2017/03/31

Saturday Lecture on 8th April 2017


Capablanca - Treybal / 1929
White to move

【日時】 2017年4月8日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 A Breakthrough in A Closed Position
【テーマ詳細】

新年度最初のレクチャーでは、ポーンが固まって閉じたポジションでの突破をテーマにしようと思います。ポーンが固まれば両者のプレーは限定されますが、それでも小さな隙をついて、どちらかがチャンスを作ることは考えられます。限られた手の中からチャンスを掴む方法と、そのために必要なアイディアを学びましょう。

【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

2017/03/24

The Highest Level Training in Japan on 22nd March 2017 Vol.2


羽生さんとの2局目の解説です。午後は色を変えて私が白を持ちます。

Kojima, S (IM, JPN, 2401) - Habu, Y (FM, JPN, 2399)
Training (2)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. e4 O-O 5. d4 d6 6. Be2 e5 7. O-O Na6!?



この日は気分を変えてKing's Indian をFianchetto ではなくメインラインで受けてみます。以前の対戦では羽生さんは7... Nc6 を指してきましたが、この日は初めて見る7... Na6 でした。この変化を指すのは久々ですが、以前の研究を思い出しながら試合を進めます。

8. Be3 Ng4 9. Bg5 Qe8 10. Re1!?


私もかつて7... Na6 を指していましたが、その10年程前はこの手はさほど注目されておらず、10. h3 h6 と進む変化がメインラインでした。

10... h6 11. Bh4 exd4 12. Nd5!



10. Re1 が注目されるようになったのは、このポーンを無視したナイトを跳び込み力が認められるようになったためでしょう。d5 のナイトはe7 に利きを持ち、Nd5-Ne7Bh4-Be7 の両方の狙いを作っています。羽生さんはこの手を警戒してh7-h6 を入れたのですが、それでもナイトの跳び込みは有効です!

12... g5 13. Bg3 c6 14. Bxd6!


この手は羽生さんが完全に軽視していたものです。ナイトを退くような選択肢はありえないため、白は2ピースとルークの交換を目指して勝負をします。私がこのアイディアを学んだオリジナルのゲームは、イスラエルのGM Huzman のものでした。少し形は違いますが、紹介しておきます。10... exd4 11. Nd5 f6 12. Bf4 c6 13. Bxd6! Huzman - MacShane 2005

14... cxd5 15. exd5 Nf6?


g4 のナイトは確かにターゲットになりそうですが、これを退くよりも優先しなければいけないのは、クイーンへのディスカバードアタックを避けることです。正しくは15... Qd8! 16. Bxf8 Qxf8 17. Bd3! (17. Nxd4? Nxf2! 18. Kxf2 Qc5-/+) 17... Nf6 18. Nxd4+/= と進めるべきでした。難しいポジションではありますが、ここで羽生さんが判断を誤ったことで、流れは一気に白に傾きます。

16. c5!



f8 の逃げられないルークを取ることは急がず、a6 のナイトを取りにいくことを優先します。このc4-c5 からのナイト取りと、Nc3-Nd5 の相性は良く、うまくこのコンビネーションが決まれば、7... Na6 のラインは黒が崩壊します。

16... Qd8?


これも決定的なミスで、2コネクテッドパスポーンを作ることを白に許してしまえば、黒はどうすることもできません。16... Nb4 17. Bc4 Qd8 18. Bxf8 Bxf8 19. d6+/- これであれば、マテリアルは本譜と同じでも、cポーンまではパスポーンになっていないため、黒は粘れる可能性があります。

17. Bxa6! bxa6 18. Bxf8 Bxf8 19. d6+-



完全に白の注文通りに試合は進みました。c,d ファイルの進んだコネクテッドパスポーンと、eファイルのコントロールがあれば、白が勝ちを決めるのも難しくはないでしょう。

