久々に去年~今年の未公開棋譜を振り返るシリーズです。この2年間は東海オープンに続き、5月の中部ラピッド選手権で名古屋に遠征をしています。2024年中部ラピッド最終戦の東芝さんとの試合は、優勝を決めるために落とせない一戦でした。
Higashishiba, T - Kojima, S
Chubu Rapid Open 2024 (5)
1. e4 c6 2. Nf3 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Nf6 5. Qe2 Na6!?
当時勉強していたChessableのコースでこれが勧められていましたが、かなり珍しい変化です。Na6-Nb4からc2を狙う含みを見せておき、白の出方を伺います。
6. d4 Nxe4 7. Qxe4 Qd5 8. Qxd5 cxd5 9. Bb5+ Bd7 10. Bxd7+ Kxd7 11. c3 f6!
e5のマスを早めに受けておき、Nf3-Ne5を止めておきます。クイーン交換まで済ませているため、将来的なe6の弱さもさほど気にならないでしょう。
12. h4 e6 13. Bf4 Be7
ドローを目指すのであれば、
13... Bd6からビショップ交換を狙う手もありえます。しかし、e7でもa3-f8ダイアゴナルで強力に利くビショップですので、残しておいても悪いはずはありません。この判断が後に黒にチャンスを呼びこむことになります。
14. Ke2 Rac8 15. Rac1 Rc6 16. Rhd1 Rhc8 17. h5 Nc7 18. Bxc7?!
Nc7-Ne8-Nd6のマヌーバリングを恐れたとのことでしたが、それならばd6での交換でも遅くありません。いずれにせよ、黒がビショップを持つ展開になれば、b7-b5-b4のマイノリティアタックもやりやすく、黒は互角以上の形勢で満足です。
18... R8xc7 19. Ne1 Bd6 20. g3 b5 21. a3 a5 22. Nd3 e5 23. dxe5 fxe5 24. f4 exf4 25. gxf4 Rc4
d3に切り替えた白のナイトは、f4,e5,c5,b4の重要な4マスを抑えていますが、それゆえにd3から動きづらい点が気になります。コンピュータ評価はまだ互角ですが、どちらに転ぶかと言われると黒に転びそうな展開に見えます。
26. Kf3 Kc6 27. Rg1 Rf7 28. Rg4 Re7!?
g7は多少気になりますが、eファイルからの侵入を見せて白キングに揺さぶりをかけます。
29. Nf2?
d3のナイトは好位置であるため、これを動かすのは危険です。
29. Rd1 Rce4 30. Rd2 として2段目を守れば白は問題ありません。
29... b4?!
ナイトが離れたのでb4を仕掛けるチャンスだと思いましたが、より着目すべきはc5のマスでした。
29... Bc5! ならば白はe3のマスを受けることができず、ナイトも危険な状態です。
30. axb4 axb4 31. Nd3 Kb6 32. cxb4 Rce4 33. Nc5 Rxb4 34. Nd3 Rbe4 35. Rc3 Re3+ 36. Kf2 Re2+ 37. Kf1 Rh2 38. Rb3+ Kc7 39. Rg5 d4 40. Ra5?
キングへプレッシャーを積極的にかける狙いですが、g7への当たりを外してしまうと、e7のルークが自由になってしまい、黒のほうが早くダブルルークを活用して白キングへの攻撃を仕掛けられるようになってしまいます。代わりに
40. Rbb5! がb2を受けつつ、様子を見る1手として良かったでしょう。
40... Re3
d3のナイトに揺さぶりをかけるつもりでしたが、
40... Ree2 と素直に7段目のダブルルークにして、メイトに近い状態を作っておくほうがシンプルです。
41. Ra7+?
a5にルークを振った以上指したくなる手ですが、黒キングは危険なくするすると逃げてしまいます。
41. Ra4! Re4 42. Rc4+ Kd7 43. Rb6 Rd2 44. Rcc6= ならば、白も6段目のダブルルークを作って問題ない局面でした。
41... Kc6 42. Ra6+ Kd5 43. Kg1 Rd2 44. Rb5+ Kc4-+
ダブルルークのチェックを振り切った黒キングは、逆に白の2ピースにフォークをかけ、決定的な駒得で黒勝勢となります。
45. Rxd6 Kxb5 46. Nf2 Re1+ 47. Kg2 Ree2 0-1
Caro-Kann Two Knightsは、黒から様々な変化があるので選ぶ楽しみがあります。また違う形も別の機会にご紹介したいと思います。