Photo by Uesugi
週末に行われたジャパンオープンは、6戦を終えて4勝2ドローの馬場さんと東野さんがトップに並び、タイブレークで馬場さんの優勝が決まりました。最後まで誰が優勝するか分からない大混戦でしたが、お2人とも安定して強かったと思います。おめでとうございます!
1st Place Baba Msahiro 5/6
2nd Place Higashino Tetsuo 5/6
3rd Place Kojima Shinya 4.5/6
4th Place Aoshima Mirai 4.5/6
私は4,5R で青嶋くん、Alex とドローになり、逆転優勝をかけた最終戦も馬場さん相手に勝つことができず、2日目は3ドローで4.5P 止まりでした。4.5P は9人並ぶ団子状態でしたが、入賞の楯は上位ボードで試合を続けた私と青嶋くんが獲得しています。最終戦の馬場さんとの試合は、とてもエキサイティングでしたので、今夜はそちらをご紹介しようと思います。
Kojima, S - Baba, M
Japan Open 2016 (6)
1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. b3!?
先日ブログで紹介した、Positional Masterpieces of 2012-2015 の中に、この手順で始まるゲームがありました。普段は
3. d4 か
3. g3 と指す私ですが、ここは少し相手の予想を外し、新しいポジションを模索してみることにします。
3... Bg7 4. Bb2 O-O 5. g3 c6 6. Bg2 d5 7. d3 Bf5 8. Nbd2
c7-c6, d7-d5 に対しては、ポーンを4段目まで伸ばさず、低く組むことで白は徐々に有利になると、Naidisch の解説に中に説明がありました。それを完全に理解していたわけではないのですが、ハンガリー留学時代に、IM Berczes が
Ra1-Rc1-Rc2, Qd1-Qa1, Rf1-Rc1 と組んでいたことを思い出し、そのイメージで試合を進めてみることにします。
8... dxc4 9. Nxc4 Qc8 10. O-O Bh3 11. Rc1 Bxg2 12. Kxg2 Nbd7 13. Qc2 Re8 14. e4 Nh5 15. d4
黒から
8... dxc4 と開いてきたため、センターをポーンで抑える展開に持っていきます。
d3-d4 のテンポロスはあれど、今年の全日本の
権田さんとの試合と同じような形になり、白としては満足です。
15... Nb6 16. Ne3 Rf8!?
ルークが元の位置に戻る手は奇妙に見えますが、eポーンを進めるプランが有効ではない以上、白としては
f7-f5 のほうを警戒すべきです。黒にとってfポーンを伸ばしてe4 を崩すアイディアは、キングやe6 のマス、e7 のポーンを弱めますが、代わりにd5 のマスを得ることになります。トータルでは白のほうがメリットが大きいと思いますが、それでも
f7-f5 に注意しながら白はゲームを進めます。
17. Qe2 Qe6 18. Ng5 Qd7 19. Rfd1 Rad8 20. Rc2!?
試合中に考えており、検討で馬場さんにも指摘されたのは、すぐにdポーンを伸ばす手です。
20. d5! cxd5 21. Bxg7 Nxg7 22. Nxd5 Nxd5 23. Rxd5 Qe8 24. Rc7 Rxd5 25. exd5 Qd8 26. Qc4+/- 私としては、h5 のナイトの位置が悪いことをもっと利用したかったのですが、それをプレーに戻させても、cファイルを突破するほうが白は優位に立てたでしょう。
20... h6 21. Nh3 Qe6 22. f3 f5 23. d5!
f7-f5 を止められなかった以上、ここでセンターのブレイクを仕掛けて勝負します。
23... cxd5 24. exd5 Qd7 25. Bxg7 Kxg7 26. Rcd2 f4 27. Nc2!
ナイトはg4 に向かう手もありそうですが、私はd5 までポーンを進めた以上、e6 のマスを利用するのが自然だと考え、
Ne3-Nc2-Nd4-Ne6 のマヌーバリングを目指すことにします。
27... fxg3 28. hxg3 Qd6 29. f4 Kh7 30. Nd4 Rf6 31. Nb5?!
しかし、ここまで進めておいて方針をぶらしてしまったのかミスでした。e6 にいざ入れるという段階になって、e6 のナイトはe7 へのプレッシャーを薄めるだけで、さほど白にメリットはナイト勘違いしてしまいます。実際には
31. Ne6! Rc8 32. Nf2! (e6 のナイトがf4 のポーンを守っているため、
Rf6-Rxf4 のスレットが消え、h3 のナイトを組み替えることができるのがポイントです。)
32... Nxd5 33. Ne4 Qxe6 34. Nxf6+ exf6 35. Qxe6 Nhxf4+ 36. gxf4 Nxf4+ 37. Kf3 Nxe6 38. Rd7+ Kg8 39. Rxb7 a5 40. Rd6+- f2 に退いたナイトがe4 を目指し、白が確実に駒得できるということを見落としていました。
31... Qd7 32. Kh2 a6 33. Nc3 Rd6 34. Nf2?!