19... Bg4 20. Qxd4 Bxf3 21. gxf3 Nh5 22. d7! Qc7 23. Re8


ここは少し迷いましたが、なるべくわかりやすい手を選んだつもりです。d8 のブロックを突破し、プロモーションを確定させれば白の勝ちです。

23... Rd8 24. c6 Nf4 25. Rae1 1-0



シンプルにeファイルを突破し、勝負ありです。やはりパスポーンは脅威になりますね。

この日は2試合の後、Caro-Kann, Ruy Lopez, Caro-Kann などで、お互いに研究してきた変化を持ちより、アイディアを出し合いました。いつも通りに勉強になるトレーニングになり、有意義な1日でした。羽生さん、いつもありがとうございます。また次の機会も、よろしくお願い致します。

2017/03/23

The Highest Level Training in Japan on 22nd March 2017 Vol.1


昨日は久々に、羽生さんと1対1のトレーニングをしてきました。いつも通り午前と午後で色を変え、計2局を指します。今回はどちらのゲームも面白かったため、2回に分けて解説記事を書こうと思います。まずは午前のゲームからです。

Habu, Y (FM, JPN, 2399) - Kojima, S (IM, JPN, 2401)
Training (1)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 c5!? 4. d5 exd5 5. cxd5 d6 6. Nc3 g6 7. Bf4!?



Benoni Defence に対して、e2-e4 を遅らせてBc1-Bf4 と指す変化は、近年トップのGM の間でも流行のラインです。白はゆっくりとした駒組みをし、黒にピースをなるべく捌かせないようにします。

7... a6


7... Bg7 8. Qa4+ Bd7 9. Qb3 b5!? というギャンビットラインも面白いですが、しっかり研究はしていなかったために今回は断念します。本譜ではa7-a6 を挟むことで、白のクイーンチェックを止めておきます。

8. a4 Bg7 9. h3 O-O 10. e3 Qe7!?



ここはどう指すか黒の作戦の分かれ目です。10... Nh5 11. Bh2 f5 がメインラインですが、あまりこうしたアクションは好きではありません。e2-e4 を将来的に許しても、よりスタンダードなベノニのポジションを目指すことにします。

11. Be2 Nbd7 12. O-O b6!?


以前の研究で、b7-b6, Bc8-Bb7 は意外と悪くなかったため、それを採用してみることにします。白の組み方によっては、Ra8-Rb8 からb6-b5 とbポーンを伸ばすことも考えられます。この際に白がa4-a5 とできないのが、黒がわざわざb7-b6 を挟んでおくメリットとなります。

13. Nd2 Ne5



13... Rb8 14. Nc4 Ne8 15. Qb3!+/- ならば、黒は2つのナイトがどちらも守りに縛られて身動きが取れなくなるため、面白くないでしょう。ここはビショップにとられることを覚悟のうえで、そうそうにセンターにナイトを運びます。

14. e4!?


ここも白はどう指すか作戦が分かれそうです。14. Bxe5!? dxe5 (14... Qxe5 15. Nc4 はb6 が落ちるのでもちろんダメ) 15... Nc4 Rb8 16. Qb3 Qc7 17. Rfd1+/= これでも少し白が指しやすそうですが、黒マスビショップを失ったダメージが後半で出てくる可能性はありえます。

14... Nfd7 15. Be3 g5!



こうしたポジションではスタンダードなポーンの突きです。f2-f4 を止め、e5 のマスにナイトを残せるようにしておくと同時に、g6 にマスを作り、タイミングを見てナイトを組み替えます。

16. Re1 Ng6 17. Nc4 Rb8 18. Qd2 h6 19. Bf1 Nde5 20. Nxe5 Bxe5


一般的にベノニではe5 のマスで1枚ナイトを捌けば、黒はぐっと楽になると考えられています。このポジションではe5 に置かれたビショップが両サイドに伸び、黒はすでに満足だと判断できそうです。

21. g3 Kh7!? 22. Bg2


f2-f4 を誘ってみましたが、羽生さんはこれには乗ってきません。22. f4 gxf4 23. gxf4 Nh4 24. Qf2 Rg8+ 25. Kh2 Bf6=/+ と進めば、白はビショップをe5 から追い返せても、自信のキングの守りを弱めてしまったデメリットのほうが大きそうです。

22... Qf6 23. Rf1 Nf4!



