この2日間、蒲田で開催されている全日本ジュニア選手権に足を運んできました。今年もジュニアは盛況で、アメリカ、カナダなどでプレーしている日本人プレーヤーの参加もあり、参加者は30人を超えています。初日の時点でリストトップ4のうちの3人、逢阪くん、大多和くん、中原くんが3連勝となり、勝負の2日目を迎えました。私が今日、会場に到着すると1B はこのようなポジションを迎えていました。
1. d7?
白の大多和くんは持ち時間がほとんどなく、ここで正確な指し手を見失ってしまいます。とは言え、黒のRe8-Re2 の狙いはシンプルかつ強力で、どのように対処すれば良いかを短い時間で判断するのは至難の業です。1. a6! Qc6 2. Kf2!+-
1... Qxd7 2. bxc5 Re2!
白はdポーンを突き捨てることで、クイーンの利きをa8-h1 のダイアゴナルから逸らしつつ、d4 のナイトを浮かして勝ちだと思ったかもしれません。それに対しては、構わずe2 にルークを突入させる手が強力です。
3. Qxd4 Re1+!?
黒には2つの選択肢がありますが、ディフレクションでエクスチェンジを取る変化を選びました。このポジションでは、黒は望めばドローであることは分かっていたでしょう。3... Qh3 4. Qd8+ Kg7 5. Qd4+ Kg8 6. Qd8+ ならば、白にはg2 のメイトを防ぐ方法が、黒にはパペチュアルチェックを防ぐ方法がなく、両者ともドローにするしかないことは明らかです。しかし、4R までで1/2 ポイントリードしている大多和くんを捕まえるため、あえて勝負に出た中原くんの判断は称賛されるべきだと思います!
4. Kf2 Rxd1 5. Qxd7 Rxd7 6. Ke3!
私も見落としていた単純な手で、白はキングを前進させてパスポーンのサポートに向かいます。
6... Rd5?
ここでは、6... Kf8! 7. Nd6 Ke7 8. Kd4 ならば、まだ形勢不明だったでしょう。黒は白と違って多少の時間が残っていただけに、 惜しむべきミスでした。
7. a6!+-
大多和くんは持ち時間をぎりぎりまで使い、この手での勝ちを読み切りました。c5 を落としても、c4 のナイトがa5 を抑えていているうえ、Nc4-Nb6 という飛び込みで、プロモーションをサポートします。これでルークとポーンを交換できた白は、残ったナイトを丁寧に使ってエンドゲームを勝ち切り、5連勝となりました。
大多和くんは最終戦、1P差で追いかけてくる鈴木くんも下し、6連勝での優勝を決めました。ここ数年、全日本や海外大会で腕を磨き、名実ともに日本のジュニアトップクラスに上り詰めた大多和くんは、これで2年ぶり2回目のジュニア選手権優勝、そして初の単独優勝です。大多和くん、おめでとうございます!
昨年のジュニアチャンピオン、カナダの田中くんは大多和くんにのみ敗れて5/6。今年も安定した強さを見せてくれましたが、惜しくも連覇はならずです。(直前のWorld Open では、Open クラスでパフォーマンス2000以上を出したそうです。) 私も昨年秋に函館で対戦した、函館CC のホープ、渋谷くんも同じく5勝1敗で5/6。3位という好成績を残しました。大多和くんだけでなく、他の入賞した2人にも、お祝いの言葉を送りたいと思います。
毎年、ジュニアの大会は全日本に負けないドラマと熱気があり、観戦していてとても面白いと思っています。今年もジュニア選手権が終わり、これで私も一息つきたいところですが、明日は小学生選手権と、シニア選手権の最終日です。再び蒲田に足を運ぶつもりですので、参加者の皆さん、頑張ってきてください! (ジュニアの保護者の皆さんも、連日お疲れ様です!)