昨年の全日本選手権で指したゲームの中では、こちらの前嶋くんとの棋譜も印象的でした。序盤から分からないセオリーになりながら、上手く試合運びができたと思っています。
Maeshima, H (JPN, 1918) - Kojima, S (IM, JPN, 2299)
Japan Chess Championship 2024 (6)
1. c4 c6 2. d4 d5 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5 6. Ne5 Nbd7 7. Nxc4 Nb6 8. Ne5 a5 9. e3 g6!?
かつてハワイでアメリカのGM Samuel Shanklandと指した際は違う変化を選びました。9... Nbd7 10. Qb3 Nxe5 11. dxe5 Nd7 12. e4 はよく勧められる変化ですが、ドロー手順があるためこの試合では避けることにします。
Japan Chess Championship 2024 (6)
10. g4!?
f5のビショップを満足に働かせないようにする白の工夫として、ポーンで狙う手はしばしば見られますが、考えたことのないタイミングでした。g7-g6の形を決めているためBf5-Bg6ができませんが、同時にBf5-Be6の組み直しも悪くないと考えられます。10. Bd3 Bxd3 11. Nxd3 Bg7 12. O-O O-O 13. b3!? はメインの変化で白はBc1-Ba3からe7を攻撃できます。
10... Be6 11. Be2 Nfd7 12. Nd3 Bc4!?
将来的にNd3-Nf4 or Nd3-Nc5がe6のビショップを狙う良い動きになりそうなので、早めにe6からビショップを退避させ、場合によっては白のナイトとの交換を目指します。13. e4 Bg7 14. Be3 Ba6!?
Bc8-Bf5-Be6-Bc4-Ba6 というかなり変わったマヌーバリングです。白がe3にビショップを置いたことを見て、Nb6-Nc4を狙うアイディアです。
15. e5?!
d4へのプレッシャーを受けるため黒のビショップのダイアゴナルを止める狙いですが、d5のマスが弱くなるうえ、d4が動きづらくなり、逆にターゲットになりやすいという弱点を抱えます。ここはc3のナイトの守りが一時的になくなることを気にしすぎず、15. b3 くらいでc4のマスを受けておくべきだと思います。
15... Nc4 16. b3 Nxe3 17. fxe3 c5!
ダブルポーンでd4を固く守ったつもりだったかもしれませんが、このブレイクで再度d4を弱めることができます。eファイルの孤立ダブルは弱点になりすぎてしまうため、このc5ブレイクを白から取れないのがこのポーンストラクチャーの弱点です。18. Nf4 e6 19. h4 O-O 20. Ne4 cxd4 21. exd4 Qb6!
白はg2-g4との組み合わせでキングサイドの強襲を考えますが、センターポーンと初期位置のキングがあまりに不安定で上手くいきません。
22. g5 Nxe5!
22... Rfd8 のような手でも十分ですが、e4,f4に並んだナイトがどちらも浮いていることを利用したタクティクスで勝負は決まります。23. dxe5 Qb4+ 24. Qd2 Qxe4 25. O-O Rad8 26. Qa2 Bxe5
e5のポーンが落ちて黒マスビショップまで参戦することになれば、白キングは風前の灯火です。
27. Bxa6 Bxf4 28. Rae1 Be3+ 29. Kh2 Qxh4+ 30. Kg2 Qg4+ 31. Kh2 Rd2+ 32. Re2 Bf4+ 33. Kh1 Qh3+ 34. Kg1 Be3+ 35. Rff2 Rd1+ 0-1
Slav Defenceは長く指していますが、試合のたびに初体験の形になることがまだまだあります。昨年の全日本選手権では、汐口くんとの試合もかなりカオスでした。