ここもコンピュータは驚きのタクティクスを示します。
34. f5!! Qxf5 35. g4 Qf6 36. gxh5 Qxc3 37. Qxe7+ Qg7 38. Qxg7+ Kxg7 39. Nf4+/- このようにナイトとクイーンを交換しても、黒キングを攻めて駒得のチャンスがある白に大きなアドバンテージがあるでしょう。
34... Nf6 35. Qe5
ここは互いに残り時間が少なかったのですが、もし長めに残っていたとしても読み切れる自信はありません。
35. Nfe4 Nxe4 36. Qxe4 e6 (馬場さんはこれでd5 のポーンが落ち、黒が有利だと検討で指摘しましたが、局面は予想より複雑です。)
37. Qe5! (狙いは次に
Nc3-Ne4 からf6 でのフォークです。)
37... Rf8 38. Ne4 Rxd5 39. Rxd5 Nxd5 40. Nc5 Qc6 41. Nxe6 Qc2+ 42. Kh3 Qf5+ 43. Qxf5 Rxf5 44. Rd3+/= コンピュータの評価はやや白優勢ですが、黒も注意深く指せば大丈夫であるように見えます。
35... Nbxd5 36. Nce4 Nxe4 37. Nxe4 Ne3!
私はルークが避ける手で完全にイコールポジションになると思っていましたが、馬場さんは全く違う手を指してきました。
37... Re6 38. Rxd5 Qc6! (38... Rxe5?? 39. Nf6+!! Kg7 40. Nxd7+-) 39. Qxe6 Qxe6 40. Rxd8 Qxe4 41. R1d2= ならば、ドローになるでしょう。
38. Nf6+
g4 でのナイトとフォークがある以上、この手しかないと読みました。しかし、
38. Qxd6! Qxd6 (38... exd6 39. Nf6+ Kg7 40. Nxd7 Nxd1 41. Nc5!=) 39. Rxd6 exd6 40. Rd3 d5 41. Rxe3 dxe4 42. Rxe4 というような変化がありました。互いにg4 とf6 でクイーンキングのナイトフォークがあり、非常にポジションは複雑です!
38... exf6 39. Qxd6?
ここもクイーンで取る1手だと思いましたが、
39. Rxd6! Ng4+ 40. Kg2 Nxe5 41. fxe5! Qf5 42. Rxd8 Qe4+= として、2ルークvs.クイーンでドローでした。次の黒の手を見るまで、d6 をクイーンで取った手で白がエクスチェンジアップだと勘違いしていました。
39... Nf1+!
これでルークを取りかえした黒は、単純に1ポーンアップのルークエンディングへと突入します。
40. Rxf1 Qxd6 41. Rxd6 Rxd6 42. Rc1?!
ポーンの足りていない白は、キングサイドだけが3対2 でポーンの残る形を目指すべきですが、そのためにルークが回るべきはcファイルではなく、eファイルです。
42. Re1! Rd7 43. Re6 Kg7 44. Rb6! こうしてb7 のポーンを当てた状態にしておけば、クイーンサイドのポーンを捌いてキングサイドだけにポーンを残せるチャンスが増えるでしょう。
42... h5?
これは助かったと感じました。黒は勝つためにはクイーンサイドのポーンを残さなければいけないため、
42... Rd7 とルークを下げてb7 を守る手が正解です。
43. Rc7+ Kh6 44. Rxb7 Rd2+ 45. Kh3 Rxa2 46. Rb6 f5 47. b4 a5 48. bxa5 Rxa5 49. Rb7 Ra2 50. Rc7 Rf2 51. Rc8!
Rc8-Rh8+ の狙いを作って
h5-h4 さえ許さなければ、白はさほど危険なく、ドローに持ち込めるでしょう。
51... Re2 52. Rh8+ Kg7 53. Ra8 Kf6 54. Rf8+ Kg7 55. Ra8 Rf2 56. Kh4 Rf3 57. Rb8 Re3 58. Ra8 Rf3 1/2-1/2
最終戦、ラッキーなことに4回目の白を引き、望むようなゲームの流れで優位に立てたにもかかわらず、勝ち切れなかったのは残念でした。また色々と勉強を続け、次の大会に生かしたいと思います。ジャパンオープンに参加された皆さん、お疲れ様でした。次の大会は今週末に函館で開催される大会ですので、そちらのレポートもお楽しみに!