この手は自信をもって指すことができました。このナイトは取られてもビショップを取りかえせるため、黒は全く問題ありません。これで黒が少し有利になったと感じましたが、慣れないベノニで持ち時間がすでに残り少なかったことから、ミスをしてしまいます。

24. Ne2 Nxe2+?!


ここでさらに時間を使ったにもかかわらず、ベストの手を逃してしまいました。24... Nxg2 25. Kxg2 Bxb2 26. Rab1 Be5 27. f4 gxf4 28. Nxf4 Rg8-/+ ならば、カウンターも抑え込み、本譜よりも良いポーンアップです。他にも、24... Nxh3+ 25. Kh2 Qg6!(これが試合中見落とした手で、h3 を取ることをあきらめてしまいました。) 26. Bxh3 Qh5 27. Ng1 Bxh3 28. Nxh3 g4 29. Rh1 gxh3 30. Rhg1 Rfe8-/+ も黒良しの変化です。

25. Qxe2 Bxb2 26. Rad1 b5 27. f4?


これは黒が最も警戒すべきアイディアでしたが、タイミングが少し変でした。27. axb5 Rxb5 28. f4 gxf4 29. Bxf4 Qg6=/+ ならば、黒はやや有利ですが、fファイルからのカウンタープレーに十分気をつけないければいけません。

27... Bd4?



時間のない中での判断でしたが、これで白に逆転されてしまいました。27... bxa4! 28. fxg5 Qg6!-/+ が正解で、bファイルを開いてルークでビショップを守ることで、クイーンをa1-h8 のダイアゴナルから逸らすことができます。h6 を取られてもg3 を取れますし、a4-a3-a2-a1 という単純な狙いも強力です。

28. Bxd4 cxd4 29. e5! dxe5


ベノニでもっと警戒しなければいけないブレイクを許してしまいました。29... Qg7 30. e6+/- でも白が有利であることは疑いようがありません。

30. fxe5 Qb6 31. Qd3+ Kg7 32. Rf6 Qc5 33. axb5 axb5 34. Rc6 Qb4 35. e6!+-



強力なセンターポーンを伸ばされ、駒も取りかえされてしまうようであれば、すでに黒は敗勢です。この先は挽回が難しいと分かっていましたが、続けてみることにします。

35... Bb7 36. Rc7 Ba8 37. Qf5 Rb7 38. Qe5+ Kg8 39. Rxb7 Bxb7 40. e7 Re8 41. d6 Bxg2 42. d7 Bc6 43. d8=Q Qb2 44. Qe4 Bxe4 45. Qxe8+ Kg7 46. Qf8+ Kg6 47. Qg8+ Kf6 48. Qh8+ Kg6 49. Qg8+ Kf6 50. Rf1+


このチェックにより、黒の負けが確定しました。g2 のメイト狙いもすぐに防がれてしまいます。

50... Kxe7 51. Qxf7+ Kd6 52. Rf6+ Kc5 53. Qe7+ Kc4 54. Qxe4 Qc1+ 55. Kg2 Kb3 56. Qxd4 1-0



前日の小林くんとの試合でも、黒でチャンスを作っただけに、ベストの手が見えなかったのはもったいなかったです。それでも、久々に指したベノニで好感触だったのは嬉しかったですね。Nimzo-Indian との併用で、今後も活躍の機会があるかもしれません。午後のゲームについては、また明日以降の記事でご紹介します。


お昼はトレーニングの際によく行く焼肉屋さんでしたが、この日はすき焼きと和風ステーキで、互いに網を使わないメニューでした。お昼の話題は日露の交流会や、最近の囲碁、将棋、チェスのAI についてなど。羽生さん、専門分野以外のことも詳しくて、いつも驚かされます。

Hyakketsu 2017 Day3 Tournament Report


今年の全日本百傑戦入賞者たち

百傑戦3日目のレポートです。土日祝日の3日間で行われた百傑戦は、いくつかの最終ラウンドの波乱とともに幕を閉じました。1,2B で勝ちを収めた、山田くんと小林くんが5.5/6 でトップで並び、タイブレークで山田くんの優勝が決まりました。入賞した皆さん、おめでとうございます!

