会場の壁にはハンガリーのここ800年ほどの歴史が、イラストとともに綴られています。
オリンピアード開催記念大会の2日目です。初日の2戦を連勝した私は、ルーマニアの若いプレーヤーとの対戦になりました。ルーマニアはハンガリーのさらに東に位置する東欧の国で、何十年も前からヨーロッパではチェスの強豪国です。2008年のドレスデンオリンピアードでは、ルーマニアの当時No.1だったNisipeanuと試合をしたことも懐かしく思い出されます。
Kojima, S (IM, JPN, 2294) - Benedek, I (ROU, 2168)
Welcome Olympiad! U2400 (3)
1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nf3 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nc6 7. Nc3 e5 8. dxe5
オンラインの対局では散々指してきましたが、公式戦でこの変化が現れるのは初めてです。かつてはポーンを突きこすのが主流でしたが、
8. d5 Nb8!が黒がかなり指せることが分かり、次第にポーンを捌く変化の人気が上がってきました。
8... dxe5 9. Bg5 Qxd1!?
黒からクイーンを交換する手は見たことがありませんでした。単純に白はdファイルを抑えて良さそうですが、小さな優位をどう活かすか工夫が求められます。
10. Rfxd1 Bg4 11. h3 Bxf3 12. Bxf3 Nd4 13. Bxb7
g2にビショップを退く手でビショップペアをキープし、b2-b4-b5からゆっくりアクションを起こすプランも考えました。しかし、bファイルからルークで反撃されたところで白は丁寧に対応すれば問題なく、g2のビショップが後々活きてくるのではないかと考えました。
13... Rab8 14. Bg2 Rxb2 15. Kf1 Rfb8 16. Rab1
少し迷いましたが、bファイルでルーク交換を狙います。最も脅威となる黒のルークを捌いてしまえば、ダブルビショップを持つ白がやや有利なエンドゲームになるでしょう。
16... h6 17. Be3 c5?!
この手は少し奇妙に感じました。c5,e5をどちらも黒マスで固めてしまえば、g7のビショップを活用するのが難しくなるうえ、c5のポーン自体がターゲットになるうるからです。
17... Nd7くらいでナイトを組み直すアイディアが良かったでしょう。
18. Bd2! R8b4 19. e3 Nf5 20. Rxb2 Rxb2 21. Ke1?!
黒がNf5-Nd6とマヌーバリングし、c4を狙ってくることは分かっていたので、それに対応する手を指したつもりでしたがやや緩かったようです。ここは
21. Be1! Bf8 22. Rd8 Kg7 23. Rc8!+-としてルークをdファイルから活用すれば白勝勢でした。e1のビショップでナイトを守っておけば、a2,c3,c4のいずれもルークに狙われる心配がなく、b2のルークを全く気にしなくても良いことに気づきませんでした。
21... Nd6 22. Bf1?!
22. Bc1! Rc2 23. Rxd6 Rxc3 24. Kd2 Rxc4 25. Ra6!+- ビショップを退く手は考えましたが、c4を先に取らせてもa7を後に落とせれば、ダブルビショップを残した白が十分に勝ちのチャンスがありました。
22... Nfe4 23. Bc1!
単にナイトを捌く手は、
23. Nxe4? Nxe4 24. Bg2 Nxd2 25. Rxd2 Rxd2 26. Kxd2=と異色ビショップだけが残ってドローです。本譜のルークを先に追い返す手が成立することに気が付き、白が勝つチャンスはまだまだあることを意識しました。
23... Rb6
23... Nxc3 24. Bxb2 Nxd1 25. Kxd1+/-はダブルビショップを持つ白が指しやすいエンドゲームです。
23... Rxf2? 24. Nxe4 Nxe4 25. Rd8+! Kh7 26. Bd3+-ならば、黒はナイトを諦めなくてはいけません。
24. Nxe4 Nxe4 25. Rd8+ Kh7 26. Rd7?!
ここはa7とf7をフォークする自然な手を選んだつもりでしたが、先にb1のマスにルークが入られないよう受けておくべきでした。
26. Bd3! Nc3 27. Rd7 e4 28. Bc2 Nxa2 29. Ba3 Nb4 30. Bxe4+/- e5-e4がビショップに当たるテンポを嫌いましたが、実際にはa2を取らせても、e4がターゲットになって落ちるため問題なかったようです。
26... Rb1 27. Kd1 Nxf2+?
ここで黒は最後のチャンスを逃しました。
27... Ra1! 28. Rxa7 Nc3+ 29. Kd2 Nxa2 30. Bb2 Rxf1 31. Ke2 Rh1 32. Rxa2= ならば互角です。ナイトはf2を取るか、a2を取るか、選択肢を残しておくほうが柔軟性があって良いということですね。
28. Kc2 Ra1??
この手はピースが落ちるため、白にとって楽な流れになりました。
28... Rb6 29. Rxf7 Ne4 30. g4+/-でも白が優勢ですが、黒はせめてこちらで粘るべきです。
29. Rxf7 Rxa2+
29... e4 30. Rxg7+ Kxg7 31. Bb2++- これは綺麗なタクティクスでピースが落ちて白の勝勢です。
30. Kb1 Ra4 31. Rxf2 e4 32. Ra2 Rb4+ 33. Kc2 Rb7 34. Bd2 Be5 35. g4 Bb8 36. Bg2 1-0
最後は相手がb4にルークを置こうとし、ビショップが利いていることに気づいてリザインしました。自分でも指しながらベストではないだろうなと思う手が多いゲームでしたが、なんとか勝ち切れて良かったです。続く4Rは相手の準備がしっかりしており、早めのドローで合意しました。下に準備されてもドローに落ち着かず、とことん勝負できる変化をもう少し探ってみようと思います。
8/26 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2294) - Sinoros-Szabo, D (HUN, 2012) 1-0
8/26 R2 Laszlo, C (AFM, HUN, 2063) - Kojima, S (IM, JPN, 2294) 0-1
8/27 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2294) - Benedek, I (ROU, 2168) 1-0
8/27 R4 Gaspar, D (HUN, 2041) - Kojima, S (IM, JPN, 2294) 1/2-1/2
8/28 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2294) - Szabo, B (FM, HUN, 2230)
Welcome Olympiad! U2400 R5 Pairings
試合会場からは聖イシュトヴァ―ン大聖堂まで徒歩5分くらいです。クリスマスマーケットの時期は特に混み合う、ブダペストでも人気の観光名所です。