遅くなりましたが、ラスベガス4日目の記事です。私は1勝1ドローを3日間繰り返し、迎えた4日目でようやく格上のプレーヤーにヒットしました。Joshua Friedel はアメリカのGM で、5年前のNorth American Open にも参加していました。Friedel とのゲームはビショップvs. ナイトのエンドゲームで、劣勢の中で1つベストの手を逃がした後は、粘ったつもりでしたが敗れてしまいました。そして続く、Li Zhaozhi とのゲームも、奇しくもビショップvs. ナイトのエンドゲームとなります!
Li, Z (FM, JPN, 2313) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)
North American Open 2016 (8)
1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 dxc4 5. a4 e6 6. e3 c5 7. Bxc4 Nc6 8. O-O cxd4 9. Nxd4 Bd7 10. Qe2 Qb8 11. Nxc6 Bxc6 12. e4 Bd6 13. f4 e5 14. f5 h6 15. Rd1 a6 16. Nd5 Bxd5 17. Bxd5 Bc5+ 18. Be3 Bxe3+ 19. Qxe3 O-O 20. Rac1 Rd8 21. Qb6 Rd7 22. Bb3 Qd8 23. Qxd8+ Raxd8 24. Rxd7 Rxd7 25. Rc8+ Kh7 26. Rf8 Nxe4 27. Rxf7 Rxf7 28. Bxf7 Nd6 29. Be6 g6
North American Open 2016 (8)
この試合はここから解説をスタートしようと思います。黒は序盤を乗り切り、ドローは確保できそうなエンドゲームに突入しました。この直後、白に大きなミスが出ます。
30. f6?
彼が何を勘違いしたのかは定かではありませんが、このポーンはすぐに落ちてしまいます。30. fxg6+ とポーンを交換すれば、ドローに落ち着くでしょう。
30... g5 31. Kf2 Kg6 32. f7 Nxf7 33. Ke3 Kf6 34. Bd5 Nd6 35. a5
もう1手余裕があれば、黒からa6-a5 と突き、ポーンを相手ビショップと逆の黒マスに固定できていました。b7,a6 のポーンを白マスに縛り付ける作戦はOKですが、それでも黒はeファイルのポーンを利用してチャンスを作ることができます。
35... Kf5 36. b4?
36. Bb3 h5 37. Bc2+ e4 38. Kd4 Kf4 39. g3+ Kg4 40. Bd1+ Kh3 41. Bxh5 Kxh2 42. g4 Kg3 43. Ke3-/+ とすれば黒の優位は揺るぎませんが、まだ白は粘ることができたでしょう。しかし、b7 からビショップの利きを自ら外す手は、指しづらいようにも思えます。
36... h5?
ここで私は、e5-e4 と押し込むベストのタイミングを見極めるため、少し手を待ってみようと考えました。ところがこれが大失敗で、eポーンを押し込むタイミングはここしかありませんでした。36... e4! 37. Kd4 h5!-+ これで黒は勝勢で、白キングはd4 に上がったもののここから何もできません。再びe3 に下がるようであれば、今度は黒からKf5-Ke5 として、ナイトのチェックからさらにキングを前進させることができます。
37. Kf2!=
驚いたことに、このように先に白キングに下がられてしまっただけでポジションはイコールになってしまいます。エンドゲームにおいて、キングを自ら下げる手は不自然にも思えますが、ナイトが回ってきた際に、チェックになることを外す狙いです。
37... e4 38. b5!
もちろん、b2-b4 とポーンを固定された直後にはこのアイディアを私も見つけていましたが、こうして適切なタイミングで仕掛け、ポーンを捌けばドローにできるということはとても勉強になりました。もしキングを下げる前にこの手を入れようとすると、37. b5? axb5! 38. Bxb7 Nxb7 39. a6 Nd6 40. a7 Nc4+ 41. Kd3 Nb6 で、ポーンを止められてしまいます。
38... Nxb5 39. Bxb7 Nc7 40. Ke3 Ke5 41. Bxe4 Nd5+ 42. Bxd5 Kxd5 43. h4
このポーンレースはもちろんドローです。試合中はうまく指されたと思っていましたが、キングに引かれる前にe5-e4 と押し込めば勝ちであったことに気付いてがっくりです。
43... gxh4 44. Kf4 Kc5 45. Kg5 Kb5 46. Kxh4 Kxa5 47. Kxh5 Kb6 48. g4 a5 49. g5 a4 50. g6 a3 51. g7 a2 52. g8=Q a1=Q 53. Qb8+ Kc6 54. Qc8+ Kb6 55. Qb8+ Kc6 1/2-1/2
まさか同じ日に黒を連続で引き、しかも同じオープンニング、さらにはビショップvs. ナイトのエンドゲームになるとは思ってもみませんでした。ビショップを持った際にはドローのチャンスを逃し、ビショップを持たれた際にはその利を活かされてしまうという結果でした。それでも、こうしたマイナーピースエンディングはなかなか機会に恵まれませんので、勉強になりました。
Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Feng, M (WCM, USA, 2120) 1-0
Kumar, N (FM, USA, 2251) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Zhang, P (CHN, 2278) 1/2-1/2
Mousseri, D (FM, USA, 2161) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1
Chen, P (CHN, 2297) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Zhu, J Q (USA, 2288) 1-0
Friedel, J (GM, USA, 2510) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1-0
Li, Z (FM, JPN, 2313) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
そしてこの日はオープンよりも1日日程の短かった、U2300 以下のクラスが4日間で7R の日程を全て終えました。U1900 に参加していたなつみは、連勝連敗の後、後半を3連勝で締めて5/7 となり、150人中17位と健闘しました。マン島に続き、賞金獲得まではあと一歩でしたが、それでも十分に素晴らしい戦績だったと思います。