1st Place Yamada Kohei 5.5/6
2nd Place Kobayashi Atsuhiko 5.5/6
3rd Place Aoshima Mirai 5/6
4th Place Kanyamarala Tarun 5/6
5th Place Sakai Enju 5/6


私は最終日、青嶋くんにドロー、小林くんに痛恨の負けで6位タイに終わりました。2日目まで単独4連勝だっただけに、入賞すら逃すとは少しショックです。この日の2試合は途中のポジションから簡単に振り返ろうと思います。


Kojima, S - Aoshima, M
Position After 31... Be2

マテリアルはイコールですが、白のポーンは完全にバラバラです。ドローに持ち込むべく、必死にディフェンスを考えます。

32. Bxe2


ビショップ交換を避けてもじり貧だと考えた私は、ルークエンディングにドローのチャンスを託します。cファイルにできているパスポーンをいかに使うかがカギとなりそうです。

32... Rxe2 33. c4 Kg6


青嶋くんはe4 のポーンを回収する前にキングのポジションを改善しておきます。単純にe4 を取る手は、白キングに早く上がるチャンスを与えてしまうでしょう。33... Rxe4 34. Kf2 f5 35. Rc8 Kf6 36. c5 Rc4 37. c6 Ke5 38. Ke3 Rc3+ 39. Kf2 Kd5 40. c7 Ke5 41. Kg2 Kd6 42. Rd8+ Kxc7 43. Rh8 Kd6 44. Rxh7 e5 45. Rh5 Ke6 46. Rh8 e4 47. Kf2 Rf3+ 48. Kg2 Ke5 49. Ra8 これでも簡単ではないですが、白は広い側からの横のチェックを使って反撃をし、黒キングのプレーを妨害してドローのチャンスがありそうです。

34. Rc7 h5 35. c5 Rxe4 36. Kf2 h4 37. gxh4 Rxh4



ここまでは黒の作戦通りで、白のgポーンと黒のhポーンを交換しておくことで、黒は2コネクテッドパスポーンを作ることに成功しました。試合中、これは負けそうだと思っていましたが、なんとか粘ります。

38. Ke3 Kf6 39. Kd3


まずはキングがクイーンサイドに走ります。これで黒のルークがパスポーンの後ろに回りづらくなると同時に、キングがポーンの前進をサポートできます。

39... e5 40. Rd7!



試合中は必死でしたが、振り返ればとても重要な一手です。パスポーンをブロックしているルークを別ファイルに切り替えると同時に、黒キングをポーンに寄れないようにします。

40... Ke6 41. Rd6+ Ke7 42. Rd5 f6 43. c6 Rh3+?!


青嶋くんは基本通りに、ルークをパスポーンの後ろに回そうとしますが、ここでは白キングが前進するのを手助けしてしまいます。おそらく白にとって最も難しいのは、43... Rh8 44. Rd7+ Ke6 45. Kc4 f5 46. Kc5 e4 47. Kd4 Rh1 48. Rg7 Rd1+ 49. Ke3 Rd3+ 50. Ke2 Rc3 51. c7 f4 52. Kd2 Rc5 53. Rg4 Kf5 54. Rg7 と進むような変化だっとた思います。これならばなんとかドローにできそうですが、途中で間違えず指せるかは自信がありません。

44. Kc4 Rh1 45. Kb5 Rc1 46. Kb6 e4 47. c7 e3 48. Rd3



こうして黒のパスポーンを攻撃できたことで、黒に完全に勝ちがなくなったことを理解しました。

48... e2 49. Re3+ Kd7 50. Rd3+ Ke7 51. Re3+ Kd7 1/2-1/2


このドローで4.5/5 が3人並び、優勝をかけて上位ボードでぶつかります。私は小林くんに黒を引きました。


Kobayashi, A - Kojima, S
Position After 28. Rdd1

隣のボードのAlex - 山田の試合は形勢判断が難しかったですが、おとなしくドローにはなりそうもなかったため、優勝のために勝負を仕掛けます。

28... Rxa3!? 29. Rxa3 c4 30. Rda1 c3


黒はエクスチェンジを捨て、cファイルに作ったパスポーンで戦います。これをb4 のナイトとそれを守るビショップは安定しており、パスポーンを止めるために白のピースは自由には動けません。代償は十分あると思いましたが、プロモーションを確定させるのは一苦労です。

31. Ra7 Qb8?!



クイーンを逃がす位置をどこにするか迷った末、a7 のルークにアタックの続くb8 を選びました。しかし、冷静に見ればcファイルをキープし、e3 のポーンにもプレッシャーのあるc5 がベターかもしれません。

32. Bh3 c2 33. Qd2 h6 34. Qc3


このクイーンの動きは私が予想していないものでした。白はしっかりとクイーンでパスポーンを止め、ルークを動きやすくしておきます。

34... Bc5 35. Kf1 Qd6!



