に白を持ちます。2R で対戦したDonchenko と同じ1998年生まれ。昨年GM のタイトルを獲得し、これからドイツでのランキングもどんどん上げていくであろう、有望株との対戦です。
Kojima, S (IM, JPN, 2399) - Schroeder, J (GM, GER, 2514)
Chess.com Isle of Man International (7)
1. Nf3 d5 2. d4 Bf5!?
初手を
1. Nf3 から始める場合、Baltic Defence はなかなか嫌なオープニングです。GM のゲームもいろいろと見ていますが、これといった対策はまだ立っていません。ひとまず、オーソドックスなQGD のように組んでいきます。
3. c4 e6 4. Nc3 Nf6 5. Bg5 c6 6. e3 Nbd7 7. Bd3 dxc4!?
7... Bxd3 8. Qxd3 と進んだ場合、白マスビショップを交換して白にアドバンテージがあるかは確信が持てませんが、ゆっくりと安全に試合を進めていくつもりでした。 本譜の手は少し意外で、Classical Slav のような駒の配置になります。
8. Bxc4 h6 9. Bh4 Qb6 10. Qe2 g5 11. Bg3 Nh5 12. e4 Nxg3 13. hxg3 Bg4 14. d5!?
この手はc5, e5 のマスを作るというリスクもはらみますが、ダブルビショップを失った分はピースの早い展開と、e6 をアタックすることで補おうと思いました。
14... Ne5! 15. dxe6 fxe6 16. O-O-O Bg7!
f2 のポーンが落ちそうな16. 0-0-0 は自分としてはよく読み、思い切って指したつもりでしたが、あっさりとかわされてしまいます。
16... Nxc4 17. Qxc4 Qxf2? (17... Qc5!? 18. Qb3=) 18. Ne5! Qxg3 19. Qd4! Rh7 20. Rd3 Qf4+ 21. Kb1+- ならば、次に
g2-g3 と仕掛けてビショップを取り、白の勝ちです。本譜では黒はf8 を空けているため、ピンにされたf3 のナイトに3つ目のピースがアタックしてくることを予想し、白は手を見つけなければいけません。
17. Bb3 O-O 18. Na4 Qb5!
Nc3-Na4-Nc5 からe6 をアタックするプランを見つけ、これで大丈夫かと思いましたが、シンプルにクイーンをぶつけてくる手を見落としていました。b5 で交換すれば、b5 にきたポーンがナイトをアタックしているのが白にとっては痛手になります。
18... Qb4 19. Qd2 Qxd2+ 20. Rxd2 Nxf3 21. gxf3 Bxf3 22. Re1 b6 23. Bxe6+ Kh8=+ ならばダブルビショップで黒優勢の評価が出ますが、まだまだ勝負は分からないでしょう。
19. Qc2 Nxf3 20. gxf3 Rxf3!
ここはe6 を守っておくために白マスビショップはg4 に残し、安全にルークでポーンを取るのが正解です。
20... Bxf3 21. Nc5! Bxd1 (21... Bxh1 22. Rxh1 Rf3 23. Nxe6 Rxb3 24. axb3=) 22. Rxd1 Rfd8 23. Rh1!? (23. Nxe6 Rxd1+ 24. Qxd1 Kh8 25. f4! これならば白は2コネクテッドパスポーンを作り、形勢不明です。)
23... Kh8 24. Nxe6 このように進んでも、白は黒のキングを脅かし、十分にエクスチェンジの代償を取れていそうです。
21. Rd2 Qe5 22. Nc5! Rf7 23. Re1 Re8 24. f4!
この手を見つけたことで、e6 にも
f4-f5 からプレッシャーをかけるチャンスができて、私が望むような流れになってきました。この後はもう少し慎重にいかなければいけなかったのですが、時間切迫から焦って自滅してしまい、とても後悔しています。
24... gxf4 25. Nd3! Qc7 26. gxf4 h5! 27. Rf2 Rd8 28. f5?
残り時間数分で、はやくポーンでe6 への攻撃を仕掛けるべきか、もっと準備するべきかで判断できませんでした。
f4-f5 に対してクイーンが侵入してくることは分かっていましたが、それは大丈夫だと勘違いしてこのタイミングで仕掛けましたが、振り返れば明らかに時期尚早でした。
28. Nc5! Re8 (28... Rxf4 29. Bxe6+ Kh8 30. Bxg4 Rxg4 31. Rh1=) 29. Nd3 Bh6 30. Ref1 Ref8 31. Qc3! (私がゲーム中に読んでいた
31. Qd2? c5! は白ダメです。)
31... Bxf4+? 32. Nxf4 Rxf4 33. Bxe6+ Bxe6 34. Rxf4 Rxf4 35. Qg3+ Kh7 36. Rxf4+/- このようなタクティクスがあり、f4 を取ることができないと読めていれば、迷わずナイトをc5 に戻していたでしょう。時間がなかっただけでなく、読む力が不足していました。
28... Qg3!-+
この手は指されてみて初めて、自分の予想よりもはるかに強力であることが分かりました。黒のダブルビショップパワフルで、白が十分に対抗する方法はありません。
29. fxe6 Re7 30. Nc5 Bh6+ 31. Kb1 Rd2!
この鮮やかなタクティクスでエクスチェンジが落ち、ゲームオーバーです。
32. Rxd2 Qxe1+ 33. Rd1 Qxd1+ 34. Qxd1 Bxd1 35. Bxd1 h4 36. Bg4 Rg7 37. Nd7 Bg5 38. Bf5 Be7 39. Ne5 Rg1+ 40. Kc2 Kg7 0-1
1ポーンを捨てた代償は多少ありそうなポジションにできたものの、途中の判断で時間を使いすぎ、大事なところで焦るという悪い流れでした。しかし、当たり前ですがGM は強いですね。これで再び勝ち越しなしに戻り、残りの2試合を迎えます。
Kojima, S (IM, JPN, 2399) - Dahl, B (ENG, 1921)
1-0
Donchenko, A (GM, GER, 2581) - Kojima, S (IM, JPN, 2399)
1/2-1/2
Kojima, S (IM, JPN, 2399) - Lalith Babu M R (GM, IND, 2586)
1/2-1/2
Sunilduth Lyna, N (GM, IND, 2536) - Kojima, S (IM, JPN, 2399) 1-0
Kojima, S (IM, JPN, 2399) - Tirziman R (IRL, 1923)
1-0
Shyam S (GM, IND, 2552) - Kojima, S (IM, JPN, 2399)
1/2-1/2
Kojima, S (IM, JPN, 2399) - Schroeder, J (GM, GER, 2514) 0-1
Wang Hao (GM, CHN, 2701) - Kojima, S (IM, JPN, 2399)
そしてこのタイミングで中国のGM Wang Hao との対戦です! 今大会の対戦相手で一番レイティングの高い相手と、この指しわけ状態で当たるとは全く予想していませんでした。今大会は彼も絶不調ですので、なんとかポイントをもぎ取ってきたいと思います。