動き出した白のキングを、黒はクイーンで追いかけることにします。h3 の浮いているビショップでも、e3 のポーンでも、黒は狙えれば手が作れそうです。

36. Ke2 Qf6 37. Rf1 Qg5 38. Rfxf7 Qh5+ 39. g4 Qxh3??


クイーンをキングサイドへ振る構想は正しかったものの、時間切迫でメイトを見落としてゲームはあっけない幕切れを迎えました。ビショップではなくルークを取る変化は読み切れず、自信がなかったのですが、そちらが正解です。39... Qxf7! 40. Rxf7 Kxf7 41. g5 hxg5! (検討ではe5 を取られるとメイトになりそうなので、このポーンは取れないという判断でしたが、それは大きな間違いでした!) 42. Be6+ (42. Qxe5?? c1=Q! 43. Be6+ Ke8-+ これで続く攻撃はありません。) 42... Kf6-/+ これでe5 のポーンを守れば黒が有利だというのがコンピュータの評価です。検討ではg5 が取れることを完全に見落としていました。

40. Rxg7+ Kf8 41. Raf7+ 1-0



e5 をクイーンで取られた際にチェックがかかることが見えておらず、メイトに気付きませんでした。勝負に出たエクスチェンジサクリファイスから、面白いポジションを築けただけに、こうして読み抜けでのあっけない終わり方は残念です。それでも大会全体を通して収穫はありましたので、また5月の全日本選手権でそれを活かせればと思います。

百傑に参加された皆さん、3日間お疲れ様でした。また次のトーナメントでお会いしましょう。

2017/03/21

Hyakketsu 2017 Day2 Tournament Report


昨夜更新できなかった分の記事です。百傑2日目は14人の連勝同士が上位でぶつかり合い、上位5ボードで決着がつきました。3連勝となった私は、1B で馬場さんと当たる大一番を迎えました。

Baba, M - Kojima, S
Hyakketsu 2017 (4)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nf3 e6 5. Be2 Ne7 6. O-O Bg6!? 7. Nbd2 c5!?



たまたま先週見つけたラインで、調べてみると黒の感触が良いことが分かり、思い切って指してみることにしました。c6-c5 と早めに突き、ポジションを単純化するのは黒にとって好ましいと私は考えていますが、このポーンブレイクのタイミングは難しいものです。6... c5 に比べると、黒はg6 に下げたビショップがターゲットになりにくいこと、さらには一手待ったことで、白にナイトの位置を決めさせていることがポイントとなります。

8. dxc5 Nec6 9. Nb3 Nd7 10. c4 dxc4 11. Bxc4 Bxc5?!


ここはビショップのペアをあきらめてでも、まだ展開できないない黒マスビショップでポーンを取りかえすのが正解だと思いましたが、やはり黒マスを弱めるのは好ましくなかったようです。11... Nxc5 12. Nbd4 Nxd4 13. Nxd4 Be7 とするか、いったん11... Be7 と上がっておき、タイミングを見てc5 を取りかえすのが良かったでしょう。

12. Bb5?!



12. Nxc5 Nxc5 13. Be3+/= このポジションは、私と馬場さんが考えている以上に白が指しやすいものでした。

12... Be7! 13. Nbd4 Nxd4 14. Qxd4 a6


この時点で黒はかなり満足だと感じていました。d7 でピースを交換すれば、黒は単純にダブルビショップをもって有利でしょう。

15. Ba4 b5 16. Bd1 Nc5 17. Be3 O-O 18. Be2 Nd3!



キャスリングも済み、この辺りからは黒は仕掛けます。まずは白に、ダブルビショップをあきらめるか、ナイトに良い場所への侵入を許すかを迫ります。

19. Bxd3


19. Rfd1 Qxd4 20. Bxd4 Nf4! 21. Bf1 Rfd8=/+ こう進んでも、黒としては流れをつかめるでしょう。本譜も当然白マスビショップをもらい、黒は満足です。

19... Bxd3 20. Rfc1 Bc4


指した直後に、20... Qxd4 21. Nxd4 Rfc8!=/+ これで黒が良くなるころに気付きました。ポイントはf8 のマスを空けたため、Nd4-Nc6 に対してビショップを退けるようにしていることです。

21. Qg4 Kh8 22. Rd1 Bd5 23. Ng5 Rc8 24. Rd3



私は試合後に、ここですぐにクイーンが入るほうが良いと指摘しました。24. Qh5 Bxg5 25. Qxg5 Qxg5 26. Bxg5 h6! (私の見落としていたアイディアで、バックランクメイトを消すことで、ルークをcファイルでぶつける強制交換を防ぎます。) 27. Be3 Rc2=/+ これでも黒はわずかに良さそうですが、クイーンでのアタックに頼るよりも、異色ビショップで耐えるべきだと私は思います。

24... Rc4 25. Qh5 Bxg5 26. Bxg5 Qc7 27. b3 Rc3


27. b3 は全く予想していませんでしたが、e5 をターゲットにできるよう、c3 でルークを交換すれば問題ないでしょう。

28. Rxc3 Qxc3 29. Rc1 Qb2!



29... Qxe5? 30. Qxf7!+/= これは逆転で白優勢になるため、黒はこの一手です。c1 のルークを取ってチェックするアイディアを残し、Qxf7 を防ぐと同時に、a2 のポーンを狙っておきます。

30. h4 Kg8!


この手も大事なアイディアで、こうしてf7 を守っておけば、a2 とe5 のダブルアタックに白は対処できなくなります。この試合で初めて、黒ははっきりと駒得となり、勝ちがぼんやりと見えてきました。しかし、まだまだ先は長いです!

31. Re1 Qxa2 32. Re3 Rc8 33. Qd1 Qc2?!



クイーンを交換するのが安全策かと思っていましたが、すでにキングサイドから退いた白クイーンは、黒にとって脅威ではありません。クイーン交換は、異色ビショップでもh4,e5,b4 をしっかり狙えると思った末の判断でしたが、単に33... Rc2 と入るか、33... a5 ぐらいでもっと楽に勝てたでしょう。

34. Qxc2 Rxc2 35. b4 h6 36. Be7 Rc7 37. Bd6 Rc4 38. Ra3 Bb7 39. Be7 Re4 40. Re3 Rc4


ここでルーク交換をしても、異色ビショップのエンドゲームは勝てません。黒が勝つためにはルークを残し、白の伸びすぎたポーンを狙ってチャンスを作るしかありません。

41. f3 h5 42. Rd3 Kh7 43. Rd7 Bd5 44. Ra7 Rc1+ 45. Kh2 Rc2 46. Kh3 Ra2 47. Bd8 Kg6 48. Ba5 Bc4 49. g4



Bd5-Bc4-Bf1 を狙えば勝ちだと思っていた私は、この手に少し戸惑いました。f7 が狙われている黒は、意外と対処に困ります。

49... hxg4+ 50. fxg4?!


これで私ははっきり勝つチャンスがきたと思いました。嫌だったのはキングで取る手で、50. Kxg4 Rg2+ 51. Kh3 Rg1 と進んだ際、黒がまだ有利なのは確かでも、勝てるかどうかは分かりませんでした。馬場さんはポーンの形を重視しましたが、キングをアクティブにするのが正しい判断です。

50... Ra3+! 51. Kh2 Be2



こうして白キングを2段目に下げさせておき、その後で伸びたポーンを狙います。これを崩し、黒キングが上がれば、いよいよ具体的な勝利が見えてきます。

52. h5+ Kh7 53. Rxf7 Bxg4 54. Ra7 Kh6 55. Rxa6 Kxh5


白キングを2段目に留めた黒は、自分のキングを上げてポーンを取り、パスポーンもgファイルに残しています。あとはこれをビショップ、ルーク、キングでフォローしながら進め、プロモーションを目指します。

56. Ra7 g5 57. Rh7+ Kg6 58. Rb7 Be2-+



少し迷いましたが、確実にb5 を守っておき、余計な反撃を与えないことにします。

59. Bd8 g4 60. Bf6 Kf5 61. Rf7 Ke4 62. Bg7 Rh3+


あとはポーンで黒マス、ビショップで白マスを抑えれば、白はプロモーションを止めることができません。

63. Kg2 Bf3+ 64. Kf2 g3+ 65. Ke1 Rh1+ 66. Kd2 g2 0-1



このタフなゲームを勝ち、単独4連勝までは良かったのですが、最終日の2戦で崩れてしまいました... 今日の試合についての記事は、また明日更新しようと思います。

2017/03/18

Hyakketsu 2017 Day1 Tornament Report


この3連休、東京の蒲田では全日本百傑戦が開催されています。この大会は5月に開催される全日本選手権の東京予選を兼ねており、まだ全日本への参加権利を得ていないプレーヤーにとっては、大きな意味を持つ試合となります。初日の今日、私は海外籍の2人に勝って連勝ですが、3日コース参加者は77名おり、連勝も14名と非常に多くなっており、まだまだ大会の行方は分かりません。

Lorenzana, A - Kojima, S
Hyakketsu 2017 (2)

1. Nf3 Nf6 2. b3 d5 3. Bb2 c6 4. g3 Bg4 5. Bg2 Nbd7 6. O-O Qc7!?



この試合最初に悩んだのはここです。e7-e5 を見せておくことで、白にセンターポーンをどこまで伸ばすか早々に決めさせます。

7. d4 e6 8. Nbd2 Be7 9. h3 Bh5 10. c4 O-O 11. Ne5


スタンダードな手ですが、この後の展開を踏まえれば、11. Rc1 と指して様子を見るのが良いかもしれません。ピースを早くさばきすぎると、白にとって面白くなくなってしまう恐れがあります。

11... Nxe5 12. dxe5 Nd7 13. g4 Bg6 14. f4 f6!



4年前にチェコのピルゼンで指した最終戦、ドローで優勝にもかかわらずあっさりと負けた悔しい試合で、このアイディアを見た記憶がありました。白のf4-f5 は少し気にはなるものの、それもビショップをf7 に退けば大丈夫だと判断して仕掛けます。

15. cxd5 cxd5 16. Nf3 fxe5 17. Bxe5?


この手をノータイムで指してきて目を疑いました。Lorenzana さんはe5 のアウトポストに残るナイトの力を評価したのだと思いますが、黒はそれを簡単にさばくことができます。代わりに17. Nxe5 Nxe5 18. Bxe5 Qb6+ 19. Kh1 Rad8= と進めておけば、形勢互角だったでしょう。

17... Nxe5 18. Nxe5 Bc2!?



ここはベストの変化を逃しました。次にBe7-Bd6 を指してから、f4 を取る手を見ていたのですが、コンピュータはすぐにルークを捨てる手を示します! 18... Rxf4! 19. Rxf4 Qxe5 20. Qd4 (20. Rf1 Bc5+ 21. Kh1 Bd6!-+) 20... Bc5 21. Qxc5 Qxa1+-+ 確かに黒マスの弱すぎる白は、h2 でのメイトなどを狙われるとエクスチェンジを返すしかありません。このアイディアは少し見えずらいですが、きちんと時間も残っていたのでもう少ししっかり読むべきでした。

19. Qd2 Bd6 20. Rac1 Rac8 21. Kh1?


cファイルを抑えて有利になったところで、さらに相手の悪手が出てポーンが落ちます。21... Ba3 ももちろん良い手ですが、ここは素直に駒をもらっておくことにしました。

21... Bxe5 22. fxe5 Rxf1+ 23. Rxf1 Qxe5 24. Qb4 Qc7 25. g5 Bf5 26. Rxf5?



これも必要のない駒捨てです。エクスチェンジアップになった黒は、後は丁寧に指すだけです。

26... exf5 27. Bxd5+ Kh8 28. Kg2 b6 29. Bf3 Qc5 30. Qd2 Qc1 31. Qxc1 Rxc1 32. Kg3 g6 33. h4 Kg7 34. Kf4 Rc2 35. a4 Rb2 36. h5 Rxb3 37. h6+ Kf8 38. Bc6 a6 39. Bd5 Rb4+ 40. Ke5 Rxa4 41. Kf6 Rd4 0-1


そして、明日の上位ボードのペアリングは以下のように発表されています。この大会の結果やペアリングは、Chessresults で確認できますので、こちらもチェックしてみてください。

Kojima - Furuya
Higashino - Aoshima
Baba - Hiebert
Yamada - Osaka
Shinoda - Noguchi
Otawa - Shiomi
Irie - Kanyamarala


この上位7B が連勝14名同士のペアリングです。私は久々に後輩の古谷くんとの対戦になりました。個人的には日本のユース勢がIVL メンバーに挑む、3,4,6B にも注目したいと思っています。それでは皆さん、2日目もよろしくお願い致します。

2017/03/11

Playing 1. e4 e5 Vol.1


私は長らくCaro-Kann を黒番で指してきましたが、1. e4 e5 を上手く指しこなすことができれば、自身のレベルアップに繋がるのではないかと常々考えていました。さらにはチェスを教える際にも1. e4 e5 を扱うことが多いため、自分でもある程度指せるほうが、教えるうえでもやりやすいだろうと考えています。オンラインでは少しずつ試していたので、その中から自分の振り返りも兼ねて、解説を書いてみます。

Russsia - Shinya_Kojima
Chess.com, 2017.03.10

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6



3. Bc4 の対策として考えているのは、3... Nf6 です。3... Bc5 ももちろん悪くありませんが、Evans Gambit や諸々、調べなくてはいけないラインが多いため、それを避けようと思っています。

4. Ng5 d5 5. exd5 Na5 6. Bb5+ c6 7. dxc6 bxc6 8. Qf3!?


すでにポーンを捨ててピースの展開での勝負をしている黒にとって、白がさらにマイナーピースの展開を遅らせてくれることは、さらにポーンを取られたとしてもありがたいと考えています。

8... Be7!



以前、このポジションについて尋ねられ、調べた際に見つけたアイディアです。8... Bd7, 8... Rb8 などに比べ、c6 を捨てても早くキャスリングをし、早いアタックでバランスを取ろうという作戦です。

9. Ne4


ここでナイトが戻るアイディアは特に黒にとって脅威にならないでしょう。他にも9. Bxc6+ Nxc6 10. Qxc6+ Bd7 11. Qf3 は黒の望む展開で、キャスリング後にRa8-Rc8、Bd7-Bc6 などのアイディアで黒はカウンタープレーが作れそうです。最も難しいのは9. Bd3 ですが、これも8.Bd3 のライン同様に、ナイトでd3 のビショップを狙いにいき、黒は問題ないでしょう。

9... O-O 10. Nxf6+ Bxf6 11. Nc3?


この手を奇妙に感じ、ブリッツですが少し考え込みます。そして正解を見つけました。

11... e4! 12. Nxe4 cxb5!



9. Qf3 と指した際には取れなかったはずのビショップを取り、勝負ありです。a8 のルークは毒入りで、これを取れば白はキングを守り切れません。

13. Nxf6+ Qxf6 14. Qxa8 Re8+ 15. Kf1 Qe5 0-1


白はクイーンサイドのピースの展開を遅らせてきたことが仇となり、黒のメイティングアタックに対処できません。短くシンプルなゲームでしたが、このオープニングの特徴を上手く活かせたため、シリーズの最初の解説として扱いました。何まで書くかは分かりませんが、気まぐれな更新にしばらくお付き合いください。

2017/03/10

Weekly Chess Puzzle Vol.35


Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Zhu, J Q (USA, 2288)
North American Open 2016 (6)
White to move


Kojima, S - Gonda, G
JCA Rapid 2016 (8)
White to move

久々の更新はタクティクスが2問です。1つ目はまだ記憶に新しいラスベガスから。この試合では勝ちましたが、この相手のジュニアは現在2400を超えており、この試合も危なかったですね。2つ目は国内の快速からで、この後すぐ黒の時間が落ちました。どちらの局面も、2つほど白の勝ち筋があるので、余裕があればどちらも探してみてください。答えの分かった方は、いつも通りコメント欄にどうぞ。


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